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試乗・解説

スズキGSX-S1000GT&KATANAの国内モデルを紹介
スズキは昨年9月に発表し、すでに欧州などで販売を開始した新型スポーツツアラー「GSX-S1000GT」と、昨年11月に行われたEICMAで発表した、マイナーチェンジを受けた「KATANA」の国内発売モデルを発表。「GSX-S1000GT」は2月17日から、「KATANA」は2月25日より発売を開始した。本サイトでは、欧州での発表を受けてすぐに両モデルの解説ページを展開しているが、ここでは国内発売モデルとともに公開された詳細をあらためて紹介する。
■解説:河野正士 ■撮影:富樫秀明 ■協力:SUZUKI https://www1.suzuki.co.jp/motor/




■GSX-S1000GT

 報道機関向けに公開された開発陣のモデル解説動画で、チーフエンジニアの安井信博氏は、「GSX-S1000GTは上質なツーリング体験を提供するために新開発したグランドツアラーであり、2015年に発売したGSX-S1000Fの進化形ではない」と明言した。
 

スズキ初のGTにふさわしいデザインを追求。鋭く前方に突き出たノーズの左右に、モノフォーカスタイプLEDヘッドランプを配置。空力を考慮したミラーと合わせ、個性的なフェイスデザインを造り上げた。

 
 GSX-S1000というネイキッドスポーツモデルと基本コンポーネンツを共有することは、これまでラインナップしてきたGSX-S1000Fと同じ。しかし、ベースとなるGSX-S1000そのものがモデルチェンジを受け、パフォーマンスが向上するとともに、先進の電子制御技術を搭載したことで、幅広いキャラクターを造り上げることが可能となった。そのことで新型GSX-S1000の高い動力性能をより扱いやすくチューニングし、トレンドデザインと空力性能を融合させ、グランドツアラーに求められる長距離走行の快適性も兼ね備えたGSX-S1000GTのコンセプトが可能になったのだという。そしてGSX-S1000GTは、「スズキの二輪車が目指す楽しさ、使いやすさ、驚きを具現化したモデル」であるという。
 

シート着座位置やステップ位置はベースモデルであるGSX-S1000と同じながら、ハンドル位置をライダー側に14mm近づけることで前傾姿勢を緩和。両足はつま先奥までしっかりと地面に着けられる(ライダー:身長170cm/体重70kg)。

 
 最大の特徴は、車体デザインと装備にあるだろう。スーパースポーツ由来の、軽快な車体のポテンシャルをスポイルしないよう、空気抵抗の少ないコンパクトなカウルをデザイン。防風効果を高めるため、解析と風洞実験によるカウルの形状検討を繰り返したという。ヘッドライト周りから車体後方に向かう、小さなウイングやいくつものキャラクターライン、さらにはミラーの形状にいたるまで、走行風圧をコントロールして快適性とスポーツ性の融合が図られている。
 またGSX-S1000とは異なるシートレールは、このGSX-S1000GTのために新設計したもの。サイドケースの装着、タンデムでの長距離走行時でも、スポーツ性能や高速走行時の直進安定性を損なうことなく、ライダーおよびパッセンジャーの快適性を向上。さらにはシート下にその特徴的なトラス構造を部分的に露出させることで、デザイン的なアクセントになっている。
 

前方へと突き出たフロントカウルデザインがよく分かる。この低く伸びたカウル形状により、車体全体が伸びやかな印象となり、フロント周りのボリュームと、ケース装着によって増加するリア周りのボリュームとのバランスが取れている。

 
 純正アクセサリーとしてラインナップされているサイドケースは、車体開発と同時に、デザインおよび設計が行われた専用アイテムだ。フルフェイスヘルメットを収納できる大容量を確保しながら、シャープな車体デザインとのシンクロ率も高く、またコンパクトにデザインされている。
 前後サスペンションのセッティングをGSX-S1000GT専用とするのはもちろん、ダンロップSPORTMAX Roadsport2ラジアルタイヤの内部構造も専用設計とし、スポーツツーリングモデルとしての完成度を高めている。

伸びやかな印象のサイドシルエットに対し、フロントからの印象はとてもスリムでスポーツバイク然としている。また左右サイドケースの張り出しが少ないこともよく分かる。

 
 そしてメーターディスプレイは6.5インチのフルカラーTFTデジタルディスプレイを採用。それにスズキの二輪車としては初となる、スマートフォン連携用のアプリ「SUZUKI my SPIN/スズキ・マイ・スピン」と連携が可能。電話の発信や着信、地図の表示、音楽再生などが可能になり、ライダーおよびパッセンジャーが利用するインカムとの連携もできる。またSUZUKI my SPINのシステムに登録されたサードパーティー製アプリをスマートフォンにインストールすることで、その使用用途をさらに広げることもできる。
 ボディカラーは、トリトンブルーメタリック、リフレクティブブルーメタリック、グラススパークルブラックの3色がラインナップ。価格は159万5000円である。
 

■KATANA

 ベースモデルである、スポーツネイキッドモデルのGSX-S1000がモデルチェンジを受けたことにともない、「KATANA」も新しくなった。
 

新色のマットブルー。正式名はマットステラブルーメタリックとなる。メタリックを混ぜることで、艶を抑えながらもエッジ部分に光沢が生まれ、ボディの立体感を強調することが出来る。

 
 変更点は、電子制御スロットルシステムの採用や、吸排気系の変更だ。これにより欧州でのユーロ5規制、および平成32年(令和2年)国内排出ガス規制をクリア。同時に、最高出力も向上させている。
 

膝の曲がり、および前傾姿勢も穏やかでリラックスしたポジションが可能。両足のつま先もしっかりと地面に着けることができる(ライダー:身長170cm/体重70kg)

 
 また電子制御スロットルシステムの採用により、電子制御システム/スズキ・インテリジェント・ライド・システム(S.I.R.S.)を新たに搭載することが可能になった。S.I.R.S.は電子制御スロットルシステム、出力特性を3つのモードから選択できるスズキドライブモードセレクター(SDMS)、選択幅を広げ5 段から選択可となったスズキトラクションコントロールシステム、クラッチレバーを操作しなくてもシフトアップ/ダウンができる双方向クイックシフトシステム、発進時や低回転走行時にエンジン回転の落ち込みを制御するローRPMアシスト、ワンプッシュで始動が可能なスズキイージースタートシステムで構成されている。
 

 

マットブルーのボディカラーを採用しても、ツートーンのコントラストや、ノーズからタンク後端へと駆け上がる3本のキャラクターラインという、KATANAのデザインエッセンスが損なわれることはない。

 
 このシステムによって走行条件や路面状況、ライダーの経験やスキルに合わせた最適な設定を提供し、ライダーが求めるニーズに合わせたパフォーマンスを実現している。
 ボディカラーは定番のシルバーと、新色のマットブルー。シルバーは21年モデルから、SUZUKIロゴ色やフロントフォークアウターチューブ色、ホイール色を変更。また昨年開催されたEICMAで発表されたグレーのボディカラーはラインナップされていない。
 

■GSX-S1000GT 詳細解説

スズキのオンロードスポーツモデルを象徴するブルー系のカラーを中心にボディカラーを開発。フロントフォークやシートレールにチタニウムゴールド調の差し色を追加している。

 

サイドカウルに見えるウイング状のパーツはライダーのヒザにあたる走行風を和らげる。その位置は風洞実験によって決定。新形状のミラーと合わせてライダーにあたる走行風を徹底的にコントロールし、長距離走行時の快適性を向上。
大容量を確保した純正アクセサリーのサイドケース。フラットなトップ面をはじめ、タンデムライダーの居住性や乗降のしやすさも考慮した作りになっている。ケースの脱着方法も容易に設計されている。
チタニウムゴールドでペイントされた、GSX-S1000GT専用に開発されたシートレール。タンデムおよび積載を考慮した強固な設計であることはもちろん、ライダーの足着き性向上を考え、スリムにデザインされている。

 

フロントフォークはKYB製φ43mmフルアジャスタブルの倒立フォークを採用。スズキの竜洋テストコースで何度も実走を重ねて、GSX-S1000GT専用のセッティングが施されている。
スズキドライブモードセレクターによって、アグレッシブなAモード、アクセル操作に対するトルクの出方が最もリニアなベーシックなBモード、最高出力はAおよびBモードと同じながら、アクセル微開から中間開度までの発生トルクを抑えて優しい操作感を与えたCモードの、3つのライディングモードを選択可能。
排出ガス規制の対応と出力向上を両立させるため、排気システムもその構造が見直されている。またリアサスペンションには伸側ダンピング調整とスプリングプリロード調整が可能なKYB製ショックユニットを装備。

 

スターターボタンを押すと、ボタンから指を離した後も一定時間スターターモーターが回転するイージースターターシステムを装備。また振動低減対策としてハンドルブラケットをラバーマウントするフローティング構造も採用。
右スイッチボックスのボタンで起動するクルーズコントロールシステム。この左ハンドルスイッチの+/-ボタンを使って簡単に設定速度の調整ができる。各設定画面の項目選択もこのマルチダイレクションボタンで行う。
スクリーン形状も、風洞実験と実走を重ねて最適化。左右側面に沿って導入されたウィンドディフレクターはヘルメット周りだけでなく、肩周りの防風性を向上させるなど、特にライダー上半身に当たる走行風をコントロール。

 

フロントカウルから切れ上がるキャラクターラインを受け、エッジの効いたシルエットを採用した燃料タンク。容量19リットルを確保し、長距離ツーリングにおける給油回数を減らすことにも貢献する。
シートはGT専用表皮を採用。シート形状やフォームの厚さ、座面サイズを検討し、ライダーだけでなくタンデムライダーにとっても快適な居住空間を追求。またグラブバーは左右分割デザインとし、握りやすい形状を追求した。
シフトアップ/ダウンに対応した双方向クイックシフターを採用。シフトダウン時のオートブリッピング機能と合わせ、快適に走行できるのはもちろんのこと、アグレッシブな走行フィーリングも体感できる。

 

スズキの二輪車として初となる6.5インチフルカラーTFT液晶ディスプレイを採用。スマートフォン連携機能も装備し、専用アプリ「SUZUKI my SPIN」と連携することで、電話や地図、カレンダーなどを、ディスプレイを介して利用可能。ワイヤレスヘッドセットはライダー、タンデムライダーの2セットを同時に接続できる。

 

●GSX-S1000GT 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ ■総排気量:998cm3 ■ボア×ストローク:73.4×59.0mm ■圧縮比:12.2 ■最高出力:110kW(150PS)/11,000rpm ■最大トルク:105N・m(10.7kgf・m)/9,250rpm ■全長×全幅×全高:2,140×825×1,215mm ■軸距離:1,460mm ■シート高:810mm ■装備重量:226kg ■燃料タンク容量:19L ■変速機: 6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17M/C・190/50ZR17M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,595,000円

 

■KATANA 詳細解説

新色マットステラブルーメタリックを採用しても、燃料タンクから車体先端まで伸びるシャープなラインは伸びやかで、KATANAらしいスタイリングは健在だ。

 

GSX-S1000用エンジンをベースとした水冷並列4気筒998ccエンジンは、電子制御スロットルシステムの採用や吸排気の機構を変更。排出ガスを低減し、パワーアップも実現している。
外装類のデザインは継承。新色マットステラブルーメタリックカラーの燃料タンクには、ブラックのSUZUKIロゴがデザインされている。
メーターのデザインは先代から継承されているが、ドライブモードセレクターやトラクションコントロールを装備したことで、各選択モードの表示のためレイアウトが変更されている。

 

左スイッチボックスには、ドライブモードセレクタにくわえ、各モードの選択用ボタンを追加。シンプルなシステムとボタンレイアウトで、直感的に使うことができる。
右スイッチボックスには、ボタンから指を離した後も一定時間スターターモーターが回転するイージースターターシステム装備のスターターボタンを配置。
シフトアップ/ダウンに対応したクイックシフターを装備。スズキクラッチアシストシステムも新たに採用し、快適でスポーティな走りをサポートする。

 

●KATANA 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ ■排気量:998cm3 ■ボア×ストローク:73.4×59.0mm ■最高出力:110kW(150PS)/11,000rpm ■最大トルク:105N・m(10.7kgf・m)/9,250rpm ■全長×全幅×全高:2,130×820×1,100mm ■ホイールベース:1,460mm ■シート高:825mm ■装備重量:215kg ■燃料タンク容量:12L ■変速機:6段リターン ■タイヤ:前・120/70ZR17 M/C(58W)、後・190/50ZR17 M/C(73W) ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,606,000円

 



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2022/02/28掲載