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試乗・解説

BMW S1000XR 最強クロスーバー刷新。 保守派を魅了する革新派の誘惑。
 舗装路オンリーのアドベンチャースポーツとして独自のポジションを築いてきたS1000XR。デビュー5年の節目で迎えたフルモデルチェンジ。時間の経過がもたらした技術と要求はカタチになり、そして電子制御も最新版になった。はたして、R1250GSとS1000RRの美味しいところをハイブリッドしたかのようなキャラクターは、どのように磨き込まれたのだろうか。
 スペイン、アルメリアで行われたメディアテストでその進化ぶりを確かめた。
■試乗・文:松井 勉  ■協力:BMW Japan - Motorrad http://www.bmw-motorrad.jp/

 
 2015年。S1000RRを母体として生まれたアドベンチャースポーツ、S1000XR。スペックを見ると160HPという、なみなみとあるその力よりも、フェアリングを持つアップライトなポジション、GSシリーズよりも軽い車体、そして滑らかな回転特性の並列4気筒の組み合わせ。しかもそれはスーパーバイクと同じ999㏄というくすぐりも備えていた。キャラクターからいくと、このバイクはGSのようにオフロードを楽しむことは想定せず、オンロードにフォーカスした造りだ。クルマで言えばBMWのXシリーズ、しかもS1000XRのパッケージを考えると、豪華さを4輪モデルほど追いかけていないが、性能的には間違い無くMモデル相当。そう、とんがったクロスオーバーなのだ。
 2020年、母体となったS1000RRのモデルチェンジにあたり、このS1000XRも生まれ変わったのだ。
 

 

テーマは、全方位性のさらなる向上。

 開発裏話として印象的なのが、スポーツ、ツーリング、街中等々どんなテストをしても優秀な成績を収めるモデルを全方向に改良することだったそうだ。
 裏を返せば、どの部分もちょっとよくすることで達成できるハズなのに、ちょっとよくしただけだと、先代から乗り換えるモチベーションまで高まらない危険がある。つまり、人の心を動かすほどのことをするには、ちょっと変えるために大胆な変化を与える必要があった。その手法を見ると同じ排気量、同じサイズの車体からよくぞここまで、と思うほど進化をさせているのだ。軽量化、トルクアップ、快適性アップ、ライディングプレジャーのアップデイト。まさに全域。それこそフルモデルチェンジ以外では考えられない大幅のものなのだ。

 まずエンジン。全体で先代より5㎏軽量化され小型化設計された新型S1000RRと同じ並列4気筒ユニットをベースに、S1000XRのキャラクターに合わせたカムシャフトを与えている。バルブトレーンに採用されたロッカーアームはS1000RR同様、フリクションの少ないレイアウトを採る。
 999㏄のエンジンからは165HPと114N・mを発生。その最高値や最大値よりも、2000rpm付近から5000rpm周辺の、ツーリングや常用領域でしっかりとトルクを出す設定だ。BMWモトラッドが採用するバイク用可変バルブタイミング機構、BMW ShiftCam装備の新型S1000RRよりもこの領域ならばトルクは10%増しだ。
 また、ギアレシオも見直され4速で2%、5速で5%、6速では8%それぞれハイギアード化された。クルージングの静粛性、燃費性能を考慮しているのだ。

 車体に目を移そう。フレーム形状は1000RR同様、ステアリングヘッドからスイングアームへと続くカーブがくの字になった形状を採用している。剛性的には直線的に結ぶのが理想なのだが、コントロール性などその他のメリットを追求しての採用だ、という話はS1000RRの時に聞いた。XRでもそのベネフィットは共有されている。

 くの字になったレイアウトの恩恵はこうだ。エンジン上部を湾曲して覆うようなフレームが無くなったため、ライダーが跨がるエリア、ニーグリップがともにスリムになった。足着き性の向上と、ライディング感のスリム化、またエンジン熱がフレームを伝導してきた先代に対し、ニーグリップするエリアがほぼボディーパーツなので熱さも減衰していることが期待できる。
 フレーム関連の特徴はもう一つ、軽量化だ。スイングアームを含めたフレームボディーで合計2.1㎏、うちスイングアームだけで1.6㎏軽量化がされている。

 それを車体全体に拡げていると軽量化への取り組みが並々ならぬことがわかる。ドライブトレーンではエンジン単体重量の5㎏を含む全体で7.3㎏。エクゾーストで1.2㎏、ホイールが1.8㎏、ABSユニットで0.4㎏。合計12.7㎏の減量を達成した。装備の拡充による増加分を差し引いても、走行状態で10㎏の減量。オプションで用意されるリチウムイオンのバッテリーを選択すればさらに3㎏の軽量化が可能になる。

電気系パーツと電子制御も最新版に。

 2020年に登場したバイクとしてこの話題はホットだ。アダプティブコーナリングランプを含むLEDヘッドライトの採用や、多くのBMWのモデルに使われる6.5インチのTFTカラーモニターが採用されたのはもちろん、ライディングモードや電子制御もBMWの最新版となった。

 視認性の素晴らしいTFTモニターは、ハンドル左のスイッチにあるメニューボタンと左グリップのスイッチ側にあるマルチコーントローラーを駆使して、画面上で表示したい情報の選択、トリップのキャンセルはもちろん、レイン、ロード、ダイナミック、ダイナミックプロを備えるライディングモードに関しても、各種電子デバイスの設定値をカスタマイズすることも可能だ。

 また、オリジナルのスマホアプリを活用してハンドルスイッチから音楽、電話へのアクセスができるのはもちろん、車両データもスマホで確認ができるのは便利だ。

 電子制御の新しい装備としては、ヒルスタートコントロールプロがある。これは、路面に3%以上の傾斜があると、停止させたあとライダーがブレーキ操作をやめてもブレーキ力を保持してくれる機能だ。以前からヒルスタートコントロールというデバイスはあった。これはライダーが停止時にブレーキを強く握ると、一定時間ブレーキ操作をしなくても停止状態を保ってくれる、というもの。いわば、坂道発進アシスト的な機能だったのだ。今回はさらにそれを一歩進めて状況に合わせてバイクが自動でそれを行ってくれる、というもの。もちろん、設定画面からマニュアル操作や、機能のオフも選択できるから、普通のバイクとしても使える。

 そしてモータースリップレギュレーション(MSR)の追加だ。これはトラクションコントロールとは逆に、アクセルをオフ時のバックトルクで後輪がスリップするのを見張るためのデバイスだ。
 メカニカルにバックトルクを低減する装置としてスリッパークラッチがあり、S1000XRにも装備されている。この装置はタイヤがグリップしていることを大前提に作動する。雨、砂、バイクが寝ているなど様々な要因でリアタイヤのグリップ力が低い時、または、グリップの良い路面から悪い路面に変化をしたときなど、強いバックトルクによりグリップが失われた時、後輪がロックし不安定な挙動になるのを防ぐ機能だ。前後輪の回転差や車体の状況、エンジン、ギアの状況などから演算し、電子制御スロットルをわずかに開けて後輪のロックを防止する。
 エンジンブレーキコントロール(EBC)も装備されるが、MSRはバックトルクによる後輪スリップに特化した装置。EBCはエンジンブレーキの掛かり具合をライダーの好みに合わせてチューニングのできるデバイスだと言える。

 また、ダイナミックブレーキコントロール(DBC)も新たに採用された。これは、緊急ブレーキ時、思わず握り込んだフロントブレーキの力で、スロットルが開いてしまった!! という場合、車両からの情報、操作の状況からECUが判断し、エンジントルクを抑制し減速優先にするためのデバイスだ。

 クルマで言えば踏み間違い防止(誤発進防止装置などとも呼ばれます)に似ている。ブレーキを力一杯握ったらアクセルが開いたという体験の有無はともかく、ライダーはビックリすると固まってしまい、普段はできる操作に遅れや間違いが生じる場合がある。選択しているギアや回転数によっては強い推進力を持つバイクだけにセーフティーネットとして嬉しい装備だ。
 ほかにもウイリーコントロールのロジックを浮かないだけではなく、浮いた場合でも浮きすぎないようにするようなチューニングも可能になった。これら多くの制御で車体の状況をしっかりモニタリングする新しい6軸加速度センターの採用も進化の理由の一つになる。

 ライディングモードで、ダイナミックプロを選択すれば、パワーウイリーを許容する設定をしたり、後輪のABSをキャンセルしてモタードバイクのようにテールスライドを使いながらコーナーにアプローチするということも不可能ではなくなる。

 その他、選択するライディングモードによって、レイン(1~3速)、ロードとダイナミック(1~2速)でトルクの出方をなだらかにするようなマップ設定になっている。このあたりの設定もS1000RRにならったもの。各ライディングモードで電子制御の介入度も変化するが、レインモードでは極めて安全性を高く、ダイナミックプロではライダーの裁量権を広く、という思想になっている。

 最新電子制御について、S1000RRを雨のエストリルサーキットでテストしたとき、レインモードでの走りのフィット感の良さを体験した。ただパワーを削るのではなく、前に進ませながら 不要な要素を消す、という印象だった。だから雨なりの全開ライディングがものすごく楽しかった。それだけにS1000XRも同様の内容の制御だと思うと、相当なレベルだと思う。
 

 

快適になった乗り味。
軽さを印象づける走りが嬉しい。

 今回、テスト車両にはオプションの鍛造ホイール装着車が用意されていた。アイスグレーという霞の掛かった春の空を思わせるカラーは、エッジの効いたスピード感が特徴でもあるスタイリングとは裏腹にエレガントさがある。すごく良い色だ。

 スタイルで印象的なのがサイドパネルだ。新型S1000XRの場合、サイドパネルはヘッドライト周辺から車体側部への流れを作るという点は受け継ぐのだが、先代では下方にゆくほど幅が広がるいわば矢印形だった。新型のそれは、上方に幅を持たせるデザインとなり、デザインのアクセントを前よりに置いているように思う。

 また、手動で2段階に高さを調整できるウインドスクリーンを持つアッパーカウルからタンクサイドに流れるラインもライダーに近づくほど絞られる形状だ。そこからリアエンドまでのデザインも、サイドカバーのカラーパーツをライダー下側に集中させ、テールを黒系で纏めることで軽く見せることに成功している。
 マフラーも細くなりサイレンサーの下側が、小ぶりになり軽さ感が増している。これもフロント周りをボリューミーに見せる手法に思えた。

 跨がった時のサイズ感は先代と同様だが、やはりタンク周り、シート周りを細身にした分、バイクのボリュームを感じない。サイドスタンドから起こす時に軽さが際立っている。エンジンを掛けて最初に感じたのは振動の少なさだ。先代ではグリップ、シート、ステップやニーグリップするエリアのフレームに、ジーンとジリジリ、ビリビリと感じる振動が少なくなかった。新型は振動が減り快適だ。
 発進時、アイドリングよりわずかに高い回転でクラッチを繋ぐ。しっかり押される印象でトルクの細さは感じない。会場を出発するのに左折をして走りだす瞬間、旋回に入る車体の動きは意のままで気分がいい。市街地をゆく速度領域で左右への動きは一体感があり、そこから切り返す時、起こす時も、質感のあるハンドリングを見せる。
 

 

快適さ、旋回性、走る楽しさ
合わせ技でしっかり向上。

 市街地から高速道路へと入る。流入路から本線へ。さすが165HP。エンジンを引っ張らずとも5000rpmまでのトルクでしっかりと速度を乗せる。アクセル開度もたいして必要が無い。スポーツバイクとして、ツアラーとして、アドベンチャースポーツというカテゴリーに相応しいパワーフィールだ。2人乗りでもゆとりがあるだろうし、望めばパニアケースを装着して荷物満載でタンデムツーリングでもしっかり走ってくれそうだ。

 ダイナミックESAがもたらす平滑でスムーズな乗り心地も良い仕上がりになっている。
 高速道路では上下2段階に調整できるウインドスクリーンの効果がしっかりある。上げると、胸から顎、あたりまでカバーされ、両肩に当たる風もかなり弱まる。長い移動も許容できるだろう。

 そしてワインディングへ。取材に出かけたスペインには素晴らしい道が多い。タイトからワイドまで数々のカーブが出迎えるアルメリアの道は表情豊かな景色と合わせて最高のライディングエリアだ。そんな場所をアイスブルーのS1000XRは気分よく駆け回ってくれた。車体の剛性バランスやポジション変更、そして各部の軽量化などが複合的に効果をもたらし、先代で感じた手応えというか、旋回に入る時の重み感が消えている。先代をスポーツツアラーとして評価すればそれもアリなものだが、S1000レベルのエンジンが歌い出す領域で、減速、旋回、加速という短時間で忙しくそれらをこなすライダーが、少しタイミングを外すとリズムが崩れるところが気になった記憶がある。
 それが新型ではしっかりとスポーツマシンとしてチューニングされ、減速、旋回、加速がヘビロテする道でもスイスイ走るのだ。しかもライダーのボディーアクションは最小限ですむ。気持ち良いのに優しい印象。ツーリングで楽しみたい瞬間にそれを味わえる悦びが磨かれていた。
 

 

ライディングモードはどれが美味しい?

 走り始め、ライディングモードがレインモードになっていたのは市街地の路面が滑る可能性があるからだ。いや、実際に滑った。会場のホテルは海の前。朝、海霧が出て路面に霧吹きを掛けたように道が濡れる。ズルではないくスーと気が付けばけっこう滑る感じだ。優しいレインモードの加速感と「滑る」と「滑った時の挙動」をモニターしている新型は、不安がない。ホントはズルっと滑るのを、スーと動く感じに変換してくれた、とも考えられる。

 高速道路に入るころそんな海霧エリアを通り抜け、ライディングモードはロードへと変更した。足周りの設定はロード、ダイナミックの2種だが、少しだけピッチングするかな、という場面もあったのでダイナミックにスイッチ。巡航を120km/hぐらいでするには「ちょうど良い」のハード気味、という状況。ピッチングを消すなら迷わずこれだ。

 ワインディングではどうだったか、というと、足周りはダイナミックがはまる印象だ。ポジションの変更からか、あるいはフロントの存在を意識しやすい道だったのか、サスペンションがロードモードの場合だとやはりブレーキング時のノーズダイブが多い気もするし、クリップにつくエリアでパーシャルにすると、少し伸びが早い気もする。
 正直、頭も体も時差ぼけだし、道も右側通行。初めての道での対峙なので、慣れたらこの印象が変わる可能性もある。それを含め、スイッチ一つで即変更ができるのは最高だ。停止時ならさらに細かな車体設定もできるが、走行中のモード変更でかなりの部分がカバーされた。細かな設定変更も停止時ならモニター上からできるし、いじり過ぎて解らなくなってもデフォルトに戻せばいい。それに乗り始めはああって思ってたけど、昼になったら印象が変わる、ということもある。オーナーになれば、何度でもスタートに立ち返ってセッティング変更ができるのは楽しみが広がるのではないだろうか。
 
 今度はライディングモードをどうしたかお伝えしたい。晴天のワインディングではレインでは、コーナーからの脱出時、パーシャルから開け始め領域に少し右手への遅れを感じるので、ロードモードがやはりマッチしていた。見知らぬ道でも扱いやすい。ダイナミックでも同様。いきなりレスポンスがビシバシになって開け方を探らないとドカンと加速して恐い、ということもない。
 このあたり、1、2速からマキシマムにトルクを出します、というダイナミックプロだと少しその傾向がでる。微細に開けてゆくライダーなら相性は良いはずだが、アクセル開度で加速を楽しみたい派のボクにはパワーの出方が少しワイルドという印象だった。これはバイクの善し悪しではなく、ライダーの好みに合う、合わない、という領域。
 つまり、ボクの場合、今回の道ではほとんどの場面でライディングモードはロードで事足りた。それが結論です。これとて、細かなセットアップができるし、電子制御の介入度もアラカルトできるので、縦横に好みの領域を広げることも難しくない。
 この日のテストで電子制御が介入するという場面は走り出しの市街地、滑りやすい路面だけだった。一般道を現地の皆さんが常識的と思える範囲で走っている限り、電子制御の出番はまだのようだ。いや、本当は仕事をきっちりしているのかもしれないが、自然過ぎて解らないだけかもしれない。そうだとしたら、理想的な性能を持っているということだろう。

 今回、テストは200㎞にも満たない距離だったが、全方位に優れた初代を越えた、とする開発陣の声に偽りはない。
 さらにいえば、オフロードに行かないGSライダーにもこのバイクはオススメできる。タンデム必須ならGSを奨めるが、1人+ワインディング、1人+日帰り、1人+パニア、で、年に数回タンデムという用途ならS1000XRの守備範囲はアナタを幸せにするはず。何より最新スーパーバイク直系のアドベンチャースポーツなんて、時代の先端も同時にあじわえるのだから。
(試乗・文:松井 勉)
 

 

高さを手動で上下2段調整式のウインドスクリーンを採用。高速移動の時は 上げていると音、風圧ともに快適さが増していた。シンプルなメカニズムも好感がもてた。
雨、寒さ、連続する高速走行でのプロテクションを含め快適向上パーツでもあるナックルガード。

 

くちばしのような薄いノーズが着いたフロントエンド。ヘッドライトはLEDのデイタイムライトとハイ+ロー、そしてアダプティブコーナリングランプを持つ。左右への方向きを感知して点灯するタイプだ。
2020モデル世代から新意匠となったウインカー。LED光源なのは同様だが、ラインで光るタイプになった。

 

ダイキャストのスイングアームはしっかりと軽量化されている。性能を確保しつつデザインや製法で軽さを追求。外観意匠を考慮した面構成になっている。
ダイナミックESAのリアサスユニットは今回軽量化をされた一つ。オプション装備でGSなどのダイナミックESA装着車に装備されえるスプリングイニシャルプリロードのAUTOを備えることができる。荷重に合わせて姿勢を適正に保ってくれるモードだ。

 

S1000RR直系のエンジン。ボア×ストロークは先代のそれを引き継ぐが、低中速トルクは先代よりも引き出している。スムーズさが増したことでエンジンに高級感が出た。振動の減衰もしっかりとなされている。

 

エンジン背後のコレクターボックスが主たる消音機能を持つため、サブサイレンサー的な存在。形状は先代より小ぶりになりスマートになった。リアブレーキはφ265mmのディスクプレートとシングルピストンのフローティングキャリパーを組み合わせる。
S1000RR同様、ウインカーがテールランプを兼ねるタイプとなった。ブレーキランプ点灯中だ。

 

S1000XRにはシフトアシスタントプロが装備される。これはシフトアップ、ダウンとも走行中はクラッチを使わずに操作できるもの。シフトアップはアクセルオン、シフトダウンはアクセルオフ時にアクティブになる。追い越し加速などアクセル開けたまま、シフトダウンをしたい場合はクラッチを使う必要がある。
ヘラソケットの電源ソケットを備える。電熱ウエア使用時に便利。

 

φ320mmのディスクプレートと対向4ピストンラジアルマウントキャリパーを組み合わせたフロントブレーキ。フロントフェンダーは、先端部分が黒い着色樹脂となり、ぱっと見ると耐久レーサーが採用するショートフェンダーのよう。写真のモデルはオプションの鍛造ホイールを装着している。
オプションでコンフォートシート、ローシートも用意される。シート前端の部分がフレームから絞り込まれた結果、足着き感は向上。このあたりも跨がった状態でバイクを起こす時の軽さにつながっているようにも思える。標準のシートで充分に快適だった。タンデムサイドはグラブバーも適正なサイズのものが装着されている。

 

通常、オープニング動画が終わるとグラフ式の回転計、デジタル表示の速度計、ギアポジション、ライディングモード等々がこの表に表示される。
S1000RRでも採用されたメーター表示。中央にアナログのタコメーターが現れ、中央に左右へのバンクアングル、右のBRAKEはブレーキ圧力、左側にはDTCが作動したとき可視化できるグラフが備わる。一般道ではそこまでシビアではないが、サーキットなどでは「2コーナーの立ち上がりでスライドしすぎるから介入度を上げよう」等々使われるはず。回転計の数字は針が指す回転数の数字が大きくアップライトされる。

 

表示言語は様々。2020年から日本語も加わった。この画面は車両の情報を見られる画面。水温、航続距離、バッテリー容量など。速度、ギアポジション、温度、時計など常に必要な情報は継続表示される。左方向にマルチコントローラーをクリックすると、トリップデータの画面に入る。
これがそのトリップメーターの画面。トリップ1,トリップ2別々に表示される。BMWの場合、トリップ2は初期設定では日付でオートリセットされる。走行時間、休息時間、トリップ2の走行距離、オドメーター、ガソリンレンジ、平均速度、燃費など。日本仕様は常時点灯なのでオートライト表示は出ない。その隣、1と縦縞の表示はグリップヒーターとその温度切り替えの数値。データのリセットをしたい場合、この画面からさらに下層に入り行う。

 

左グリップの根元部にあるのがマルチコントローラー。いわばジョグダイヤル。選択、グリップを握った親指で押し込む方向に動かすと決定、グリップ側に引くと画面移動もできる。いわばマウスの働きをする。ウインカー上にあるメニューボタンでTFT画面を下の階層に移動したのち必要な画面で設定を行う。

 

 
■S1000XR 主要諸元
 
●エンジン
型式:水冷4ストロークDOHC並列4気筒、1気筒あたり4バルブ
ボア×ストローク:80mm x 49.7mm
排気量:999cc
最高出力:121kW(165PS)/11,000rpm
最大トルク:114N・m/9,250rpm
圧縮比:12.0
点火/ 噴射制御:電子制御エンジンマネージメントシステム(BMS-KP)、燃料カットオフ機能付エミッション制御 コンバータ、排ガス基準EU4をクリア
燃料消費率:WMTCモード値 (クラス3)、1名乗車時 14.9 km/L
●車体・サスペンション
フレーム:アルミニウム製ブリッジフレーム
フロントサスペンション:倒立式テレスコピックフォーク(46mm径)、電子制御式可変リバウンドダンピング調整
リアサスペンション:アルミニウムダブルスイングアーム、電子制御式可変リバウンドダンピング調整
サスペンションストローク、フロント/リア:150mm/140mm(プレミアムライン)、120mm/110mm(プレミアムスタンダード)
軸距(空車時):1,550mm(プレミアムライン)、1,530mm(プレミアムスタンダード)
キャスター:117mm
ステアリングヘッド角度:64.5°
タイヤ、フロント:120/70 ZR17
タイヤ、リア:190/55 ZR17
ブレーキ、フロント:フローティングダブルディスク、ラジアルマウント4ピストン固定式キャリバー
ブレーキ、リア:固定式シングルディスク、2ピストンフローティングキャリバー
●寸法・重量
全長:2,250mm(プレミアムライン)、2,230mm(プレミアムスタンダード)
全幅(ミラーを除く):890mm
全高(ミラーを除く):1,480mm(プレミアムライン)、1,460mm(プレミアムスタンダード)
シート高、空車時:820mm(プレミアムライン)、790mm(プレミアムスタンダード)
車両重量:234kg
燃料タンク容量:20L
リザーブ容量:約4L

 



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2020/03/30掲載