現在の若い方々には、その名称すら認識されていないことも多い伝説の国産バイク・ブランド『メグロ』。そのメグロがなんと個性的な最新のバーチカルツインエンジンを搭載するW800の躯体を借りて蘇ったというのだ。
もともと、そのW800自身も何回か再登板を遂げた復活の代名詞のようなモデルだ。
2009年“ファイナルカラー”の発売をラストに、ひとまず国内販売に区切りをつけていたビッグ・バーチカルツイン(この時点ではまだ650)だったが、復活を望む多くの声に応えて、排気量アップとF.I.化などにより環境対応を行って2011年2月に「W800」として復活、再登板したのがつい昨日のことのように思い出される。
カワサキのもうひとつの顔ともいえるビッグ・バーチカルツインをイメージづけた“W”シリーズだが、意外にも発売された期間は短い。メグロ製作所時代のK2をベースに開発された「650 W1」の登場で初代“W”の歴史が始まったのは1966年。このOHV時代は“W”の黄金時代といえるものだが、前輪ダブルディスクブレーキの採用が行われた1973年モデルをもって一旦終焉を迎えている。
そして“ネオクラシック”として初期の“W”のイメージを継承するモデルとして、ベベルギアでカムを駆動するOHCエンジンを搭載する第2世代の“W”、「W650」が1999年2月に登場する。新時代の“W”として多くのファンを獲得したこの第2世代のW650だったが、環境規制の強化などの影響により2009年にいったん生産中止となってしまっている。
ビッグ・バーチカルツインという強烈な個性故に、もっと長い期間存在したかのように思ってしまうが、いずれの期間も10年足らず、超新星のような短くも鮮烈な輝きだった。名車とはそんなものなのだろう。
それはともかく、2011年2月に環境対応を行って第3世代の“W”として復活したのが冒頭で触れた「W800」シリーズだった。エンジンは、650時代の675cm3からボアを5mm拡大してボア77mm×ストローク83mmの773cm3へと排気量が拡大されたが、第2世代“W”の最大の特徴であるベベルギアによるカム駆動など基本メカニズムはそのまま引き継がれていた。
細かい部分をのぞけば、排気量以外で変わったのは燃料系がキャブレーターからF.I.へ、そしてキックが廃止されたことくらいだろうか。可能な限り“オリジナルのまま”で復活をさせてくれたカワサキの英断は、堅実な販売実績を見れば見事に的を得ていたといえるだろう。
2011年11月には、仕様や諸元はもちろん、カラー&グラフィックもそのままに2012年モデルが発売されている。2012年10月もカラー&グラフィック変更のみで2013年モデルへ、そして2013年9月、2015年9月とカラー&グラフィック変更が行われ、まさに堅実に歴史を刻んできていた。
そして三度目の復活は2019年3月。2016年7月にファイナルエディションを発売して栄光の歴史に一区切りをつけたW800だったが、不死鳥の様に復活を遂げてくれた。“グローバルモデル”として世界中の市場に受け入れられるモデルでなければ生き残るのが難しい昨今、まさに奇跡ともいえる復活だった。それも最初からバリエーションモデルを擁しての登場となった。W800シリーズの基本モデルといえるW800 STREET、そして流行りのネオレトロ、カフェスタイルが施されたW800 CAFEという充実したラインアップでの堂々の復活だった。
そんな“W”がメグロの復活に一役買おうというのだから歴史は面白い。
あまりに遠くなってしまったメグロが活躍していた時代。そのメグロを取り巻く時代をカワサキの資料でざっと振り返っておくと…。
以下、カワサキの資料から…
『1924年に創業し、日本国内におけるモーターサイクル文化の礎を築いた目黒製作所。カワサキ(当時は川崎航空機株式会社)はその名門を吸収し、大排気量のアドバンテージを強めながら、同時に“メグロ”ブランドを引き継いで進化させました。大排気量モデルで培ったノウハウを持って川崎航空機に移籍したメグロの技術スタッフは、後に650ccのWシリーズで開発の中心的存在となりました。MEGURO K3の名称の由来ともいえる‟K”の始祖は、カワサキとメグロが業務提携した翌年、1961年に誕生したメグロ・スタミナK1。これは空冷OHVバーチカルツインエンジンを搭載し、後に誕生するカワサキの大型スポーツの世界戦略車W1のルーツとなったモデルです。この年には二輪生産台数が前年の3倍を上回り、カワサキにとって飛躍の年となりました。
1965年のカワサキ500メグロK2は、神戸製作所に移動した旧メグロの技術者との共同作業によって、川崎航空機が設計から生産まですべてを担いました。空冷4サイクルOHVバーチカルツインエンジンの496ccは、当時の国内最大排気量モデルで、警察をはじめ官公庁でも採用されました。
その翌年、1966年に誕生したのがW1。排気量をさらに624ccに拡大した空冷OHVバーチカルツインエンジンを搭載し、世界のマーケットに打って出た伝説の大型スポーツバイクです。その後、フロントダブルディスクブレーキを採用し1973年に登場したW3へと進化します。そこからさらなる最高性能への挑戦がWからH、Z、Ninjaブランドへと受け継がれて今日に至ります。Wブランドのヘリテージは1999年のW650へと引き継がれました。そして2011年、その伝統を受け継ぐように排気量アップされたW800は、さらに2019年には最新技術による高い走行性能と操縦性を盛り込んで、フルモデルチェンジをした新しいW800へと進化しました。
そしていま、かつてカワサキ500メグロK2からW1が開発されたように、W800から、先進機能を搭載したニューモデルMEGURO K3が誕生したのです。“メグロ”ブランドを起源とする‟MEGURO K3”は、カワサキ最古にして最長のシリーズモデル。その長い歴史に新たな1ページを刻みます。』(以上カワサキの資料を参考にさせていただきました)
ちなみにW800とMEGURO K3の装備の主な違いを見てみると。W800のスタンダードハンドルバーがK3ではアップライトスタイルハンドルバーに、W800のカバー無しリアサスがブラックのカバー付きに、W800ではクロムだった前後フェンダー、フロントフォークアウターチューブ、チェーンカバー、タンデムグリップ、ヘッドライトステー、テールランプブラケットなどがブラック加工されたものに変更されている。W800のタックロールシートに替えてK3ではプレーンシートというのもイメージ的な変化は大きいだろう。
車体サイズもハンドル形状の違いで、全幅が790mmから925mmに、全高が1,075mmから1,130mmに、車両重量も226kgから227kgと1㎏重くなっている。773cm3エンジンやフレーム、ホイールサイズ等足周りのスペック等には変更無しだ。
MEGURO K3。「ミラーコートブラック×エボニー」。
EJ800H_GY1DRF3CG_A
EJ800H_GY1DLS3CG_A
★カワサキ ニュースリリースより (2020年11月17日)
MEGURO K3 新発売のご案内
- モデル情報
- 車名(通称名) MEGURO K3
- マーケットコード EJ800HMFNN
- 型式 2BL-EJ800B
- 発売予定日 2021年2月1日
- 型式指定・認定番号 19121
- メーカー希望小売価格 1,276,000円(本体価格1,160,000円、消費税116,000円)
- カラー(カラーコード) ミラーコートブラック×エボニー
- ※当モデルは二輪車リサイクル対象車両です。価格には二輪車リサイクル費用が含まれます。
- ※価格には保険料、税金(消費税を除く)、登録等に伴う諸費用は含まれません。
- ※当モデルはABS装着車です。
- ※当モデルは二輪車ETC2.0標準装備車です。
- ※メーカー希望小売価格は消費税10%を含む参考価格です。
- ※当モデルは「カワサキケアモデル」です。
- 【MEGURO K3】
日本最長の歴史を紡ぐモーターサイクルブランド“メグロ”。およそ一世紀も時代を遡る1924年より、「大排気量」で「高性能」、「高品質」を謳い、当時、日本のライダーたちから憧憬の念を集めた“メグロ”ブランドがいま甦ります。日本の大型スポーツバイクの歴史を紡ぐカワサキのコメモラティブモデル“MEGURO K3”。その存在を誇示する美しいエンジンや流麗なタンク形状、そしてホイール、シートがバランスよくまとめられたそのフォルムは、スポーツバイクメーカーとして日本初のブランドとなった“メグロ”の歴史を引き継いだカワサキの誇りであり、伝統を決して途絶えさせないという、強い決意の表れなのです。
- ■主な特長
- ・普遍的な美しさを追い求めつつ、随所に個性が光るクラシカルな造形
- ・高度な塗装技術が要求される銀鏡塗装とハイリーデュラブルペイントを施したフューエルタンク
- ・アルミ型押し成型に職人が手作業で塗装したオリジナルエンブレム
- ・艶ありブラックとクロムメッキを各所に散りばめた高級感のある車体デザイン
- ・パワフルな性能と、豊かな鼓動感、心躍るサウンドを奏でる、ベベルギアが際立つ360°クランクシャフトを備えた空冷バーチカルツインエンジン
- ・クラシカルな外観と滑らかなライディングを実現するツインリヤショック
- ・クラシカルで質感の高いなめらかなシート
- ・ブラック塗装を施した、アップライトスタイルのハンドルバー
- ・力強いサウンドと鼓動感を発するエキゾーストシステム
- ・Euro4排出ガス規制に適合した環境性能
- ・軽快な操作とともに操縦性を高めるアシスト&スリッパークラッチ
- ・車体のコンパクト性と優れた剛性バランスを誇るダブルクレードルフレーム
- ・高い路面追従性を誇るフロントフォークとリヤのツインショック
- ・クラシカルなスポーツ感を漂わせるフロント19インチ、リヤ18インチホイール
- ・優れた制動力を発揮するABSユニット搭載のブレーキシステム
- ・標準装備としたETC2.0車載器、グリップヒーター、センタースタンド、ヘルメットロック
- ■カワサキケアモデル
- 安心・安全なモーターサイクルライフをサポートするため、1ヶ月目点検に加え、3年間の定期点検とオイル交換(オイルフィルター含む)を無償でお受けいただけるモデルです。
https://www.kawasaki-motors.com/after-service/kawasakicare/
主要諸元
車名型式 | 2BL-EJ800B | |
---|---|---|
MEGURO K3 | ||
発売日 | 2021年2月1日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.190×0.925×1.130 | |
軸距(m) | 1.465 | |
最低地上高(m) | 0.125 | |
シート高(m) | 0.790 | |
車両重量(kg) | 227 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 30.0(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※2 | |
21.1(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | 2.7 | |
エンジン型式 | – | |
空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 773 | |
内径×行程(mm) | 77.0×83.0 | |
圧縮比 | 8.4 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 38[52]/6,500 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 62[6.3]/4,800 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | バッテリ&コイル(トランジスタ点火) | |
潤滑油方式 | ウェットサンプ式 | |
潤滑油容量(L) | 3.2 | |
燃料タンク容量(L) | 15 | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
変速機形式 | 常時噛合式5段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.352 |
2速 | 1.590 | |
3速 | 1.240 | |
4速 | 1.000 | |
5速 | 0.851 | |
減速比1次/2次 | 2.095/2.466 | |
キャスター(度) | 27.0° | |
トレール(mm) | 108 | |
タイヤサイズ | 前 | 100/90-19M/C 57H |
後 | 130/80-18M/C 66H | |
ブレーキ形式 | 前 | φ320mm油圧式シングルディスク |
後 | φ270mm油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | φ41mmテレスコピック式 |
後 | スイングアーム | |
フレーム形式 | ダブルクレードル |
※1:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状況などの諸条件により異なります。
※2:定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
※3:WMTCモード値とは、発進・加速・停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。
※改良のため、仕様および諸元は予告なく変更することがあります。