渋温泉&地獄谷野猿公苑ツーリング2日目。さすがに昨日は300km以上走ったせいかバッタリ寝入ってしまった。名湯・渋温泉の朝は残り2湯の外湯巡りから始まった。温泉街の奥にある六番湯「目洗の湯」から開始し、最後の七番湯「七繰の湯」に入湯。どこも先客がいたおかげでゆっくり湯に浸かることができた。これで外湯は無事制覇した。高台にある横湯山温泉寺にお参りしてから宿に戻り、宿の内湯で渋温泉はフィニッシュ。温泉宿らしい和朝食をいただいてから午前8時30分出発。今日はいよいよ地獄谷野猿公苑のサルとご対面する日だ。
天気は今のところ曇りだが午前中から雨が降り出す予報が出ており、できるだけ早めに渋温泉まで戻りたい。地獄谷野猿公苑に行くにはルートが2つあり、国道292号線から上林温泉近くの無料駐車場から約30分かけて歩くルート、もうひとつが渋温泉の奥にある林道を約10分走り、有料の駐車場から約15分かけて歩くルートだ。私は迷うことなく後者を選んだ。車1台分くらいの道幅しかない林道を進んでいくと駐車場が見えてきた。受付で駐車料金を払おうとしたところ「今の季節はサルが山から下りてこなくて午前10時過ぎないと出てこないよ?それでもいい?」と告げられた。ここまで来たからには引き下がれないので「大丈夫です!」と答えて駐車料金200円を払った。
これには地獄谷野猿公苑を含めて説明が必要だろう。地獄谷野猿公苑は渋温泉の先にある野生のニホンザルが生息、観察できる場所だ。地獄谷野猿公苑と言えば、雪の降る中で気持ちよく地獄谷の温泉に浸かるニホンザル(通称スノーモンキー)で有名な場所だ。2005年に渋温泉を訪れた際は地獄谷温泉には入湯したが、野猿公苑には行かなかった。いつかはニホンザルを見てみたかった。先の話に戻すと、地獄谷に生息するニホンザルたちは野生なので行動が予測しにくいのと、特に夏から晩秋にかけては木の実が実り始め、かつ繁殖期に重なるため、いつ公苑に出現するかわからないとのこと。自然が相手なので仕方ないがまさに出たとこ勝負だ。
モンキー125を駐車場に置き、歩いて地獄谷野猿公苑を目指す。私は「まあ人間の世界にも集団行動できない変なヤツがいるんだから、サルの世界にも変なヤツはいて、1匹くらいはいるよ」と気楽に構えていた。山道を進んで左側に地獄谷温泉を見ながら山道を上がったところに地獄谷野猿公苑の受付があった。受付で入園料800円を払ったところ「まだサルが出てきていません。おそらく午前10時過ぎくらいになると思います」とここでも告げられた。時間は午前9時ちょうど。この後のスケジュールもあるので、現場で30分くらいは待ってみようと思った。
受付を過ぎて温泉のある場所まで歩いていると山肌に1匹発見した。「いた!サルだ!!」と思わず声を出しそうになってしまった。今までツーリング途中に遭遇したことは何度もあるが、このようなかたちで遭遇するのは初めて。サルとは数十メートルは離れていたのでここでは撮影せず、そのまま進んでとりあえず橋を渡って温泉のある場所で待機していた。待つこと数分、ふと橋のほうを見ると、なんとさっきのサルが橋を渡ってきているではないか! だんだん私に近寄ってくるが、こちらのことは気にしていないようだ。気づけば私の間近まで来ていた。見ると立派な○ン○マのついたオスのサルで意外と身体は大きかった。思ったとおりやっぱり変なヤツはいるんだな…。結局、帰るまでに現れたのはこの1匹だけだったが撮れ高は充分。これでミッションコンプリート。受付を通った際、サルが現れなかったのを申し訳なく思ったのか、帰り際にお土産をいただいてしまった。私以外のお客さんはすべて外国人だったのが印象的だった。
サルを見た後は再び渋温泉に戻って撮影していたら予報どおりに雨が降り出してきた。ここからは昨日通ってきた道を戻り、小諸・佐久方面に向かう。国道292号線から国道403号線に進み、須坂市に入ったところで国道406号線を菅平方面に進む。時折雨脚が強くなる中、菅平高原を通過。雨も影響してか予想以上に寒く感じる。アップダウンの激しい道では後続車に道を譲りながら走行を続ける。
上田市をかすめて県道4号線沿いの小諸市に向かう途中に「稲倉の棚田」というのを発見したので立ち寄ってみた。急傾斜の山肌に段々状に田んぼがある風景を棚田と呼び、全国に点在している。この稲倉の棚田は「日本の棚田百選」に認定された由緒ある棚田だ。もう少しで稲刈りの季節ということもあり、棚田には稲が見事に成長していた。日本の原風景のような風情のある景色だ。晴れていればもっと眺めがいいんだろうな…。
渋温泉を出発して2時間、稲倉の棚田を過ぎても雨は降り続いた。小諸市に入って県道4号線から国道18号線を進み、国道141号線が見えたところで佐久・清里方面に進むべく国道141号線に入った。ここからはひたすら国道141号線を清里方面に向けて一直線。雨はだんだんと小ぶりになり、中部横断自動車道・佐久南インター近くの「道の駅ヘルシーテラス佐久南」で昼食を取ることにした。平日にもかかわらず館内は賑わっており、迷った挙句、地元の方の手作りカレーライス弁当と唐揚げを選んだところ、とても美味しかった。道の駅にはこのような手作りお弁当や惣菜(ほとんどがボリュームがあって安い!)があるので、ぜひ探してみてほしい。
お腹を満たしたところで国道141号線に戻って清里を目指す。雨は弱くなったり強くなったり、清里に到着する頃には止んでほしい。佐久市を過ぎると野辺山に向けて徐々に標高が高くなっていく。4時間以上雨の中を走っているモンキー125はライダー以上にずぶ濡れ。前回のスズキVストローム250と同じく貸してくれたメーカーさんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。たぶん、この広報車でこんなに走って、こんなに濡らしたのは私が初めてだろう。すまないなあ〜モンキー125。でも旅はまだまだ続く。
走り出して5時間半が経過し、日本一の標高が高いところ(標高1346m)にあるJR東日本・小海線の野辺山駅(長野県南佐久郡南牧村)に到着。しつこいようだが晴れていれば高原の爽やかな空気がさぞかし気持ちいいだろうな…。だいぶ小雨になってきているものの止む気配はない。野辺山駅から走ること約30分で清里に到着。6時間、約160km走破してようやく山梨県に突入した。さすが人気観光地なので人や車が多い。雨は上がり始めて雲の切れ間から青空が見えるようになった。途中のコンビニでレインウエアを脱ぎ、あとは東京を目指すだけだ。
さすがに6時間走って疲れたので、温泉に入って小休止することにした。選んだのは清里から近い山梨県北杜市須玉町にある「須玉 健康増進施設 健康ランド須玉」だ。入湯料は720円。館内には日帰り入浴施設のほかに屋内プールやスタジオが完備されている。浴槽は内湯のみで、無色透明のお湯はややぬるめだったが、上がったあとは身体がポカポカしてきた。これでナイトセッションに向けてリフレッシュが完了した。国道141号前を韮崎市方面に向けてしばらく進み、韮崎市に入ったところで国道20号線に合流。あとはゴールまでひたすら国道20号線を走る。
雨はすっかり止み、釜無川に沿って進む国道20号線からは富士山が見えた。普段なら中央自動車道だと1時間30分ほど走れば自宅に着くのだが、一般道ルートだとあと5時間はかかる。手馴れた道なので不安はないが、到着は午後10時過ぎか…。日が落ちる前に夕飯を食べておこうと、国道20号線沿いにある「奥藤 竜王第五分店」で「鳥モツそばセット」を注文。実はこのお店の近くに某トイガンメーカーがあり、取材した際に立ち寄ることが多く、味は確認済み。名物の鳥モツとそばはいつもながら美味しい。
これで気合いを注入し、通勤ラッシュでやや混雑している国道20号線を淡々と走る。辺りはすっかり日が落ちて、距離は伸びずに時間だけが過ぎていく。笹子トンネル近くになると車が少なくなり、街灯もなく真っ暗な中を突き進む。昨日は感じなかったのだが、ヘッドライトは意外と明るく、夜間走行の際に頼もしい。ややペースの速い車が来ると道を譲ってマイペースで走り続ける。大月市に到着したのは午後8時前。須玉市からすでに2時間以上経過している。
と、ここで急に思い出した。「サルつながりなら猿橋に立ち寄るべきではないか」と。そこで過去の記憶を頼りに「猿橋」に行ってみた。甲斐の猿橋は岩国の錦帯橋、木曽の桟(かけはし)と並ぶ日本三奇橋のひとつ。一般的な橋脚を使う構造ではなく、両側から張り出すはねぎによって支えている。名前の由来はサルに似ているからではなく、サルがつながって川を渡っていく姿からヒントを得て作られたからだという。訪れた時はライトアップされており、ユニークな橋の形状がひと目でわかった。これですべての場所に立ち寄り、思い残すことはなくなった。
大月市を過ぎて上野原市を通過し、神奈川県に入ってJR東日本・相模湖駅を通過。昨年クロスカブ110で走った時は夕方だったが、今回は午後9時にかかろうとしていた。土日祝日は125cc以下のバイクが通行禁止になる大垂水峠を無事通過。京王線・高尾山口駅を通過し、徐々に人家が多くなっていく。八王子市に入ると2日ぶりの都会に戻ってきた。多摩川を越えて府中市に入ると射程圏内だ。日本テレビの「24時間テレビ」内で放映される24時間マラソンのエンディング曲に使われているZARDの『負けないで』が頭の中で流れ始めた。そして午後10時20分、自宅近くの深大寺に到着した。渋温泉から約12時間、走行距離は322km、前日とほぼ同じ距離を走った。
こうして1泊2日のモンキー125でのツーリングは終了した。総走行距離は約650km、2日間で一般道をこんなに走ったことはなかった。計画当初は楽勝かと思ったが、天候の影響などもあって意外と手強かった。そんな状況の中、モンキー125は任務を全うしてくれた。車体はコンパクトだが力強いエンジンとマイルドな走り心地、コントロールしやすくて足つきが良く、座りやすいシート、明るいヘッドライトはツーリングにも適していた。リアキャリアが標準装備されていれば使い勝手はさらに増すはずだ。
スーパーカブのような実用一点張りのバイクとは異なり、モンキー125のようなレジャーモデルは見た目はもちろん、乗った瞬間に非日常を味わえることが重要だと思う。今回のような大冒険もアリだが、ストレス解消に夜走りしてみよう、ちょっと近くの山まで走ってみよう、隣町にあるレストランまで行ってみよう、住んでいる場所の神社仏閣を巡ってみよう。ヒョイッと肩肘張らずに乗れる手軽さ・気軽さは不変だ。まさに「思い立った時が吉日」なのがモンキー125なのだ。う〜ん、こんなバイク1台あるといいなあ。
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