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レース・イベント

EICMA2021レポート Vol.3 会場を、 じっくり見てみたら…
速報から随分と時間が空いてしまいました。ここでは速報ではお伝えできなかったEICMA会場の雰囲気を複数回に分けてお伝えしたいと思います。
オミクロン株が拡大する直前に帰国できたので、帰国後は予約していたハイヤーを使って帰宅して、10日間の自宅待機後に自主的に受けた検査の陰性証明書を提示して、隔離は終わりました。しかし数日遅いスケジュールで帰国した方はホテルでの強制隔離の後に自宅待機。10日での隔離短縮申請はなくなり、14日間の隔離だったようです。いまは、もっと厳しいですね。
さてさて、本題に入ります。まずは速報でもお伝えした車両メーカーのブース紹介から見ていきましょう。
■取材・撮影:河野正士




■ホンダ

 特別モデル「CBR1000RR-R ファイヤーブレード SP/30周年記念モデル」の展示スペースには、1992年にデビューした初代ファイヤーブレード「CBR900RR」が並んで展示されていました。こうやって並べてみると、スーパースポーツのカタチが大きく進化したことがよく分かります。
 

 

 
 もうひとつ印象的だったのが「ホーネット」のデザインコンセプト。カーテンで仕切られた暗室のなかで、真っ白のモックアップとその背景に光を投射するプロジェクションマッピングでコンセプトビジュアルを見せました。その画像をよく見ると、エンジンがアフリカツインやNT1100に搭載された並列2気筒に見えてくるんですよね。また会場内の、ホンダ・イタリアの50周年の歴史を振り返る展示ブースには、2002年型「HORNET」も展示されていました。
 調べてみるとホーネットが誕生したのは1996年。250ccモデルが日本国内で発売されました。ネイキッドスタイルなのに、1本出しアップマフラーというモダンなディテールを採用し、また250とは思えない極太リアタイヤが特徴でした。そして1998年には日本と欧州で600ccがデビュー。250ccと基本的に同一のフレームに、同年モデルのCBR600F系エンジンを搭載したホーネット600は欧州で大人気となりました。その人気に後押しされて2002年モデルとして欧州に導入されたのが「CB900ホーネット」。ミドルクラスのフレームに1998年式CBR900RR系エンジンを搭載していました。ホンダブースに展示されていたのは、それですね。
 これを書いていて気がついたのは、2022年は欧州でCB900ホーネットが誕生して20年の記念年なんですね……誕生30周年を迎えたファイヤーブレード系エンジンを搭載したネイキッドモデルが、誕生して20年……うん、あると思います、2022年に何らかの発表が!(私の機能的予想ですが……)
 

 

 

 

 

■SUZUKI

 スズキブースには「Our Champions/私たちのチャンピオン」と題した特別展示を展開。ロードレース世界選手権(旧WGPおよび現MotoGP)の最高峰クラスでタイトルを獲得したSUZUKIライダーが、当時ライディングしたマシンのグラフィックをGSX-R1000Rで再現しました。
 

 

 

 

 
 車両は1976年および1977年のバリー・シーン、1981年のマルコ・ルッキネリ、1982年のフランコ・ウンチーニ、1993年のケビン・シュワンツ、2000年のケニー・ロバーツJr、そして2020年のジョアン・ミルです。マシンに跨がっているマネキンが着るのは、当時モノのレーシングスーツでした!
 

 

■カワサキ

 今回のEICMAで発表した「ニンジャH2 SX/SE」のように、スーパーチャージャー付エンジンに、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)とBSD(ブランド・スポット・ディテクション)などボッシュ製の二輪車向け先進運転支援システム「ARAS(アドバンスト・ライダー・アシスタンス・システム)」をいち早く搭載するなど、先進性を極めるカワサキですが、モダンクラシックカテゴリーもしっかりと押さえています。
 

 

 
 それが「Z650RS」です。ブース中央には新型「Z650RS」と、1976年に発売された初代「Z650」を向かい合わせて展示。Z900RSで造り上げ、新型「Z650RS」へと広げたカワサキのモダンクラシックカテゴリーの新戦略を提案しました。
 

 
 またカワサキは今年10月、川崎重工業から二輪車部門であるモーターサイクル&カンパニーを分社化。新会社「カワサキモータース」となりました。今回EICMAのプレスカンファレンスでは、代表取締役に就任した伊藤浩氏が登壇。欧州のメディアやファンに向けて、新しいカワサキについて抱負を語りました。このタイミングで日本企業のトップが欧州に足を運んでプレスカンファレンスでスピーチしたことは、カワサキにとって欧州が如何に重要なマーケットであるかを体現していると思います。新体制となっただけでなく、脱炭素社会に向けて様々なチャレンジを行うカワサキの気合いを感じました。
 

 

 

■ヤマハ

 ヤマハは「ヤマハレーシングヘリテイジクラブ(YRHC)」を発足させ、歴史的なレーシングバイクをEICMA会場に展示しました。ヤマハのレースの歴史を保護するとともに、次世代へと受け継いでいくことを目的に発足したYRHC。ブースで写真を撮っているときはその理由をよく理解していませんでしたが、YRHC発足のプレスリリースを受け取り、納得。そのリリースには、世界中で古いヤマハのレーシングマシンを所有している個人や企業が対象で、YRHCに登録することで、それらの車両の開発やレースに係わったエンジニア、さらには現役のヤマハエンジニアから技術情報などのサポートを得られる、まさにクラブ活動の内容が記されていました。
 

 

 
 対象となる車両は、1955年から2003年までの2ストローク時代のロードレース世界選手権参戦マシン、1987年から2009年までのスーパーバイク世界選手権および世界ロードレース耐久選手権参戦マシン、オフロードシーンからは1998年以前のモトクロッサーや、2007年以前のパリ-ダカール・ラリーマシンと定義されています。
 

 

 

■モトモリーニ

 2019年に中国のZNEN MOTORによって買収されたモトモリーニは、2019年に開催されたEICMAの直前になって急遽、並列2気筒エンジンとフレームの共通プラットフォームを使用したアドベンチャーモデルとネオクラシックモデルのデザインワークに着手。それらはコンセプトモデルとして発表されました。今年のEICMAではそこから各部を調整し、市販モデルとしてその2台のモデルを仕上げてきました。それがアドベンチャーモデルの「X-Cape(エックス・ケイプ)」とスクランブラーモデルの「6 1/2(セイエメッツォ)」です。
 

 

 

■ロイヤルエンフィールド

 ロイヤルエンフィールドは、ブランド創立120年を記念した特別モデルを、ツインエンジンを搭載する「コンチネンタルGT650」と「インターセプターINT650」の両モデルで発表。欧州、インド、東南アジア、南北アメリカ大陸に各120台/合計480台の限定生産になるそうです。この記念モデルは、ブラッククローム仕上げの外装に(コレ、凄くキレイでした)、ハンドメイドの真鍮タンクエンブレム、そして120周年モデルを記念する特別なグラフィックがデザインされています。 
 

 

 

■MVアグスタ

 MVアグスタは、ダカールラリーに挑んだカジバのレーシングマシンをオマージュしたアドベンチャーモデル「9.5」と「5.5」を発表しました。その2台のマシンの脇には、1970年代から80年代にかけ、ダカールに挑んだカジバのラリーマシンが多数展示されました。この展示なんですが、波形にカットしたプレートを一定間隔で配置して砂紋を表現してるんです。これ、すごく良い雰囲気でした。
 

 
 で、そのなかに「9.5」と「5.5」、そして歴代のラリーマシンが展示されている。光と影のバランスもちょうど良く、ほんとうに砂漠に展示しているようでした。ちなみにラリーマシンは左から、1986年にユベール・オリオールなどが走らせた「カジバ750」、1987年にアレッサンドロ・デ・ペトリがライディングし優勝を果たした「カジバ850 XD10」、そして1988年にまたしてもアレッサンドロ・デ・ペトリがライディングし優勝を果たした「カジバ904 XD11」です。
 

 

■SYM

 台湾のスクーターブランドと知られているSYMですが、近年はミッション付きのバイクも展開。今回のEICMAで発表されたこの「NH T300」はSYMアドベンチャーカテゴリーの最大排気量モデルです。とは言っても水冷単気筒278ccですから、車格もパワーもフレンドリーに見えました。
 

 

■ベネリ

 ベネリブースを通りかかったとき、この「TRK800」を見て、足が止まってしまいました。少し暗めのブースに、オレンジの差し色がとても印象的で、グッと惹かれるモノがありました。ベネリは、中国のバイクブランドQJ Motorの傘下なので、そのベースモデルはQJ Motorの750ccアドベンチャーモデルSRT750ではないかと想像するのですが、細部のまとめ方や色づかいが、とても良かった。エンジンは並列2気筒DOHC754cc、フロント19/リア17のホイールサイズも良いですね
 

 

■CAKE

 スウェーデン生まれの電動バイクブランド/CAKE(ケイク)。MXスタイルの過激な電動バイク/Kalk(カーク)で話題となりましたが、近年はスクータースタイルの「Osa(オーサ)」、そしてよりコンパクトなスクーター「Makka(マッカ)」をリリース。より生活に根ざした乗り物を電動にすることで、電動のメリットを広く理解して貰える、というのがその理由でした。そして今回のEICMAは、現在ラインナップするモデルをベースに、バッテリーとモーターをよりパワフルにすると同時に、フレームにアタッチメントで簡単装着できるキャリアなどを駆使して積載能力を高められる「Work(ワーク)」シリーズを発表しました。
 

 

 

■HELBIZ

 都市部におけるマイクロモビリティを研究開発し、それらのプロダクトやサービスを使って様々なソリューションを実現する「ヘルビズ」。ナスダックに上場した最初のマイクロモビリティカンパニーだそうです。その電動キックボードが、この「Helbiz One/ヘルビズ・ワン」。ピニンファリーナのデザインで、フロントにはステアリングステムエンドにサスペンションを装備。またリアは、おそらくリアタイヤを保持するリアアームをしならせるサスペンション機構を採用しています。このマシンをベースにしたレーシングマシンも開発し、キックボードスクーター(E-スクーターと言ってます)の選手権も行っているそうです。
 

 

■Super73

 アメリカ西海岸生まれの電動モペッドブランド/Super73。ビーチクルーザースタイルの車体に、自転車と同じ変速機と、モーターとペダルをセットする電動モペッドスタイルを採用しています。サスペンションの有無や、ブレーキのグレード、リチウムイオンバッテリーの脱着の有無などディテールが異なる最新の4モデルを展示。一番左の写真の「RX」は最高峰モデルです。またデウスEXマキナとのコラボカスタムモデルのほか、EICMA出展にあたって勝手にドゥカティをオマージュした特別モデルも展示されていました。
 
 

 

■Italjet

 トレリスフレームと、独自のフロントサスペンション機構を持つイタルジェットも、電動スクーターを展示していました。中国の電動バイクブランドFELOのモーターや駆動システムを使用。スイングアーム上の車体側にモーターをセットしベルトで後輪を駆動。またモーターのハウジングにリアサスペンションを取り付け。フレーム中央にバッテリーをセットしています、うーん、上手く収まっていますね!
 

 



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| EICMA2021レポート Vol.2 |





2021/12/29掲載