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試乗・解説

ノアセレンがチョイス 2024注目の外車、ちょっと味見その③ Triumph Daytona660
■試乗・文:ノア セレン ■撮影:渕本智信 ■協力:Triumph Motorcyclehttps://www.triumphmotorcycles.jp/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html Alpinestars https://www.okada-ridemoto.com/brand/Alpinestars/




トライアンフには付き合いやすいエントリーモデルのトライデントがあり、そしてさらに本気度の高いストリートトリプルもある。がしかし、かつて一世を風靡した「デイトナ」ブランドは長らく空席になっていたのだ。新デイトナの復活。これを待っていたライダーも多いだろう。

 

そうは言っても公道では……

 トライアンフはモト2にエンジンを提供しているし、KTMはモトGPに参戦もしているのに、本気のフルカウルスーパースポーツを作っていない。いや、国産メーカーですらいわゆる「スーパースポーツ」カテゴリーからは撤退しつつあると言えるだろう。
 まぁ、それもそのはずだ。それらモデルはどれもとんでもない高性能である代わりに、公道では持て余してしまうことも少なくなく、そんなあまりに速い乗り物にユーザーが疲れてしまった、あるいはさすがに手に負えなくなってきてしまった、という面があるだろう。ドラレコの普及などでかつてのようなヤンチャな走りはさらに許されなくなったということもあるだろう。さらに「そんな速いバイクならサーキットで」という論調もあったものの、サーキットでさえ手に余るほどの性能を持っているモデルも少なくなかった。
 高性能は素晴らしい。が、サーキットはともかく公道ではさすがに厳しい。だからこそ、モト2やモトGPと関わっていながらも、トライアンフもKTMも公道で楽しい、現実的なモデル展開に力を入れているのだろう。
 

 

トライデントでは物足りない?? ストリートトリプルではToo Much?

 トライアンフは公道で気軽に楽しめるロードスターとしてネイキッドの「トライデント」というモデルを持っている。実は今回のデイトナ660はトライデントをベースにしている兄弟車なのだが、このベースモデルとなったトライデントがとても付き合いやすい、良いモデルであると同時に価格も100万円を切るというバーゲンプライスなのだ。
 デイトナ660はこれをベースにセパハン&フルカウルにすると同時に、エンジンも95馬力にパワーアップさせてスポーツマインドを増強。ブレーキ周りも強化させるなどワンランク上のスポーツ性を追求しつつ、それでも僅か10万円弱の値上げに留めているのが素晴らしい。
 ただ、前作のデイトナ675に比べれば今回のデイトナ660はいわゆる「スーパースポーツ」の仲間ではない。もっと親しみやすい、公道にフォーカスしたスポーツモデルといった立ち位置なのは、過剰ではないサスペンション性能やスチールフレーム、きつすぎないライディングポジションからもわかるだろうし、価格的にも本当に頂点に位置する性能をアピールするポジションではないことはわかるだろう。
 サーキットも含めて本気で速い、ベテランも脱帽するようなカミソリ的スポーツ性を持っているのは、カウルこそないがストリートトリプル765の方であり、そして公道で気軽に楽しく乗れるのがネイキッドのトライデント660。新たなデイトナブランドはこの2台の間に位置する、親しみやすいフルカウルスポーツとして復活したのだ。
 

 

フルカウルファンに贈る

 ホンダのCBR650Rや、ヤマハのYZF-R7といったモデルと似通ったカテゴリーに分類できるデイトナ660。公道でも付き合いやすく、ある程度の汎用性も持ち合わせ、それでいてスポーティマインドも満足させる、という設定だ。あるいは絶対性能は置いておいて、シンプルにフルカウルのスタイリングが好み、というライダーにとっても嬉しい選択肢だろう。
 いざ跨ってみてハンドルに手を伸ばすと、極安楽だったトライデントに比べるとけっこうしっかりとした前傾ポジションで、腰痛持ちからすると「あまり長距離は厳しそうかな?」と思えた。しかしさらに前傾の深いモデルでツーリングする人もいることを思えば、それぞれの好みの範疇かもしれない。
 エンジンは10馬力もアップしているだけあり、トライデントよりは荒々しい感覚がある。ハンドルがクリップオンとなったこともあってか、ライダーに微振動が伝わってきて全体的にビリビリした「ヤル気」のようなものが感じられた。あくまで快適なトライデントに対して、こちらはより硬質な感覚で、走り出す前からダイレクトな感じがあった。
 その印象は走り出してからも変わらない。フレームやエンジンなど基本的な部分はトライデントと共有しているとは思えないぐらい、ビシッとした乗り味でバイクとの対話が濃密。なるほどこれなら自然とスポーツマインドが掻き立てられるし、サーキット走行会などでは頼りなく感じることがあるトライデントに対して、こちらならしっかりと走り込めそうな印象もあった。
 ただ、公道をツーリングするという意味ではトライデントほどの気軽さはないとも感じる。トライデントはそのポジションからも、ジェントルなエンジン特性からも、「日常的にも乗れて週末はちょっと遠くまで行ってみようかな」という汎用性があるのに対して、デイトナは「週末だけを楽しむ趣味バイク」としての要素が強まったような印象だ。しかしそんな性格の違いを踏まえたうえで、スーパースポーツ程のハードルの高さはないのだから、CBR650RやYZF-R7のように正統派公道向けスポーツバイクとして認識すればよいだろう。特にスタイリング的にフルカウルの方が好きな人にとっては、無理のない選択肢になると思う。
 

 

ちょうどいいを求めるあなたに

 バイク選びは本当に難しい。直感的に「コレ!」と決めてしまえれば最高だが、色々詳しく調べるほどに迷ってしまうのだ。特にこの排気量帯、このカテゴリーは多くのライバル、多くの選択肢があり悩ましいのである。
 トライアンフの中でのデイトナ660は、先述したようにトライデントとストリートトリプル765の間に位置するわけだが、他社まで含めると大いに迷う。CBR650Rよりはデイトナのほうはスポーティか? 3気筒という個性が良いか? なんて考えることもあるし、例えばアプリリアのRS660と比べると、あちらの方が電子制御も充実してるしパワーもあるな。サーキットも含めた走りの性能を重視するならアッチかな? などと堂々巡ってしまう。そんな悩みもある意味幸せな時間ではあるのだが、なかなか決められないのも事実。
 そんな中でこのデイトナはパワーも価格も「ちょうどいい」という意味でライバルの中でも良い位置にいると思う。フルカウルが好きだし、前傾強めでも気にならずツーリングできるし、という人は、まさにちょうどいいい選択肢となるだろう。
 

 

スマートなフルカウルのデザインと、スチールフレームをカバーするアルミフレーム風のフレームカバー、そしてラジアルマウントされたブレーキキャリパーや純正でミシュランのパワー6を装着するなど、かなりビシッとしたスポーツバイクといった印象となっているデイトナ660。トライデント比で僅か10万円弱の価格増に抑えたのが信じられないほどだ。ポジションはセパハンを採用しただけあってそれなりに前傾している。スーパースポーツ系と比べると「かなり楽な方」と言う人もいるだろうが、ベースモデルのトライデントに比べるとけっこう前傾しているイメージ。全体的にコンパクトで足着きも良い方だと思うが、ツーリングでの快適性や汎用性を重視するのならば、より安楽なトライデントも検討してもいいかもしれない。

 

エンジンは765系のものではなく、トライデント系の660ccユニットだが、パワーは10馬力もアップされている。セパハンなどポジション的な要素も影響しているだろうが、このエンジンはトライデントに比べてザラツキ感やダイレクト感があり、トライデントではネイキッド向けによく調教されていたエンジンが、まさにファクトリー純正チューンが施されスポーティに変身した、という印象である。3気筒ならではの常用域トルクは豊かで、価格帯的にはエントリーモデルにもかかわらず「トライアンフ感」はしっかりと味わえる。フレームはスチールだが、ピボッド部まで覆うカバーのおかげでスポーティなアルミフレームとなったイメージ。
海外メーカーで見られることの多い、トップブリッヂ一体型のセパハンを装着。フォークは調整機能を持たないが、しかし懐の深い設定であり特に調整が必要に感じることもなさそうだ。スイッチ類はとても使いやすいもの。メーターはタイガースポーツ660と共通イメージのカラーTFTで、ライディングモードはレイン/ロード/スポーツの3種。

 

ショーワBPFタイプの倒立フォークを備え、ブレーキはラジアルマウント対向4ポッドにグレードアップ。スムーズな作動性は低速域からフィードバック豊富で走行シーンを選ばない。
スイングアームやホイールなど、ベースのトライデントと同様のコンポーネントが多いが、ブレーキキャリパーやタイヤ銘柄などは専用の設定。トライデントではスイングアーム付けだったナンバープレートは一般的なテールカウル付けになっており、バネ下重量は軽減されているだろう。

 

●Triumph Daytona660主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ ■総排気量:660cc ■ボア×ストローク:74.04×51.1mm ■圧縮比:12.05 ■最高出力:70kW(95PS)/11,250rpm ■最大トルク:69N・m/8,250rpm ■全長×全幅×全高:-×736×1,145mm ■軸間距離:1,425.6mm ■シート高:810mm ■車両重量:201kg ■燃料タンク容量:14L ■変速機形式:6段リターン ■ブレーキ形式(前・後):ダブルディスク×シングルディスク ■タイヤ(前・後):120/70ZR 17・180/55ZR 17 ■車体色:スノウドニアホワイト、サファイアブラック ■メーカー希望小売価格(消費税込み):1,085,000円

 



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2024/06/19掲載