●Honda CRF1100L Africa Twin/Africa Twin Adventure Sports 車両解説
1989年のXRV650Rでヒストリーが始まった、ホンダのアドベンチャーモデル“Africa Twin”シリーズ。その“Africa Twin”の名を冠して颯爽と復活したCRF1000L Africa Twin。2016年2月の発売以来、このジャンルのリッターモデルとしては驚異的な人気ぶりを発揮してきた。
ただ意外にも、その知名度の高さからはあまり想像できないのだが、この稀代の名車“Africa Twin”シリーズの歴史自体はわずか10年足らずしか無い。初代XRV650Rの登場から、2代目XRV750Rを経て、3代目のXRV750R、2000年の最終モデルの製造中止までのわずかな期間に超新星のごとく耀き、そして消えていった。まだ“パリ・ダカールラリー”と呼ばれていた当時の壮大なアドベンチャー・ラリーでの活躍を背景に、その存在を強烈に印象付けたということだろう。
また、ホンダは大排気量アドベンチャーカテゴリーマシンとして、XL500Sを始め、XLV750R、XL600Rファラオ、XLV600Rトランザルプ、と連綿とその歴史を積み上げてきていたからこそ、Africa Twinのヒストリーも光るのだともいえる。
それはともかく、新時代のAfrica Twin、CRF1000L Africa Twinは、2014年11月のEICMA2014(ミラノショー)に出展された「True Adventure プロトタイプ」で示した方向性を実際に製品化したモデルといえ、ホンダの英国現地法人であるホンダモーターヨーロッパ・リミテッドが、2015年5月に「2015年中に発売する」と発表したのが正式デビューとなっている。国内登場は、先にふれたとおり、翌2016年の2月の発売となった。
スタイルは、現代の“ダカール・マシン”CRF450 RALLYのイメージも取り入れてはいるが、LEDヘッドライトを備えたフェアリングを始め、18リットル入りの大型燃料タンク(初代のAfrica Twinは何と23リットル入り)などにより、Africa Twin一族のDNAを色濃く受け継いだデザインで、新世代ながらも紛れもないアドベンチャーマシンであることを強烈に主張している。
搭載されるエンジンは、“ユニカムバルブトレイン”や“軽量キャストカムシャフト”などの最新テクノロジーを取り入れた新開発の直列2気筒で、270度位相クランクによる不等間隔爆発及び、ツインプラグの位相点火制御システムなどを採用することで、優れたトラクション性能を発揮するとともに、小気味よい鼓動感も実現している。
また、エンジンの背面にバッテリーなど重量物を集中配置することで、マスの集中化も実現。さらに、軽量でありながら十分な剛性を確保するセミダブルクレードルフレームの採用によってオフロードでの優れた走行性能とオンロードでの安定感のあるハンドリングを両立。荒れた路面でも効率よく動力を伝達する“Honda セレクタブル トルク コントロール”を全車に搭載。Honda独自の“Dual Clutch Transmission”採用モデルでは、オンロードからオフロードまでライダーの感覚に沿ったコントロール性能を発揮するよう3段階のシフトパターンを選択できるようさらに進化している。
2017年2月には、初のモデルチェンジを受け、国内の排出ガス規制に適合させるとともに各部の適正化により、従来モデルから2kWのエンジン出力向上、3N・mのトルクアップも図られるなど初の変更が行われた。また、同時に「キャンディープロミネンスレッド」の新色が追加され、全4色のカラーラインナップとなっていた。
2018年4月に行われたモデルチェンジも基本はそのままで、新たに“スルットル・バイ・ワイヤシステム”が採用されたほか、Hondaセレクタブルトルクコントロール(HSTC)のセッティング幅の拡大や、走行状況に応じてエンジンの出力特性を変更できるライディングモードセレクトの採用、そしてエマージェンシーストップシグナル、オートキャンセルウインカーなどの新機能も追加された。
また、も一つのトピックスとしては、フラッグシップアドベンチャーモデルとしての地位をより確固たるものにする24リットル入り“シームレス溶接”フューエルタンク(ノーマルは18リットル)の導入や、ストローク長を延長させた専用サスペンションの採用(最低地上高も250mmから270mmへ)、また同時にシート高を60mm下げたローダウンタイプもラインナップする”Adventure Sports”モデルのタイプ設定も行われた。2018年12月には、マイナーチェンジでカラーバリエーションの変更とともに、全タイプにETC2.0が標準装備されている。
今回、リッタークラスになって初のフルモデルチェンジが行われ、排気量は1082ccへとさらにアップ、フレームとボディ周りののトータルで約1.8kgの軽量化が行われた車体と組み合わせている。
★HONDA ニュースリースより (2019年10月23日)
大型アドベンチャーモデル「CRF1100L Africa Twin」
「CRF1100L Africa Twin Adventure Sports」を発売
Honda は、大型アドベンチャーモデル「CRF1100L Africa Twin」と、大容量燃料タンクなどを装備し、さらなる冒険心を駆り立てる「CRF1100L Africa Twin Adventure Sports」を2020年2月14日(金)に、また、より上質で快適な走りを追求し、前後に電子制御のサスペンションを採用した「CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES」を2019年12月13日(金)に、それぞれHonda Dreamより発売します。
今回のモデルは、2016年に次世代アドベンチャーモデルとして発売された「CRF1000L Africa Twin」の開発コンセプト「True Adventure」を踏襲しながら、排気量を拡大し動力性能を向上させるとともに、各部の徹底した軽量化による運動性能の向上を図るなど、扱いやすさとトータルバランスをさらに高次元へと向上させました。
また、さまざまな走行状況で最適な走りを実現するライディングモードや、長距離をより快適に移動できるクルーズコントロール、メーターからの情報を的確に認知できる大型6.5インチTFTカラーディスプレイを搭載するなど、楽しく快適にライディングするための電子制御によるライダーサポート機能も充実させました。
スタイリングは、Africa Twinの伝統をより濃く感じさせるデザインへと昇華させ、CRF1100L Africa Twin のカラーリングには、Honda のオフロードカテゴリーの技術革新を表現するカラーの「グランプリレッド」1 色を設定。CRF1100L Africa Twin Adventure Sportsのカラーリングには、冒険マインドを表現し、軽快な「パールグレアホワイト」1 色、CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ESには「パールグレアホワイト」と、シックで力強い装いの「ダークネスブラックメタリック」の2色を設定しました。
※1 ETC2.0を使用するにあたり、セットアップ、セットアップ費用および決済用のETCカードが必要となります
※2 Hondaセレクタブル トルク コントロールはスリップをなくすためのシステムではありません。あくまでもライダーのアクセル操作を補助するシステムです。したがってHondaセレクタブル トルク コントロールを装備していない車両と同様に、無理な運転までは対応できません
- ●販売計画台数(国内・年間)
- シリーズ合計 1,300台
- ●メーカー希望小売価格(消費税10%込み)(消費税抜き本体価格)
- CRF1100L Africa Twin
- (グランプリレッド) 1,617,000円 (1,470,000円)
- CRF1100L Africa Twin Dual Clutch Transmission
- (グランプリレッド) 1,727,000円 (1,570,000円)
- CRF1100L Africa Twin Adventure Sports Dual Clutch Transmission
- (パールグレアホワイト) 1,804,280円 (1,640,000円)
- CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES
- (パールグレアホワイト、ダークネスブラックメタリック) 1,947,000円 (1,770,000円)
- CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES Dual Clutch Transmission
- (パールグレアホワイト、ダークネスブラックメタリック) 2,057,000円 (1,870,000円)
- ※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
- =CRF1100L Africa Twin シリーズの主な特徴=
- ■車体・足回り
- ・新設計のフレームは、従来モデルに対してフレームボディートータルで約1.8kgの軽量化を達成し、走行性能の向上を図るとともに、さまざまな走行くシーンで要求される剛性バランスを高次元で両立。
- ・別体化したアルミ製リアフレームは、前方部の幅を従来モデルより40mm細くすることで足つき性を向上。
- ・シート高を830mmと810mmの2段階に、容易な操作で調整可能なシートを採用。
- ■パワーユニット
- ・従来モデルからストロークを伸ばし排気量を拡大した、新設計の水冷直列2気筒1082ccエンジンを搭載し、出力、トルクを向上することで、オフロードにおけるエキサイティングな走行や、オンロードにおける長距離移動時の余裕のある力強い走行を実現。
- ・スロットルバイワイヤの応答速度を向上させ、ライダーの操作に対し、よりリニアな反応を実現。
- ・シリンダーヘッド、スロットルボディーを刷新するとともに、インジェクターの配置を最適化し、燃料をよりダイレクトに燃焼室に噴射することで燃焼効率を向上。
- ・トランスミッションは、ライダーのクラッチ操作やシフト操作が不要となり、余裕を持ったライディングが可能となるデュアル・クラッチ・トランスミッションと、ライダー自身の操作で、シフトチェンジが可能なマニュアルトランスミッションの2タイプを設定。
- ・デュアル・クラッチ・トランスミッションは、IMU(慣性計測装置)を用いたコーナリング走行検知制御の追加により、シフトタイミングをよりライダーの感性に近づけるとともに、発進制御の熟成による滑らかな走り出し、変速制御の熟成によるスポーツフィーリング溢れるダイレクト感を実現。
- ・マニュアルトランスミッションタイプには、変速時のクラッチ操作とスロットル操作を不要とするクイックシフターをオプション設定。
- ■電装・制御
- ・オンロードモードとオフロードモードの2通りのモードを備えたモード選択式ABSは、それぞれの走行状況にあった制動性能を実現。
- ・IMUから得られるバンク角に応じて制動力をコントロールする、コーナリングABSによりコーナリング中のブレーキ操作時のホイールロックを抑制。
- ・アドベンチャーツーリングで遭遇するさまざまな走行状況に対応し、楽しいライディングが可能となる、4つのあらかじめ設定されているライディングモードと任意で設定できる2つのライディングモードを採用。
- ・Hondaセレクタブルトルクコントロールは、前輪の浮き上がりを3段階で抑制するウイリーコントロールを新たに追加するとともに、IMUから得られる⾞両状態に応じ後輪のスリップをより緻密に制御することで、ライダーの姿勢変化が少ない快適な走行に寄与。
- ・豊富な情報を的確に認知しやすくした大型6.5インチTFTカラーディスプレイを採用。
- =CRF1100L Africa Twin Adventure Sportsの主な特徴=
- ・大容量24Lの燃料タンクを装備し、長距離ツーリングでの利便性を向上。
- ・手動にて高さと角度が5段階に調整可能なスクリーンを装備し、長距離ツーリングの快適性を向上。
- ・バンク角に応じて3段階で照射範囲を自動変更するコーナリングライトを装備し、夜間走行時の視認性を向上。
- ・不整地での飛び石などからエンジン下部を保護する大型スキッドプレートや、積載性を向上する軽量アルミリアキャリアを装備し、アドベンチャーモデルに求められる仕様を充実。
- ・チューブレスタイプのスポークホイールにチューブレスタイヤを採用。
- ・走行中のサスペンションストローク速度と、IMUから検知する車両の状態、及び車速に応じて瞬時に減衰力を最適化するショーワ社製電子制御サスペンションEERA(Electronically Equipped Ride Adjustment)を採用※1し、さまざまな走行シーンにおける操縦性と快適性を実現。
CRF1100L Africa Twin/Africa Twin Adventure Sports 主要諸元
車名型式 | 2BL-SD10 | |
---|---|---|
CRF1100L Africa Twin〈CRF1100L Africa Twin Adventure Sports〉《CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES》 | ||
発売日 | 2020年2月14日《2019年12月13日》 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.310×0.960×1.355〈1.520〉《1.520》 | |
軸距(m) | 1.560 | |
最低地上高(m)★ | 0.210 | |
シート高(m)★ | 0.830(ローポジションは0.810) | |
車両重量(kg) | 226〈238〉《240》 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※2 | 32.0(国交省届出値 定地燃費値※3 60km/h 2名乗車時) | |
21.1(WMTCモード値※4★ クラス3-2 1名乗車時) | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | 2.6 | |
エンジン型式 | SD08E | |
水冷4ストローク直列2気筒SOHC(ユニカム)4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 1,082 | |
内径×行程(mm) | 92.0×81.4 | |
圧縮比★ | 10.1 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 75[102]/7,500 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 105[10.7]/6,250 | |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射装置[PGM-FI] | |
始動方式★ | セルフ式 | |
点火方式★ | フルトランジスタ式バッテリー点火 | |
潤滑油方式★ | 圧送飛沫併用式 | |
潤滑油容量(L) | – | |
燃料タンク容量(L) | 18〈24〉《24》 | |
クラッチ形式★ | 湿式多板コイルスプリング式 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン【電子式6段変速(DCT)】 | |
変速比 | 1速 | 2.866〈2.562〉 |
2速 | 1.888【1.761】 | |
3速 | 1.480【1.375】 | |
4速 | 1.230【1.133】 | |
5速 | 1.064〈0.972〉 | |
6速 | 0.972〈0.882〉 | |
減速比1次★/2次 | 1.717×2.625〈1.863×2.625〉 | |
キャスター(度)★ | 27°30′ | |
トレール(mm)★ | 113 | |
タイヤサイズ | 前 | 90/90-21M/C 54H |
後 | 150/70R18M/C 70H | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | スイングアーム式(プロリンク) | |
フレーム形式 | セミダブルクレードルフレーム |
【 】内はDual Clutch Transmission仕様
■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
※2 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※3 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※4 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果に基づいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます
■製造事業者/本田技研工業株式会社