「エイプ50 ボアアップ」とか「エイプ50 ハイカム」などの検索ワードでググりましたら、このページがそこそこ上位に出て来てビックリしているツボ8です。「さすがはWEBミスターバイク!」と感心すると共に、エイプ50とかに乗っている人が自分の記事を読んで参考にしてしまうなんてこともあることを再認識させられ、少々ビビっております。
というのも、今さらですが自分はメカニックやチューナー、エンジニアなどのプロフェッショナルではなく、単なるDIY好きのオッサンだから。縦型エンジンをいじった経験にしても、10数年前にピンキー大統領のDE耐参戦車両であったエイプ100にボアアップキットを組んだことがあるだけ。今回の作業も、大統領にお借りしている整備書やネットにアップロードされている情報を見ながら作業を進めているような素人なのであります。だから作業方法や計測値などは、どれも通販番組の画面に小さく表示されている「個人の感想です」的な「個人の作業一例です」となります。特に計測値などは、測定者の熟練度がかなりモノをいいますので鵜呑みにせず、同じ作業をするならご自身で測定することを強くお勧めいたします。
そんな言い訳(?)をしてからの本題です。前回は、80ccにボアアップした際に50ヘッド(ノーマル)のままだと、圧縮比がかなり高い状態になってしまうというレポートをしました。そんなレポートをしておいてなんですが、恐らくはその圧縮比のままでも大丈夫だと思われます。というのも今回使用するメーカー不明のボアアップキットと一流メーカーのものを比べてみると、排気量やピストン形状に大きな差がないからです(といっても一流メーカー品は製品写真で判断してますが)。恐らく50ヘッドで組んだ際の圧縮比は、一流メーカー品も今回使うメーカー不明品もそれほど大きな差がないはず。つまりエイプ50をボアアップしている大部分の方は、高圧縮比のまま使っていると推測されます。ネットの情報によれば、そんな仕様でもレギュラーガソリンで走らせている方もいるようなので、それほど気にする必要がないのかもしれません。
とはいえやっぱり燃焼室容積を計って圧縮比を算出した自分としては、12.9:1という圧縮比がちょっと高過ぎるように思えます。まぁ、先ほども書いたとおり、燃焼室容積測定の精度が低過ぎて、実はそんなに圧縮比が高くないのかもしれないのですが(笑)。それを言い出すと話が前に進まないので、とりあえず計測値は正確なものとして、もう少し圧縮比を下げる方法を考えてみました。
思いついた方法その1。50ヘッドの燃焼室を削って、希望する圧縮比となるまで燃焼室容積を広げてみる。エンジンのチューンナップをしている感が高く、そんなところも魅力であったりする方法です。しかし実際には、燃焼効率を落とさずに上手いこと削るスキルが求められ、自分のような素人にとってはかなりハードルが高い作業と言えます。またそれと共に、今後もいろいろなエンジン仕様を試していきたいと思っているので、当分の間は部品の加工を最小限に留めておきたいという自分ルールを作っていたりします。50ヘッドもまだまだ使うことがあると思うので、できればまだ加工したくない……。
思いついた方法その2。ヘッドガスケット、もしくはベースガスケットの厚さを厚いものに変更し、実質的な燃焼室容積を大きくしてみる。ガスケットの厚さ分の容積っていうのも、特に原付という小さい排気量では圧縮比に大きく影響してきます。例えばノーマルと同等の厚さとなる0.25mmのヘッドガスケットを、今回使う52.9mmボアのシリンダーに組んだ場合、ガスケット分の容積は0.5492ccもあるわけです。つまりヘッド、もしくはベースガスケットを0.5mmでも厚いものに変更できれば、約1cc分燃焼室容積が広がるわけです。ヘッドガスケットに関しては、昔の縦型エンジンに使われていたアスベストだかグラファイト製のコンポジットタイプであれば、エイプに使われるメタル製と比べ結構な厚さがあり、代用すればかなりの容積を稼げるはずです。ただし問題点として、クランク軸とカムシャフト軸の距離が変わってしまうので、ノーマルのカムスプロケットを用いてエンジンを組み付けると、バルブタイミングがズレてしまうことになります。
最後に思いついた方法その3。エイプ100純正シリンダーヘッド(100ヘッド)に変更する。ピンキー大統領からいただいたパーツの中に100ヘッドが入ってまして、試しに燃焼室容積を計測してみると約8.13cc。50ヘッドが約6.85ccだったので、その差は約1.3ccとなります。100cc用のシリンダーヘッドを80ccに組んだら、圧縮比がかなり低くなってしまいそうですが、エイプ100の純正ピストンはピストントップの形状がほぼフラットなのに対し、使用するボアアップピストンは中央部が山型に盛り上がった形状なので、結構いい感じの燃焼室容積となってくれそうです。さらにいえばボア径がボアアップピストンが52.9mm、エイプ100は53.0mmとほぼ同じなので、スキッシュエリアを含めた燃焼室形状がちょうどいい具合になってくれると予想できます。
以上3つの方法の中から、今回採用することにしたのはその3、100ヘッドを組み合わせることによる圧縮比の適正化。100ヘッドの燃焼室容積から計算した圧縮比は10.9:1となりました。チューニングエンジンとしてはハイコンプレッションとは言いがたい並みの圧縮比ですが、ノーマルの9.2:1(エイプ50)や9.4:1(エイプ100)と比べれば、十分に高くなってます。街乗りメインのエンジンと考えれば、絶妙な圧縮比設定と言えるのではないでしょうか? そして100ヘッドにすると、ビッグバルブ&ビッグポート化が果たせてしまうという大きなメリットがあったりもします(もちろん無加工のままで)。さらに言えば、冷却フィンも大型化されているので、冷却性能も高まってくれると思われます。
ただしちょっと不安なのが、エンジンを組んでいた昨年秋の時点で、ネットの情報として100ヘッド流用ネタが全く見つけられなかったことです。長い歴史を誇る縦型エンジンのチューンナップ、純正パーツの組み合わせでできることであれば、絶対これまでに誰かがやっているはず。そして純正パーツ流用のチューンナップでメリットが大きいなら、定番化するのが常……。にも関わらずネット情報にもなっていないということは、大きな落とし穴があったりするのかもしれません。
……なんてことを書いてから、確認のために改めて今(2020年7月)検索してみたところ、ボアアップしたエイプ50に100ヘッドを載せている情報ありました(笑)。なかなか興味深いことを書かれていらっしゃるブログ(?)だったので、XLRをいじり始めた頃からよく拝見していたのですが、自分が圧縮比をどうするか、あ〜だ、こ〜だと情報を集めている頃には、まだ100ヘッドについてのレポートはアップされていなかったと思われます。
まぁそれはいいとして、とりあえず自ら組んで確認しているので、次回あたりで、まずはエンジンを完成させ、なるべく早く100ヘッドが使えたのかどうかをレポートしたいと思います(笑)。