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試乗・解説

YAMAHA MT-25 イカツい顔した 普通の友だち
YZF-R25のネイキッドバージョンであるMT-25。
ネイキッド=カウル付きよりも普段使いできる、
誰がどこを走ったって快適、使いやすい、そんなイメージ。
それがMT-25ロングセラーの秘密なのだ。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:赤松 孝 ■協力:YAMAHA https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/

普通こそ最強

 用途を限定しない、多目的、ターゲットユーザー層が幅広い──それが「ネイキッドモデル」と呼ばれるスタンダードスポーツの本質。MT-25は、まさに「そこ」を狙ったスポーツバイクです。
 2021年も、YZF-R25/MT-25合わせると、250ccクラスのスポーツバイクの販売ランキングではレブル250、NinjaZX-25Rに続く第3位。クルーザー、4気筒に続く3位ですから、ツインエンジンクラスではナンバー1てことになりますね、ちょっと強引だけど(笑)。
 そのMT-25、2015年に誕生し、20年にマイナーチェンジを受けていますから、もう誕生7年のロングセラーモデル(5月25日には、マイナーチェンジとカラー&グラフィック変更された2022年モデルが発売になる)。さらにYZF-R25/R3とMT-25/03に関しては、ヤマハ調べによると、R25/R3に関していえば、ユーザーの60%が10~20歳代のユーザーと、他モデルと比べてもかなりユーザーが若いのも特徴のひとつです。
 直接的なライバルで言えば、ホンダCB250R、スズキGIXXER250、それにカワサキZ250。この中では、やはり人気ではライバルを一歩リードしているように感じますね。
 

 
 そのMT-25、基本的には兄弟モデルYZF-R25とほぼ同一です(今回試乗したのは2021年モデル)。フルカウルのR25に対してMT-25はノンカウルで、毎日乗るようなストリートスポーツ度が高い。もちろん、R25が街乗りに適していないわけではありません。たとえばひょいと数kmだけ街乗りする機会があるとすると、2台並んでいるとしたら、ついMT-25にキーを挿してしまいがち、ってこと。
 エンジン、車体とも共通のパッケージで、MT-25はノンカウル、R25のセパハンに対してMT-25はバーハンドルでグリップ高が高く、ポジションがラク、という棲み分け。R25も、セパハンとはいえそう前傾ポジションではありませんが、やはりMT-25のバーハンドルのポジションの方がアップライトです。
 ぼく個人で言えば、R25よりMT-25の方が好み。これはスポーツランをしてもロングツーリングをしても同じで、ノンカウルならではの視界の広さや、もちろん前傾度の少ないポジションがいいから。もちろん、R25の方が好きだ、って人も多いのでしょう。街で見かける姿で言えば、きっとカウルつきR25とMT-25は、7:3くらいでR25の方が多いんじゃないかな、と思います。
 

 
 R25とMT-25、エンジン特性はもちろん同じ。アイドリングすぐ上からトルクがよく出ていて、スロットルレスポンスもシャープ。現代の2気筒250ccモデルは、排出ガス規制をパスするためか、発進トルクあたりのスロットルレスポンスがボヤッとした印象があるんですが、中でもR25/MT-25はシャープな部類に入りますね。
「スロットルを開ける」と「車体が前に進む」がきちんとリンクしていて、この辺もコントロール性の高さにつながっています。
 このトルクが、250ccクラスの中回転域ともいえる7000rpmくらいまで引っ張る力があって、その上の高回転域は伸びが少し鈍る印象。回転は上がるけれど、トルクが頭打ちという感じ。ただし、ごく普通に考えれば、サーキットでラップタイムを狙わない限り、7000rpm以上なんて回転数、ほとんど使いませんから。「ここからの高回転の伸びが……」なんていう人は、自分のバイクを大事にしてない証拠ですよ(笑)。
 

 
 ハンドリングは、倒立フォークを採用した現行モデルで、前期モデルよりもフロント周りのしっかり感が伝わって来ます。街中のスピード域でも、車体がカッチリと、安定感が増した感じがします。ハンドリングの重さではなく、しっとりした安定感。軽やかさならば前期モデルですが、その軽さをフラフラする、と感じていた人には好ましい変更点ですね。僕も、こういうしっとりしたハンドリングが好きです。
 ワインディングで少しペースを上げたときでも、倒立フォークの採用でブレーキングでの安定性が高まっているので、ハードブレーキング(って言ってもホドホドですが)を使ったコーナー進入をすると、思ったよりクルッと小さく曲がれます。これ、兄貴分のYZF-R6にそっくりな感じですね。R1はなかなかそんなエリアでは使いきれないんですけどね。
 

 
 街中を走るのはもちろん、高速道路を使ったツーリングでも、特にノンカウルの不利は感じません。120~130km/hといったスピード域ではカウルの有無を感じることはありますが、250ccクラスは現実的ではありません。トップ6速では、80km/hは5600rpm、100km/hは7200rpm、120km/hは8500rpm。120km/hでクルージングすると、ちょっとエンジンをいじめてる感じがするし、さすがに風圧も感じるようになるので、今回の高速道路の移動は110km/hあたりが快適でした。
 ロングラン適性もかなり高いです。100km/hオーバーのスピード域でも、車体はきちんと安定し、エンジン回転数も引っ張りすぎていないエリア。一般道、高速道路、ワインディングともスキのない、幅広い守備範囲のモデルだってことですね。
 

 
 YZF-R25のコンセプトは「毎日乗れるスーパーバイク」でした。じゃぁMT-25は、さらに日常での使いやすさを重視したストリートバイク。
 若いライダーたちには、街乗りの楽しさも、ワインディングの面白さも、ツーリングの素晴らしさも知って欲しいものだから、R25やMT-25が市販されているのが、本当に心強いのです。
(試乗・文:中村浩史)
 

 

ライダーの身長は178cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

エンジンはYZF-R25と共通の水冷DOHC4バルブ2気筒。1万2000rpmで35psをマークする高出力エンジンながら、アイドリング上の2000~3000rpmから使いやすいトルクがある。

 

ブレーキはφ298mmのシングルディスク+片押し2ピストンキャリパー。キャストホイールはY字型スポークの5本デザインで、純正タイヤはこのクラスの定番、IRC製RX-01F。

 

三角断面のサイレンサーを持つ2in1マフラー。前期モデルから出力特性に大きな変化はないが、EURO4規制適合の際にサイレンサー内部構造を変更し、サウンドも低く太く変更されている。

 

MT-25/03の特徴的なルックスである異形ヘッドライト。メインのヘッドライトは中央の丸型LEDランプで、上の眉のような配置で2眼のポジションランプをデザインしている。夜間でも暗いとは感じなかった。
タンクカバーを追加し、タンク幅を前期モデルよりも50mmほど幅広としたフューエルタンク。ニーグリップ性やひじのホールドを高めるのと同時に、ビッグバイクのような存在感をイメージしている。

 

R25とも共通のセパレートシート。ライダー側シートは、着座位置あたりのシート幅がうまくシェイプされていて、足着き性を考慮している。キー開閉でタンデム部を外し、取り外したシート底板の裏は左右でふたつのヘルメットホルダーとして使用可能。

 

アナログ+デジタルだった先代から、フルデジタルとなったメーター。ギアポジション、時計や燃料計付きで、オド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費、残ガス走行距離計、オイルトリップメーターが表示される。
現行モデルとなって、セパレートハンドルのR25は先代よりもハンドル高が低くなり、MT-25はセミアップハンドルを採用してグリップ位置は15cmほど高い。視界が広く、ポジションも快適だ。

 

●YAMAHA MT-25 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ■総排気量:249cm3 ■ボア×ストローク:60.0× 44.1mm ■最高出力:26kW(35PS)/12,000rpm ■最大トルク:23N・m(2.3 kgf・m)/10,000 rpm ■変速機:6段リターン ■全長× 全幅× 全高:2,090 × 755 × 1,070mm ■軸距離:1,380mm ■シート高:780mm ■タイヤ:前110/70-17M/C、後140/70-17M/C ■燃料タンク容量:14L ■車両重量:169kg ■車体色:パステルダークグレー、ディープパープリッシュブルーメタリックC、マットダークグレーメタリック8 ■メーカー希望小売価格(消費税込み):621,500 円

 



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2022/04/28掲載