ハンス・ムートデザインの東京タワー
レーサーレプリカが勢いを増しはじめ、まだネイキッドという概念すらなかった1980年代半ば、好みが分かれそうなライトケースカバーと赤い鋼管角パイプフレームが特徴的な二代目インパルスが登場した。デザインはハンス・ムート氏でその形状から「東京タワー」と呼ばれた。エンジンはスズキ独自のSATCS(空油水冷)方式を採用。このエンジンは1986年のGSX-Rと同型で、ブレーキも同様にフロント8、リア2ポッドのDPBS(デカ・ピストン)など、GSX-Rに劣らない走りを意識したスポーツモデルであった。バリエーションモデルとして一般的な形状のハーフフェアリングもラインアップされた。その名のとおり、インパルスの登場は鮮烈な衝撃を与えたが、レーサーレプリカにあらずんばスポーツモデルに非ずという時代のうねりがますます強くなった当時、個性的すぎるインパルスは残念ながら一代限りで消えてしまった。
キーワードは「艶」。スタイリッシュネイキッド誕生
インパルスの後を受けたのは、美しく滑らかでグラマラスなフォルムのボディに、砲弾型メーターケース、小型のバックミラー、オフホワイトのメーターなど細部の造形にこだわったニューモデルのバンディットであった。当時ネイキッドモデルの王道のスポーティさやシンプルさとはまた違った「艶」が開発のキーワードであった。とはいえ、もちろん走りの部分は二の次というわけではなく、定評あるGSX-R系の水冷エンジンを街乗りに合わせ低中速域の加速性を重視したセッティングに変更。マフラーは美しさと機能を両立させたバフ仕上げのステンレス4into1、リアにはニューリンク式フローターサス、ダンパーは窒素ガス封入式、フロントブレーキは異形4ポッドキャリパーなどを装備した。バンディットという名称は、常識や枠にとらわれない自由な気分、なまめかしさ、妖しさ。優等生にはないそんな魅力を表現したネーミングであった。
一部カラーを変更
ブラックに代わりゴールドホイールのパールノベルティブラックが登場。プラシャンブルーメタリックはホイールがグレーに。マーブルピュアレッドは変更なく継続。教習車仕様も新たに設定された。639000円。
ロケットカウル付きのリミテッド
スズキの創業70周年を記念して、FRP製ロケットカウルを装着したリミテッドが登場。エンジンはバフがけのクリアー仕上げとされた他、ゴールドチェーンも装備、カウル内にセットされたメーターは、新たに水温計が追加され3連メーターにアップグレード。車体色はキャンディアカデミーマルーン×スペースブラックとブレードシルバーメタリック×スターリットブルーメタリックの専用色。SUZUKI 70th Anniversaryメモリアルキーホルダーも付属していた。
アップハンドル仕様も登場
従来のセパレートハンドルをパイプのアップハンドルに変更したバリエーションモデル。ライディングポジションは、グリップエンドで上方100mm、後方50mm移動した。車体色はブラックのみの設定。価格に変更はないが、主要諸元は全高が1040mmに変更された。
新色を追加
プラシャンブルーメタリックに代わってトライアルグリーンメタリックが登場。パールノベルティブラックとマーブルピュアレッドは変更なく継続。価格、主要諸元に変更はない。
可変バルタイのVCエンジンを搭載
バルブタイミングとバルブリフトをエンジンの回転数、ギアポジション、スロットル開度のセンサーによって、コンピューターが自動的にコントロールし、全域にわたり扱いやすさを向上させた可変バルブタイミング・リフト機構を搭載した新開発VCエンジンを搭載したバンディット400Vを追加。外観上では赤く塗られたエンジンのヘッド部分とブレーキディスクのインナーが特徴。価格はスタンダードモデルより41000円アップの636000円。
リミテッドもVCエンジンに
ロケットカウル付きのリミテッドも可変バルブタイミング・リフト機構付きのVCエンジンモデルを追加。70周年記念車ではないので、特製キーホルダーは付属しないが、それ以外の装備はそのまま受け継がれた。車体色はキャンディアカデミーマルーン×スペースブラックのみとなり、価格は727000円。主要諸元は全幅が700mm、乾燥重量が174kgに変更された。VCエンジンではない従来モデルも、特製キーホルダーがなくなった以外は変更なく併売された。
1100のイメージを忠実に再現
名車の誉れ高い初代GSX1100S KATANAをオマージュした400バージョンが誕生。デザイン上の大きな特徴であるカウル、シート、ハンドル、メーター、ホイールは見事にKATANAラインがトレースされていることは言うまでもない。エンジンは空冷ではなくGSX-R系の水冷4気筒をベースとしているが、中低速域でのメリハリの効いた加速感を重視しロングストローク化(40.4→47mm)が行われ、外観もフィンの新設はもとより、ヘッドとシリンダーの縦横比がGSX1100Sと同一となるように構成されるなど、手間暇コストをかけて、KATANAをより忠実に再現している。
53馬力になり各部も変更
馬力の自主規制値変更により、最高出力が59馬力から53馬力にダウンしたことに合わせ、低中速域のトルクを増強。カムプロフィール、6速の変速比、2次減速比の変更が行われた。ヘッドライトは常時点灯になり、ウインカーレンズの形状変更なども行われた。車体色はパールノベルティブラック、キャンディアンタレスレッドで変更なし。価格も変わらず636000円。
スタンダードモデルも53馬力に
400Vと同様に53馬力化、低中速域のトルク増強、カムプロフィール、6速の変速比、2次減速比の変更、ヘッドライトの常時点灯、ウインカーレンズ形状など多岐に渡り細部の変更が行われた。車体色はブラック、ルージュレッドNo.2、トライアルグリーンメタリックで変更はないが、ホイールカラーがシルバーに統一された。また一足早く10月29日に、同仕様のコンチネンタルハンドル仕様(パイプハンドル)が登場。車体色はブラックとルージュレッドNo.2。主要諸元は全高が35mmアップし、価格は2万円安い579000円。
リミテッドも53馬力に
リミテッドもバンディット400V同様の変更を受け53馬力に。車体色はキャンディアカデミーマルーン×スペースブラックのみに。VCエンジンではないモデルは設定されなかった。
コンチハンに新色追加
新色のスターリットブルーメタリックを追加。ブラックとルージュレッドNo.2は継続され3色のラインアップに。価格、主要諸元ともに変更なし。
フレーム色を変更
メーター盤面がホワイトからブラックに変更された。車体色に変更はないが、キャンディアンタレスレッドのみフレームがシルバーからブラックに変更されている。主要諸元、価格に変更はない。
よりスタイリッシュにモデルチェンジ
基本的なイメージはそのままに、曲線を取り入れたよりなめらかなスタイルへとモデルチェンジ。ニューデザインホイール、シート、アルミ角断面スイングアームとラジアルタイヤ、ハザードの採用、燃料計を追加した3連メーター、テールランプとストップランプが分割点灯式となったテールランプ、シート下に小物入れ増設などと共に、ハンドル切れ角の増加、エンジン特性も低中速域でのレスポンスを改善し、応答性が向上している。車体色はバンディット400がディープパールメタリックとキャンディアカデミーマルーンで599000円、バンディット400Vはディープパールメタリックとマーブルイタリアンレッドにパールノベルティブラックも設定されて639000円。リミテッドは設定されなかった。
カラーを変更
ディープパールメタリックに代わってより艶のある赤いキャンディアンタレスレッドにカラーを変更。マーブルイタリアンレッドはフレームがブラックに変更された。パールノベルティブラックは継続。価格、主要諸元ともに変更なし。なお、VCエンジンではないモデルはここでカタログ落ち。
ミニカウル付きのバリエーションモデル
ビキニカウル、ゴールドチェーンを装備したVZがバリエーションに加わった。主要諸元は全高が1115mm、乾燥重量が168kgに変更され、価格は653000円に。車体色はマーブルイタリアンレッド、パールノベルティブラック、フラッシュシルバーメタリックと、ツートンの専用色であるパールノベルティブラック×マーブルアステカオレンジの4色。バンディット400Vはキャンディアンタレスレッドに代わってフラッシュシルバーメタリックと、マーブルイタリアンレッドは1995年モデルのようにフレームを赤に変更。こちらは価格、主要諸元ともに変更なし。共にタンクのエンブレムが立体となり、エアクリーナーカバーの表面がクロームメッキを採用したが、バンディットシリーズはこのモデルが最終型となった。