46年目という歴史。
Gold Wingファミリーの祖先である初代GL1000が登場したのは1975年。今でこそGold Wing といえばプレミアム・ツアラーの代名詞だが、その発端はCB750FOURとそのライバル達を越える存在として開発が始まったという。威風堂々、比類無き高性能なスポーツマシン。空冷並列4気筒エンジンというバイクですらプレミアムな時代に、水冷水平対向4気筒というエンジンレイアウトを持つGL1000は、主要マーケットだった北米でホンダのフラッグシップモデルとして受け入れられた。
その威風堂々とした存在から、当時アフターマーケットで流行の兆しを見せていたツアラーとしての快適性を持たせるフェアリングを装着して、ロングツアラーとして仕立てるユーザーが増加。その流れを取り入れて進化が始まった。GL1000、GL1100、GL1200とモデルチェンジを進める中、“インターステート”という言葉を車名に入れ、プレミアムなツアラーとしての性格を強めている。オーディオ、CB無線の搭載を前提にしたスイッチ周り、ライダー、パッセンジャーを繋ぐインターコムジャックとそのPTTスイッチ、後付け感が全くない車体デザインにインテグレートされたツアーケースの装備など、コーストtoコースト、ボーダーtoボーダーという広いアメリカをそれこそ走り回るためのバイクへと成長した。
圧倒的な存在への転機。
その後、1988年には、同セグメントのライバル達を圧倒するようにモデルチェンジ。1500cc水平対向6気筒の採用など快適性と独自のスムーズな回転を見せるエンジン、存在感、所有感そのどれもがこのクラスでは比類無き存在、決定版として認識されるまでになった。このモデルから国内販売も開始され、日本モデルではウインドシールド用ワイパーが装備されるなど、その装備、快適性はまさに高級な乗用車とのクロスオーバーだった。見た誰もが「スゴイ!」と唸ることに。
2001年にはアルミツインチューブフレームに1800㏄水平対向6気筒を搭載した先代にモデルルチェンジ。初期型では6連装CDチェンジャー、HIDヘッドライトの装備など時代に合わせた先端装備を充実させ、車体設計のアップデイトを含め、初代から受け継がれる走りの良さも再定義。1500時代からは「別モノ」と乗った誰もが体感できる仕上がりに。プレミアム・ツアラー界での人気はすでに不動のものになった。
Gold Wing+DCTが登場。
そして2018年。現行型へと17年ぶりとなるフルモデルチェンジを受けたGold Wing シリーズ。その内容も濃厚。しっかりと進化を遂げていた。フロントサスペンションを、テレスコピックフォークから独自のダブルウイッシュボーン式へ。そして7速+微速前後進機能を持つDCTモデルを追加。大型モデルでは初採用となるISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を搭載。これは、PCXなどスクーターモデルで採用されていて、通称セル・ダイナモなどと呼ばれたもの。発電するジェネレーターに電気を流しモーターとして活用するというものなのだ。通常のスターターモーターが始動時に駆動するピニオンギアやエンジン側のリングギア、そもそも別体のスターターモーターが不要となるため、ユニット重量の軽量化も同時に達成するシステムだ。また、始動時にスターターモーターがエンジン側を回すためのギア嵌合ノイズがないのも特徴で、この機能を活かし、DCTモデルではアイドリングストップ機能も搭載された。
また、DCT搭載モデルでは従来スターターモーターの力を利用してきた後退を、専用の後進用ギアをミッションに持ち、エンジンの力で後退をするようになった。つまり、7速DCT+後退ギアということに。また、DCTモデルでは、マニュアルモード時などに使う変速スイッチを使い、後退と前進ともに微速で動かすことが可能に。取り回しの苦労やストレスから大いに解放する装備となる。MTモデルでは従来からのスターターモーターの力を使った電動後退を踏襲する。
6代目となったGold Wing は車体重量も軽量化されさらに走りも磨かれることに。エンジン重量が6㎏以上軽量化されたほか、フレームは先代同様ツインチューブながら、全体をアルミダイキャスト部材を使うことで、部分毎に最適な肉厚による剛性強度を取れることで、こちらも軽量化に貢献。合わせて30㎏以上の軽量化になった。
また、リアサスマウントの手法を変更したり、フロントのサスも、転蛇と路面からの入力を受け止める機能を分けたことで、路面追従性を向上させつつ、キックバックなどがダイレクトにハンドルグリップに伝わらないようになり、快適性もさらに向上。また、新しいメカに乗るというユーザー心理にもポジティブに作用することに。
そして2021年モデルはさらに深化。
2021年モデルを一言で表現すれば正常進化版ということになる。まず、国内ではGold Wing、Gold Wing Tourの2機種展開はそのままながら、全車DCTモデルに統一された。それに合わせ、Gold Wing Tourは、エアバッグを標準装備する。
装備面ではオーディオ音質をより上質なものとするため、55Wのスピーカーの採用とイコライザー設定変更がされている。Gold Wing では従来通り前側2スピーカーのみの装備となるが、Gold Wing Tourではパッセンジャーの耳に届くリアを含めた4スピーカーが55W化されている。
また、Gold Wing Tourのリアトランク(トップケース部分)の収納力を拡大。昨年モデルまで50リットルだった容量を61リットルにまで拡大。左右のサイドケースと合わせたトータル収納容量は、110リットルから121リットルに拡大されている。
また、パッセンジャーの快適性を高めるため、後席用シートバックの高さを30mmアップ。同時に、17度だった背もたれの角度を24.5度へとすることで、よりリラックスしたポジションと広いルーム感をパッセンジャーが味わえることに。リアトランクの拡大により全長は2575mmから40mm延長され2615mmとなっている。
さらに、これまでオプション装備だったLEDフォグライトを標準装備化。左右に張り出したシリンダーの最前列にキラリと光るアイテムはこれまでも人気が高く、装着率が高かったとのことなので、標準装備化は多くのユーザーに歓迎されることになると思う。
スピーカーの変更やLEDフォグの標準化により重量はわずかに増加したものの、2018年からアップデイトされてきたDCTのプログラムなどもあり、乗りやすさは充分に享受出来るハズ。ライディングモードの設定により6気筒エンジンの乗り味もしっかり変化するだけに深化したGold Wing シリーズに関心のある向きは、是非、2月25日に発売を楽しみにして欲しい。
(試乗・文:松井 勉)
■型式:ホンダ・2BL-SC79 ■エンジン種類:水冷4ストローク水平対向6気筒OHC(ユニカム) ■総排気量:1,833cm3 ■ボア×ストローク:73.0×73.0mm ■圧縮比:10.5 ■最高出力:93kw(126PS)/5,500rpm ■最大トルク:170N・m(17.3kgf・m)/4,500rpm ■全長×全幅×全高:2,615[2,475]×950×1,430 [1,340]mm ■ホイールベース:1,695mm ■最低地上高:130mm ■シート高:745mm ■車両重量:389[366]kg ■燃料タンク容量:21L ■変速機形式:電子式7段変速(DCT) ■タイヤ(前・後):130/70R18M/C・200/55R16M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク■車体色:パールグレアホワイト、キャンディアーダントレッド(ツートーン)、ガンメタルブラックメタリック(ツートーン) ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):3,465,000円 [2,948,000円] ※[ ] はGold Wing
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