Total Control for the Track
999ccの4気筒エンジンから160kW/14500rpmと113N.m/12500rpmを生み出す新造エンジンは、既知のとおりMotoGPマシン、RC213Vと同じボア×ストロークを持っている。カットされたエンジンを見ても、クランクシャフトとピストンピンを結ぶコンロッド長の短さといったらどうだ! もはやビッグエンドからスモールエンドまでの距離に一般的コンロッドが持つ直線は一切無く、軽量なチタンながら、屈強な塊にしか見えない。
さらにDLCコーティングされた中空のカムシャフトと細身のフィンガーフォロワーロッカーアームが印象的。このあたりを見ただけでこのエンジンがどれだけ本気なのかが伝わってくる。
また、エンジンクランクケース後部にブラケットを設け、リアサスペンションマウントとしても使われる。その結果、シャーシ周りでRRの特徴でもあったユニットプロリンク方式は姿を消した。しかし、そのメリットの一つでもあるフレームにショックマウント用のクロスメンバーを必要としないことで車体の剛性バランスが理想的なものへと作りやすいと言う点は継承。その上でバネ下重量の大幅な軽減を果たしている。
また、電子制御方式はそのままに、ステアリングヘッド直後、タンク前方にあった電子制御のロータリー式ステアリングダンパーもRR-Rではロッド式へと変更をされている。
さらに前後にオーリンズ製電子制御サスペンションやクイックシフター、リチウムイオンバッテリーなど装備はもちろん、ブレーキ周りにRC213VSが採用したものと同じブレンボ製となるSPモデルはよりサーキットアメニティーが整っているも言える。
ウイング装着を前提に開発。
先代のRRは外相当スリムに作られ、CBR250RRと並べても小ぶりなほどのコンパクトさを誇った。新型RR-Rは、確かにコンパクトなのだが、カウルサイドにウイングレットを採用したことで、フロントフェイスには幅感があり、それがフロントセクションをマッシブに見せている。空力デバイスは、開発企画段階から盛り込むべきとされたもので、RR-Rでは欠かせない攻めのアイテムになっているという。
電子制御デバイスに空力デバイス。サーキット最速マシンとして惜しみなく鍛えられたパッケージがどんな走りを見せるのか。今から楽しみである。
ビッグチェンジの裏側。
新型CBR1000RR-Rが目指した性能はサーキットでのパフォーマンス。これまでのワインディング主体にしたものからの変換点とも言える内容だ。そのストーリーを開発者に聞く。お話下さったのは、本田技研工業 二輪事業本部ものづくりセンターでCBR1000RR-Rの開発まとめ役を務めた石川 護さん、そしてパワーユニットを担当した出口寿明さんだ。
「ヨーロッパを中心としたスーパースポーツの市場では、嗜好として一般公道よりもサーキットでのスポーツ走行をはじめ、レースユースなどの使われ方が増えているという傾向があります。新型開発にあたり、サーキットでの性能に焦点を当てる必要があるよ、という声がありました。これまでのワインディングで楽しいCBRから、サーキットで速いCBRを楽しんでもらえるようシフトすべきと考え、コンセプトを変えてきました。
そのプロセスでは、通常、我々栃木のテストコースで開発を進めますが、最初から最後まで徹底的にサーキットテストを重視しました。レーシングライダーの伊藤真一さんにも開発初期段階から参加をしてもらって、サーキットでの速さに何が重要かなどアドバイスをもらいながら進め、テストにも参加してもらっています」
ワインディングからトラックへ。
「開発テストをしたサーキットは、スポーツランド菅生、オートポリス、十勝インターナショナルスピードウエイなど国内のサーキットのほか、海外ではカタールへも行きました。キャラクターの異なるコースでの走りを検証するのが目的です。例えば国内でテストを重ね、カタールに行く。そうするとライダーからの要求も変わり、課題ができます。それに対応したものを作り、あらためて日本のサーキットで試す。そんな繰り返しでした。
サーキットでの性能を第一に考えたので、ストリートでの使い勝手は多少目をつむったところがあります。そこはコンセプトを大きく振ったということで割り切りをさせてもらった部分です。ライバルとの比較も公道ではしていません。トラックでどうなのかにこだわりました。開発チームもその点でやることが明確。開発方向がブレなく進みました」
サーキットでのベンチマーク。
「従来のファイアーブレードから伸張させる、と言うよりも、MotoGPレプリカであるRC213VSレースキット装着車が持つ高いサーキットポテンシャルをターゲットにしました。あのマシンはMotoGPマシンと同様の作り方をしています。いわゆる市販車として見た時、ラップタイムがずば抜けて速い。そのRC213VSレースキット車よりも速く走る。それを念頭におき、開発時も両者を比較しながら進めています。
RC213VSは、走りのコントロール性の精度はとても高い。その精度はRC213V同様の作り方をしていることからくるもので、それを超えることはコストとのバランスから容易ではありません。しかしその精度に近づけるために、サーキットライディングでの煮詰めをしています。こんな時ハンドリングが重たいからこうしよう、というネガをつぶしてゆく作業です。ハンドリングの精度をどこまで近づけられるのか。ここでは、こういう挙動が出る、それをこうしよう、重たいモノが動いている感じを軽くしたい。サーキットで速くをめざし、その目的のために答えを出す作り方です」
ウイング装着は必須科目
「このCBRにとってウイングは欠かせないモノとなっています。MotoGPで戦うHRCからのノウハウはもちろん、我々もMotoGPのテスト現場に出向き、様々なマシンのウイングを観察したりもしています。
馬力も出しているので、市販車をベースにしたスーパーバイクでもウイングレットは欠かせない。レースのレギュレーションで最初から付いていないと後からは付けられないということも含め、最初からウイングに取り組んでいます。
結果、いろいろな利点が出てきます。我々も様々な勉強になりました。最初は、コーナーからの立ち上がり加速の時、ウイリーをさせない目的としてウイングを装着していました。電子制御が介入してウイリーを制御することは、加速が弱まることでもありますから。加速時のウイリー抑制だけではなく、結果的にはダウンフォースによりフロントを下向きにおさえる力が加わるので、コーナリング中、フロントの接地感が高まるという効果もあります。
また、高速旋回時からブレーキングしてそれをリリースするような場面でも、挙動を穏やかにしてくれるような効果もありました。そんな意味で今まで無かった武器を手に入れたと思っています。今後に関しても、ウイングは主流になるのでは、と思います。やるほどに別の利点が見つかるような状況ですから。
フレームの剛性バランス、空力のバランスでクルマの挙動が変わってきます。コンピューターシミュレーションで導かれた形状のウイングレットを取り付けたカウルを数タイプテスト時に持ち込み、現場で確かめました」
パワーアップの余地を秘めたエンジン。
「今回のパッケージとしてサーキットを攻めるバイクである。ということで、レーサーに近いモノを作ってきたつもりです。エンジンも馬力を出しています。エンジンの最大出力も魅力の一つです。出し惜しみ無く詰めましたから。環境性能を満たす必要があるストリート用でここまで出しましたが、サーキット限定でよりストレートな排気系とすれば、さらにパワーは上乗せされるでしょう」
※具体的に何馬力でるのか、については明言を避けながらも、開発者の言葉から推察するに、サーキット専用とすれば、240馬力から250馬力も夢ではないようにも思えた。もちろん、パワーだけではサーキットでは速く走れない。そのパッケージがどのようなものなのか。また、来春からレースシーンに出てくるであろうRR-Rベースのレーサーがどのような戦いをするのか──。今から楽しみでならない。
CBR1000RR-R FIREBLADE SP / CBR1000RR-R FIREBLADE Specifications
■ENGINE
Type : Liquid-cooled 4-stroke 16-valve DOHC Inline-4
Engine Displacement : 999cc
No. of Valves per Cylinder : 4
Bore´ Stroke : 81mm x 48.5mm
Compression Ratio : 13.0 x 1
Max. Power Output : 160Kw @ 14,500rpm
Max. Torque : 113Nm @ 12,500rpm
Oil Capacity : 4.0L
■FUEL SYSTEM
Carburation : PGM-DSFI
Fuel Tank Capacity : 16.1L
Fuel Consumption : 16.0km/litre
■ELECTRICAL SYSTEM
Starter : Electric
Battery Capacity : 12-2 Lithium-Ion [12-6 YTZ7S ]
■DRIVETRAIN
Clutch Type : Wet, multiplate hydraulic clutch with assist slipper
Transmission Type : 6-speed
Final Drive : Chain
■FRAME
Type : Aluminium composite twin spar
■CHASSIS
Dimensions (L x W x H) : 2100 x 745 x 1140mm
Wheelbase : 1455mm
Caster Angle : 24°
Trail : 102mm
Seat Height : 830mm
Ground Clearance : 115mm
Kerb Weight : 201kg
■SUSPENSION
Type Front : Ohlins NPX Smart-EC [ Showa BPF ]
Type Rear : Ohlins TTX36 Smart-EC [ Showa BFRC-lite ]
■WHEELS
Rim Size Front : 17 inch x 3.5
Rim Size Rear : 17 inch x 6.0
Tyres Front : 120/70-ZR17 Pirelli Diablo Supercorsa SP / Bridgestone RS11
Tyres Rear : 200/55-ZR17 Pirelli Diablo Supercorsa SP / Bridgestone RS11
■BRAKES
ABS System Type : 2 Channel
Front : 330mm disc with radial-mount 4-piston Brembo caliper [ 330mm disc with radial-mount 4-piston Nissin caliper ]
Rear : 220mm disc with 2-piston Brembo caliper [ 220mm disc with 2-piston Brembo caliper ]
■INSTRUMENTS & ELECTRICS
Instruments : TFT-LCD
Security System : HISS
Headlight : LED
Taillight : LED
All specifications are provisional and subject to change without notice.
** Please note that the figures provided are results obtained by Honda under standardised testing conditions prescribed by WMTC .
Tests are conducted on a rolling road using a standard version of the vehicle with only one rider and no additional optional
equipment. Actual fuel consumption may vary depending on how yo u ride, how you maintain your vehicle, weather, road conditions ,
tire pressure, installation of accessories, cargo, rider and pa ssenger weight, and other factors.
※ 諸元の数値は2019年11月4日現在において、欧州で発表したものです。この仕様は暫定的なものであり、予告なく変更される場合があります。
※[ ]内は、CBR1000RR-R FIREBLADE
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