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第130回 「知ってるつもり、以前の問題」

 先日突然質問を受けました。「防犯警戒です。なにか危ないもの持ってないですよね」という警察24時でおなじみの職務系ではなく、私の好きな鉄道系の質問でした。曰く「内燃機関で動く鉄道車両を気動車と呼ぶらしいが、気動車の気はなぜ機ではないのか。気は何を示すのか」という、鉄なら誰でも答えられる簡単な質問。ん? あれ? ディーゼルエンジンなど内燃機関で動く車両を気動車といいますが、いわれてみれば気動車の気ってなんでしょう?? 
 さっそく調べてみました(検索しただけ。今では簡単に検索できますが、そういえば昔はどうやって調べていたんでしょう。たった20年ほど前のことなのに思い出せません)。すると「蒸気動車が語源」という説がヒットしました(蒸気動車はその名のとおり蒸気機関付きの車両です)。しかし、この説に確たる根拠はないようです。いわば風説? さらに検索すると、気動車という言葉が広く普及していったのは、昭和28年(1953年)の国鉄車両呼称規程以降のようです。この頃は国鉄の気動車が量産化に向けて動き出した時代で、いわば黎明期。お役所の国鉄ですから、今後どんどん増備する新型車両に今までにはない新しい名称を付けたかったのでしょう(これは私が今思いついただけ)。
 気動車の語源、ぱっと検索しただけでは解らなかったのですが、気動車という単語は国鉄が生み出した造語のようです。平城京とか平安京の時代ならともかく、たった68年前のことなのに語源が定かでないとは。それより、何の疑問も持たず気動車と呼んでいた自分の迂闊さに驚きます。まさに「紺屋の白袴」。いや、プロではないから紺屋じゃないか。「紺屋の門前の小僧、習わぬ経は読めるわけがない」。これはもっと違うか。知ってることは聞かれなくても延々としゃべり続けるのに、知らないことは、知らないままという、いつもの自分にうっとりします(これも違うか)。

ホジ6014
ホジ6014
名古屋のリニア・鉄道館に保存されている、日本で唯一現存する蒸気動車ホジ6014。1913年(大正2年)に日本で製造された、客車の先頭部分に蒸気機関車を内蔵したような車両。当時は蒸気自動車と呼ばれたとか。(2014年7月撮影)

キハ200
キハE130
気動車って解りますか?内燃機関(日本では主にディーゼルエンジン)をぶら下げている車両です。日本の鉄道車両はほぼ電車と呼ばれてますから、知らなくて当たり前です。写真左は国産気動車を一気に広めた代表的エンジンDMH17(8気筒17000cc)を搭載した小湊鉄道のキハ200。テレビコマーシャルなどで人気上昇中です。(2016年11月撮影)右はエンジンで発電して電気モーターで走るハイブリッドの新型キハE130系。(2019年12月撮影)

 立喰・ソでも、当たり前に使っているのに「じゃあ語源は?」と聞かれると、あれ? という言葉、結構あるんじゃないかと思います。代表的なのは「たぬき」ですが、最近はメジャーになって、「天ぷらのタネを抜いた『タ抜き』でしょ」と誰でも知っています。と思うのは関東以北の人だけ。関西でたぬきといえばきつねそばのことです(これも最近はテレビなどで紹介されていますね)。ですから、少なくとも関西で「タ抜き」説は当てはまりません。「天ぷらだと思ったら天かすだけで、まるでたぬきに化かされたようだから」説もありますが、きつねだって化かします(実際に化かすかどうかは科学的に証明されていませんけど)。きつねそばの存在が否定されそうです。メジャーなたぬきですらこんな具合ですから、番重(ばんじゅう)やテボに至っては、なにをや言わずもがなでありましょう(←説明がめんどくさくなったときの便利な言い回し)。

番重
これが番重です。立喰・ソマニアなら必ず店名をチェックします。そうでなくても立喰・ソで一度くらいは目にしたことがあるはず。しかしなぜ番重?(2020年12月撮影)
テボ
テボも香川県民以外は自ら手にすることはなくても、同様に目にしているはず。今や全自動テボも開発されて実働しています。しかしどうしてテボ?(2021年5月撮影)

 私が愛して止まない一由では、紅しょうが、たまねぎ、春菊、ごぼう、ソーセージ、ちくわ,ピーマン、ミックス、きつね、たぬき、わかめ、山菜は半分(値段も半分)のオーダーが可能です。揚げ物をたくさん受け付けなくなってしまった、すでに劣化が進む私には、身体はもちろんサイフにも優しい、素晴らしいシステムです。天ぷらを切る手間がかかるのに、お客ファーストの対応、ありがとうございます。広く普及してほしいと願っていますが、兄弟店の一○以外でお目にかかったことがありません(私が知らないだけ)。
 なぜ突然こんな話になったかといいますと、半分をオーダーする場合「たまねぎ半分」とか「春菊ハーフ」というのですが、紅しょうがだけは「べにはん」とオーダーする人が多いのです。たぬきとわかめも「ちょいたぬ」「ちょいわか」というオーダーが多いようですが、これはかつてメニューに書かれていたので公式呼称でしょう(か?)。たしかに「べにしょうがはんぶん」(10文字)の半分以下の4文字ですから、黙食が推奨されるご時世にもぴったり。それにちょっとツウ(何の?)っぽい気分に浸れます。しかし、「ピー半」や「ちく半」あたりはなんとかいけそうな気がしますが、めったに出ないような(と思う)ミックス半分を、「みはん」と言ってもまず通じないでしょう。さらにごぼう半分を略したりすると、白いご飯(メニーにはありませんが頼めば出してくれます)が出てきそうです。どこまで通じるのか試してみたい気もしますが、「はぁ?」と嫌な顔でもされたら、気の小さい私は二度と一由の敷居をまたぐことができなくなりそうなので、止めておきます。

トッピングラインアップ
豊富な一由のトッピングラインアップ。赤丸印が半分対応です。ちなみにソの半分ははんそではなく小盛とオーダーします。(2020年11月撮影)
貼り紙
消費税がアップしたとき、苦渋の選択を告知した貼り紙に記されていた「ちょいワカ」&「ちょいタヌ」の表記。普通に通じます。(2014年4月撮影)

 
 最後になってしまいましたが、昭和屋台風立喰・ソのスタイルと、見かけとは裏腹の(失礼!)高い評価のソで常連さんも多い新横浜の春夏冬そばが、なんと2021年10月22日をもって幻立喰・ソになってしまいました。実はわたしサンユーそばという店名だと思っていたのです。看板にちゃんと春夏冬そばと書いてあるのですが、これはかの有名な味自慢(正式名称は岩本町スタンドそば。第90回でちょこっとやってます)と同様、あおり文句だと信じて疑わなかったんです。どこでサンユー蕎麦と勘違いしたのか、いや、だってお店の横にサンユーそばと書いてた貼り紙もあったんですから。ところが、あの忌まわしい貼り紙を涙目で(心情的には)読み進んでいくと、最後に「春夏冬そば店主」とありました。え? 知っている人は知っているのですが、知らない人は知らない(当たり前)春夏冬そばの読み方。「はるなつふゆそば」でも「しゅんかとうそば」でも「あきぬけそば」でもありません。「秋がないから、飽きないそば」と読むそうです。店名に偽りなく飽きのこない、やさしい味でした。春夏冬そばに来年の秋はもう来ないんですね……。

春夏冬そば
春夏冬そば
新横浜駅からちょっと歩いた大通り沿いにあった昭和風情むんむんの春夏冬そば。ファンも多かったのに残念です。おつかれさまでした。(2021年9月撮影)

春夏冬そば
春夏冬そば
看板にちゃんと「春夏冬そば・うどん」と書いてあるのですが……お店の右手にはサンユーそば店のポスターがありましたので。(2017年9月撮影)


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2021/11/08掲載