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試乗・解説

プロジェクトBIG-1、30周年 CBはいつもバイクの基準、根っこ、代名詞 Honda CB1300 SUPER FOUR-SP 30th ANNIVERSARY
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:松川 忍 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニクシタニ https://www.kushitani.co.jp/




1991年モーターショー ホンダの隠し玉

 あの日の衝撃はよーく覚えている。1991年の第29回東京モーターショー。日付を調べたら平成3年10月24日木曜日。
 その頃ぼくは、いまWEBミスター・バイクを制作している株式会社 東京エディターズに在籍していて、ミスター・バイクBGの編集部員でした。とはいえ、1フロアにミスター・バイクもGOGGLEも編集部があったから、鈴鹿8耐やモーターショーといった大イベントは、編集部の垣根を越えてみんなで取材に行っていましたね。取材後の写真整理とか原稿書きもみんなでやったり、そんな時代でした。

 この日、僕らは東京モーターショー取材に、幕張メッセにいました。ショーが晴海から幕張に移動して開催されるようになって2回目。木曜は、僕らメディア関係者の取材日に充てられる「プレスデー」で、この年のモーターショーは、新世代スーパースポーツ・ホンダCBR900RRと、オーバルピストン初の市販車・NR750、他にはZEPHYR1100やXELVIS、Goose350、SRV250なんてモデルが目玉でした。ヤマハのコンセプトモデル、MORPHO2の登場もこの年のモーターショーですね。

 なんで事前に目玉モデルが分かってるかというと、こういったモーターショーは、メディアに事前に出展モデルが知らされているからなのです。もちろん、解禁日を設けての事前情報なので、ウェブマガジンもTwitterもインスタもないこの時代、事前流出もそんなに心配ない時代、一般公開日に合わせてモーターショー出展モデルを掲載する本が出せるように、事前公開されていたんです。東京エディターズでは、毎年この時期に「誌上モーターショー」という、東京モーターショー出展モデルをふんだんに掲載した別冊本を作っていて、これがまたよく売れてたんだ♪
 

1991年10月の第29回東京モーターショーでお披露目されたBIG-1は、事前情報もなく突然のデビュー。大きな注目を浴びた。(撮影:衛藤達也)
インターネットなどない時代、モーターショーの会期中、あるいは終了直後に『東京モーターショー特集』といった別冊本が発行されていた。

 
 その幕張メッセ。最初にホンダのブースに行ったんだけれど、先輩編集者のAさんが異変に気づきました。
「あれ……なんだ? あんなモデル出るって言ってた?」
 階段状にしつらえられたホンダブース、その一番上のステージに白赤のカラーリングも美しいそれはありました。車両の前に置かれたネームプレートには「CB1000 SUPER FOUR」と書かれてある。ホンダの、メディア陣にもナイショの隠し玉だったのです。
 ショー開幕当日にはホンダの出展モデル一覧のパンフレットをもらったんですが、目玉はあくまでもNR750。CB1000 SUPER FOURのスペースは小さく、CB750(RC42)、ナイトホーク250と一緒にページに収まっています。パンフ完成までギリのタイミングで出展が決まったのかもしれませんね。
 1000ccというデカい排気量、メインフレームいっぱいに威張っているエンジン、丸目ヘッドライトに2眼メーター、ボリュームある白赤のフューエルタンクは名車CB1100Rのようで、新鮮で懐かしく、新しくも甘酸っぱかった──それがCB1000 SUPER FOUR。
 それは当時、カスタムバイクとしてすごく人気があった「Z2改」な雰囲気もあって、750FやZ2、カタナやNinjaのスタイルのまま、現代的な太い足周りをインストールしたような姿でもあった。パイプフレームに太っといアルミ角スイングアーム、太っといフロントフォーク――うわぁぁカッコいいい! ぼくら取材班の間でも、そんな声が圧倒的でした。なぁアレみた? 見た見た、カッコいいよなぁ、売るのかな、買おうかなって。実際、そのA先輩は発売後、マジで買いましたからね、さぁ誰だかそろそろ分かっちゃうな(笑)。
当時、ミスター・バイクの誌上やニューモデル紹介を担当していたSさんが、車両にまたがる写真を撮ろうとしてハンドルに手をかけようとした瞬間、ホンダの方に『ああああああああ!』って制されたのも覚えています。またがった瞬間シート落ちます!って(笑)。まだ製品じゃなく、粘土やパテで出来たパーツも多かったですからね。

 ぼくらメディアがザワついたのと同じく、一般公開が始まってからは、今度はモーターショー来場のファンたちが、その隠し玉に夢中になりました。一般公開日以降はひな壇から地上に降ろされ、来場のファンによく見える位置に。それも覚えているのは、下っ端編集部員だったぼくが、A先輩に「会場にたくさんいるお客さんも写真に撮って来い」という指示を受けていたからです。
 

1992年11月に発売された初代CB1000 SUPER FOUR。

 
 当のホンダは、CB1000 SUPER FOURを製作する時、まずファンの反応を見てみようと、モーターショーに出展していたのでした。ぼくらが衝撃を受けたCB1000 SUPER FOURだったけれど、ホンダ社内には、最新技術も使われていない、ただのレトロスタイルのバイクだ──という意見もあったのだといいます。(プロジェクトBIG-1開発者Interview参照 )
 けれど、そんなホンダの心配も無用。大人気で迎えられたCB1000 SUPER FOURは、東京モーターショーでの初公開から約1年後、正式発売。発売されたのは92年11月、残り月も少ないことから、92年中の販売台数こそ多くはなかったものの、明けて93年にはベストセラーに輝いたのでした。
 相変わらず前振りが長い!申し訳ない。思い入れのあるバイクはね、特に長い。
 

 
 そんなこんなでCB1000 SUPER FOURは大人気のうちにデビューし、97年に1300cc化、2003年に1300ccでフルモデルチェンジを敢行し、大きく三世代に分けることができます。現行モデルは三世代目の、その中でもモデルチェンジを重ねた21年型以降のモデル。
 そして今回、試乗したのは23年モデルのCB1300 SUPER FOUR-SPの30周年記念モデル。30周年というのは、初代CB1000 SUPER FOUR誕生から30年、という意味ですね。SPはCB1300 SUPER FOURにオーリンズ製フロントフォーク&リアショック、ブレンボ製ブレーキキャリパーを装着したモデルです。
 記念モデルのキモは主にカラーリングで、現行ラインナップがシルバー×ブルーの1パターンなのに対し、ホワイト×ブルーべースのトリコロール。タンク上には「Since 1992 PROJECT BIG1 30th」の記念デカールが貼りつけられてあります。30周年記念モデルなんだもの、もう少し特別感あってもいいかなー。
 

 
 もちろん、CB1300 SUPER FOURの完成度は相変わらず高い。特にオーリンズ&ブレンボで武装したSPは、プロジェクトBIG-1シリーズ最良の1台だとぼくは思う。当たり前か、最初からベースセッティング済みのチューニングパーツが付いているんだもの。
 CBR1000Fの水冷1000ccエンジンを、コンベンショナルなスチールフレームに搭載するネイキッドバイク、という根っこは変わらず、現行のCB1300 SUPER FOURは排気量が1300ccに、5速だったミッションは6速に、アシスト&スリッパークラッチを採用し、スロットルbyワイヤ式となってトラクションコントロール、クルーズコントロールがあり、今やシフトアップ&ダウンのクイックシフターも純正オプションに設定されています。それどころか、グリップヒーターとETC車載器まで標準装備です。30年間、着々と進化を続けてきたんですね。
 ここまで完成度を高めながら、プロジェクトBIG-1の真のコンセプトである(と、ぼくは勝手に思っている)カッコいいホンダ、というセンをずっとキープしています。だから、ずっと人気モデルなんだと思います。
 

 
 たとえば、街乗りにはちょっとデカいです。装備重量266kgは、ライダー体重を含めるとゆうに300kgオーバー。けれど、このデカさはCB1300 SUPER FOURのキャラクターのひとつで、このデカさ、このビッグバイクを操っている、という気分がイイ。
 ツーリングに出かけると、これはもう快適この上なし。カウル付きのCB1300 SUPER BOL D’ORの方が走行風と戦いやすいけれど、ノンカウルのSUPER FOURだって特に苦にならない。100~120km/hの安定性としっとりしたフットワークは、誰にでも扱いやすく、誰にでも勧められるバイクです。特に現行モデルはクルーズコントロールもついて、快適の上にもうひとつ快適なのです。
 ワインディングに持ち込むと、やっぱりSPはイイ! スタンダードに比べて明らかにフットワークが軽く、サスペンションがよく動き、ダンパーがしっかり効いてしっとりとストロークが収束する。ライダー込み300kgを軽く超えるビッグバイクを、悠々とコントロールする楽しさこそ、ビッグバイクに乗る喜びなんです。

 もうひとつ勝手な思いを言わせてもらえば、ホンダCBっていうのは、バイクのスタンダードであり、ド真ん中。CBがあるから、ビッグバイクのライダーが増えて、それを追いこそうというライバルが出てくる。
 ホンダCBさん。ずっとラインアップにいて下さい。
(試乗・文:中村浩史、撮影:松川 忍)
 

 

ライダーの身長は178cm。正面からの写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

98年にSC40で1300ccとなって以来、熟成を重ねられてきた水冷並列4気筒DOHCエンジン。5速だったミッションは14年モデル以降で6速に、クラッチは17年モデル以降にアシスト&スリッパーとなった。

 

ブレンボ製4ピストンキャリパーをラジアルマウントするのがSP。対してスタンダードはニッシン製キャリパーをバイアスマウント。ローターはともにΦ310mm、30th記念車はホイールがゴールドになる。
リアブレーキはΦ256mmローターにニッシン製片押し式1ピストンキャリパーを採用。10本スポークデザインのホイールは、各スポークが1本ずつ交差してデザインされている。タイヤサイズは前120/後180幅。

 

14年モデルからは、当時の騒音規制に合わせた新形状マフラーを採用。サイレンサーが細身で、13年モデルまでのサウンドよりも、明らかにズ太く迫力あるものになったとファンの評価が高いものだ。
SPに採用されているオーリンズ製リアショック。プリロードは無段階、伸び側減衰はスイングアーム側ダイヤルで、圧側減衰はリザーバータンクのダイヤルで調整する。スタンダードはショーワ製フルアジャスタブル。

 

ヘッドライト、前後ウィンカー、テールランプはLEDを採用。2眼メーターに丸目ヘッドライト、ダブルホーンのレイアウトは、これぞホンダCB!というデザイン。個人的には大型のウィンカーもCBっぽいと思います。
タンク容量は堂々と21L! 今回の取材では実測燃費23km/Lを記録したため、計算上ではフルタンク480kmオーバー。ビッグタンクは初代BIG-1からのデザイン要件にも残されていた重要なポイントなのだ。

 

ライダー部とタンデム部の表皮デザインを別個に設定したダブルシート。キーオープン式のシート下にはETC車載器やUSBコネクタが標準装備される。シート下スペースが広いのもCB1300シリーズの美点だろう。

 

SPに採用されるフロントフォークはオーリンズ製の専用設計された正立フォーク。無段階のプリロード調整式、伸び側減衰は右側フォークトップで20段、圧側減衰は左側フォークトップで20段階に調整できる。
これもホンダCBの伝統、2眼アナログメーター。中央のデジタル部にはギアポジションやライディングモード、燃料計を、オド&トリップA/B、Aモード走行燃費、水温計、外気温、グリップヒーターレベルを表示する。
右スイッチにはキルスイッチ&セル、クルーズコントロールの速度調整ボタンを、左スイッチにはパワーモード切り替えスイッチ、ウィンカー、ホーンなど。ハザードスイッチ、グリップヒーターも標準装備する。

 

●CB1300SUPER FOUR 主要諸元
■型式:ホンダ・8BL-SC54 ■エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ ■総排気量:1,284cm3 ■ボア×ストローク:78.0×67.2mm ■圧縮比:9.6■最高出力:83kw(113PS)/7,750rpm ■最大トルク:112N・m(11.4kgf・m)/6,250rpm ■全長×全幅×全高:2,200×795[825]×1,125<1,135>[1,205<1,215>]mm ■ホイールベース:1,520mm ■最低地上高:130<140>mm ■シート高:780<790>mm ■車両重量:266[272]kg ■燃料タンク容量:21L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17M/C・180/55ZR17M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:パールサンビームホワイト、ベータシルバーメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,562,000円<1,936,000円>[1,672,000円<2,046,000円>] ※[ ] はSB、<>はSP

 



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2023/04/21掲載