トークショーの司会は、CB1000SFに魅了されレース活動やカスタマイズも手掛けてきたモータージャーナリストの丸山浩さん。ゲストは、1992年のCB1000SFと2003年のCB1300SFのデザイン担当の岸 敏秋さん。1998年のCB1300SF、2005年のCB1300SBのデザイン担当の伴 哲夫さんです。両名共に、BIG-1の初代から現在までを知る生粋のデザイナーです
1989年3月、CB-1は直4エンジンのネイキッドモデルとしてセンセーショナルに登場しました。ところが3か月後に発売されたカワサキのゼファーに販売面で大きな差を付けられることになりました。CB-1は、性能数値では圧倒的に高かったのですが市場の流れが変化していたのです。
「CB-1のモデルチェンジに着手したときに、CB-1にCB1100Rのタンクを配置してみると新たな手ごたえを感じました。これがCB400SFとCB1000SFにつながった」と岸さんが証言してくれました。CB400SFは、早々と開発チームが組織されましたが、肝心のCB1000SFについては、開発チームも存在していないという状況でした。当時は、400ccの市場でナンバー1を獲得することが、各メーカーの最重要課題でした。
岸さん達の秘策は、誰もが唸るような格好いいカタチを見せることができれば社内承認につなげられるというゲリラ的なものでした。この秘策はもちろん成功しました。
1991年の東京モーターショーに参考出品としてCB1000SFが出展されました。東京モーターショーには、CB400SFのティザー的な存在として出展されることが認められたというもので、依然ラインアップ計画には反映されていませんでした。
東京モーターショーの衝撃を丸山さんが語ってくれました。「こんなでかいバイク、誰が乗るんだろう。乗りこなせたら格好いいだろうな。いつの間にかCB1000SFでレースまでやっていました」
このような経緯があり、翌年1992年11月にCB1000SFが発売されることになります。プロジェクトBIG-1としては、CB400SFに続く第2弾でした。たちまちCB1000SFはバイクファンの羨望の的になりましたが、大型免許を取得するには、「一発試験」と呼ばれるものすごく高いハードルがありました。
1998年に排気量をアップしたCB1300SFのデザインを手掛けたのは、自ら手を挙げてプロジェクトBIG-1に加わった伴さんでした。エンジンにはフィンをあしらい、二本出しのマフラーの採用で、さらに堂々としたスタイリングになっています。
エンジンにフィンを採用した背景には、CB1000SF開発責任者の原 国隆さんが、フィンと二本出しマフラーをこよなく愛したこと。前年に発売されたドラッグスタイルの1300ccのX4のエンジンにフィンを採用していたことなどのエピソードが明かされました。
CB1300SFは、大型免許が教習所でも取得できるようになっていましたので、1000SFを超える販売台数を記録しましたが、ライダーの高年齢化などもあり、もう少し軽量でコンパクトなBIG-1を求める声が大きくなってきました。
2003年、CB1300SFはフルモデルチェンジ。堂々とした雰囲気は残しながら軽量化と取り回しやすさを追求しました。通常はマフラー側のスケッチなのですが、このモデルは反対側から描かれています。デザイン担当の岸さんは「設計図を見た時に、なんて大きなマフラーなんだと驚きました。自分としては巨大なマフラーを描きたくなかったのです。それでこのモデルだけ反対側のスケッチになりました」というエピソードを明かしてくれました。当時の騒音規制を考えますと、巨大なマフラーは避けては通れないものでした。
2005年、伴さんが担当したハーフカウルを装着したCB1300SBが発売されました。高速道路二人乗りの解禁にタイミングを合わせたこともあり、幅広い支持を得ました。
CB1300SFとSBは、さまざまな熟成を図りながら、CBのフラッグシップとして多くのファンを獲得してきました。
次なるCBはどのようになるのでしょうか。司会の丸山さんも会場のファンもとても気になるところです。
岸さんと伴さんは、「若手のエンジニアたちがこれまでのCBの変遷やお客様の想いを大事にしながら、自分たちの信念を貫き通すことが次世代のCBにつながる。そして、スポーツバイクの標準機としてのCBが確立できれば、EVになってもCBは続いていく」と語ってくれました。
これからのCBストーリーに期待が感じられるトークショーでした。
(レポート 高山正之)