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レース・イベント

●文:西村 章

 2022年シーズンに向けたホンダのモータースポーツ活動計画発表が、1月14日に行われた。新型コロナウイルスのオミクロン株が日本国内でも感染拡大フェイズに入っていることから、今年も昨年同様にオンライン形式での開催となった。

 日本時間午後6時にスタートした発表会は、本社一階のウェルカムプラザでの模様をYouTubeで中継。本田技研工業取締役代表執行役社長・三部敏宏氏の挨拶に続き、四輪二輪各カテゴリーの体制を発表。その際には日本人選手たちも登壇し、決意表明なども披露された。そこで発表された二輪ロードレースの各世界選手権に関する主な陣容は、以下のとおり。

●MotoGP
Repsol Honda Team(マルク・マルケス/ポル・エスパルガロ)
LCR Honda IDEMITSU(中上貴晶)
LCR Honda CASTROL(アレックス/マルケス)
●Moto2
IDEMITSU Honda Team Asia(ソムキアット・チャントラ/小椋藍)
●Moto3
Honda Team Asia(マリオ・アジ/古里太陽)
●SBK
Team HRC(イケル・レクオーナ/チャビ・ビエルゲ)
MIE Racing Honda Team(レアンドロ・メルカド/ハフィス・シャーリン)
●EWC
F.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック/マイク・ディ・メリオ/ジーノ・リア)

 モトクロス、トライアル、および全日本等各競技各カテゴリーを含む全容の詳細についてはこちらをご参照いただきたい。

 この体制発表に続き、日本時間午後7時からはMotoGP4選手(M・マルケス、エスパルガロ、中上、A・マルケス)の質疑応答、午後8時からはMoto2/Moto3の4選手(チャントラ、小椋、アジ、古里)と青山博一監督との質疑応答がZoom上で行われた。

honda

 MotoGP選手4名のなかでも、もっとも大きな注目を集めたのはマルク・マルケスだ。昨年シーズンのトレーニング中に転倒した際、以前に発症して治療した複視の問題が再発したM・マルケスは、終盤戦の2戦を欠場し、以後は回復に専念していた。当初の予定ではこのZoom取材会にも参加しないとされていたが、13日の日付でチームがモトクロストレーニングの様子を公表。それと同じタイミングでZoom取材会への参加もアナウンスされた。

 そのM・マルケスだが、医師からゴーサインを得たのはつい一週間前で、まず自転車のロードトレーニングを開始し、マウンテンバイク、そしてモトクロスでのトレーニングという順序で馴染んでいった、と明かした。モトクロス車を選んだ理由については、

「そもそも怪我をしたのがオフロード車だったし、肉体的にもキツいから」

 と述べた。この言葉からは、この数ヶ月続いた苦闘の克服を精神と肉体の両面から目指したのであろうことが伺える。

「(モトクロスでは)正確に走らなければならないし、視力も完璧じゃないといけない。結果は上々だったので、早く次のステップに進みたい」

 その次のステップは、どこかのGPサーキットでCBR1000RRもしくはRC213V-Sでの走行になるだろう、とも話した。MotoGP並みのレーススピードで多くの周回をこなすことができるかどうかをそこで見極めたいと話し2月のプレシーズンテストに参加するかどうかについては慎重に明言を避けた(この会見後ほどなく、マルケスはポルティマオでテストを実施。RC213V-Sで65周を走り込み、2月のセパンテストに向けて前向きなコメントを発している)。

マルク・マルケス
マルク・マルケス
インタビュー3日後の1月17日、マルク・マルケスはポルティマオ・サーキットでRC213V-Sでテスト走行を行った。

 だが、エスパルガロ、中上、A・マルケス弟の3名はいずれも、それぞれのコメント内でセパンテストにはM・マルケスも参加するだろうという見とおしや期待を述べている。この3名は、M・マルケスが参加しなかったシーズン終了後のセパンテスト等ですでに2022年仕様のプロトタイプを試している。この新型車輌については全員が総じて好感触を述べ、「3人のバイクに対するコメントが同じ内容だったことも、とてもポジティブ」(中上)と、方向性にブレがないことも強調した。

「去年はリアグリップに苦労したけれども、新しいバイクではそこが良くなって、エンジンパフォーマンスも向上している」(中上)

「タカが言ったように、リアグリップの改善はずっと要求してきた。さらに去年は、ドゥカティが直線でとても速かった。これはオーバーテイクとレースの鍵を握る部分なので、しっかり改善をしていきたい」(エスパルガロ)

 2011年のホンダ陣営がリアグリップに課題を抱え、そのために選手たちは揃って苦戦を強いられたことはHRCも認めるところだ。その領域を改善し、今年は大きく数で優るドゥカティと勝負するために、2022年マシンで彼らがどのような対策を施そうとしているのか、ということについては、近日公開の〈行った年来た年MotoGP ホンダ篇〉で紹介する予定なので、それまでいましばらくお待ちのほどを。

中上貴晶
中上貴晶

ポル・エスパルガロ
マルク・マルケス
昨シーズン終了後、へレス・サーキットで行われたテストでのポル・エスパルガロ。

 2022年に向けて前向きな期待を述べる彼ら4名のZoom取材会の後は、日本時間午後8時からIDEMITSU Honda Team Asia(Moto2)のチャントラ、小椋、Honda Team Asia(Moto3)のアジ、古里、そして両チームを率いる青山博一監督の計5名を囲むZoomインタビューが行われた。

 チャンピオン争いを期待する声も多い小椋だが、大言壮語をよしとしない性格だけにトップスリーを目指したい、と謙虚な目標を述べ、チームメイトのチャントラは表彰台獲得を目指したい、と話した。Moto3のアジと古里はともに初めてのフル参戦だが、両選手ともに楽しみながら成長をしていきたい、と抱負を語った。

小椋藍
小椋藍
古里太陽
古里太陽

 自身が250ccチャンピオンでもある青山監督は、Moto2の両選手はともにチャンピオン争いに加わっていくだけの高い資質がある、と話し、自らの経験も振り返りながら、2022年全21戦という長いシーズンを戦い抜いてチャンピオン争いをするための要諦を以下のように語った。

「長いシーズンでは、いいレースもあれば悪いレースもあります。転倒するときだってあるでしょう。ミスをしたときにはしっかりとその原因を分析し、常に前向きな考え方を持って、自分の気持ちをしっかりとコントロールすること。ダメだったときでも、あまり落ち込みすぎないことが重要です。僕の現役時代は年間17戦程度でしたが、けっして毎戦勝っていたわけではありません。チャンピオン争いは心の持ちようがとても大切なので、自分の力を信じて、ポテンシャルを維持し続ければ、きっとチャンピオン争いをできると思います」

 MotoGPのプレシーズンテストは2月5・6日にマレーシアンのセパンサーキット、11~13日にインドネシアのマンダリカサーキットで実施。Moto2/Moto3クラスは2月19~21日にポルトガルのポルティマオでテストを行い、3月6日(日)にカタールで開幕戦がスタートする。

青山博一監督(写真は2019年)
青山博一監督(写真は2019年)


【西村 章】
web Sportivaやmotorsport.com日本版、さらにはSLICK、motomatters.comなど海外誌にもMotoGP関連記事を寄稿する他、書籍やDVD字幕などの訳も手掛けるジャーナリスト。「第17回 小学館ノンフィクション大賞優秀賞」「2011年ミズノスポーツライター賞」優秀賞受賞。書き下ろしノンフィクション「再起せよースズキMotoGPの一七五二日」と最新刊「MotoGP 最速ライダーの肖像」は絶賛発売中!

2022/01/21掲載