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レース・イベント






鈴鹿サーキット(三重県)で2025年8月3日(日)に決勝レースが行われる「2025 FIM世界耐久選手権“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会(以下、鈴鹿8耐)」は、例年にない熾烈な戦いになりそうだ。鈴鹿8耐は、日本最大級の二輪耐久レースであり、FIM世界耐久選手権(EWC)の一戦として位置づけられている。気温・路面温度ともに高く、過酷さで知られ、ライダーのテクニックや速さはもちろん、体力とチームワークが試される。近年ではその酷暑ぶりが異常で、体感温度は40℃を超えるかと思うほどだ。日が沈んでも観客の熱気も加わり、暑さはさほど変わらない。危険を感じるほどの暑さに開催日の変更が囁かれているが、今年も夏真っ盛りの8月に行われる。
■文:佐藤洋美 ■写真:赤松 孝

 2025年6月、ホンダモビリティランド株式会社は暫定エントリーリストを公開。これまでに出場権行使チームが20チーム、8耐トライアウトで15チーム、主催者推薦チームが4チームと、計39チームにEWCフル参戦チームが15チーム追加され、総勢55チームが名を連ねた。昨年より9チーム増加している。
 EWCのレギュレーションにより、開催サーキットでは1カ月間テストが禁止されており、公平性が保たれている。今年の8耐テストは6月に2回実施された。1回目の1日目は雨、2回目は曇り。ここにはMotoGPライダーのヨハン・ザルコやMoto3の山中琉星が参加していた。総合トップタイムは、6年ぶりにファクトリー参戦するYAMAHA RACING TEAMの2分5秒670。Honda HRCは2分5秒738で5秒台を記録した。2回目のテストでは路面温度が60℃を超える酷暑となった。ナイトセッションも行われ、本番さながらのテストが繰り返された。

#SUZUKA8h_Preview
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 トップタイムはHonda HRCの2分5秒395。高橋巧とザルコの参戦が発表されていたが、このテスト終盤でイケル・レクオーナが加わり、3人のラインナップが発表された。5月のプライベートテストではMotoGPのルカ・マリーニが参加。ケガを負いMotoGPにも影響が出てしまったが、HondaがMotoGPライダーを鈴鹿8耐に参戦させようと動いていた。結果的には叶わなかったが、高橋は最多6勝の優勝記録を持ち、ザルコは昨年初参戦ながら優勝。レクオーナも初参戦で優勝しており、優勝経験者3人を揃える最強布陣だ。今年はテストライダーに専念している高橋が全日本開幕戦にワークス参戦し、鈴鹿8耐への本気度を示した。

#SUZUKA8h_Preview
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 昨年は初参戦のザルコや新加入の名越哲平のために走行時間を割き、あまり走れなかった高橋だが、今年は積極的にマシンに乗り込みテストを重ねた。今年はサスペンションメーカーが変更となり、高橋は「ライディングに大きな影響が出る変更なので、理想のマシンに仕上げるまでには、まだまだテストがしたい」と語った。それでも「昨年もレースウィークを使って7割くらいの仕上がりに持って行ったので、今年もギリギリまで粘って追求したい」と意気込む。

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 2番手にはAutoRace Ube Racing Teamが2分5秒985で続く。今季はWSBKで昨年タイトルを獲得したBMWと同等のマシンで全日本にも参戦。スペイン選手権から帰国した浦本修充が開幕戦もてぎ2&4で3位、第2戦SUGOでは中須賀克行を逆転してポールポジションを獲得し、レース2でも2位と健闘した。5秒台を記録したのは浦本であり、期待が高まる。Instagramを通じてチームに連絡してきたBMWの経験豊富なロリス・バズと、ドイツスーパーバイク選手権のBMWファクトリーライダーであるハンネス・スーマー(BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMの第4ライダー)と組む。
「ロリスもハンネスも速いし信頼している。8耐では世界耐久選手権のBMWファクトリーチームが参戦するので、負けないようにと思っています。他にもライバルばかりですが、その中でトップ争いがしたい」と浦本は意気込みを語った。

 3番手はBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMの2分6秒080。ラインナップはマルクス・ライターベルガー、元WSBKチャンピオンのシルヴァン・ギュントーリ、南アフリカ出身のスティーブン・オデンダール。現在EWCランキング3位へと躍進している。

#SUZUKA8h_Preview
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 4番手はYOSHIMURA SERT MOTULの2分6秒108。今季もグレッグ・ブラック、エティエンヌ・マッソン、ダン・リンフット、リザーブライダーとして渥美心が参加。鈴鹿8耐はグレッグ、ダン、渥美で戦う(マッソンはスズキCNチャレンジのライダーとして参戦)。現在EWCランキング6位からの浮上を目指す。加藤陽平監督は「今年は四輪のエンジニアに開発チームに加わってもらい改良を加えている。詳しくは話せないが、チャレンジで戦っている。その成果を示したい」と語った。

#SUZUKA8h_Preview
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 総合8番手はYAMAHA RACING TEAMで2分6秒522。6年ぶりの鈴鹿8耐参戦を表明したヤマハ創立70周年記念として、赤と白のカラーリングで参戦。JSB1000で12回タイトルを持つ中須賀克行、MotoGPのジャック・ミラー、WSBKのアンドレア・ロカテリのラインナップ。7月上旬には3人が揃ってプライベートテストを実施した。
「6年のブランクはチームとしてさまざまな面で大変ですが、それを埋めたい」と吉川和多留監督。2019年、ヤマハは5連勝を達成し表彰台の中央に立ったが、赤旗判定のルールにより勝利がカワサキに覆された。中須賀は「忘れ物を取りに行く」と勝利を目指す。

#SUZUKA8h_Preview
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 9番手、2分6秒527に「SDG-DUCATI Team KAGAYAMA」。全日本JSB1000開幕戦で優勝した水野涼が、第2戦SUGOに向けた事前テストで転倒しケガ。事前テストにはスーパースポーツ世界選手権でドゥカティを駆るマーセル・シュロッターと加賀山就臣が参加。2分8秒台を記録した走りに「さすが」と注目を集めた。水野、シュロッターに加え、鈴鹿8耐優勝経験豊富なレオン・ハスラムの起用が発表された。

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 10番手、2分6秒577はAstemo Honda Pro Racing。JSB1000第2戦SUGOのレース1では中須賀克行を0.004秒差で追い詰めた市販キット車を駆る野左根航汰が中心。ST1000参戦の荒川晃大、Moto3の山中琉星がラインナップ。山中は鈴鹿8耐初挑戦で、初テストのマシンで2分6秒台を記録し、そのポテンシャルが評価されてシートを獲得した。

 そのほか、「SDG Team HARC-PRO. Honda」は、JSB1000参戦の名越哲平、Moto2の國井勇輝、アジア選手権ASB1000の阿部恵斗のラインナップ。名越は昨年、HRCライダーとして優勝。今年は古巣に戻り、チームを牽引する。

 EWC参戦中のF.C.C. TSR Honda Franceは鈴鹿8耐テストをキャンセルし、EWC最終戦ボルドールでのテストを優先。今年は新体制で、アラン・テシェが継続、コロンタン・ペロラ―リと羽田太河が新加入。第2戦スパ8耐で優勝し、ランキング4位に浮上。

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 名門チーム・カワサキフランスを鶴田竜二監督が引き継いだTeam KAWASAKI WEBIKE TRICKSTARはクリスチャン・ガマリーノ、EWCチャンピオン経験のあるマイク・ディ・メリオ、ロマン・ラモスの体制で挑む。現在ランキング2位で初タイトルを視野に入れる。

 YARTヤマハオフィシャルEWCチームはマービン・フリッツ、カレル・ハニカ、新加入のジェイソン・オハロランのラインナップ。開幕戦ル・マン24時間を制し、ランキングトップで2度目のタイトルを狙う。

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 実験的クラス「エクスペリメンタルクラス」に参戦するチームスズキCNチャレンジは今年も参戦(『スズキ、挑む!』 をご参照下さい)。実験的クラス「エクスペリメンタルクラス」に参戦するチームスズキCNチャレンジは今年も参戦。エティエンヌ・マッソン、津田拓也、Moto2のアルベルト・アレナスが走る。

 ホンダは高橋が言う理想のマシンに仕上がるのか? ヤマハは6年のブランクを埋めることが出来るのか? ドゥカティの水野のケガはどこまで回復しているのか? BMWの浦本のポテンシャルは、どこまで発揮されるのか? ヨシムラのチャレンジが成功するのか? TSRは事前テストキャンセルの影響は出ないのだろうか? カワサキはEWC同様、トップ争いに絡むことが出来るのか? スズキCNチャレンジはどこまでの仕上がりを見せるのか? 市販キット車を駆る野左根や名越らは、どこまで勝負できるのか? 日本のトップライダーが、海外勢と、どんな戦いを見せてくれるのか?

 ホンダ、ヤマハ、カワサキ、ドゥカティ、BMWなど国内外の強豪ワークスチームが揃い、MotoGPやWSBKのスター、全日本のトップライダーに加え、近年台頭するEWCの戦いと、例年になく見どころの多い鈴鹿8耐が待ち遠しい。
 2025年の鈴鹿8耐には、総勢55チームが参加予定。昨年より9チーム増加しており、昨年以上の混戦が予想されている。
(文:佐藤洋美、写真:赤松 孝)


2025/07/21掲載