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レース・イベント

カワサキKX50周年 ライムグリーンの勇者達
■文・撮影:高橋絵里




1973年に量産販売が開始され、今年50周年を迎えたカワサキ モトクロッサーKXシリーズ。12月2日、『KX50周年を祝う有志の会』が兵庫県明石市内のホテルで盛大に開かれた。カワサキ二輪事業とレース活動の黎明期より携わったカワサキOBを始め、往年のライダーと関係者およそ80名が一同に、懐かしい再会と半世紀に渡るエピソードの数々、KX談義で歴史的なひとときを祝った。

 カワサキのモトクロスレース史で最初の快挙といえば、KXの販売初年からさらに10年遡る1963年のことだ。『B8M』という名のそのマシンはフレームの上に赤いタンクを乗せていて、社内チームを作り初出場したMFJの兵庫大会で、当時1万人の観衆のもと、なんとB8Mが1位から6位までを独占した。カワサキモトクロスの歴史はそこから急速に具体的になり、市販車も販売され、当時は『赤タンクのカワサキ』と呼ばれ人気だった。
 その後さらに進化した『赤タンク』F-21Mと共に、ファクトリーライダー故・山本隆氏がMFJ全日本MX初代チャンピオンに輝いたのが67年。そして72年になると、社内技術部にレースマシンの開発とレース運営を専門に担当する『開発1班』が誕生する。KXの歴史は、ここから動き出した。
 ブランド力のアピールを目的に1973年初代KXからライムグリーンという新色を起用して(ロードレースでは1969年のデイトナ200マイルで、ファクトリーマシンのA7RSとA1RASがライムグリーンを身に纏い参戦している)、以来KXシリーズは、一度たりとも開発と生産、レース参戦を中断することなく、KXの車名を変えることもなく、世界中で多くのチャンピオンを輩出し、多くのモトクロスファンに愛され続けている。
 

岡部篤史選手がライドした1985年チャンピオンマシンKX125SRとAMAタイトル9回をカワサキで叶えたライアン・ヴィロポート選手のジャージが展示された。

 
 会場には、赤タンク時代のレーサーやチャンピオン獲得ファクトリーマシン、歴代ワークスライダーのギアや写真が展示されてKXの歴史を盛り上げる。そして会が始まると、63年のB8M時代からレース事業に携わった古谷氏、72年開発第1班の初代班長さらにKRT初代監督を務めた百合草氏を始め、錚々たるカワサキOBの皆様が当時の貴重なエピソードの数々を披露した。
 70年代~90年代にカワサキで活躍したライダートークショーでは、今だから笑って話せる当時の際どい話も続出して会場を沸かせた。元ライダーの皆さんの中には、当時のメカニックやエンジニアの方々と数十年ぶりの再会した人も多く、積る思い出話が尽きることはなかった。
 2024年モデルのKX450・50周年記念モデルには、各部最新技術の投入と共に90年型KXのグラフィックをオマージュしたデザインが採用されている。当時を知る人には懐かしく、また若い人には新鮮かつ斬新な印象に映るKXが、来シーズンも国内外のレースで勝利する姿を楽しみにしたい。
(文・撮影:高橋絵里)
 

開会の挨拶をするカワサキOBの古谷錬太郎氏。60年代よりカワサキレース活動開始に携わり、レース、広報、マーケティング分野で二輪事業発展に尽力。90歳の現在も大変アクティブに毎日1万歩を歩き、ご自身のブログ『雑感日記』を日々アップデート、カワサキオートバイ史の生き字引的存在として知られる方だ。
乾杯の音頭は“KXの父”カワサキOB百合草三佐雄氏。KX開発1班初代班長、カワサキレーシングチーム(KRT)初代監督、その後USカワサキへ出向し『チームグリーン』を創設してKXの世界的販売の基礎を築いた。“カワサキ究極のモトクロッサー”の意味を込めた車名KXの名付け親でもある。

 

プライスレスなお宝を秘蔵する大阪のPROSTOCKさんが展示協力を担当。往年のカワサキライダーのギア、レース写真、カタログなどで会場を飾った。

 

会の開始前にはカワサキOB大津信氏より、今年逝去されたカワサキライダー山本隆さん(享年80歳)、多田洋之さん(享年59歳)についてのお知らせがあり、全員で黙祷を捧げた。
アールエスタイチ相談役の吉村太一氏。1970年スズキでチャンピオン、その後ホンダへの電撃移籍は業界の伝説でもある。カワサキとの関連は?というと2021年よりカワサキサテライトチーム『マウンテンライダース』のボスとして全日本MX参戦中。カワサキ重鎮の方々から「タイッちゃん!」と親しまれる。

 

『赤タンクのカワサキ』では最終型のF6MXも展示。1973年シーズンの全日本MXでカワサキOBの安井隆志氏がライドした実車、今もとても美しい状態で保管されている。

 

マイクを持って進行役の安井隆志氏が、ロードレースのカワサキワ-クス塚本昭一氏を紹介、恐縮しきりの塚本氏。実は84年にロードレースに転向するまではモトクロスKXで活躍していた、とのエピソードに「そうだったんですか!」とどよめく会場。
ワークスライダー思い出トーク、向かって左から立脇三樹夫、岡部篤史、瀬戸康一、伊田井佐夫、花田茂樹の各氏。伊田氏はホンダでチャンピオンを獲得してファンにはカワサキのイメージが薄いが「A級に上がって4年間は明石に住んで頑張っていました。」

 

 

チームグリーンライダートークは向かって左から永井久道、城田賢一、益留信太郎、調所伸一、行方正敏、竹元久、司会役の藤城光雄の各氏。平井稔男監督の思い出話も熱かった。
体調の都合で欠席の平井監督からはビデオレターでメッセージが届き、会場全員が感動。オリジナル『平井監督Tシャツ』で氏の回復を願うライダーも多かった。

 

KX50周年記念車のデザインについて解説する、元カワサキデザイナー松見康祐氏(右)と熱心に見入る安井氏。KAWASAKI USAがKX50年の歴史の中で最もエポックメイキングと評価する90年型KX250のグラフィックをモチーフに、KX50周年記念グラフィックが出来上がった。

 

全日本モトクロス85、87、88年のIA125チャンピオンであり、そして89年のIA250チャンピオン岡部篤史氏による1本締めで会は締めくくられた。
全日本モトクロス85、87、88年のIA125チャンピオンであり、そして89年のIA250チャンピオン岡部篤史氏による1本締めで会は締めくくられた。

 





2023/12/13掲載