電動オフロードバイクであるGOWOW ORI(中国のMODE社製)のフレームは、アルミでできており、形状はレーサレプリカ時代を思い出させるアルミツインスパー。ステム付近はボックス構造になっている。そのツインスパーの間に差し入れるように73.8V 38.4Ahのバッテリーをレイアウト。リアホイールをチェーンで駆動する電気モーターはバッテリーの下、スイングアームピボットの前。重いものを車体の中心に近づけてマスの集中化を図っている。
アルミスイングアームでリアサスペンションはリンク式。スイングアーム単体を持たせてもらったけど、シンプルで軽く溶接もきれいだった。倒立フロントフォークとトリプルツリーはトライアル車のように細身でインナーチューブはアルミ製だからこれもスイングアーム同様に軽い。車両重量はたったの73kgだ。これもトライアル競技車両と同じくらい。普通に街を走っている50cc原チャリスクーターより軽い。
写真だとサイズ感がわかりにくいだろう。人間との対比で小さいのは伝わるかと思うが、数値では、全長1900mm、全幅780mm、全高1100mm。全幅はオフロード向けに幅のあるアルミテーパーバーにグリップを取り付けた値だから、実際の車体は白く細長いオフロードタイプのシート幅くらいしかない。前から見るとゴールドアルマイトのフロントフォークより外にはみ出していないくらい。ホイールベースは1275mm。ホンダのCT125ハンターカブが1260mmだから近い。
ものすごくコンパクトで、オフロードバイクとして必要な最低地上高280mmを実現して、やっぱり凸凹したダートを走るのに必要なサスペンションストロークが前後200mmあるから、シート高は890mmと足着きにこだわる機種が増えてきた昨今では低いものではない。だけど車体が細身なので身長170cmで残念なくらい短足でも、両足の拇指球まではしっかり届いた。何より軽いから大きく傾いてもかんたんに支えられる。
クラッチレバーはなく両手ブレーキ。走れる状態にしてスロットルを開けるとおもしろいように加速、すぐにふかふかのダートへと突撃。排気音はないがモーターやインバーターのシュルシュルシュルと力強い音がするから無音ってわけじゃない。ただ回転を上昇させて進むレシプロエンジンと違い、速度が上がっても音はそれほど大きくならないという電動モービルでは当たり前だがまだ慣れない感覚。
フロントホイールは19インチ、リアホイールは18インチの外径と、一般的なオフロードバイクと比べるとフロントが小径だけど、凸凹をサスペンションが吸収しながらぐんぐん走破していけて実におもしろい。これまでのようにフロントフォークを縮め荷重をかけてコーナーに入って、タイヤをグリップさせくるっと向きを変えながらパワーをかけていく一連の動作が普通に気持ちよくやれてしまう。
4つの出力モードから選べ、最も穏やかでも十分で、その上にいくほどニヤけるパワフルさ。いちばん力強いモードを選ぶと駆動軸トルク420Nmと強力な力を出す電気モーターが本領発揮してぐいぐい速度が伸びる。やっぱり回転数によってトルクの波がある旧来のエンジンよりも、トラクション変化が少なくて、フルスロットルしてもフロントを上げることなく突き進む。これは、サスペンションや車重、マスの集中化の恩恵もあると思うが、加速フィーリングは独特だ。
スイングアームにスプロケットをつかったチェーン駆動だから動きは慣れ親しんだこれまでのバイクと同じ。かねがねオフロードとトライアルの分野は電動との親和性が高いと思ってきたが「もうここまできたのか」と感嘆した。かなり小気味良い乗り物になっている。ふかふかの土や湿った土のところではリアタイヤが横に逃げることもあるが、コントロールするのが楽だ。やりやすい。
気がつけば夢中で走っていた。スタイルは斬新で、慣れ親しんできたカタチとは違うけれど、乗って走って笑顔になれる楽しさがあるなら何の不満もない。未来ではなくこれが税込121万円で買えるのである。WLTCモードで航続距離は100km。最大登坂角は55度。ならば、これでエンデューロレース、クロスカントリーレースに出てみたい。そういう遊び心が芽ばえる走りだった。
(試乗・文:濱矢文夫、撮影:富樫秀明)
■最高出力:9kW ■駆動軸トルク:420N・m ■全長×全幅×全高:1,900×780×1,100mm ■ホイールベース:1,275mm ■シート高:890mm ■車両重量:73kg ■航続距離:100km(WLTCモード) ■バッテリー:73.8V 38.4Ah ■充電時間:3.5h ■タイヤ(前・後):70/100-19・3.50-18■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,100,000円
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