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レース・イベント

学ぶのって楽しい、を実感できた ワタクシ、ホンダ・モーターサイクリスト・スクールに参加しました
■取材・文・河野正士 ■協力:Honda Motorcyclist Schoolhttps://www.honda.co.jp/safetyinfo/center/







1978 年からホンダが開催するライディングスクール「Honda Motorcyclist School(通称HMS/ホンダ・モーターサイクリスト・スクール)」。免許保有歴30年以上で、ライターとして新型車の試乗会にも参加するワタクシ・コウノが、このスクールに参加してきました。世間的には“ベテラン”と呼ばれるライダーである自分が、ライディングスクールで何が学べるのか! 乞うご期待。

 
 イヤそれが、学びの多い1日でした。今回はHMS(ホンダ・モーターサイクリスト・スクール)の体験取材会に参加できると聞いて、埼玉県にあるホンダの交通教育センターレインボー埼玉にやって来たのですが、できればビギナーライダーかリターンライダーなど、ライディングに不安を抱えてるライダーにスクールを体験頂きたい、というのが企画の趣旨だったらしく、免許保有歴30年以上でのワタクシは、少し場違いな雰囲気。とはいえ、もてぎ/和光/埼玉/浜名湖/鈴鹿/福岡/熊本の全国7ヶ所の交通教育センターで、年間1,000回以上開催されるHMSには、オンロードとオフロードに別れ、また初級/中級/上級が用意され、その初級および中級もライダーの経験値や目標とする課題によっていくつかのコースに別れているとのこと。今回は体験取材会ということで、あらゆるスキルのライダーが一緒に走りましたが、そのなかでインストラクターが、参加者のレベルに合わせてサポートしてくれるとのことでした。
 

 
 そのなかで印象的だったのは、“手渡しの安全”を実施していること。配布された資料によると、「バイクに対する正しい知識と扱い方、そして乗り方をインストラクターから参加者へマンツーマンで伝え、バイクとの関係を築いていくこと」が、その“手渡し”たる由縁。
 スクールに参加する車両を参加者自身で選び、倉庫からコースへと運び出し、点検し、スクールが終わればガソリンを補充し、磨き、倉庫に仕舞う。参加者を過保護に扱いすぎることなく、普段バイクに乗るときに、ライディングテクニック以外に必要となるさまざまな所作を体験し、その目的やコツ、バイクという乗り物の構造やライダーとの関係をわかりやすく説明してくれる。うーん、長年バイクに乗っていて忘れてしまっていたことや、何気なくやっていたことを、改めて体験および確認することができたのは、とても良かったと思ったのでした。
 

 
 もうひとつは“参加体験型実践教育”を貫いていることです。練習用バイクを倉庫から出し入れしたり、走行前点検するのはもちろんですが、実際にいろんなアプローチでバイクを動かしたり操作したりできるのは、とても良い経験ですね。バイクの重心を意識したり、重心や目線を変えてみたり、ブレーキを握る指の本数を変えたりすることで、「バイクの動きがどんな風に変化するかを試してみて下さい」と言うインストラクターの言葉を実践し、それを確認することができました。
 どれが良いかではなく、どう違うか、が大事。その違いを理解したうえで、自分の乗り方や、自分のバイクとの相性の中でどれが最適か、さらにはこの状況ではどれがベターなのか。それを確認してみて欲しいと、しきりにインストラクターの方々が話していました。
 

今回HMSの会場となったのは、埼玉県にあるホンダの交通教育センターレインボー埼玉。もてぎ/和光/埼玉/浜名湖/鈴鹿/福岡/熊本の全国7ヶ所の交通教育センターで、年間1,000回以上開催されています。●開催スケジュールは、ホンダ交通教育センターのWEBサイトをご参照ください。https://www.honda.co.jp/safetyinfo/center/
コースでのトレーニングのまえには、コース説明のほか、何の目的でどんなカリキュラムを行うか、しっかりと説明してくれます。

 

今回、メインインストラクターを務めた新井さん。クラスや参加人数によって、対応してくれるインストラクターの数も変わるそうです。
ボディプロテクター、肘/膝/足首などのプロテクター類の装着は必須。HMSではそれらのプロテクターをレンタルすることも可能です。

 
 たとえば、ブレーキレバーを握る指は、何本でも良い。でも何本の指でブレーキを操作するかで違いがある。それを体験して下さいと言うのです。またブレーキの練習も、停止線で止まることを目標とするブレーキ練習と、停止線からブレーキを掛ける練習。
 この二つのブレーキ操作って、似ているようで全然違うのです。その練習の中で、ブレーキレバーを操作する指の本数を変えたり、前後ブレーキの配分を変えたり……そうやって練習すると、それぞれに違いがあるのが分かる。そのなかで自分好みを探そうとすると、試してみたいことが山のようにあるのです。
 

バイクに乗る前には、まずは準備運動
車両点検も自分で。点検項目は「ブタと燃料」で覚えて下さいと教えて頂いた。“ブ”はブレーキ周り、“タ”はタイヤ、“と”は灯火類、そして燃料です。

 
 それが一直線上にパイロンが並ぶパイロンスラロームや、ジグザグにパイロンが配置されたオフセットパイロンスラローム、さらにはコース幅やターンの曲率が異なるコーススラロームなどのトレーニングコースを加えると、もう1日じゃ全然足りない感じです。でも、この試行錯誤の体感こそがHMSの真髄なのです。
 

バイクは直立状態でバランスが取れると、指一本でも支えられる。それを実戦しました。バイクのバランスがどこにあるのか、それを自分で探り、体感することが大事なんですね。
センタースタンドやサイドスタンドからバイクを起こすとき、最低限のチカラでバイクを動かすコツも教えてくれます。サイドスタンドから車体を起こすとき、ハンドルを切る向きによって、こんなに重さが違うと改めて発見。

 

足、膝、腰、手の4点でバイクを支持するのですが、肘や膝の角度や向きで、バイクをホールドしやすくなったり、しにくくなったり……うーん、忘れてました……。
コースイン。最初はインストラクターが先導して、周回してコースを覚えます。コースが変わるたびに、この先導走行が行われます。

 
 HMSは、公道では試すことが難しい、そんな乗り方の違いを、経験豊富なインストラクターのアドバイスの元、また長年積み上げてきた豊富な知識によって組み立てられたカリキュラムの中で試すことができます。HMSは、危険を安全に体験できる場所。ここでの経験を、公道での危険予測に役立てることが目的なのです。
 

単独走行前、またある程度の参加者が単独で周回した後には、インストラクターによるコースの解説、走行に求められる技術の解説、それがどのように公道での走行に繋がるかを説明してくれます。
もちろん、インストラクターのデモ走行もあり。良い例、悪い例も見せてくれるので、どのような操作でバイクがどのように反応し、それが走り方にどう影響するかをすぐに理解できます。

 
 一般的には“ベテラン”と呼ばれるワタクシ、ブレーキや体重移動や目線移動は自己流で凝り固まっていて、別のバージョンを試していませんでした。もちろん別の方法を試した結果、いままでの自分の操作に戻ってきたのですが、そのいつもの操作は、明らかに今までとは違います。それをすぐに実感できるのも、HMSの良いところ。そう感じたのでした。
 またスラローム走行など、普段のライディングとは違った乗り方を試したり、そこで“アクセル操作に集中するため、リアブレーキ無しで乗ってみて下さい”というインストラクターからの助言で、今までと走りのリズムが変わり、ギクシャクが増して気持ち良く乗れなくなったり…でもそれを克服しようとする、学びモードに入るのって楽しいですね。そして少しでもイメージした走りに近づくと、嬉しいし楽しい。久しぶりに、バイクに乗ってそう感じました。
 

ブレーキ練習。停止線を目がけて止まるブレーキは、助走距離や使用するギアを変えてトライ。午後からのブレーキ練習は、その停止線からブレーキを掛ける。ブレーキレバーに掛ける指の本数を変えたり、フロントだけ/リアだけのブレーキも試したり。その違いをしっかりと感じることが重要。
スラローム。リアブレーキでスピードをコントロールして乗ってたら、今度はリアブレーキ無しで、アクセル操作のみでスピードをコントロールして乗ってみましょう、とアドバイス。これ、全然乗れないんです。でもインストラクターは、「いかにリアブレーキに頼った走りをしていたか。もちろんそれで良いんですが、ここではイロイロ試して下さい。アクセル操作でスピードをコントロールするトレーニングも、やってみて下さい」と。うーん、難しい。でも克服したくて何度もトライ。思うように走れないけど、楽しい。

 

リアブレーキ無しでパイロンスラロームを走っていたら、走りのリズムを崩した僕の後に付いて走り、改善点を提案してくれました。カリキュラムのなかでは、インストラクターが個別に、先導したり追走したり、定点で観察したりしながら、走りの良い点および改善点を指摘してくれるのです。
すべてのプログラムが終わった後は、敷地内にあるガソリン給油機で燃料を満タンに。でも、この給油の動作に不安を感じているライダーも多く、それを疑似体験できるのです。

 
 全国7カ所の交通教育センターで行われている「HMS」は、すでに4月から9月までのスケジュールが発表されています。しかしどこも人気で予約が取りづらい状態だとか。申込は開催日の2ヶ月前から可能なので、ナル早の予約がお勧めです。
(取材・文・河野正士)
 

そして使用した車両を倉庫にしまう前に、各部を簡単に拭きあげ。もちろん最後の点検の意味もあります。
今回、メディア向けの体験会を仕切って頂いたHMSのインストラクターの皆さん。左から国枝さん、新井さん、中野さん。




2023/03/31掲載