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試乗・解説

z900rs_50th_a今日までそして明日から Z生誕50年と、これからのZ Kawasaki Z900RS 50th Anniversary
2017年末に発売されて4年半。
カワサキのZ1ヘリテイジことZ900RSは
予想にたがわぬ「超」人気モデルとしてベストセラーでい続けている。
この超人気の秘密の正体って、なんだ?
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:富樫秀明 ■協力:カワサキモータースジャパン https://www.kawasaki-motors.com/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/




Z1に「似てるだけ」じゃない

 初めてZ900RSを目にしたのは、2017年秋の東京モーターショー。展示スペースにディスプレイされたカワサキのニューモデルを見て「こりゃ人気出るぞぉ」って思わなかった人、いないんじゃないだろうか。
 実は、Z900をベースとしたスタイリングチューン。けれど、幸か不幸か、そのZ900が国内発売されていなかったから、誰もZ900RSのことを「ベースモデルのあるスタイリングチューン」とは気づいていなかった。Z900の先代モデル、Z800は2013年から国内発売されていたけれど、そんなに人気モデルではなかったかな。そしてZ900は、Z900RSより遅く国内発売が開始されたから、下手すればZ900=Z900RSのバリエーション、なんて捉えた人も多かったのかもしれない。
 けれど、Z800を900cc化した時に気づくべきだった(笑)。900ccって、Z1やGPZ900R、ZX-9Rにも使用されたカワサキの「マジックナンバー」な排気量で、ネイキッドモデルの900ccが、海外モデルとしてシレッとデビューした時に、ん?なんかあるぞ? って感じないと、ジャーナリストとしては。そうやってZ900RSは生まれたのだ。
 

 
 Z900RSはZ900をベースに、単にスタイリングパーツを着せ替えしただけではない、細かい専用仕様を積み重ねて完成したモデルだ。ネイキッドスポーツZ900から少しパワー特性を穏やかに、出力を落として、最高出力の発生回転数を抑えた。
 ミッションも、1速をより低く、トップ6速をオーバードライブ化。さらに2次減速比も、ドリブンスプロケットを44丁から42丁として、同じスピードで走った時の回転数を下げている。
 ホイールベースもやや伸ばし、キャスターを少しだけ寝かし、トレールもショートとした。車重はおそらく外装パーツの変更が原因で+2kg、けれどこれはそう大きな変化には感じられない。
 つまり、Z900よりも穏やかなスポーツバイクに仕上げた。この予備知識なしでZ900に乗ると、馬力が大きいのと2次減速比がショートなおかげでピックアップが鋭く、おぉZ900の方が元気! ってすぐにわかるほどだ。
 

 
 そして、あらためて乗るZ900RSは、なんの気負いもなく乗れるスポーツバイクだ。Z900から出力を削られているとはいえ、111psのインラインフォアは充分にパワフルだし、ライダー込み300kgにもなるハンドリングだって、神経質なところがなく、決してシャープすぎない好ましいものだ。
 パワー特性は、発進の回転域から充分に厚いトルクがあって、1500rpmからスーッと加速する力がある。街中で走るには2000rpmも回っていたら充分で、トップ6速で50km/hくらいで走っていると、タコメーターの針は2000rpmに届かないくらい。そんな回転域でも、ガクガクしたり息つきするそぶりもない乗りやすさだ。
 

 
 ハンドリングは、やはり重量級のキャラクターだ。決して俊敏には仕上げず、どっしりとした接地感があって、ヒラヒラというタイプではないし、それはキャリアの浅いライダーにも安心感が持てるタイプだ。
 このZ900RSをワインディングに持ち込んでも、キャラクターはいくらか軽快になるとはいえ、決して俊敏に変身したりはしない。この点では、Z900の方がキレのあるハンドリングに感じられるから、ホイールベースで15mm、キャスターが0.1度というのは、けっこうな差になるものだ。
 やはりZ900RSは、兄弟モデルのZ900と比較してみても、オールラウンドに使えるキャラクターに仕上げられているのだ。決してスポーツ色を濃くするわけでなく、ツーリングバイク的な特徴を際立たせるわけでもない、オールラウンダー。この「なんにでも使えるスポーツバイク」というキャラクターが評価されて、ベストセラーになってるんだと思う。
 

 
 思えばZ1/Z2もそういうバイクだった。というか、カワサキが作った、初めての4気筒ビッグバイクだったんだから、なにかのキャラクターに特化した色を持たせるより、オールラウンダーであることが、世界中に向けてのカワサキ的アピールだったはず。
 普遍の魅力があるからこそ、70年代から世界中で愛され、それは現在でも「絶版車」としてたくさんのファンがいるのだ。だから50年。50年も愛されるバイクは、その時々の流行りを含めて、なにかの色に染まっていてはならないのだろう、きっと。
 Z900RSなんてZじゃないよ──。発売されてから今まで、ずっとそう言う人はいる。Z1の再来なんて言うなよ、なんてZ1ファンもいるだろうし、Z2はもっと××だったぜ、なんてZ2乗りもいるだろう。
 けれど、Zのバイクらしい、堂々としたスタイリングが好きになって、オレもZに乗りたい、って思うファンはいつまでもい続ける。
 けれど、もう50年も前のモデルなんだから、現行モデルのような気軽さで乗るわけにはいかない。まずは購入価格が、普通に乗れるZ1で300~400万円から、なんて価格帯は当たり前だし、壊れたら補修パーツだってないケースが少なくない。
 だから新しいZファンに向けて、Z900RSの存在は貴重なのだ。オレもZに乗りたい、ならば400万円もする50年も前のバイクを買わなくていい、Z900RSを手に入れればいいのだ。
 Z900RSなんてZじゃないよ、なんて声はもうすぐ聞こえなくなるはずだ。それほど、Z900RSはよくできた「この先50年を背負う」に相応しいZなのだ。
(試乗・文:中村浩史)
 

 

Φ41mmのフロントフォークは伸/圧側減衰力とプリロードの調整が可能。ブレーキ系はラジアルマウントされた対向4ピストンキャリパーにΦ300mmディスクローターを採用。ホイールはワイヤースポーク的デザイン。

 

振動を抑えすぎていない並列4気筒エンジンは二次バランサーを搭載し、OFF/1/2と3段階のトラクションコントロールを採用。ブラックペイント仕上げのカムカバーやクラッチカバーはZ1をイメージしている。

 

きれいなフィニッシュの右一本出しの4in1マフラーはステンレス製のバフ仕上げ。リアブレーキはシングルピストンキャリパーとΦ250mmローターの組み合わせ。スイングアームは角型アルミできれいな直線を描く。
兄弟車のZ900に比べ、ドリブンスプロケットを44丁から42丁とすることで二次減速比をロング特性とし、同じ120km/h巡行でもエンジン回転数を抑えている。ちなみにZ900RSの120km/h走行はトップ6速で4400rpm。
水平近く寝かせてマウントされるホリゾンタルバックリンクリアサスを採用。伸び側減衰とプリロードが調整可能で、通常のリンク位置に空白ができるため、サイレンサーボックスを置いてマスの集中を図ることができる。

 

カワサキZといえばこのスタイル! LEDを採用したヘッドライトは、ケース内部を6室に分け、4室をロービーム、2室をハイビームとしている。Z1的の楕円形テールランプやウィンカーにもLEDを採用している。
タンクはシート下まで伸びる形状で容量17Lを確保。形状はちょっと背が高くファットだけれど、やはりZ1/Z2のイメージを踏襲。50周年記念車は、この「火の玉カラー」で、タンクキャップ後方に「Z50th」ロゴがはいる。

 

シート表皮デザインもアニバーサリー車専用デザイン。さらにアニバ車では、通常車では純正アクセサリー扱いのグラブバーが標準装備される。シート下にはETCも標準装備、シート裏には最小限の車載工具をセット。

 

通常車ではZ900RSとのエンブレムが装着されるが、アニバ車はご覧の、まんまZ1なエンブレムを標準装備。このエンブレムと楕円テールレンズ、グラブバーの標準装備だけでオールドファンは大喜びだろう。

 

今となっては貴重なアナログ2眼メーター。中央の液晶部にはギアポジション、燃料計&水温計とトラクションコントロールのモード、オド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費、残ガス走行可能距離計、気温を表示する。
Z1に比べるとちょっとショートだけれど、タンク同色のこのテールカウル形状が、やはりZ1/Z2を思わせる。思えば市販車にダブルシート+テールカウルというデザインも、70年代初頭のカワサキZの代名詞だった。

 

●Z900RS 50th Anniversary 主要諸元
■型式:カワサキ・2BL-ZR900C ■エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ ■総排気量:948cm3 ■ボア×ストローク:73.4mm×56.0mm ■圧縮比:10.8■最高出力:82kW(111PS)/8,500rpm ■最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/6,500rpm ■全長×全幅×全高:2,100mm×865mm×1,150mm ■ホイールベース:1,470mm ■最低地上高:130mm ■シート高:800mm ■車両重量:215kg ■燃料タンク容量:17L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17M/C (58W)・180/55ZR17M/C (73W) ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:キャンディダイヤモンドブラウン ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,496,000円

 



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2022/07/27掲載