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試乗・解説

bimotaの日本総輸入元がカワサキモータースジャパンに。 販売第一弾はカワサキ製1043cc4気筒エンジンを使う bimota KB4。その独創性あふれる詳細と、買い方。
先のEICMA 2021(ミラノショー)で発表されたbimota KB4が、カワサキ プラザ東京等々力で国内初のお披露目をした。興味深いマシンの詳細や価格だけでなく、明かされたのは、日本でのカワサキモータース株式会社製オートバイの販売を担当している株式会社カワサキモータースジャパン(以下KMJ)が、今後bimotaの正規販売を担当すること。これからはディーラーのカワサキ プラザ店で買える。カワサキがbimotaの再生支援に乗り出したというニュースから約2年、具体的な動きが活発化してきた。
■取材・文:濱矢文夫 ■協力:カワサキモータースジャパン https://www.kawasaki-motors.com/




カワサキエンジンを使う4番目のbimota

 1966年に創業して、1973年からフレームビルダーの仕事を開始してから、他社エンジンを使ったオリジナルシャシーのモーターサイクル製作に携わるようになっていったbimota。
 カワサキのエンジンを使ったモデルは、Z1から発展したZ900(1976年モデル)、Z1000(1977年/1978年モデル)の空冷4ストローク並列4気筒2バルブエンジンを使った1978年発売のKB1が最初。次がZ500やZ400GPといったミドルクラスの空冷並列4気筒エンジンを使ったKB2(1981年)。そして、Z系エンジンからフルモデルチェンジしたZ1000Jの空冷2バルブエンジンを使ったKB3(1983年)と、過去に3機種あった。その次だからKawasaki・bimotaの4代目でKB4となる。
 

 
 そこで疑問に思うかもしれないのが、カワサキとタッグを組んでこれより先に登場したNinja H2のスーパーチャージャー付エンジンを使うTESI-H2の存在だろう。フロントサスペンションと舵取りに通常のテレスコフォークを使わずフロントスイングアームを使ったハブセンターステアのTESIは別シリーズだからKBシリーズの並びには入らなかった。余談になるがカワサキモータースグループが再生支援をスタートした新生bimotaを主導するCOO(最高執行責任者)のピエルルイジ・マルコーニ(Pierluigi Marconi)氏が大学生の頃に考案し、論文にしたシステムだから、論文を意味するイタリア語“TESI”が車名になっている。今回の発表会では、就任が話題となったKMJの桐野英子社長に加え、マルコーニ氏もイタリアからオンラインで参加した。
 

 

国内販売は200台で437万8000円

 前置きが長くなったけれど、何はともあれKMJのみがbimotaの日本総輸入元となった事実は大きい。KB4が買えるカワサキ プラザ店は全国で49店舗。それにプラスしてこれまで日本での代理店を担当していたモトコルセも入れた全部で50店舗がbimota正規取扱店となる。日本での販売数は200台。気になる価格は税込み437万8000円とアナウンスされた。ただし、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の影響でパーツサプライヤーからの部品調達が遅れており、それにより生産の遅れも生じており、予定としている200台がまとめて入荷することはない。
 最初に入荷してくる台数が限られている。それも来年、2022年の3月の予定。その結果として初期入荷分に関しては商談する権利を抽選とした。

 欲しい人が手に入れる流れは、入荷数に応じて抽選に参加し、当選して商談権を得た人が、正規取扱店から購入できるチャンスが得られる。
 bimotaがカワサキのお店で買えることを詳しく説明すると、二輪を製造しているKMC(カワサキモータース)がbimotaに対してエンジンを提供して、bimotaが車両を制作。それを国内でカワサキ車を販売しているKMJが輸入して、ディストリビューターとしてbimota正規取扱店に卸し、ユーザーに渡る。この記事を書いている現在、抽選に参加する方法や時期などは最終調整中だそうで、年内には決定事項が判明する予定。TESI-H2についてはKMJの取扱機種ではないが、今後もbimotaラインアップを拡大したい考えから、導入する可能性はあるかもしれないという回答。まだ未定だ。
 

発表会には、KMJの桐野英子社長に加え、イタリアからオンラインでマルコーニ氏も参加した。

 
 嬉しいのは、KMJが他のカワサキ車と同様に、2年のメーカー保証を適応してくれること。部品に関してはその都度全部イタリアから取り寄せるのではなく、KMJとしていくつか持つ準備をしているそうだ。これを聞くと安心できる。
 KMJ桐野社長は挨拶を、「カワサキ車と同様のサービス対応をさせていただきます。カワサキのネットワークを活用いたしまして、製品とともに安心をお届けしたい」と締めくくった。
 マルコーニ氏は「bimotaの夢を実現することにかかわってくれたカワサキのすべての人に感謝します。カワサキのテクノロジー、セールス、サービスネットワークを活用できることは、bimotaがこれまで持ってこなかった価値を得ることになり、これによりbimotaはさらに独創性と信頼性を持つブランドになります」と語った。
 

bimota KB4はどんなバイクなのか

 KB4は以下の3つのキーワードで開発された。

“Exclusive(独創的)”
 KB4の全てが特異であり、 他では手に入れることができない独創的な外観を持ちながら、一瞥して「Bimota」と、「KB4」と分かるデザイン。それについてマルコーニ氏に問うと、「デザインからスタートしたのではなく、目標としたテクニカルなところからスタートし、それでパッケージングをして最後にデザインをどうするか決めていった。過去の伝統を感じさせながら、後方にあるラジエターなどイノベーションを加えたスタイリングにしたかった」と答えた。
 

 
“High Quality(上質)”
 KB4は細部に至るまで徹底した品質にこだわった。手作業での塗装に始まり、合金による削り出しパーツ、カーボ ンファイバー製の部品、OZ社製の鍛造ホイール、本革シートなど、高品質を追求。
“Extreme Function(追求した性能)”
「追求した性能」、その一例が「軽さ」となる。非常に軽快なハンドリングを実現するため、実質的な軽量化だけでなく、 質量を感じさせない車体の作り込みを目指した。結果、コンパクトに設定されたディメンションとの組み合わせにより、KB4独自の軽快で俊敏なハンドリングを手に入れた。質疑応答の時間に、マルコーニ氏へ「軽快なハンドリングのためにNinja 650などに使われている2気筒650ccという選択肢もあったのではないか」と質問してみた。
 

 
マルコーニ氏:「このエンジンはとても素晴らしいパフォーマンスを持っており我々の理想的なものだったというのが重要です。KB4はワインディングで楽しいバイクを作りたいと考えたので、650は考えませんでした。なぜならbimotaブランドとしてふさわしいのは本当にグッドパワーとトルクがあるこの1,043ccだと思ったからです」
 

 
 個性的なスタイルによって、昔から他のメーカーとはひと味もふた味も違うルックスをしてきたbimotaらしさを感じさせる。もちろん高品質な部品や構成の独創性といった伝統も受け継がれている。カワサキ製1,043cc水冷4ストローク並列4気筒エンジンはNinja 1000SXに積まれているそのもの。エンジンの仕様はいっさい変更されていない。電子制御スロットル、6軸IMU(慣性計測装置)を使った高度な電子制御技術もそのまま使われている。
 

興味深いのは、エンジンを強度メンバーとして積極的に使ったシャシー。フロントフォークを懸架するだけのシンプルなクロムモリブデン鋼(25CrMo4)を使ったコンパクトなトレリスフレームをエンジンにセット。これまでもフレームビルダーから発展したメーカーとして、シャシーにオリジナリティあふれる多くのトライをしてきたbimotaの真骨頂。

 

KB4を個性的にしている大きな要素が、このリアに取り付けられたラジエター。

 

左右にあるダクトに前から空気を取り入れ、走行風に圧力をかけながらシート下にあるラジエターへと導かれる。フロントからラジエターがなくなることで、エンジン搭載位置の自由度が高まり、理想としたフロント53.6%/リア46.4%の前後重量配分を達成できたと説明された。これと、シャシーを必要最低限にして前後をつめたことにより、ロングスイングアームを採用しながら1390mmの短いホイールベースを実現できたそうだ。

 
マルコーニ氏:「車体をコンパクトにすることで、1000ccで600ccのような乗り味を実現したかった。それとこの構造だとラジエターの熱がライダーの足に当たらないから快適になります。30~40km/hくらいで走るときは冷却効率が下がってしまうので大きな冷却ファンを回します」
 

両サイドから風をラジエターに導くダクトの役割を兼ねたカーボン製シートレール。

 

エンジンの後端にスイングアームをマウントするアルミ合金(Anticorodal 6082)のサブフレームが取り付けられる(写真左)。スイングアーム(写真右)は3つのパーツで構成されたもので、Anticorodal(アンチコロダル)アルミ合金から削り出して作られている。その3つのパーツは溶接され、高次元でバランスされたねじれ剛性を実現。スイングアームの長さは555mm。ボトムリンク式のリアサスペンションはショックユニットがフレームと接続しないタイプ。

 

リアサスペンションのアッパーマウント部(写真左)は偏芯機構になっており、これを調整すれば810mmのシート高から+/-8mmの変更ができるようになっている。ショックユニットはオーリンズ製TTX 36。ステップ(写真右)もペグ部、マウントフレーム部、先端の操作部に偏芯機構があり、位置の調整が可能だ。

 

アルミ部品は軽さと剛性を追求した設計で、ことごとく削り出し。フルアジャスタブルフロントフォークはオーリンズ製FG R&T 43 NIX30。フロントのホイールトラベルは130mm。ブレーキはφ320mmディスクを2枚に、ブレンボ製ラジアルマウントキャリパーをセット。

 

リアには17インチ×6.00のOZ製鍛造ホイールを採用(写真左)。ピレリ製スーパーコルサEVOタイヤを履く。リアのホイールトラベルは122mm。今回展示された車両にはEKチェーンを使っていた。二次減速比は15T/41Tのスプロケットで2.733。シート表皮(写真右)は“VERA PELLE”とイタリア植物なめし本革組合による品質保証のマークが入ったもの。タンカラーに赤色のステッチ。

 

LEDの丸目ヘッドランプ(写真左)がクラシックテイストを醸し出す。グラフィックのペイントはハンドガンによる手塗り。トップブリッジの上にステアリングダンパーをセット(写真右)。TFTカラーインストゥルメントパネルを採用。内蔵する燃料タンクは樹脂製で容量は19.5L。

 
 カワサキと協力関係でありながら、カワサキの技術スタッフが開発にいっさいタッチしていない走りはいったいどんなものなのか、KB4はどんなライディング体験させてくれるのか、乗れる日をワクワクしながら待ちたいと思う。
(レポート:濱矢文夫)

●bimota KB4 Specification
■エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ■総排気量:1,043cm3 ■ボア×ストローク:77.0×56.0mm ■圧縮比:11.8 ■最高出力:104.5kW(142PS)/11,000rpm ■最大トルク:111N・m(11.3kgf・m)/8,000rpm ■全長×全幅×全高:2,050×774×1,150mm ■ホイールベース:1,390mm ■シート高:810mm[+/-8mm] ■車両重量:194kg ■燃料タンク容量:19.5L ■変速機形式: 常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17・190/50ZR17 ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):4,378,000円

 





2021/12/17掲載