24年の全日本ロードレース最終戦は10月下旬で、25年の開幕戦は4月中旬。ちょっと間、空きすぎない? こんなスケジュールではレースのこと忘れちゃわない? と始まった、第1回ピットウォークフェス。ライダーとファンの距離をグンと縮める、これから毎年続いて行ってほしいイベントです。
■文・写真:中村浩史
最近レースって人気ないよね。日本のレースってなんのクラスがあるの? 去年は誰がチャンピオンだったの? あ、ロッシとかマルケスとかオグラアイはなんか聞いたことがある――。そんな人、結構多い。それはバイク村以外の一般の人だけでなく、バイク乗りであっても、こんな人は意外といるのだ。
レース人気、盛り上げたい! 関係するひとはみんなそう思っている。だからライダーはしっかり面白いレースができるようにするし、チーム関係者はしっかりレースマネジメントを運営して、ぼくらメディア関係者も、レースの面白さをなんとか伝えたいと頑張っているつもりなんです。
その思いを、行動に移したイベントがあります。それが『ピットウォークフェス』。ピットウォークとは、レースの時にピットまわりに立ち入っていい時間帯で、チームもファンサでデスクやイスを出したり、サイン会をしたり、写真を撮ったり、なチャンスのことです。選手とファンがいちばん近くにいられる時間帯で、それをひとつのイベントにしてしまおうという試みなのです。
ピットウォークフェス開催に動いたのは、レース実況でおなじみのMCシモさんこと和田鉄平さんのオフィス・ワックアモール。鈴鹿8耐や全日本ロードレースのレースアナウンスを担当しているシモさん、それにスタッフのひとりである竹内さくらさんにしてみれば、いつもレース人気を盛り上げたい、それにしても24→25年のシーズンオフって長すぎなんじゃない? ──というところから、シーズンオフのファンイベントを企画。チーム関係者やライダー個人たちに粘り強く交渉して、このピットウォークフェス開催にこぎつけた。
レース人気を盛り上げるなら、ライダーの人間としての魅力を知ってほしい。今で言う「推し活」って、いろんな分野の人気アップの手段ですからね。ピットウォークや走行時間終了後に、ファンのみんながライダーたちと触れ合える時間はあるけど、まだまだ足りない。ライダーたちの「ひと」としての魅力をもっともっと広めたいシモさんとさくらさんが思いついたのは、こういうことです。
ライダーとファン、両方のために、もっと触れ合える時間を作りたい。こうしてピットウォークフェス開催となりました。
イベントは参加してくれたライダー紹介からスタート。控室からのピットスペースへの通路をファンのみんなが囲んで、そこにレッドカーペットがサーッと敷かれ、ひとりずつ登場してハイタッチ行進! いいね、こういう演出! なかなかサーキットでは見られないもの。いまワールドスーパーバイクでは、パルクフェルメに入るまでにファンの目前を通ってハイタッチしながら、って光景をみることができますが、きっとそういう感じ。鈴鹿8耐のトップ10トライアルも、コースインやピットインの時にこんな演出してますよね。
舞台となった茂原ツインサーキットのパドック部分にピットを作って、そこにマシン展示をしたり、グッズ販売をしたり、もちろんライダー捕まえたらサインもらい放題、写真撮り放題。イベント内容としては、参加ライダーたちによるミニバイク&ミドルクラスのフリー走行とエキシビジョンレースがあって、これは事前申し込み者は、コースのインフィールドまで入って、ヘアピンの中で全日本ライダーの走行が見られたり。チェッカー後は、ライダーもみんな徐行してくれて、ハイタッチしながらピットに戻ったりね。優しい時間が流れていました。
来場したファンのためには、私服でコースを走れる体験走行もあり、これも関口太郎、岡谷雄太、岡崎静夏らの全日本ライダーが先導してくれるというぜいたくさ。バイク以外のイベントとしては、紙飛行機飛ばしや障害物競走があったり、トライアルマシンを使ってのスタンディングスティルのタイム計測があったり。観るも走るも、ファンのみんなとライダーが、すごく近い距離で一日を過ごしている姿が印象的なイベントでした。
「こういうイベントは1回で終わらせちゃったらもったいない。ファンのみんなも、ライダーやチームの方も『楽しかった』って喜んでくれたので、またやりたいです! 茂原ツインはもちろん、たとえば来年は関西でもやったり、広げていきたいです。そのためには、ファンのみなさんにもっともっと来場いただきたい!」とシモさん。
さらには、このイベントに協賛した、長島哲太率いるTN45は2025年のチーム体制を発表。全日本ロードレースを軸に、若手ライダーをアジアタレントカップ、筑波ロードレースに送り込み、世界のレースに最短距離で挑戦できる土台を作りたい、と発表。そう、このイベントで新しい年のレース体制を合同発表する、なんてイベントメニューがあってもいいですね。
ウィンタートレーニングで今回は参加できなかったチームやライダーさんも、来年もっとたくさん参加してもらって、全日本ロードのレースロスを埋める、シーズンオフのイベントとして定着してほしいです!
(文・写真:中村浩史)