スズキは1983年を最後にWGPへのワークス参戦を休止していたが、1987年、RGV-Γ500で再びWGP500ccクラスへ復帰した。1988年からはフル参戦を開始、開幕戦の日本GPでは、ケビン・シュワンツが優勝し劇的な復活を遂げた。この年、市販車のRG250ΓもV型のニューエンジンへとフルモデルチェンジし、レーサーレプリカブームは頂点を迎える。しかし1980年代終盤に起ったネイキッドブームと入れ替わるようにレーサーレプリカブームは急減速。毎年のようにモデルチェンジを繰り返し進化を続けたレーサーレプリカも、末期はカラー変更のみとなり、さらに馬力自主規制の強化もあって、静かに消えゆくのみかと思われていた。そんなレプリカブームが冷え切った状況の1996年、突然Vガンマがフルモデルチェンジを敢行。最後の最後で誰もが驚いたこのフルモデルチェンジは、自ら先陣を切ったレーサーレプリカブームを有終の美で飾ろうとしたような出来事でもあった。
WGPに復帰したスズキが2勝を挙げた1988年、ワークスレーサーRGV-Γ500のV型4気筒エンジンを半分にしたような、狭角90度のVツインエンジン、新たな排気デバイスAETC、半円柱という独特の形状をしたスロットルバルブを持つスリングショットキャブなどによりフルモデルチェンジ。ミッションもワークスレーサーと同等のカセット式、フレームはさらに進化したDC-ALBOXで、軽量化、高剛性、低重心化を達成している。3000rpm以下の表示がないガンマ伝統のタコメーターは最後まで継承された。
フルモデルチェンジしたVガンマをベースに、クロスミッション、減衰力調整付きフロントフォーク、減衰力調整付きリザーバータンク別体式リアショック、シングルシートカウルを装備したSP仕様を追加。外観上の違いは、リアショックのリザーバータンクとカウルに入ったSPORT PRODUCTIONのロゴ。価格は609000円。
Vガンマをベースにしたネイキッドバージョンも登場。Vツインエンジンやフレームなど基本的なレイアウトはVガンマと同様だが、二次減速比の変更などにより中低速重視のセッティングで加速性を重視したパフォーマンスに。フロントブレーキは異径4ポッドキャリパーと、Φ310mmにサイズアップされたディスクをシングルで装着、丸目ヘッドライトやセンターにスピードメーターを配置したメーター周りなどがVガンマと異なる。
SP仕様をベースに、1988年の開幕戦で優勝したケビン・シュワンツが駆ったRGV-Γ500のペプシカラーをイメージした680台限定車。ゴールドチェーンを標準装備し、サイレンサーはレーサー同様のブラック仕様、スポンサーステッカーも同梱されており、タンク上面にはシュワンツのサインが入る。価格は619000円。
1989年モデルは点火系、排気デバイスAETC、キャブなど大幅にデジタル制御化された。排気ポート形状などシリンダーまわり改良で中低速トルクアップ。ミッションもクロスレシオ化された。荷掛フックも増設され使い勝手も向上。外観ではタンクのSUZUKIの文字が太くなっている。
スポーツプロダクション仕様は、キャブ大径化やミッションのさらなるクロスレシオ化がおこなわれた。外観上ではリザーバータンクが金色になり、カウルハンドル下部分に3色ストライプが追加されたことでスタンダードモデルと識別がしやすくなった。価格は639000円。
1989年のペプシバージョンは、SP仕様ではなくスタンダードモデルがベースになった。1988年のペプシバージョンと同様の装備に、日本GP2連覇記念ステッカーも付いた500台の限定車。588000円(以降は消費税導入後の税抜き価格)。
全日本選手権で辻本、樋渡の両選手がライディングしたシック・アドバンテージ・スズキをイメージした1000台の限定車。スタンダードモデルがベースで、ゴールドチェーンを標準装備し、スポンサーステッカーを同梱した。価格はペプシカラーと同じ588000円。
1990年モデルは、3段階制御化されたAETCII、点火時期複合制御システムMDIS、電子制御スリングショットキャブの3つを統合制御する電子制御システムSAPCを採用。フレームはさらに進化したCAL-BOX、フロント倒立フォーク、三日月型に屈曲したニュータイプスイングアーム、リア17インチ化、左2本出しのサイレンサーなども新たに採用された。
SP仕様は、スタンダードをベースに乾式クラッチ、クロスミッション、キャブのベンチリュー大径化、SBCメッキシリンダーのメッキ部分拡大、クイックファスナーなどが装備された。同様の装備でノーマルミッションのSPIIも新たに設定された。SPとSP2はシートカウルのゼッケンプレートが黒になった。外観でSPとSPIIの違いはなく見分けるのは難しい。車体色はブルー・ホワイトツートンのみで価格は共に669000円。
WOLFはロゴカラーのみが変更された1990年が最終型となった。スペースブラックはSUZUKI、WOLFのロゴが赤→金、マーブルピュアレッドはSUZUKIロゴが黒→銀、WOLFが黒→赤、ライトチャコールメタリックはWOLFの文字が黒→金に変更された。主要諸元、価格は変更なし。
1991年モデルは、サスセッティングの変更、足着き性の向上、排気煙の減少、シートカウル形状変更などの熟成化がおこなわれた。車体色はグラフィックが変更され、ブルー・ホワイトツートンとブラック・レッドツートンの2色。主要諸元は1990年から変更はないが、価格は616000円に。
SP仕様も設定。基本的に1990年モデルと同様に乾式クラッチ、クロスミッション、大径キャブ等を装備する他、スタンダードにはないリザーバータンク付きのリアショックも装備。同仕様でノーマルミッションのSPIIも引き続き設定された。外見での識別は困難。車体色はブルー・ホワイトツートンのみ。価格は696000円
1991年のスタンダードモデルをベースに、1990年のシュワンツカラーをイメージした240台の限定車。限定数が半分以下になったことからもレーサーレプリカブームの衰退が推察できる。価格は625000円。ちなみに原付スクーターのセピアZZラッキーストライクカラーは、なんと3000台限定で同時発売されているから、バイクブームはまだまだ終わっていなかった。共に購入者にはラッキーストライクレーシングタオルがプレゼントされた。
1992年モデルは、グラフィック変更、フロントフォークアウターがアルマイト加工に。車体色はブルー・ホワイトツートン、ブラック・グリーンツートン。主要諸元に変更はなく、価格は625000円。
SP/SPIIもグラフィック変更のみ。SPとSPIIを外観で見分けることは換わらず困難。車体はブルー・ホワイトツートン。同一だった価格はSPが725000円、SPIIは716000円に。
1993年モデルはスイングアームがトラス形状に変更されて剛性が10%アップ。ヘッドライトの常時点灯も採用された。馬力自主規制変更で最高出力は40ps、最大トルク3.5kg-mにダウンしてしまった。
RGVのロゴがイエローのSP仕様は、乾式クラッチ、クロスミッションなど固有の装備。ノーマルミッションのSPIIは設定されなかった。車体色はパールスズキミディアムブルー。価格は725000円。
1993年WGP500クラスチャンピオン獲得を記念したシュワンツカラーを240台の限定、625000円で発売。購入者はシュワンツも出席する竜洋テストコースでおこなわれたオーナーズミーティングに招待された。 ラッキーストライクカラーのセピアZZも前年同様に3000台限定で発売された。
車体色を変更。パールスティルホワイト×パールスズキミディアムブルーの1色となった。価格は変更なし。
1995年全日本チャンピオンに輝いたワークスレーサーXR95をイメージしたスタイルにフルモデルチェンジ。Vバンクが70度、ボア×ストロークもほぼスクエアとなった新開発Vツインエンジンを、5kg軽量化された新設計アルミツインスパーフレームに搭載。700gという軽量セルスターターも標準装備。ホイールベースは1330mmに短縮され、テールカウル内には 7.5リットルの小物入れも設置。スタンダードモデルの設定はなく乾式クラッチのSPのみがラインナップされた。Γシリーズは事実上これが最終モデルとなり、2000年代初頭まで販売された。1996年4月には、沼田選手が1995年に全日本選手権250ccクラスチャンピオン獲得を記念し、ラッキーストライクカラーがスタンダードと同価格で発売された。
[青春のQ2カタログその14 HONDA 水冷編-3 |その15 SUZUKI 水冷編2 |その16 中間排気量編]