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水素エンジンバイクもあり? 国内4メーカーが水素エンジンの技術研究組合を設立
カーボンニュートラル、といいながらもただ電動化に舵を切るのではなく、さまざまな方法でCO2削減を目指していく、ということのひとつがこのHySEという次活動につながった。

2023年5月17日(水)、都内で「水素小型モビリティ・エンジンにおける技術連携に関する報道関係者説明会」が開催された。カワサキモータース、スズキ、本田技研工業、ヤマハ発動機の4社による「水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合 Hydrogen Small mobility & Engine technology=略称:HySE(ハイス)」の設立に向け、経済産業省の認可を得たこと発表した。


 設立が予定されている「HySE」は小型モビリティ向け水素エンジンの基礎研究を目的とした技術研究組合。水素を利用するというと、水素から発電をして電動車両(燃料電池車)というイメージがあるが、今回は水素を燃料として燃やす、エンジンについての研究である。その水素を燃料にして燃焼することについては、4輪メーカーの中ではトヨタ自動車がスーパー耐久シリーズに2021年から水素エンジン車で挑戦を続けている。

 水素は、ガソリンと比較して、約9倍燃焼速度が速く、約14倍着火領域が広いことで、異常燃焼など燃焼が不安定になりやすいという。これに加え、小型モビリティ(二輪だけでなく、軽四輪、小型船舶、建設機械、ドローンなどを指す)では、燃料となる水素をどのように搭載していくのかといったことも課題となる。それをこのHySEで国内2輪メーカー4社が集まって難題に取り組んでいき、この共同研究を通し、各々が競争力を持つ製品開発につなげ、脱炭素社会への貢献をしていくことになる。


 この発表会には、ヤマハ発動機の日髙祥博代表取締役社長、カワサキモータースの伊藤 浩代表取締役社長執行役員、スズキの鈴木俊宏代表取締役社長、本田技研工業の塚本飛佳留二輪パワープロダクツ開発生産統括部長がこれに出席した。ちなみに「HySE」の二輪メーカー4社(正組合員)に加え、トヨタ自動車(研究推進特別組合員)と川崎重工業(事業管理特別組合員)が参画する。


 ヤマハ発動機の日髙社長は「この度、国内二輪車メーカー4社は HySEの設立に向け、経済産業省より認可をいただきました。皆さまもご存知の通り、水素は大きな可能性を秘めた次世代クリーンエネルギーの1つです。マルチパスウェイという動力原戦略の観点においても、各方面から期待や注目を集めております。 しかし、一方でまだまだ技術的な課題も多く残されている分野でもあります。技術研究組合HySEは、これらの課題に対し、各社の知見や技術を持ち寄ることで、水素エネルギーに関わる研究開発をさらに加速させていくための機関として設立を目指します。その主な研究開発内容は、水素エンジンの研究、水素充填システムの検討、燃料供給系統システムの検討など小型モビリティ向け、水素エンジンシステムの基礎研究です。カーボンニュートラルの実現に向け、各社では今、EV開発を加速させております。お客様が使用されるにあたって、十分な性能、また、許容できる価格の両方を満たす、魅力的なEV製品を、スピード感を持って開発し、電動化へのシフトを進めていかなくてはなりません。しかし、カーボンニュートラルへのアプローチには、別の選択肢も不可欠です。バッテリーEVを軸としながらも、幅広く、技術の引き出しを持っていなくてはなりません。水素はそうした選択肢の中でも、特に注目株の1つと考えております。国内においては、水素インフラの整備を進めていく方針もあり、また、使う仲間を増やす活動として、自動車レースを含めさまざまな展開がなされております。二輪車を含む小型モビリティ領域においても、これらに応じた準備が必要であり、私たち二輪車メーカーが力を合わせて研究を進めることで、グローバルに仲間を増やすきっかけにできると考えております」とコメント。そして「二輪車の動力源の主役は、常に内燃機関が担ってきました。各社がそれぞれに技術を磨くことで、エンジンは日本製二輪車の大きなストロングポイントの1つになっています。そして、水素は先人たちが時間をかけて磨いてきたその強みを活かせる研究領域だと考えています。私たちは、この技術文化を次の世代にもつなげていくという使命感を持ちながら、この活動に取り組んでまいります。国内二輪車メーカーの競争によるその成果と水素の可能性にぜひご期待ください」と締めくくった。

 発表会ではHySEの概要説明がなされ、HySEの理事長候補となる、ヤマハ発動機の小松賢二執行役員は「5年以内に何かしらの成果を出せるはずです」とコメントしてくれた。今後の我々の選択肢の一つとして水素エンジンバイクが登場するのか、この活動の成果に期待をしたい。

(文・写真:青山義明)

4社がそれぞれ主導役を担当することになるが、ワーキンググループは全社のスタッフが入り乱れての混成チームでの活動となる。








2023/05/18掲載