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試乗・解説

Indian Motorcycle 101 SCOUT 新型101スカウトに見た走りへの拘り。 スポーツするクルーザーの正体とは?
■試乗・文:松井 勉 ■写真:Indian Motorcycle ■協力:インディアンモーターサイクル https://www.indianmotorcycle.co.jp/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、SPIDI・56design https://www.56-design.com/




トラッドな中にもスポーツするマインドを封入したプロダクトを多く持つインディアン。クルーザーメインのラインナップにあって、そのミドルクラスを担当するスカウトシリーズが2025年モデルとしてフルモデルチェンジを受けた。その中からもっともスポーティーな101スカウトの試乗速報をお届けしたい。新しいシャーシ、新しいエンジン、そしてアップデイトされたエレクトロニクス装備を得たスポーツクルーザーはどんな走りだったのか。サンタクルス~サンフランシスコ間で味わった。

 

その歴史、なかなかなバンピーロード。

『アメリカ初のモーターサイクルカンパニー』──インディアンモーターサイクルのWEBサイトの中にある「インディアンについて」から「当社の歴史」と進むとそんな文言が躍る。その歴史をひもとくと1897年にジョン・M・ヘンディーがヘンディーマニファクチャリングカンパニーという自転車メーカーを創設したことに始まる。実際にインディアンという名前が社名となったのは1923年のことだった。

 1901年には創業地、マサチューセッツ州のスプリングフィールドに工場を開設し自転車にエンジンをドッキングしたモデルの生産を開始。これはレース用だったという。
 その後、1903年にはニューヨーク~スプリングフィールド間を往復するレースで勝利を収め、1906年にはサンフランシスコ~ニューヨーク間を31日で走破するなど、バイクの創成期を飾る冒険行でのアジリティーと性能、耐久性を大いにアピールした。
 またその年には最初のVツインエンジン搭載のファクトリーレースバイクを造り、1907年にはVツインエンジンの市販モデルを送り出す。
 1914年にはサンディエゴから東海岸までの大陸横断を11日と12時間10分で成し遂げ、翌年にはさらに記録を塗り替えてみせた。
 その高性能と信頼性によりインディアンが得た信頼で、第一次大戦時にはアメリカの軍用バイクにも採用され社会にも定着。その後もソーシャルサービスへの供給は続けられた。
 

 
 さて、スカウトの起源は1920年まで遡る。信頼性と操作性に優れた高性能バイクとしてリリース。チーフシリーズが誕生する2年前のこと。このラインナップでインディアンはさらに成長を続けた。映画でおなじみ「世界最速のインディアン」に登場するバート・マンロウの愛車は1920年モデルのスカウトだという。
 そして、1928年、スカウトの高性能モデル、101スカウトが登場。750㏄の排気量の空冷Vツインを搭載し、最高速度が101マイルだったのが車名の由来だ。

 ざーっと駆け足で101スカウトとインディアンの歴史を紹介したが、1953年にはインディアンは全モデルの生産を中断。長い休眠期となる。途中、1970年代にはイギリスの企業がブランドを買収し、イギリス製のバイクにインディアン名のエンブレムを着けて販売したり(1977年に終了)、1998年にはカリフォルニアのギルロイで再びインディアンが再興しチーフ、スカウトを生産したが、現在へと続く飛躍の原点は2011年にポラリスがインディアンを買収したことから始まる。モデル群を建て直し、2014年には先代スカウトをリリース。ミッドサイズセグメントで高い評価を受けボリュームセラーとなった。以降、フラットトラックでのチャンピオンの獲得や、キングオブバガー、スーパーフーリガンなど、アメリカローカルのモータースポーツでインディアンは名を上げ続けている。
 

 

アルミから鉄へ。
スポーツマシンを主張する足周り。

 ポラリス時代になってからチーフ、チーフテン、そしてスカウト、さらにFTRが登場し、歴史に名を残すスポーツライクなイメージ、タフさ、プレミアムさ、といったブランドイメージを土台にプロダクトが作られている。スカウトはその中でもミッドレンジクルーザーであり、インディアンにとって重要な量販モデルだ。

 そのスカウトが2025年モデルとしてフルモデルチェンジされた。前後16インチを履くスカウト・クラシック、スーパー・スカウト、そしてスカウト・ボバー。フロントに19インチを履くスポーツ・スカウト、そしてここに紹介する101スカウトの全5モデルが登場。
 前作のスカウトが登場したのが2014年。アルミダイキャストフレームを使い、水冷60 度Vツインを搭載。その排気量は1130㏄だった。新型ではメインフレームに鉄フレームを使っている。同等の車重を維持しながら隅々までデザインされたエンジンをしっかりと視覚的に見せることも大きな理由のようだ。

 リアサブフレームはアルミダイキャストを使い、ダイキャストが可能にした薄肉化された構造で、シート下に電子制御関連で増えたパーツを納めている。シート下の黒いサイドカバーのように見えるのがサブフレームそのもの。シート下の空間を拡げつつザラっとした鋳物の肌を外観意匠に取り入れているのだ。
 

エンジンの外観意匠への拘りは先代スカウト同様。燃料タンクの下部が緩やかなラインを描いている部分やステアリングヘッドから伸びるダウンチューブがスワンネックのようにS字を描く部分はインディアンの歴史的なデザインから印象されているという。また、シート下、サイドカバーに見える部分はリアフレームの一部。アルミダイキャスト製だ。アルミ鋳型で作られた表面と金属のマテリアルが伝わる。

 
 そしてエンジン。排気量を1250㏄へと拡大。ストロークは従来通りだが、シリンダーボアを6mm拡大。バルブの大径化と燃焼室の形状変更も行われ圧縮比は10.7 :1から12.5:1へと高められた。これは振動の低減を狙ったケースや新型クランクを採用した新設計となっている。冷却効率を高めつつも、ラジエターの面積も20%小型化している。最高出力も97馬力から105馬力へ。101スカウトではECUのチューニングを変更して111馬力(US仕様)へとなっている。
 

ラジエターを細身縦型としてフレーム幅に収めることでスッキリとエンジンが見られるようになったのも新型の特徴。鉄フレーム採用の恩恵もそこに加わる。

 
 また、2本出しだったエキゾーストは1本サイレンサーとなった。マフラー位置を低く抑えることでサドルバッグを装備するモデルや、オプションでそれを装着する場合のラゲッジスペース拡大も狙ったという。こうしたアクセサリー関連でも共用化することで拡張性を持たせたのも特徴だと語っていた。
 

101スカウトのエキゾーストはブラックサテン仕上げ。そのサウンドチューンはしっかりとクルーザーマインドと回した時のパワフル感もライダーに伝えてくる。

 
 これらの進化により10年以上先まで見据えたモデルチェンジだ、と彼らは胸を張った。
 その中で101スカウトの特徴も解りやすい。それは足周りを見ただけでも明解だ。キングオブバガー、スーパーフーリンガンレースで認識されているインディアンのスポーツ性、高性能をそのままパッケージした作りになっているからだ。その特徴を列挙すると……、
●φ43mmインナーチューブを持つ倒立フォーク
●Φ320mm径のダブルディスク+ブレンボ製ラジアルマウント4ピストンキャリパー。
●ピギーバックスタイルでサブタンクを備えたリアの2本ショック。
●6インチのライザーで上方に位置するハンドルバー。
 

アッパーブラケットなどはライザー装着を全体とした101スカウト用のパーツ。オフセットなどは他のモデルと基本同様だという。

 
●前後のサスはフルアジャスタブル。
●105馬力→111馬力へと高出力化されたエンジン(ECUチューン)
●F:130/60B19 R:150/80B16メッツラークルーズテックを採用。
●専用外装塗装とグラフィック
 

デザイン開発の時期、世界的なパンデミックによりリモートによるデザイン工程が進められたという。しかし3D CADのデータを画面上で見ていてもどうしても共有できなかった、というのがエッジが次第に薄くなり他の面の中に消えてゆくようなラインだったという。クレイモデルを前にラインの触感を頼りに最後まで仕上げたという逸話を持つ燃料タンク。

 

 
●TFTモニター、トラコン、ライディングモードなどを装備。
●専用ビキニカウルの装備+LEDヘッドライト(写真はオプションのさらに高性能なLEDライト)

 これらがどんな走りを感じさせてくれるのか。試乗ルートはカリフォルニア北部、サンタクルーズからサンフランシスコ間の市街地、フリーウエイ、そして彼らがバックロードと呼ぶ山間部を抜けるワインディングで確かめた。
 

自分がクルーザーの一部となるライディングポジション。

 タイムレス、シンプル、クリーン、カスタムがカギ。そんな思想からデザインされたスタイルはインディアンの歴史とアメリカ発のクルーザー文化を色濃く合わせたもの。有り体に言えばロー&ロングなのだが、その中に古のインディアンから受け継がれたフレームが持つ曲線、シルエットのアウトライン、V型エンジンの角度といったディテールが丁寧に映しとられている。
 101スカウトのライディングシートはいわゆるガンファイターシートで、その前端は細身のフレームに合わせてしっかりと絞り込まれている。シート高も700mmを切るような低さで、足着き性に不安がない。250㎏ほどの車重は軽くはないが、低い場所に重量物が収まるので全体にまとわりつくような重さを感じずに済む。

 そして6インチのライザーで高めの位置にあるハンドルバーと、バーエンドから上向きにも下向きにもセットできるミラーがある。下向きに装着すればバイクのスカイラインをすっきりとみせることも可能だ。ビキニカウルが金色のアウターチューブをもつフロントフォーク上部に被さっているのもスポーツモデルらしいディテールだ。

 183㎝の私が跨がるとシートの後端に尾骶骨を当てて、ステップに乗せた足が90度に曲がるような印象だ。自然にニーグリップも出来るし、体勢が決まっているので走り出す前から一体感がある。
 同機種でも装備レベルで、リミテッド、リミテッド+テックというグレード分けされる新型スカウトシリーズ。その中でももっとも装備レベルの高いリミテッド+テックを標準装備する101スカウト。車体左側、エンジンのシリンダーの間にあるメインスイッチを押すと、TFTモニターも起動。ちょっと待ち時間はあるが、綺麗でグラフィカルな作画でアナログメーターや設定画面、情報画面を見ることができる。佇まいはトラッド。でもただただクラシック路線ではないコクピット周りがいい。現地ではナビもメーターに表示されていた。
 

 

走りは期待どおり。

 エンジンはスムーズにアイドリングをする。マフラーからの音はしっかりクルーザーライクなものだが、ゆさゆさ揺れるような振動の伝え方はしてこない。スポーツライクなユーザーがターゲットでもあり、世界で量販することを考えたらインディアンブランドのイメージ通りのものだと感じた。
 軽く操作できるクラッチを離す。軽量化されたクランク、1250㏄と前作よりも117㏄拡大されたエンジンが生み出す低回転でのトルクはスムーズ。ビッグバルブ化やエアボックスも最適化された恩恵は、低開度、低回転からのスムーズなトルクに貢献しているようだ。

 シフトタッチやストロークも適切。燃料タンクの軽量化もあり、市街地、右折(日本でいうところの左折小回り的な90度ターン)でもバイクの所作を軽く感じる。信号待ちでは両足がしっかりと地面を捉えられるから安心かも高い。クルーザーとしてのスタイルを持ちながら、一言で表現すれば乗りやすいバイクにまとまっている。
 前後のサスペンションの吸収性が高く、平滑とは言えない市街地のアスファルト路面をスムーズに吸収してゆく。ロー&ロングだから跳ねるだろうな、とは思ったが真逆な印象だった。
 

 
 そしてフロントのブレーキがスポーツバイク的な装備を持つこともあり、ネイキッドバイク同等の制動力と微少タッチでもしっかり減速できる安心感がある。320mmとスポーツバイク並のローターサイズ、パッドの選択も適切。合わせてフロントフォークやタイヤとのマッチングも自然に感じるほどまとまっている。
 ワインディングでは101スカウトの良さをさらに確認できた。巨木が居並ぶ山間路を抜ける道で、S字、ヘアピン、そしてカーブごとにカントが着くなど変化に富むワインディングが連続する。ペースアップして101スカウトを試すと、4000、5000、6000rpmと引っ張るほどにトルクとパワーが怒濤の加速感を楽しませてくれる。このカーブとカーブの間を切り取るように加速し減速しながら走るのがめちゃくちゃ楽しい。

 時折巨木の根だろうか。大蛇がアスファルトの下を這うように横断する場面がある。カーブの途中にあればアウトにカッ飛ぶことになる。それでも容易に安定性を失うことなくタイヤのグリップを活かしながらワインディングを走り続けられる。
 最初、150サイズのリアタイヤに「足りる?」と思ったが、ナチュラルなハンドリングとスムーズかつ軽い倒れ込み、そして充実なグリップ感でそれが杞憂だったことがすぐに解った。カスタムしたい! と言う向きにはフェンダーやスイングアームとのクリアランスが楽勝で180サイズあたりまでは許容できそうだ、と伝えておこう。ま、見た目重視もクルーザーの道だが、太いタイヤで旋回感が減退するなら101スカウトでは勿体ない気もする。細身タイヤでも存分に楽しめたことはあらためて伝えておく。
 クルーザーで飛ばす? 今のクルーザーはそんな要望にも応える。そのためにスカウトには101スカウトがあるのだ。ツーリング、スタイルに合わせて5機種あるうち、最もスポーティーなのがこのモデルなのだ。
 

 

そしてサンフランシスコ

 夢のようなワインディング体験のあと、左右に広がる荒れ地の中を抜けるフリーウエイで北上した。次第に大きな町がせまってくる。サンフランシスコだ。クルーズコントロールを効かせ、スイッチ一つで加減速を操りそこそこの交通量の中でも快適に入り続けられる。ここでも前後サスの快適性は充分に確認できた。数時間のライディングで多少尻は痛くなったが、それでもこのバイクの快適性を含め確認ができた。円高基調の今、価格がどの程度になるかが気になるが、スカウトシリーズの頂点モデル(走りも装備も)だけに、為替換算だとちょっとお高い感がでるが、国内でどの程度の価格になるのか、そこは注目したい。

 試乗した印象として残ったのは、ミッドサイズという選択肢は大いにあり、だということ。この101スカウト、塗装もエンジン意匠も、装備も含めUSで乗ったモデルで言えばナットク、欲しくなる要素がしっかり詰まっていたからだ。
(試乗・文:松井 勉、写真:インディアンモーターサイクル)
 

 

●Indian Motorcycle 101 Scout主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストロークDOHC60度V型2気筒 ■総排気量:1250cc ■ボア×ストローク:104.0×73.6mm ■圧縮比:12.5:1 ■最高出力:82kW(111PS)/–rpm ■最大トルク:109N・m/6300rpm■全長×全幅×全高:–×–×–mm ■軸間距離:–mm ■シート高:680mm ■車両重量:249kg ■燃料タンク容量:13.0Lv■変速機形式:6段リターン ■ブレーキ形式(前・後):ダブルディスク(セミフローティングローター)×シングルディスク(フローティングローター) ■ホイール(前・後):19×3.5インチ、16×3.5インチ ■タイヤ(前・後):Metzeler Cruistec 130/60B19 61H・Metzeler Cruistec 150/80R16 77H ■車体色:サンセットレッドメタリック、ゴーストホワイトメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税込み):2,680,000円〜

 



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2024/06/12掲載