東京・大田区出身の岡谷雄太がチーム代表兼ライダーを務めるHICity Racing Aprilia（エイチアイシティ・レーシング・アプリリア）の2025年のレース参戦発表が羽田空港に隣接するHICity行われた。

　日本の工業地帯の中心地のひとつである大田区の地元企業のテクニカルサポートを得て新チームが結成された。マシンはアプリリアRSV4 1100 Factoryとなり、全日本ロードレース選手権JSB1000クラスにフルエントリーし、鈴鹿８時間耐久ロードレースには、エクスペリメンタルクラス（実験的クラス）で出場を目指す。

　岡谷は「大田区の企業の方のアイディアや技術を結集しオリジナルフレームの制作。さらにカーボンニュートラルな素材を使うマシン造りを目指します。将来的には、その技術で開発されたマシンでロードレース世界選手権Moto2クラスに参戦したい」と語った。

　会見場となったHICityは、羽田イノベーションシティの略称で、観光施設として大田区の町おこしの役割を担い、スマートシティ（次世代都市）のモデルとして最先端技術を駆使した町作りも行う大型複合施設だ。施設内にはバイクのシミュレーターを開発している「PROTOTYPE」を始め様々な企業も名前を連ねる。

　岡谷は「PROTOTYPE」のテストライダーも務めており、ライディングギアの下にセンサーを付けサーキットを走行し、様々なデータを提供している。

　渡辺光章CEOは「シミュレーターの精度を高め、バイクメーカーさんのテスト走行への活用や、エンターテインメントの分野で憧れのバイクを操作出来るリアルな体験を提供したい。そこに到達するためにトップライダーである岡谷選手のライディング技術が役立っている」と言う。

　HICity統括責任者の加藤篤史氏は「大田区出身の有望な若手がいると知人の紹介で岡谷選手と出会いました。岡谷選手には子供たちを対象に電動バイクの試乗会のイベントをやって頂く機会があり、未来につなげていこう、外に向って大きく発信していこうという姿勢が非常に素晴らしいと感じました。モータースポーツの新しい技術、ものつくりを通しての文化、イノベーションの可能性は、この施設の精神ととても相性がいい。すぐそばに空港があり、この地から日本中、世界中に、技術や文化を発信したく、岡谷選手を通してHICity をPRして頂きたいですし、私たちも一生懸命応援したい」と語った。

　岡谷は「自分がチームを立ち上げて全日本最高峰であるJSB1000クラスに参戦することになるとは思ってもいませんでした。たくさんの方の応援でチームを結成し発表会にたどり着けたことを感謝します。
HICityで大田区の町工場の金属加工や樹脂成型、カーボンなど、バイクに生かせる可能性がある技術、すでに生かされているものを教えてもらい、ただレースをする。速く走るというだけではない夢が出来ました。

５年計画でMoto2チャンピオンになるという目標に向かって努力して行きます。今、25歳なので、30歳のときに世界一を目指す環境を整えたい。大田区は世界に誇る技術を持っている。ここで生まれ育った自分だから、やらせて頂けることに感謝しながらも、自分がやらなければならないプロジェクトだと誇りを持って挑みたい。下町バイクを世界１に押し上げたい」と語った。

　今後は大田区羽田を中心としたクラフトマンがアプリリアRSV4-Factory用のレーシングパーツをはじめとしたモータースポーツ用パーツ、さらにはオートバイ用パーツの制作し日本、世界へ大田区の技術をアッピールする。将来的にはスペインジュニアGP、Moto2のオリジナルマシン（＝フレーム）制作までつなげたいと夢を描いていた。

　岡谷は1999年7月12日生まれの東京都大田区出身のロードレースライダーで、2018年全日本ロードレース選手権J-GP3クラスにデビュー、開幕戦で優勝を飾り、この年６戦中３勝と非凡な才能を示しランキング２位となりルーキーオブザイヤーを獲得した。2019年よりFIMスーパーバイク世界選手権（World SBK）併催のスーパースポーツ300世界選手権にフル参戦を開始し2020年には同クラス日本人初ポールポジション、日本人初表彰台、日本人初優勝を達成した。同世代にはロードレース世界選手権MotoGPの小椋藍、Moto2の佐々木歩夢らがおり、彼らに匹敵する逸材だ。

　全日本ロード開幕戦もてぎ2&4レースは４月20日にモビリティリゾートもてぎで行われる。

（文：佐藤洋美、写真提供：HICity Racing Aprilia）

岡谷雄太ファンクラブ『ロクイチ』
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