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ルリカミドリ バイク好いとっちゃん 第77回 「心霊体験したんです、ワタシ……」の巻

 やっと長い梅雨が明け、待望のツーリング季節の到来!!……なんてことにはならず、ここにきてまたもやコロナの野郎が復活しやがったので、自粛モードに戻ってしまいました。気軽にお外へ出かけることができません。
 しかも、東京のヤツは地方に来るな、だとぉ~!? 何か、都民全員が保菌者呼ばわりされてるみたいで、本当に不愉快なのであります。

 てなワケで、あまり遠出もできず、ムシ暑い部屋の中で苦しんでいる皆様のために、ワタシの昔の心霊体験を書いてみました。少しだけでも涼しんでもらえたら幸いです。





 これはもうずいぶん昔の話になります。12月の中ごろ、高円寺のアパートで一人酒を飲んでたのですが、早朝に突然お寿司を食べたくなりました。それで、寿司なら築地だろうと、青梅街道まで出て、タクシーを捕まえたのです。まだ地下鉄も走っていない時間でしたしね。

 すると、五日市街道の入り口にある交差点の真ん中に一台の軽自動車が停まっており、その側に人が一人、うつ伏せで倒れているのが見えたのです。
 バッと見た感じ、中年の小太りの女性。カーキ色のスカートで、大きなお尻。まったく動いてはいません。
 まだ早い時間なので誰も歩いていないし、車も走っていません。その軽自動車にも人影がないのです。
 状況から考えると、たぶんたった今この車がこの方を跳ね、その運転手さんが、救急車を呼ぶために公衆電話を探しに行ったのでしょう。携帯電話が普及していない時代でしたし。
 タクシーの運転手さんは一瞬顔をしかめたのですが、そのまま通り過ぎました。ワタシも何も言えなくて、そのまま二人ともまったく無言のまま築地に着いたのでした。

 翌日の新聞を見るとその記事が載っていまして、やはりその女性は亡くなっておられました。
 それ以来、ワタシはその場所をバイクで通るたび、心の中で手を合わせ、「ご冥福をお祈りいたします」と、祈るようになったのです。

 それから年が明けて元旦。当時は漫画の仕事がいっぱいあってお金も少しはあったので、正月は毎年一人ですき焼きを食べることにしていたのです。今は牛肉は高くてとても買えないけど……(苦笑)。
 小鉢に少し取り分けたすき焼きとビールを机の上に置いて、御先祖様に新年の挨拶をしまして、ワタシはコタツで食べ、飲んでいい気分。そのうち眠くなってきたので、そのままゴロンと横になったのです。

 しばらくの間うとうとしたのですが、目が覚める一瞬、何と、その、御先祖様にあげたすき焼きを、うらめしそうな顔をして立って見ている人の姿が見えたのです。
 大きなお尻。カーキ色のスカート。そうです、あの事故のときに見た、中年の女性だったのです。
 その人は、ワタシが目を覚ましたのに気づくと、あわてるような感じでパッと消えたのです。本当に一瞬のことだったのですが、はっきりと見えたので、夢ではないのです。でもなぜか、恐い感じは全然しませんでした。

 実はそのアパート、他にもいろいろと変な体験をしていまして、たぶん「霊道」が通っていたのではないかな、、、なんて、今では思っておるのです。

 もしかしたらあのとき、タクシーを止めて、人工呼吸をしたら助かっていたのかもれません。
 そのことをふと考えると、今でも少し肌寒いものを感じるのであります。

ルリカミドリ バイク好いとっちゃん 第77回 「心霊体験したんです、ワタシ……」の巻


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2020/08/10掲載