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レース・イベント

「8月のアジアクロスカントリーラリーが戻ってきた」 青木拓磨が歴史的快挙を達成!
■文・写真:青山義明 ■協力:R1ジャパンhttps://www.r1japan.net/axcr/




年に一度のアジア最大のラリーレイド「アジアクロスカントリーラリー」がコロナ禍を経て2023年大会は例年通りの8月開催となった。毎回多くの日本人が参戦しているが、今大会にも、サイドカー部門、二輪クラスに、10台12名の日本人が参戦した。そして元WGPライダーでテスト中の事故で車いす生活を余儀なくされながらも四輪ドライバーへ転向し活躍をしている青木拓磨氏が今大会で総合優勝を果たした。

MOTO(二輪)部門を制したのはジャクリット・ジャワテル選手
日本人最上位は西村裕典選手

 アジアクロスカントリーラリー(AXCR)は、東南アジアを中心に開催されるFIA・FIM公認国際クロスカントリーラリーのひとつで、初開催は1996年のこと。タイ王国、マレーシア、シンガポール共和国、中華人民共和国(雲南省)、ラオス人民民主共和国、ベトナム社会主義共和国、カンボジア王国、ミャンマー連邦共和国などこれまで8カ国でコースを設定。東南アジア特有のさまざまなコース、夏の雨季の中を走り抜けるイベントとなっている。日本からの参戦も見込み、夏のお盆時期に開催することでもお馴染みだが、2020年(第25回)、2021年(第26回)とコロナ禍の影響で開催はキャンセル。3年ぶりとなった昨年の大会は11月開催と、日程が大幅に移動された。しかし、コロナ禍明けの今回はこれまで通り8月(8月13日~19日)、タイとラオスを舞台に開催となった。
 

レースウィーク初日となる8月13日、パタヤのウォーキングストリートで全選手が一堂に会してセレモニアルゲート前で記念撮影を行い、その後セレモニアルスタートとなった。

 
 
 今回のエントリーはモト(二輪)部門で21台、サイドカー部門で1台の22台が参戦(四輪は41台が参戦)となり、関係者を含めると500名以上、移動車両は総数200台を超えるという規模となった。アジアでのラリー熱も盛り上がっており、現在もタイやインドネシアなどからの参戦の問い合わせも多く、今後さらに大きなイベントになっていく可能性も高い。

 今回はタイの観光都市パタヤをスタートし、ひたすら東南東へ移動しながらラオスに入り、ラオスではパクセーをベースに3日間の競技を行い、最後は世界遺産であるワット・プーでセレモニアルフィニッシュを迎えるコース設定。真夏のタイおよびラオスということで、暑かった今年の日本とほぼ同じような猛暑の中でのラリーとなった。雨季と言いながらも、タイ国内はそれほど雨の影響はなったが、ラオス側は前週からの豪雨もあってラリー後半はスタックの嵐になるに違いないとうわさされていた。
 

SS上には牛がコースを横断するようなシチュエーションがあり、さらに沿道では子どもたちが応援する、そんな中、各選手は駆け抜けていく。

 
 好天が続いたタイでのステージは、乾燥した赤土路面の高速ステージとなった。ラリーがスタートしてみると、初日からマップの精度の問題からか、コマ図の読み取りが難しく、ミスコースをするものも多く、また、サイドカーの渡辺/大関組は転倒を喫するなど波乱の幕開けとなった。
 その初日の前半セクションでは四輪競技車同士の正面衝突事故も起きており、翌日このセクションのタイムとペナルティを抹消する判断が下された。2日目の走行を終えたところで、トップを行くのは#17ジャクリット・ジャワテル選手(JC DIRT SHOP Rally Team /KTM-500 EXC-F/M-2)で、これを日本の#1西村裕典選手(Team Japan/HUSQVARNA TE250i/M-1)、そして#10 山田伸一選手(Team OTOKONAKI/HUSQVARNA FE450/M-2)が追いかける展開となった。この時点でこの上位3台が7時間を切っているが、4位の選手は7時間40分と、大きく引き離された展開となっていた。各車2分ずつの間隔でスタートしていくが、モトとオート(四輪)の出走時間は間に1時間のインターバルを設けている。それでもミスコースをして二輪が四輪に追いつかれてしまう状況も多く、日々の走行による体力消耗だけでなく、この四輪との走行のストレスも参加者の重くのしかかっていく。
 

昨年は参戦を見合わせていた#17 Jakkrit CHAWTALE選手(JC DIRT SHOP Rally Team/KTM-500 EXC-F/M-2)がぶっちぎりの優勝。
優勝したジャクリット選手には及ばなかったものの#1 西村裕典選手(Team Japan/HUSQVARNA TE250i/M-1)が総合2位(14時間35分37秒)に。

 
 タイでの競技最終日となる3日目、この日も#17ジャクリット選手の速さは変わらずでトップタイムをマーク。日本人最上位はトップから22分遅れの#15 砂川保史選手(Team OTOKONAKI/KTM EXC 350-F/M-2)の4番手であった。総合で2番手につけていた#1西村選手はこの日8位となり、3日間トータルでその差は56分に広がり、#17ジャクリット選手が独走状態に持ち込みつつある、といったところだ。
 

川渡りの設定も多いが、二輪には近くの橋を通るようなコース設定もなされている。が、こういったつり橋もそれなりに危なっかしいものだったりもする。

 
 競技4日目は、日の出前からホテルをチェックアウトし、全車がラオスへの国境を目指す。チョンメッグの国境を越えた競技車両は、左側通行から右側通行へ変わったラオスの公道を走り、国境を越えてすぐのところに設定されたSSのスタートポイントに集結。好天に恵まれた午前9時半過ぎには前日のタイム順で、17号車からSSに入っていく。
 ラオスのSSはタイのそれとは異なり、容赦なくマシンとそのライディング技術を試す。易々とはクリアさせないといわんばかりの水場、激しい轍や深い穴の開いた路面を乗り越えて最初にサービスに戻ってきたのはやはり17号車だった。この日も前日の好調さを持続しているチームカンボジアの2台が2-3位に入り、日本人トップは西村選手の4位だった。総合1-2は変わらなかったものの、総合3位だった#10山田選手は順位を5位にまで下げる結果となった。
 

ラリー後半で好タイムを出してきた#2 Koun Phandara選手(Team CAMBODIA/KTM 450EXCF/M-2)は総合3位(14時間58分02秒)に。
6位に入ったのは#20 高橋祥介選手(Team OTOKONAKI/HUSQVARNA FE350/M-2)の16時間47分06秒。

 
 迎えた5日目。当初は167kmのSSが設定されていたのだが、120kmの中間地点PCストップまでのコースに短縮された。今回のAXCR後半のハイライトとなっていた川渡りが、雨による増水のため、危険と判断されたのだ。距離は短くなったものの、路面は非常に滑りやすい状況が続いていた。そんな中、トップタイムを刻んだのが#15 砂川保史選手(Team OTOKONAKI/KTM EXC 350-F/M-2)であった。
 

後半5日目にデイトップをたたき出した#15 砂川保史選手(写真右、Team OTOKONAKI/KTM EXC 350-F/M-2)は総合5位(15時間56分54秒)に入った。#3松本典久選手(写真左、Team OTOKONAKI/KTM EXC 350-F/M-2)は最終日に大きくタイムロスして総合7位(16時間59分20秒)。
ラリー期間中はほぼ好天に恵まれていた。後半のラオスも夜半のスコールがあった程度。比較的乾燥した路面での走行が中心となった。

 
 最終日は52kmほどのショートSSが設定されたが、この最終SSでも最速タイムをたたき出して、初日から総合トップを一度も譲らなかった#17ジャクリット・ジャワテル選手(JC DIRT SHOP Rally Team /KTM-500 EXC-F/M-2)が13時間24分46秒というタイムでぶっちぎりの優勝を飾った。2位には14時間35分37秒で日本の#1西村裕典選手(Team Japan/HUSQVARNA TE250i/M-1)が入った。
 

ラリー序盤からトラブル続きとなってしまったサイドカーの#66 渡辺正人/大関政広(Rising Sun Racing with JRSA/URAL GEAR UP/34時間20分38秒)。現在ウラルはカザフスタンで生産されており、この車両もカザフスタン製。

 
 そして今大会では、驚くべき記録が誕生した。オート部門に参戦している#105 青木拓磨/イティポン・シマラック/ソンウット・ダンピパットラコーン組(TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA(TOYOTA Fortuner/T1D)が参戦開始17年目、14回目の挑戦にして初めての優勝を遂げることとなった。過去最高位は2011年の総合3位だった。FIA(国際自動車連盟)公認のクロスカントリーラリーで障がい者が優勝をするのはこれが史上初のこととなる。そして2位には同チームの121号車が入り、大会史上初となる同チームによるワン・ツー・フィニッシュも達成している。
(レポート・写真:青山義明)
 
 

2017年のAXCRから使用しているSUVモデルであるトヨタ・フォーチュナーの青木拓磨選手が17年目14回目にして初めてAXCRで優勝した。

 



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2023/09/01掲載