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12月12日、ホンダが2023年のモータース活動計画に関する発表会を行った。東京・青山のホンダ本社一階にあるHondaウエルカムプラザ青山で行われたこの発表会の様子は、日本時間の午後6時にスタートし、YouTubeでも日本語と英語で同時配信された。
■レポート:西村 章

 最初に登壇した本田技研工業株式会社取締役・執行役専務、青山真二氏は、簡潔なスピーチの中で、自動車産業界を取り巻く現在の大きな社会・環境変化を「第二の創業」と捉えたうえで、人と技術を磨くモータースポーツの価値と存在意義はこれまでになく重要になっていると述べた。また、モータースポーツの世界ではカーボンニュートラルの実現が今後の大きな課題であることも指摘。次に壇上に上がったHRC社長の渡辺康治氏は、従来の二輪レース活動に加えて四輪レース活動も行うようになったことを活用して、新体制2年目の来年は、二輪と四輪のシナジー効果をさらに活用して各カテゴリーの強化を図ることを強調した。

本田技研工業株式会社 青山真二 取締役 執行役専務
本田技研工業株式会社 青山真二 取締役 執行役専務。
株式会社ホンダ・レーシング 渡辺康治 代表取締役社長
株式会社ホンダ・レーシング 渡辺康治 代表取締役社長。

 続いて紹介された二輪・四輪の各競技参戦選手の詳細についてはこちらをご参照いただきたい。二輪レースの各世界選手権トップカテゴリーについては、以下のようなラインナップになっている。

●MotoGP
Repsol Honda Team(マルク・マルケス/ジョアン・ミル)
LCR Honda IDEMITSU(中上貴晶)
LCR Honda CASTROL(アレックス・リンス)

●Moto2
IDEMITSU Honda Team Asia(ソムキアット・チャントラ/小椋藍)

●Moto3
Honda Team Asia(マリオ・アジ/古里太陽)

●SBK
Team HRC(イケル・レクオーナ/チャビ・ビエルゲ)
MIE Racing Honda Team(ハフィス・シャーリン/エリック・グラナド)

●EWC
F.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック/マイク・ディ・メリオ/アラン・テシェ)

●MXGP
Team HRC(ルーベン・フェルナンデス/ティム・ガイザー)

●TrialGP
Repsol Honda Team(トニー・ボウ/ガブリエル・マルセリ)

●ダカールラリー
Monster Energy Honda Team(リッキー・ブラベック/パブロ・キンタニラ/ホセ・イグナシオ・コルネホ/エイドリアン・ヴァン・ベバレン)

 上記選手のうち、MotoGPからマルケス、MXGPからガイザー、TrialGPからはボウがビデオメッセージを寄せた。また、日本人選手は国内外の各選手権を戦う選手たち数名が壇上にあがり、MotoGPの中上貴晶、Moto2の小椋藍、全日本トライアルの小川友幸が、2022年シーズンのレビューと来年の抱負について、司会者と簡単な質疑応答を交わした。

 そのうち、二輪ロードレース最高峰を戦う中上の質疑応答は、概ね以下のような内容だった。

「(2022年の振り返りと来年への抱負)
 2022年シーズンはケガが多いシーズンになってしまいました。2023年は自分自身でも最高のパフォーマンスを見せること、そして強いホンダを見せるシーズンになるよう、今から懸命に準備しているところです。

(2023年の改善点等)
 今はシーズンオフですがすでにトレーニングを開始し、来年2月のマレーシアテストに向けて最高の状態でスタートできるように準備を進めています。

(来年のMotoGPについて)
 2023年シーズンのMotoGPはスプリントレースが導入され、通常の日曜日のレースに加えて、半分の距離で土曜日にもレースを実施します。カレンダーは史上最多の21戦で、プラス土曜日のスプリントレースで計42レース。スプリントレースは初めての実施ですが、好成績を残せるチャンスが増えるので非常に楽しみです。タフなシーズンである半面、チャンスも多いということだと思います」

中上貴晶
中上貴晶。

 この公式発表会に続き、MotoGPのMoto2/Moto3クラスを戦うIDEMITSU Honda Team Asia(Moto2)のチャントラと小椋、Honda Team Asia(Moto3)のアジと古里、そして両チームを率いる青山博一監督の計5名を囲むZoomインタビューが行われた。このインタビューはまず、司会者の質問に対して各ライダーたちが応答する形で進行した。そこで述べられたコメントをざっくりと紹介しておこう。

「2022年は厳しいシーズンでしたが、とてもよい経験になりました。もっと成長したいし、ぼくにはプレッシャーも特にないので、この冬の間にしっかりとトレーニングして準備を進めたいです。順位やポジションなどの目標は決めず、さらに良い走りで安定した成績を残せるようにしたいと思っています」(マリオ・アジ)

「開幕前に負傷してしまい、ヨーロッパからのスタートになって厳しいシーズンでした。その後は、少しずつ調子をあげて自信を取り戻せるように取り組み続けました。2年目のシーズンも簡単にはいかないと思いますが、チームメイトのアジやMoto2の小椋、チャントラ両選手から学び、吸収しながら成長を続けたいです」(古里太陽)

「藍と一緒に切磋琢磨しながら成長を続け、今年はついに優勝を達成できました。さらに謙虚に取り組んで学習を続け、2023年はもっと成果を上げるシーズンにしたいです」(ソムキアット・チャントラ)

「今年は何度か表彰台を獲得して初優勝を達成しました。シーズン最終戦までタイトルを争うこともできました。今年はランキング2位だったので、来年はさらにいい走りでチャンピオンシップを獲得したいです。プレッシャーを感じるけれども、レースでは常にプレッシャーを感じるのが当然だと思います。来年は、タイトルを獲得しなければならないと思っています」(小椋藍)

小椋 藍
小椋 藍。
古里太陽
古里太陽。

 この言葉にもあるとおり、多くの日本のファンが小椋の2023年Moto2タイトル獲得を期待しており、それを小椋も意識しているようだ。じっさいに、パドック内外では彼に対する期待の声をじつによく耳にする。そこで、自分は来年のMoto2チャンピオン最有力候補だと思うか、と小椋自身に訊ねてみた。

「もちろん、そう思います」

 というのが小椋の返事。

「今年はランキング2位だったから(チャンピオンのフェルナンデスはMotoGPへ昇格するので)、明らかに自分がチャンピオン最右翼ということになると思っています」

 では、来年のライバルになりそうな選手はいるか? と重ねて訊ねてみた。

「そうですね……、アコスタ選手とロペス選手が強いと思います」

 ところで、2023年シーズンは上記の中上の言葉にもあるとおり、MotoGPクラスでスプリントレースを行う影響で、Moto2とMoto3の走行時間枠が短縮され、日曜朝のウォームアップ走行もなくなってしまう。この走行時間減少がチームのマネージメントやレースウィークの戦略に及ぼす影響について青山博一監督に質問した。

「これはすべてのライダーに影響を及ぼすと思います。その週末の金曜と土曜にうまくセッションを進めてくれば、大きなアドバンテージになると思います。コースをよく知ってしていたりクラス豊富が経験である場合も、有利に働くでしょう。しかし、ルーキーライダーには今まで以上に厳しくなると思います。

 とはいえ、この状況には慣れてゆかなければならないのですが、たとえば予選で転倒したりすると、次の走行は決勝レースになります。そうなると、バイクがしっかりと修復できているかどうかというメカニカルな面での確認でも、不安は残ります。また、転倒した場合はライダーは多少なりとも自信を失うものですが、それを取り戻していいフィーリングを得るためにはある程度の走り込みが必要です。

 だから、万事順調ならそれほど大きな影響はないでしょうが、うまく進めていないときには、さらに厳しくなることも考えられます。それに対して、ではどう対応すればよいかということは今はまだハッキリとわかりませんが、一戦一戦のレースを走りながら、シーズンへの対応策を見つけていくことになると思います」

 MotoGPのスプリントレースやMoto2/Moto3のセッション時間縮小など、始まってみなければどうなるのかわからない要素が待ち受けている2023年シーズンは、状況への「対応力」が大きなカギになるのかもしれない。そしてその実相は、3月26日の開幕戦ポルティマオで明らかになる。

Honda 2023 MS

Honda 2023 MS

2022/12/14掲載