英ローラ・カーズと組んで
フォーミュラEマシンのパワートレインに着手
ABB FIAフォーミュラE世界選手権の日本での初開催を控えた2024年3月28日(木)、ヤマハが記者会見を開き、このフォーミュラEの電動パワートレインの開発でローラ・カーズと技術提携することを発表した。この発表会には、フォーミュラEの共同創設者でチーフ・チャンピオンシップ・オフィサーを務めるアルベルト・ロンゴ氏、そしてフォーミュラEホールディングスCEOのジェフ・ドッズ氏も同席し、この新たなフォーミュラEファミリーの加入に対し歓迎の意を示している。
フォーミュラEは、2014年からスタートしたFIAの世界選手権の一つで、電気自動車のフォーミュラカーで行われている。基本的には秋に開幕し、年をまたいでシリーズが進められている。開催コースは市街地の特設コースを使用し、シリーズ発足当時は2台のマシンを乗り換えてレースを行っていたが、2018-2019シーズンからは1台のマシンで走り切ることになっている。レースは土曜日のみのワンデー・イベントで開催となる。
今回、ヤマハとの技術提携を発表したローラ・カーズといえば、1958年にイングランド・ハンティンドンで創業した老舗レーシングカー・コンストラクターで、ホンダのF1マシンRA300や全日本F3000からフォーミュラ・ニッポンでもローラ社のシャシーを使用していたこともある。2012年に経営破綻でいったん清算されてはいるが、現在は復活し、モータースポーツディレクターにマーク・プレストンが着任している。
ヤマハのF1参戦時代にはローラのシャシーにヤマハ製エンジンが載ることはなかったが、今回はその新生ローラ・カーズとの提携となる。フォーミュラEでは現在その車両の7割がレギュレーションで共通化されており、その残り3割の部分でコンペティティブな技術競争が行われている。これはコストの上昇を抑えるという効果もある。
この提携でモーター、インバーター、ソフトウェアなどを共同で開発していくこととなり、最終的にはというローラ・ヤマハというパッケージで希望するチームに提供するという形となる。登壇した丸山常務執行役員は「ヤマハとしては出力密度の大きな、軽量なパワートレインというのが強みだと思います。ただ、世界選手権ですし、最初は勉強をさせてもらって、いかに早く実力をつけて追いついていけるか、できるだけ早く結果を出したいと思っています」とコメントしてくれた。
日本国内とイギリスの両社の拠点で開発が進められることとなり、順調にいけば2024/2025年シーズン11から車両の提供が可能となるようだ。現在、そのローラ・ヤマハのパッケージの車両をどこのチームが使用するかといった詳細な内容については、公表はされていない。
ただこの取り組みが実現すれば、1997年F1のアロウズ・ヤマハ以来の四輪世界選手権への挑戦となる。ちなみに、日本初開催となるフォーミュラE 2023-2024シーズンの第6戦「Tokyo E-Prix」は2024年3月30日(土)に東京都江東区有明にある東京ビッグサイト周辺で開催となる。
(文・写真:青山義明)