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試乗・解説

Showa Technology Experience 2020 一足先に「明日の体験」 新しい制御の効果に驚く。
サスペンションの最新技術の取材会。多くのOEMを手がける(株)ショーワが設けてくれた希有なチャンスに感謝しつつ会場のテストコースへ。そこで体験した明日にでも登用が可能に思えた技術は、ライダーの未来を楽しくするものだった。
■レポート:松井 勉 ■撮影:徳永 茂、依田 麗  ■協力:SHOWA https://www.showa1.com/jp/




ショーワにとっての初めての試み

 (株)ショーワ(以下ショーワ)と言えば2輪、4輪のサスペンション、ステアリングダンパーはもちろん、パワーステアリング、プロペラシャフトなどを開発製造するサプライヤーだ。

 特にライダーにとってサスペンションメーカーとしてお馴染み。ホンダ系のレースチームにSHOWAのステッカーを見たことが多いのではないだろうか。2020年でワールドタイトル14連覇を成し遂げたWTCのトニー・ボウ、ダカールラリーに2013年から参戦再開したTEAM HRC。WSBで連覇を続けるカワサキのジョナサン・レイ。ワールドクラスのチームがショーワユーザーなのだ。そのショーワが、サスペンションなどの技術体験取材を企画してくれたのである。
 

 
 ブリーフィングでショーワについて教えてくれた開発本部長の関野陽介さんによれば、創業は1938年。今年で82年目の歴史を持つ。国内外に20拠点を持ち従業員数は1万2240人だという。これまでホンダ色の強いメーカーだったが、ショーワ、ケーヒン、ニッシン、日立オートモーティブシステムズとともに4社で新設する総合会社「日立 Astemo (アステモ)株式会社」へと移行するという変革のタイミングを迎えている(https://mr-bike.jp/mb/archives/16039)。

 当日訪れた開発現場の一つ、塩谷プルーピンググラウンドは、栃木県を流れる鬼怒川近くにあり、関東平野の北の端に位置しいている。その開設は2015年9月というから比較的新しい。中でも自慢なのは2017年に施設内で運用を開始した「ワインディング路」。コンパクトだがしっかりコストを掛けたワインディング路には世界から厳選した厳しい道だけを再現しているという。
 

まずはテストコースの慣熟走行から。写真は直線路と呼ばれる場所。
ブリーフィングではショーワについて、ショーワの取り組み、テスト方法などが伝えられた。

 
 そのコースは、アメリカのコンシューマズ・ユニオンが発行する雑誌「コンシューマー・リポーツ」が4輪車のテストに用いるコネティカット州の道を模したもので、まるで地面の起伏にそのまま道を通したような起伏とカーブのコンビネーションが特徴な通称US路、そしてドイツのニュルブルクリンクがある周辺にある一般道を再現したものが組み合わさったものだと言う。
 

 

こんな新機能を体験した

 この日、ハイライトは二つ。最初はすでに市販されているショーワの電子制御セミアクティブサスペンション、EERA(ELECTRONICALLY EQUIPPED RIDE ADJUSTMENTの頭文字をとったもの)をベースに、さらに盛り込める機能を追加し体験する、というもの。
 そしてレースフィールドで培った技術を投入しグレードアップした市販サスペンションキット装着車とノーマルの比較である。

 既存のEERAがもつ機能(◎)と、今回の取材のために追加になった機能(☆)
☆スカイフック制御
◎減速制御
◎ジャンプ着地制御
◎車速依存制御
☆ハイトフレックス
◎自動車高調整制御
である。これらのアプリケーションを持つEERAを装着した車両にテスト用にオン、オフできる機構を使いつつ、アル、ナシで何が違うのかを体感する。どんなベネフィットがライダーにもたらされるのかを解りやすくテストできるのだ。
 

EERAとコンベンショナルなサスペンションの違いを解説したもの。ブレーキング時の姿勢変化を抑えるEERAは、タイヤの路面追従性も向上させ制動距離を短くする効果もある、という趣旨を説明したもの。
EERAライドハイトは電動油圧プリロードアジャスターによりプリセットされたプリロードをスプリングに与える機能。

 
 テストコースはオンロード、オフロードがあり、ともにCRF1100L、アドベンチャースポーツというアフリカツインの2機種で体験した。

 次にアフター用としてCRF450R用に市販されている前後サスペンションキットを装着したモデルと、スタンダードのサスペンションのモデルでの比較試乗。こちらはオフロードコースで行われた。
 
 

ワインディング路で体験した長い左コーナー。曲率は一定で高めのコーナリング速度によりサスペンションストロークを使いつつ旋回する。
特設オフロードコースにて。CRF1100LはコンチネンタルTKC80を履いていた。

 

スカイフック制御は驚き

 そもそもEERAを装着したアフリカツインでは車体側の6軸IMUからの車体の状態、モーメントの信号、車輪速、ABSからブレーキ圧、スロットル開度、ギアポジションなど様々な状態を勘案して瞬時に前後サスの減衰圧特性を変化させている。
 その特徴として前後のサスペンションに採用されるのがリニアな減衰圧変化を生み出す動きをするソレノイドバルブだ。
 既存の電子制御サスで多く使われるステッピングモーターは多段的な制御になるがショーワが採用するソレノイドバルブはより曲線的で滑らかに減衰圧を変移させているのが特徴だ。

 そしてスカイフック制御。ギャップのある路面からの動きをサスペンションで吸収し、バネ上に動きを極力伝達しないことでまるで宙づりのような乗り心地を造る、という理論を指す言葉なのだそうだ。
 

テストコースを一周するたびにEERAのアプリケーションを変更したり付け足したりして、体験としてはとても理解しやすかった。
ピットはショーワのトランスポーターを使ったレースチーム仕立て。

 
 そしてアフリカツインに搭載されたEERAにスカイフック制御を付け足すと……。
 まず、劇的に乗り心地が良くなる。これはテストコースにある連続する波状路の一つ目を踏んだ瞬間に解った。タンタンタン、とカマボコ状のギャップを乗り越えるタイヤの通過音は聞こえるが車体にピッチング的な挙動がほぼ出ていない。

 また、特殊路と呼ばれる路上にある凹凸の見本市のようなテスト路では、高速道路や橋にあるような道路の継ぎ目の深段差で深さが違うバージョンが続く。その松竹梅の違いがあっても、その先にある台形やかまぼこ型のスピードバンプを越えても足周りが見事な路面追従性を見せる。ギャップのいなしかたが絶妙なのだ。
 

スカイフックをオンにして直線路で左右にロールさせてみる。切り返し時の伸びて縮んでという動きから「どっこいしょ」感が確実に減るのが解った。

 
 ストロークセンサーを内蔵する前後サスペンション。そしてリニアな動きをするソレノイドバルブにより減衰圧を1000分の1秒単位で変化させる制御なのだが、サスペンションストローク速度の「高速」領域がとても滑らかに動いている。もちろん、減衰圧ばかりではなく、嵌合部分の摺動抵抗、中でもオイルシール、ダストシールといったフリクションと品質保持のバランス取りが難しいアイテムがそもそも性能が高いという部分もあるだろう。

 それにしてもこの乗り味をコンベンショナルなテレスコピックフォークで生み出せるとは驚き。ザックス、WP、オーリンズなどで体験した電子制御セミアクティブサスもそれぞれのメリットがあったが、コンフォート性能で言えば「お試し版」とはいえ、ショーワのEERA+スカイフックが、ルーキーがいきなりポールポジションを摂ったような印象を持った。

 他にも直線平坦路で試した60、80、100、120、150km/hでの乗り心地も上々。車線幅分をイメージして左右にローリングを繰り返した時の安定感、収まり感も上々。市街地である速度調整のためのスロットルオフ、軽い減速、行けると思ったら信号が変わったときの減速、攻め込んだ走りの減速、急ブレーキ等々様々してみた。サスペンションストロークの長いアフリカツインは、攻めたブレーキングになるほど前のめり感が大きくなるが、それがない。きれいに緩和され、フロントタイヤの接地点にしっかり、しっとり荷重が乗るというイメージに変換してくれている。
 

EERAの要、ストロークセンサーを納めた手前側と、奥はソレノイドバルブで減衰圧調整をするフォークのコンビネーション。

 

カワサキのZX-10R SEに搭載されてデビューしたEERA。2018年からその歴史が市販車とともにはじまり、拡大を続けている。

 
 自慢のワインディング路でも流しながら走るレベルでもハンドリングは軽快で気持ち良く、点在する穴ギャップの吸収力も高い。ギャップはコーナリング中のライン上にありテストコースならではのいやらしさだが、それが恐くない。

 お試し版では流すような走りで、スロットル小開度時からアクセルオフにして旋回に入ろうとした一瞬だけ、フロントフォークがフラットさを保つために減衰が上がるのか、寝かし込みとセルフステアが入るイメージにギャップが出るのが気になった。とはいえこれはお試し版。これも制御マップの煮つめでどうにでもなる範疇だと想像する。

 アフリカツイン+スカイフック制御は「おまえに開発責任者を任せる」と言われたら(ないけど)、二つ返事で採用することにしたい。それほどアドベンチャーツアラーが相手にする様々な状況に対し適応性を持っていると感じた。
 

スカイフック制御を体験中。直線で加速をしても姿勢がフラットに保たれる印象。フォークがビョンと伸びない印象だった。リアが持ち上がるのと同等程度だけ伸びている、というような絶妙な乗り味だった。

 

理想の車体姿勢を保つ自動車高制御

 ライダー、荷物、パッセンジャーの有無など、姿勢変化があったときに理想的な車体姿勢を電動イニシャルプリロードアジャスターを用いて調整してくれる機能。

 自分がかつて乗っていたKTM640ADVENUREや990ADVENTURE。スペック的には前後フルアジャスタブルサス装備だし、990に至ってはリアショックユニットの圧側減衰圧には低速、高速が別々に備わるものだった。しかしながら所有する間、それらを活用する機会は多くは無かった。砂利道、砂地、アスファルトといじればその特性に合わせた足となることに感動しながらも、ドライバーを持ってクリック数を圧側、伸び側、数えたり、フロントフォークも圧側がフォークトップ、伸び側がフォーク底部だったと記憶しているから、潜り込むように調整するのは締める、緩める回転方向に気を遣ったし、イニシャルプリロード調整もクリック数や工具を使った回転数を間違えないようにするコトに集中するのは正直面倒くさかった。

 その後、2013年から現在まで数台のセミアクティブサス装着車に乗り、それらを自動かつボタン一つで調整できる今は、コンベンショナルなフルアジャスタブルサスに自分は戻れないと思う。だって、どこかにセッティングを合わせたら、どこかが必ず外れるからだ。
 

パニアケースと荷物合わせて20㎏を搭載してワインディング路をゆく。自動車高調整制御を入れる前、まあ、普通に走ってくれるのだが、アップダウンの激しいUS路では丘のピークでカーブが左右入れ替わるため、バイクを切り返した後に前輪から荷重がフワと抜ける。自動制御で姿勢が整うと当然ながらリアヘビー感が減り、フロントの接地感も改善。重心位置が高くピッチング方向への姿勢変化が大きいという特性を持つバイクにとって、電動調整式かつ勝手にしてくれるのは安全性も改善してくれるはず。

 
 長々前置きしたが、アフリカツインの左右のパニアケースに合わせて20㎏の荷物を入れて走り、制御の有り無しを体感する、というテストもやってみた。やっぱりこれはありがたい、と思う。

 荷物を積めばお尻が沈み、フロント荷重が軽くなる。そんな中、ショーワ自慢のワインディング路を行けば、アップダウンと左右へのロールチェンジが忙しいテストコースでは挙動の補正を考慮した走りをしなくてすむし、前後の接地荷重比がバランス良いほうが安心感あり楽しい。もうこの機能は想像通りだった。
 

仕事で試乗する時はシビアに荷重が増えたら姿勢変化をマニュアルでもプリロードを調整したが、自分のプライベートとなるとやはり億劫に。新型アフリカツインのESにもプリロードを電動で変更できる機能が付いているがやはり便利。自動となればなおさら。

 

ハイトフレックスというソリューション

 10月、イタリアのミラノで開催されるEICMAを毎年取材しているジャーナリストの河野正士さんが「停まると車高が落ちるヤツ、ショーワがミラノで出していて、ドメニカーリ(クラウディオ・ドメニカーリ氏・ドゥカティのCEO)が興味津々でショーワの人に質問していましたよ」と聞いてから、気になっていたヤツについに乗って体験ができた。
 

テスト車のアフリカツインにはタブレット型のコントローラー兼モニターが装着されハイトフレックスの車高、車体姿勢が可視化できるようになっていた。下段の青い機能ボタンでアプリケーションをアクティブにしたりオフにしたして体験ができた。

 
 かつてスズキがDR250Sベースに車高調整機能を搭載したバリエーションモデルにDR250SHCがあった。前後サスのストロークする動きを内蔵油圧ジャッキに使うことで車高を調整する、というもの。調整、という表現は大袈裟で、ハンドル部に装着されたダイヤルを回すと、サスの油圧経路のバルブが開き、車高を落とせる、というまさに油圧ジャッキだった。

 停止した時など足着き性をより確保したいとき、これを使うと、サスストロークが長いオフ車でも足着き性を両立できる、という機構でDR250SHCのユニットを作っていたのも実はショーワだった。

 本題のハイトフレックス、これはアイディア的にはSHCと同様にサスペンションのストークする動き、減衰を生み出すオイルを使い、停止時に車高を落とし、走行再開したら路面のギャップによるサスストロークによるジャッキ効果で車高を再び上げる、というもの。

 これを電子制御で行い、車高が下がるのは停止前1秒とのこと。体感した結論。一言「素晴らしい」としか言い様がない。確かに車高が落ちた停止状態から連続波状路に入ると、ストロークによるジャッキ効果で車高が持ち上がる瞬間にギャップを通過するとそのシンクロにより少々の突き上げ感を感じないではないが、車高が復帰するまでのものの数秒だ。

 平坦路ではストロークが少ないのでもう少し時間が掛かるが、あえて旋回前に一時停止して車高を落とし、その後深いバンク角でコーナリングしても、前後ともに車高が落ちているので姿勢的な違和感はなし。今回のテスト車は、アフリカツインのローダウンモデルとロングストロークモデル、双方の車高を行き来するようなイメージだというから、弊害が出てこないのも当たり前か……。
 
 

ハイトフレックスを解説したボード。電子制御で車高調整バルブを開き車高を落とす、というシステム。車高の復帰には路面の起伏でサスペンションがストロークする動きを使い内蔵された油圧ジャッキが車高を上げる、というもの。

 
 なにより、足着きという商品力と、走破性という商品力を相殺する必要がない。特にアフリカツインのようにどちらを採るの? は究極の選択。コンセプトから言えば走破性はCBR1000RR-Rにおけるパワーや旋回性、戦闘力と同義。

 実は初めて現行アフリカツインを見た2019年の東京モーターショウで「国内仕様はローダウンのみです」と聞いて残念な気持ちになったのを忘れられない。アドベンチャーバイクが好きでオフロードライディングも好き。となると性能として必須のサスペンションストロークは欲しいのが事実。とはいえ、多くのメーカーで足着き性が重要で、ショールームでも足が着かないから買わない、というフローが多いことも耳にする。

 海外ブランドでもアドベンチャーバイクのローダウン仕様が売れて販売が伸びた、という事実も知っている。その流れが定着し、パイが増えると次第にローダウンではないサスペンションのモデルに乗りたい、という声も増えるという。どうせ行かない、と思って買ったローダウンでダートに入ったら、標準サスの人がラクラク走る場所でストロークが足りず恐かった、という体験をしたり、経験値を重ねることで、オフロードが楽しくなると、どこかでローダウンでは物足りなくなるという流れもあるようだ。

 アドベンチャーバイクの用途を限定してロードバイクとしている人は気が付かないだろうが、ストロークを使い果たした次の瞬間、挙動がやはり突発的だ。これはロードでもかなり走るアドベンチャーバイクだけに、車高が低い分バンク角にも影響がでてくる可能性も。

 また、サスストロークや最低地上高を確保したい、でも足着き性をも確保したい。ならば見た目をくずさない範囲でシートを細身にしたい……。これも最近よくある傾向で、アドベンチャーバイクの中には長い時間乗るとお尻が痛くなるものも少なくない。乗り心地ベストなシート作りもこれがあれば出来るハズ。

 ライダーの身長、体格に左右される足着き性。ならばこのハイトフレックスという機構があれば一挙両立じゃないのか。体格なんて人の多様性の原点のようなもの。この機能がある、ということを知ってしまうと、これまた開発責任者なら真っ先に採用したい機能です。
 

速度依存制御はもっともナチュラルな操縦感。

 速度依存型の減衰圧制御は、ワインディング路をゆったり走っても、飛ばして走ってもフィーリングがとてもナチュラル。いわゆる完成度の高いセミアクティブサスペンションという印象だった。実はこのナチュラル感を出すのは難しいテーマなはずで、心地よいストローク感、それでいてハードブレーキング時に長いサスペンションのバイクによくあるリア周りの重みが前輪にのしかかるような印象になることもなく、90/90-21タイヤながら狙ったラインをトレースしやすい。加速時にもフロントの荷重が抜けてアンダーステアが強まることもない。そもそもアフリカツインの完成度の高さがなせる技でもあるのだが、さらにそれが上質になったような印象だ。

 実はテスト路で紹介したEU路区間はアップダウンが連続するが、100km/hで流しても気持ち良く走れるルートだ。しかし、奥のヘアピンを曲がりUS路となった瞬間、まるでモトクロスコースをそのまま舗装した? と言いたくなるようなきつい傾斜となり、丘のトップで右カーブが左カーブに切り返すように造られている。そんな場面でも楽しく走れたのはアフリカツインの足周りと制御のマッチングがとても良かった証拠でもある。そう感じた。
 

減速制御について

 今回、この減速制御に関しては察知し切れていない。例えば、スカイフック制御中にアクセルを開けると、フロントフォークの伸びが抑えられる。また、減速すれば、減速Gでフロントフォークが縮むのを防いでくれる。

 そうした制御が入るのは承知したが、そのどの部分が減速制御なのか、という学習と実験に、的を絞ってやり忘れていた、というのが正直なところ。ただ、これまでリポートしたとおり、加速、減速、そしてコーナリングにおいて、「これ!」と言った違和感がなくその点からも完成度が高いものと言える。減速制御というピースだけを取り出さなくても全体によく馴染んでいると評価するのが適切なのだと思う。
 

ジャンプ制御に「なるほど!」

 最後にジャンプ制御をお伝えしよう。この機能は2020年にデビューしたCRF1100LアフリカツインのSEモデルにすでに搭載され、市販されている機能だ。オフロードセクションに設けられたジャンプ台、というより、飛び出し台は高さ70㎝ほどだろうか。一般的な食卓ほどの高さから60km/hで飛び出し、着地時の違いを見た。
 

ジャンプ制御体験中。60km/hで飛びだ出し、こんな姿勢のまま着地してアプリの有無で違いを体感した。

 
 同じバイク、同じ場所で制御のあり、なしを体験出来たのでその効果が手に取る用に理解できた。

 まず制御なし。およそ5メートルは飛び出し、アフリカツインは着陸する。前後を同時につけるよう姿勢変化がないように飛ぶのが意外に難しい。ハンドルを引いたり、アクセルをあおってしまういつものクセがでるからだ。次第になれてくると、制御ナシでやはりドスンと落ちてサスペンションが伸び上がり、そこから再び沈んで定位置に戻る、というおつりがくる所作がわかる。
 

コチラ、NGバージョン。ついフロントを引いてしまうと着地時のフロントの角度を均一にするのが難しくリアを支点にフロントがドスンと落ちる感触になり、速度は同じでも着地感が異なるため、無心でまっすぐ飛び出すようライディングした。

 

着地してからサスの伸び方、その収まり方に違いがあった。

 
 対してジャンプ制御が入ると、車体側のIMUから車両が接地していないことを検知。その時間によって着地時の衝撃を計算し減衰圧を上げておく、というもの。速度は60km/h。飛び出し方も同じようにできた時の印象の違いは、なるほど、フルストローク域まで沈むが、そこまでの時間が長い。減衰が掛かっていることを実感。そのフルストロークしたあとも、伸びストロークも穏やかでバウンド感が明らかに少なかった。着地の瞬間より伸びの所作の違いがでるのが印象的だった。
 

 

 

A KITは高速側微少ストローク域が抜群だった。

 最後にCRF450Rに装着したキットサスの報告だ。これはインナーチューブにショーワ独自のエメラルドコーティングを施し、内部の摺動抵抗の低減やアクスルホルダーなどに製法を変え軽量化、高剛性化を図ったワークスマシン的スペシャルパーツだ。
 

CRF450Rで体験したA-KITのサスペンションユニット。スライダーパイプやロッドの表面処理の他、フリクション低減のための油膜保持性能を高める加工、軽量と高剛性化をしたパーツ使いなど上質な商品性と性能を持つ。

 
 波状路とジャンプの着地、という限られたコースアイテムでの体験だったが、一番違いが分かったのは、砂利が浮く硬い路面だった。とくにブレーキングを開始した瞬間の路面追従性がよく、ブレーキングでスッとフォークが沈む動きが滑らか。だから砂利道を通過したときの「乗り心地」がいい。
 この作動性の良さが生み出す路面のグリップは、自信を持ってブレーキングが出来るし、暴れないからブレーキング後のターンインなどに気持ちを向けやすい。その気持ちの余裕の差は大きく、仮に一つのカーブで0.05秒ノーマルサスにたしてマージンを稼げたら、20コーナーのあるコースでは1ラップで1秒差を付けることができる。フィジカル的にタフなモトクロスでは同じライダーでもそれだけの差を足で付けられるコトになる皮算用だからメリットは大きいはず。

 今回のテストではなかったが、通常のモトクロスコースにあるような大ジャンプ、軟質、硬質混ぜ合わせた路面ではブレーキングだけではなく、立ち上がり加速からの旋回など、もっと差が付くのかもしれない。そんな上質な足周りだった。疲れにくいという点でエンデューロでも活躍しそうなマイルドな足周りだった。
 

開発責任者のみなさん、ご決断を!

 今回、テストコースで体験したものがスバラシイことは間違いない。今後はコストや費用対効果で採用される、されないが判断されるだろう。
 ハイトフレックスを筆頭にどこのメーカーが最初に出すのか。この良さを知ってしまった今、関心時はそちらに移行しました。2021モデル以降の出来事になるだろうが、その日を心待ちにしたい。
 

今回は体験メニューになかったが、CBR1000RR-Rにも搭載される電子制御ステアリングダンパー。ハード的にはロッドタイプのステアリングダンパー+電子制御となる。制御マップで善し悪しが決まるはずでハードはそのソフト部分をどれだけ忠実に再現できるのかという相互補完の関係にある。

 

会場ではカットモデルを使い商品についてのワークショップも開かれた。一つ一つの内容を深掘りするには時間がたりず、是非、パート2も開催して下さい! ショーワのみなさん、ありがとうございました!!

 

アフターマーケット用として高性能かつ外観意匠をも満足させるカスタムというフィールドにもショーワはその領域を広げている。

 

KTMのモトクロッサー用にも商品ラインナップを拡げているところに実力と自信の高さが伝わってくる。

 



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2020/10/28掲載