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レース・イベント

コマ図 Forest Touring in Shizuoka 2023 27-28 May  ラリーファン&林道ツーリングフリークが 全国から富士山の麓に集合
■レポート&写真:泉田陸男 ■主催:松下時子 ■運営:チームコマ練




5月27〜28日、新緑の富士山麓の“朝霧高原 Field Dogs Garden”に林道ツーリング大好き、ラリー走行大好きなライダーが全国から集結した。関東や関西、遠くは九州からソロやグループでやって来たライダーが、『コマ図フォレストツーリング』の主催者が設定した朝霧高原、富士山麓のルートを、文字通りコマ図を頼りに思い思いのマシンに跨り、ルートを楽しみ走り抜けた。

 
『日本林道一筆書きプロジェクト』『ミライ・リンドウ』を始め、モンゴルの草原や世界のダートコースを舞台に活動する女性ライダーの松下時子さんが主催する『コマ図フォレストツーリング』の第2回が5月27~28日に静岡県富士宮の富士山麓、朝霧高原にて開催された。
 コマ図というのは、パリ・ダカールラリーなどラリーの世界ではコース走破するために必須の、走行ルートを示す指示書のことで、進むべきルートを距離や目印、岐路の方向などが記されている。このコマ図を使って、事前には知らされていない未知のルートをラリー気分で楽しみながらツーリングをしようというのが『コマ図フォレストツーリング』なのだ。
 気分は「柏秀樹」「三好レイコ」といったところか。

今回のツーリングで使用された、走行ルートが記された「コマ図」と呼ばれる指示書。実際のラリーなどでも使用される重要な書類。
『コマ図フォレストツーリング』の開催メイン会場となった朝霧Field Dogs Garden。前日入りの参加者たちのキャンプサイトとコテージがあり、コマ図ツーリングのスタート地点。

 
 コマ図を使った本番走行は28日(日曜日)に実施されたのだが、参加者の一部は開催場所である“朝霧高原 Field Dogs Garden”に前日の土曜日から集まり前夜祭を楽しんだ。
 前日からの参加理由は遠方からというだけではなく、ツーリングの醍醐味は仲間との経験の共有、楽しい思い出の分かち合いなど、バイクで走ることばかりではないようだ。普段はドッグラン併設の施設にテントを張り、盃を酌み交わしてのキャンピングもライダーにとっての至福の時間なのだ。九州から参加したという女性ライダーにとって前日入りは必要条件には違いないだろうが、夜には仲間たちと思いっきり盛り上がっていたようだ。
 27日(土曜日)の午後から会場入り口に設置された大会本部テントでエントリー受付が始まった。会場までの途中、ツーリングをしながら到着するライダー、自宅から直行で来るライダー、もちろん当日受付のライダーもいて、それぞれの楽しみ方、都合で参加できるのはハードルが低く親近感があってのことだ。とはいえ今年の応募は告知早々に定員に達してしまったそうで、多くのライダーがエントリーできなかったことは残念だった。
 

九州から参加の2人の女子ライダーさんは、自分のマシンで自走してきた強者。
本部受付に用意された参加者のゼッケンシートとクレデンシャル。
会場に設置された本部テントで参加受付をする参加者の皆さん。

 
 27日入りする参加者の中には、前日に入る理由があったライダーもいた。それはコマ図ツーリングを楽しむための、初心者に向けてのコマ図の見方と、それに沿った走り方の講習会だ。受付が終わった後、運営事務局の講師によるコマ図勉強会が開かれ、コマ図の知識が全くないライダーでも楽しめるように、読み方、走り方の講義をしてくれるのだ。
 あくまでもラリーとは違い、タイムや順位を競うものではなく、ツーリングを楽しむイベントであることを念頭に、安全第一、そしてコースを提供してくれる地元の住人の方々への配慮を忘れないように指導されていた。ひと通りの講習が終わると、やはり見知らぬコースが不安なのか、参加者達が一斉に講師の元に集まっていた。
 

前日に開催された初心者向けの“コマ図講習会”は、会場内のオープンテラスの自然環境抜群の中で行われた。本番でのルート間違いがないようにと、皆さん真剣に受講されていました。

 
 全国からエントリーがある『コマ図フォレスト・ツーリング』だが、多彩な参加者やボランティアが顔を連ねていることも特徴的だ。当日はモータージャーナリストの山田純氏も参加し、参加者と共に主催者から配布されたコマ図を頼りにルートを参加ライダー達と右往左往しながら走っていた。
 会場にブース出展していた「BONSAI MOTO」の多川さんは実際にラリーの参加経験のあるレーシングライダーだが、当日は一般参加者と同じルートを同様にコマ図の指示に従ってルートを走破していた。また、近年は女子のオフロードライダーの増加は目立つものがあるとはいえ、オフロードを走るイベントに女子ライダーが積極的に参加してくる理由は、松下さん主催の結果だろうか。今回9人8台の参加があり、中でも遠方からのエントリーで目を引いた九州からの参加者は、自走で会場入りしたことで驚嘆の声が上がっていた。
 

昨年の大会にも参加したモータージャーナリストの山田純氏は、前回はBMWでの参加。今回はYAMAHA SEROWでのエントリー。

 

スーパークロスや数々のレース経験があるBONSAI MOTOを主催する多川潤さんはHondaアフリカツインで参加。
前日入りした女子の面々。松下さんを囲んでテンションマックスでした。

 
 いよいよ本番スタート前には、前日入り、当日入りの全ライダーが出発地点に集合し、松下さんの挨拶の後、スタート前の諸注意が運営事務局から告げられ、各自スタート準備やグループでの情報交換など緊張の中での最終確認を行っていた。特に重要なコマ図は、オーソドックスな紙に印刷をしたものをコマ図ボックスと呼ばれるロール式で巻き上げていくタイプのマップホルダーを使用しているライダーもいれば、運営事務局が準備したスマホアプリを使用するライダー、単純に紙に印刷してタンクバッグに挟んだだけのライダーとバラエティに富んでいた。
 

スタート前に運営事務局から諸注意が伝えられ、参加者は確認と最終チェックを各自行った。
スタートまでの待機時間に各自マシンチェックや仲間との行動確認などを行っていた。

 

コマ図ツーリングに最も重要なルートを確認するための“コマ図”は、各々のマシンに確認しやすいように工夫して取り付けられる。一般的にはコマ図ホルダーと呼ばれるロール機能の付いたケースを購入、または自作した物を装着して使用する。『コマ図フォレストツーリング』では同様の機能が使えるスマホアプリも提供されている。

 
 スタートはゼッケン順に30秒ごと2台ずつが出発していき、エントリーした74台が全て出走完了するには30分以上もの時間が必要だった。今回のルートはスタートしてから途中のチェックポイントを通過して最後のゴール(スタート地点)に戻ってくるまで全行程118.95kmを走ることになっている。コースは朝霧高原及びその周辺の林道(普段は走行不可能な道も含む)や町道、市道はもちろんのこと国道をも含む色々な公道を道路交通法に従って走行することになるのだが、コマ図が頼りなだけに普段の走行とは勝手が違い、ポイントを見落としたり方向を間違えたりと思う様に走るのは難しい。
 

ゼッケン番号順に2列に並んでのスタートは、これからのルートへの期待と緊張で鼓動が高まる瞬間だ。
主催者の松下さんは、スタートに立ち会い、参加者の皆さんが楽しい1日を無事に過ごせるように祈念しつつお見送り。

 

スタートしていく参加者たちの愛機は、様々なメーカーの名機と呼ばれるマシンも多く登場し、そのエグゾースト音を聞くと否が応でもツーリングへの期待が高まる。
会場をスタートするとすぐに一般公道の国道に出るのだが、安全を確保するために大会スタッフが国道の状況を確認してライダーに指示を出していた。

 
 当然ルート内には広幅員の道路もあれば狭路、舗装路にダート道路と走行に気を使うに事欠かないところが面白く、参加者は抜きつ抜かれつ、はぐれたり、間違った道から引き返して合流したりと気が抜けない時間を過ごすのだ。しかし、途中のチェックポイントでは自分がどの様な順番で通過しているか、コマ図通り正しく走行してきたかなどが確認でき走行を楽しむこともできる。当然ながらコマ図を確認しながら走るということはペースが遅くなるので普段より周りの景色がよく見えるというツーリングには絶好のおまけが付いてくる。もちろんツーリングな訳だから、自分と周囲の安全さえ確保できれば、自分が止まりたいところでストップしても誰にも咎められないのだから、存分に景色を堪能できるのだ。主催者はそういったことを見越して、写真コンテストも実施しており、コンテスト入賞者には協賛会社から賞品も授与される。
 そのほかにも、主催者が用意してくれたライディングの疲労を癒すコーヒーやお菓子を口にしばしの休憩をするライダーもいれば、足りなくなりそうな燃料補給のため早々に出発するライダーなど多種多様な風景が繰り広げられていた。
 

前半の第1チェックポイントに単独で現れたSEROW250の参加者。今回のSEROWのエントリー台数は抜きん出て多かった。
ダートツーリングの王者と言えるマシン、BMWアドベンチャーも目立つマシンだ。走破性ももちろんだがそのスタイルの持つ魅力は無限だ。
電動オフロードバイクのCAOFEN F80 STREET公道モデルも参加していました。全行程走破のため予備バッテリーを背負って走っていました。

 
 

チェックポイントでは自分のポジションを確認して早々に出発するライダーや、休息を取ってから出発するライダーなど様々だった。
チェックポイントには大会運営のスタッフが、次々と到着するライダーのチェック手続きを行い、飴などを渡していた。
会場に設けられた第2チェックポイントでは松下さんが淹れたコーヒーを振る舞ってくれた。

 
 午前中のステージはスタート地点に戻りチェックポイントとして登録を終え、午後へのステージへと移る。再びコマ図に従い午後のルートへと出発していく参加者は、午前のステージで慣れてきたのか再び戻ってきてゴールチェックするまでのタイムが心なしか短縮されていた様だ。午前のルートが83.75kmの行程に対して、午後のルートは35.20kmと短く設定されてはいたが明らかに走っているライダーの様子には余裕らしきものが見られた。
 ゴールには単独で戻って来たライダーもいれば、何台かとまとまって戻って来た者、元気一杯手を振ってゴールするライダー、疲労を隠せないライダーなど、それでも全員が無事に充実したツーリングを体験して戻ってきたことは間違いなさそうだった。
(レポート・写真:泉田陸男)
 

 

最終ゴールに向けて戻ってくる参加者の皆さんの走りには、完走した喜びと『コマ図フォレストツーリング』を通して出会った仲間との繋がりが未来に向けて広がるオートバイライフ、そして林道ツーリングの楽しさを倍増してくれるとの期待を確信していたように見えた。

 





2023/06/22掲載