Facebookページ
Twitter
Youtube

レース・イベント

3年ぶりに開催のアジアクロスカントリーラリー
毎年8月に開催されている年に一度のアジア最大のラリーレイド「アジアクロスカントリーラリー」がコロナ禍を乗り越え3年ぶりに開催された。この大会には、毎回多くの日本人が参戦しているが、今回もサイドカー部門、そして2輪クラスにも10台12名の日本人が参戦。また本サイトでもおなじみのモーターサイクルジャーナリストの松井 勉氏がコ・ドライバーとしてトヨタ・ハイラックスRevoの135号車で参戦した。
■文・写真:青山義明 ■協力:R1ジャパンhttps://www.r1japan.net/axcr/




ハスクバーナTE250iを駆る西村裕典選手が優勝!

 今回27回目となるアジアクロスカントリーラリーは、1996年に初めて開催され、以後毎年8月のお盆の時期に開催されているFIMおよびFIA公認の国際クロスカントリーラリーである。過去2年は新型コロナウィルス感染症拡大、そしてその対応が各国で異なることもあって開催されなかったものの、そのコロナ禍の影響も収まり、今大会は無事に開催となった。とはいっても例年の8月の開催からは延期され、11月の開催となったのだが……。

 また、このような状況のため、クロスカントリーとは言いつつも、タイ王国およびカンボジア王国のみで行われることとなり、国境を越えるのは1回のみ。タイの南東部にあるブリーラムを拠点に4日間を走破し、5日目には隣国カンボジアへ移動し、アンコールワット観光の拠点であるシェムリアップでゴールを迎える。総移動距離は約1500kmほどと、この大会では比較的短距離かつコンパクトなコース設定での開催となった。
 タイ、日本、マレーシア、韓国、台湾、カンボジアから四輪部門32台、トラック部門1台に、サイドカー部門2台、二輪部門21台の合計56台がエントリー。例年とはイレギュラーな開催となったこともあってか、既存の参戦メンバーとは少々異なる新規参加勢も多い大会となった。
 

レースウィーク初日、全選手が一堂に会してセレモニアルゲート前で記念撮影を行い、その後スタートセレモニーが行われた。

 
 レースウィークがスタートしたのは11月21日(月)。日本ではすでに晩秋、各地で紅葉が見ごろを迎え始めているところだが、スタート地点となるタイのブリーラム周辺は連日最高気温が30度を超える。また毎日スコールがやっては来るものの、雨季ではなく乾季であり、雨の影響の少ない大会となった。

 レースウィークのスタートとなる車検の後に、翌日のレグ1(競技1日目)のスタート順を決めるスーパーSS(スペシャルステージ)が用意された。このSS1は、ブリーラム・シティ・スタジアム周辺の道路を使用した、未舗装路ではなくターマック(舗装路)の約3kmのステージ。二輪部門で2分5秒のトップタイムを叩き出したのは、#3 西村裕典選手(Team Japan/HUSQVARNA TE250i/M1)であった。

 そして本格的な競技がスタートする。といってもレグ1~レグ4までは、毎日同じブリーラムにあるチャーン・アリーナ脇のサービスパークからスタートする。レグ3までの3日間は起点も終点も同じというループコースである。宿泊の移動を伴うラリーレイドらしいコース設定は、参加者にとっては厳しいもので、主催者も「競技感覚を取り戻す」というイメージで今回のコース設定にしているという面もあり、初参加者にとっては非常にやさしい大会となったとも言える。
 

 
 そのレグ1だが、競技初日にもかかわらず、大会最長の201.05kmのSS設定。おまけにそのSSのスタートポイントまで125kmと移動距離も長いハードな一日となった。前日トップタイムであった西村選手を筆頭に全16台の二輪が1分間隔でスタートしていく。乾季での開催ということもあり、泥や水溜りの路面に足を取られスタックして大きくタイムロスするようなイメージの強いこのAXCRだが、今大会の四輪部門では秒単位の接戦が繰り広げられることとなった。
 一方の二輪部門では、主催者からの「難しめのマップ」に手こずる参加者も多く、上位勢と中下位勢とのタイム差は大きく広がることとなった。ラリーレイドへの慣れ、そしてこのアジアならではの道路環境熟知の差がそのままタイムにつながったようだ。ここでトップタイムをマークしたのは、前日のSS1も好調だった#3西村選手(3時間33分34秒)。これにカンボジアの2選手が続き、4番手に#1 松本典久選手(OTOKONAKI/KTM 350EXC-F/M2/3時間42分01秒)が入ったが、これ以下は4時間から6時間を超えるタイムを要している。また、サイドカー部門の2台は、一台がSSスタート前にエンジン始動ができずデイリタイア。もう一台が4輪に追いつかれてしまったことから途中棄権という判断を行っている。
 

#3 西村裕典(Team Japan/HUSQVARNA TE250i/M1) 二輪1位(9時間48分25秒)

 
 その#3西村選手の快走はその後も続く。朝方まで雨が残ったレグ2(競技2日目)のSS3(156.62km)でもトップタイムをマーク。ウィーク序盤は、総合2番手を行くチームカンボジアの#20 コーン選手(KTM450excf/M2)がこれを追いかける展開となっていく。初日から6つ用意されたSSの前半3つ、それも長距離のSSを全てトップタイムで走り抜け、このまま逃げ切るかと思われた西村選手だが、競技3日目のレグ3に設定されていたSS4(148.60km)は5番手(2時間20分09秒)タイムでゴール。コーン選手(2時間15分07秒)が5分のアドバンテージをもってゴールしたことで、28秒差ながらここにきてついにトップが交代することとなった。
 

モトクロスバイクのフレームにハスクバーナの単気筒500ccエンジンを積み、さらにサイドカー仕立てにしたオリジナルマシンで参戦した渡辺選手。#66 渡辺正人/大関政広(Japan Racing Sidecar Association/WSP WSP/SIDECAR) サイドカー2位(27時間15分09秒)

 
 翌日のレグ4は国境越えがあるため、前日までとは異なる短いSS5(80.68km)での戦いとなった。ここでは、再び西村選手がトップタイム(58分45秒)をマーク。それに#1松本選手が1時間00分27秒でデイリー2番手。一方#20 コーン選手は遅れ、4番手のタイム(1時間01分07秒)となり、総合トップは再逆転となる。短いSSの後に、左側通行のタイから、右側通行となるカンボジアへと、全車が国境を越え、長いリエゾン(移動区間)の後、各車は順調にホテルに到着し、最終日を迎えることになる。
 

#1 松本典久(OTOKONAKI/KTM 350EXC-F/M2) 二輪4位(10時間02分45秒)

 
 そして迎えた最終SS。今回初、そして唯一のカンボジアでのSSなのだが、その距離は47.83kmと極めて短い。ただ、前日までのタイ国内の路面と異なり、穴だらけで、場所によってはしっかりぬかるんでいるこのカンボジアのコースでは、四輪部門の後半10台ほどが軒並みスタックする等、非常に手ごわいコースとなった。それでも二輪部門の各車はフィニッシュ先のサービスに昼前には到着した。
 

最初の2SSをリタイアした岩本選手だったが、その後は淡々と走行を重ね、クラス優勝となった。#65 岩本徹男/坂本武嗣(Japan Racing Sidecar Association/URAL GEAR UP/SIDECAR) サイドカー1位(25時間08分34秒)

 
 このSSの最速タイムは#5 田崎博司選手(Team Japan/HUSQVARNA FE350/M2)の47分30秒。#1松本選手がこれに続き(50分54秒)、チームカンボジアの#24ダラブス選手(51分45秒)と続き、西村選手が53秒25秒でフィニッシュし、見事総合優勝を獲得した。
 サイドカー部門では、#65 岩本徹男/坂本武嗣組(Japan Racing Sidecar Association/URAL GEAR UP/SIDECAR)が25時間08分34秒でクラス優勝。#66 渡辺正人/大関政広組(Japan Racing Sidecar Association/WSP WSP/SIDECAR)はレグ1の13時間のペナルティが響き、それ以外のSSではすべて岩本組を上回ったものの2時間6分35秒のタイム差で2位にとどまった。
無事にリハビリ感のある3年ぶりのアジアクロスカントリーラリーを終え、来年は再び雨季の厳しいラリーレイドが開催されることを期待したい。
 

ハイラックスのコ・ドライバーとしてWEBミスター・バイクでもお馴染みのモーターサイクルジャーナリストの松井勉氏も参戦。#135 新田正直/松井勉(WURTH TRD Hilux MSB Tras135/TOYOTA HILUX Revo/T1D) 四輪20位(18時間00分48秒)
元GPライダーの青木拓磨選手は長年このAXCRに参戦してきた。#108 青木拓磨/イティポン・シマラーク(FORTUNER GEOLANDAR Takuma-GP/TOYOTA FORTUNER/T1D)四輪4位(8時間38分26秒)

 





2022/12/24掲載