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試乗・解説

ジクサー人気の秘密は、 バイクを走らせる楽しみに満ちているから! SUZUKI GIXXER 150
'17年モデルとして日本に登場して
ジワジワと人気を伸ばしてきたジクサー150。
人気の秘密はなんだろう、って考えると
排気量設定かもしれないし、値段なのかもしれないけれど、
走っていてラクだな、楽しいな、ってのが
あふれ出ているバイクなのだ。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:依田 麗 ■協力:スズキ https://www1.suzuki.co.jp/motor/

125ccと250ccのいいところ取り!

 まさかここまで人気モデルになるとは思わなかった──それがジクサー150。もちろん、以前にも乗っているんだけれど<https://mr-bike.jp/mb/archives/5875>このミドルクラスの、昔でいう中間排気量の空冷単気筒モデルが大人気なのです。
 初登場は2017年1月。スズキ・モーターサイクル・インディア生産で、インドの「バイク・オブ・ザ・イヤー」相当の賞を13部門獲得! と鳴り物入りで日本に輸入されたモデル。日本登場以来、もう販売約3000台をオーバー! それも、登場しばらくはそう目立った販売台数ではなかったものの、ジワジワと売れ始め、まる3年を越えてもぐいぐい台数を伸ばすロングセラーになっています。
 メカニズム的には、そう目立ったものもない、ベーシックな空冷単気筒エンジンモデルなんだけれど、人気の秘密は、やっぱり125ccと250ccのいいところ取りをした150ccというパッケージ。街乗りバイクとして再評価されている125ccの最大のネックである「高速道路に乗れない」ってところを克服し、250ccよりも気軽にヒョイと乗りたい、という思いを叶えてくれるモデルだからだ。
 

 

ライダーの身長は178cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

今回取材したのはマイナーチェンジした2型と言える2020年モデル

 新型はフロントにABSを標準装備し、タンクからシュラウドにかけてのスタイリングにモディファイを受けたのがメインどころ。さらにヘッドライトをビキニカウルなしのLEDランプとし、ダブルシートを前後セパレートに、そしてスイングアームマウントのリアフェンダーを追加した。
 表向きには走行性能は変わらないはずなんだけれど、走行フィーリングもやや違う。これが「熟成」というもの。カタログに表記しなくても、仕様が変更されているケースもあるのだ。

 エンジンフィーリングは、先代モデル同様、低回転からトルクがあふれて、スピードのノリが早い。それでも、150ccという排気量ゆえ、ドカンとくるトルクがあるわけではないし、スピードのノリも最新リッターバイクの「アッという間」ではなく、まだまだ人間の感覚の範囲内、という感じ。アクセルを開けていーち、にーい、さーん、と数えるうちに60~70km/hになっている、そんな印象なんです。
 街中を走っていると、4000rpmあたりを使って走ることが多い。トントンと早めにシフトアップして低回転域を使っていくと、トップ5速4000rpmが60km/h弱といったところ。この辺の回転フィーリングがスムーズで、軽く走りやすい。街乗りをしていてラクだなぁ、って感じるのがこういう場面だ。試乗車のコンディションなのかもしれないけれど、この速度域の回転フィーリングがスムーズになったかな、って感じがする。
 そのまま5速に入れっぱなしで走ると、2000rpmを下回ってもきちんと加速してくれる。さらに高速道路を走ると、100km/hは7200rpmってところで、惜しいのは5速ミッションってことで、ついつい幻の6速にシフトアップしてしまうんだけれど、これ私が手に入れたら、ファイナルをいじって100km/hの時の回転数をもう少し下げたいかな、と思います。たとえばドライブスプロケットを1丁大きくするとか、ドリブンスプロケットを3丁下げてみるとかね。そうすれば、もう少し快適に高速道路を走れるはずなんです。発進時も、そう気を使わないトルクがあるしね。

 ハンドリングは、これまた150ccというミドルクラスの軽快さだけではないのがジクサーのスゴいところ。このクラスと言えば、やっぱりプアさが出たり、軽快さに振りすぎるきらいがあるんだけれど、インド生産モデル=東南アジアで乗られることが多いモデルだからか、設定体重が重め、つまりサスペンションがしっかりしている。
 向こうでは2人乗り、3人乗りもあるモデルなので、前後ともサスペンションのスプリングレートが適切というか、少なくとも私(=身長178cm/体重80kg)に合ってました。フロントフォークの剛性も高めで、動きがシャキッとシャープだ。ステアリングヘッドまわりのフレーム剛性も、少し変わっているのかもしれない。
 今回、小さめのコーナーが続くワインディングも走ったんだけれど、難しく言うとサスペンションのストロークの収束が早い、減衰がキッチリ効いている感じ。Uターンも楽だし、これは軽量すぎ、フワフワしすぎるきらいのあるミドルクラスには、珍しいキャラクターだと思う。これ、体重の軽い女子ライダーなんかが初めてバイクで購入するならば、ショップでリアサスのプリロードを見てもらうといいかもね。ちょっとプリを抜いてもらうと、楽に感じることがあるかもです。
 
 なんと言っても、ジクサーの強みは高速道路に乗れちゃうこと。それでも、100km/h+αで走る続けるような用途ではなく、クルージングスピードは100km/hくらいをリミットとすると快適。それ以上の領域は、エンジンをいじめているようだし、振動も出てくるからだ。東名や中央自動車道を走るというより、首都高とか、阪神高速とかね。もちろん、下道を走るのが楽しいバイクです。
 

 

ジクサーの魅力と人気の秘密は、バイクをコントロールする楽しさ

 ジクサーの魅力と人気の秘密は、バイクをコントロールする楽しみにあふれている、ってことだと思う。これは125cc的な走らせ方だけれど、失速しないように、回転が上がりすぎないようにシフトワークを駆使してバイクを動かすのが楽しいんです。原付や2種よりも制限が強すぎず、人間の感覚に近いスピード域で走るのが楽しいんだね。

 さらにもうひとつ忘れてた! ジクサー150が評価されているところは、税抜き価格32万円というコスパあふれる価格設定! 先代モデルから税抜き2万2000円ほど値上がりしたけれど、このクラスでのこの価格って、30年前のジェベル200=32万9000円とか、VOLTYの初期モデル=29万8000円だった、そんなレベルなんです! インド生産の輸入車と言ってもコレはスゴい! 
 もちろん、インド生産ならではのコストダウンしているところって、意外とある。たとえば、目につくところはビスのコストが安そうだったり(メッキとかの表面処理が薄いのかな)、試乗車はシフトロッドにうっすら錆が浮かんでいたから、それはもう、買ってから自分でチョイチョイ交換していけばいい。そういうことをきちんと理解して買っても、コストパフォーマンスがすばらしく高いモデルだと思うのです。
(試乗・文:中村浩史)
 
 

 

φ266mmのディスクローターに、ブレンボのサブブランド「バイブレ」の2ピストンキャリパーを装備。ABSはフロントのみ標準装備で、後輪が非ABSなことで不安はなかった。フロントフォークの減衰がしっかり効いている安心感もあった。

 

燃焼効率を上げて、フリクションロスを減らすことでパワーを落とさずに好燃費を達成したSEPエンジンを搭載。ロングストローク寄りで低中回転域のトルクが厚く、回転を上げずに走るのがイージー。この取材の参考燃費は約42.0km/L。

 

マフラーエンドをデュアルデザインにして迫力を出し、150ccというミドルクラスっぽさをなくしている。排気効率もいいのか、サウンドも小さすぎず、いい音。メッキのサイレンサーエンドカバーがなかなかに高品質。
リアサスは赤スプリングの垂直マウントで7段階のプリロード調整機構付き。150ccにしては設定体重が高いのか、このクラスのモデルにしてはスプリングレートは低すぎず、腰砕け感が少なかった。リアタイヤのみラジアルを装備。

 

前後17インチホイールで、リアタイヤ幅は140サイズ。スイングアームはスチール角パイプで、増設されたリアフェンダーはスイングアームマウントで、重量増にならない樹脂製。前後ホイールにはリムテープ、最近スズキはコレに凝ってます。

 

先代の異形ヘッドライト+ビキニカウルの構成から、ネイキッドスタイル+LEDヘッドライト。3層構造で、ハイビームは全灯するシステムだ。フロントフォークはφ41mmで剛性は高め。足周りに中間排気量っぽい不足さは少ない。
タンク容量12Lは、このクラスとしては充分な大容量。うまくライディングすると、1タンク500km走行も不可能ではないかも。タンク下のシュラウドは先代モデルより大型化されて面構成がシンプルになった。

 

旧モデルは前後一体のダブルシートだったが、セパレートシートに変更。タンデム部はキーで取り外し、フロント部は工具で脱着。リアシート下のスペースはETC車載器にドンピシャの広さ。グラブバーはオーバークォリティなほどガッチリ。

 

LEDテールランプも左右幅が広がってスタイリッシュに。GSX250Rのようで、なつかしのRF400シリーズなんかもこんな形状でした。別体リアフェンダー、スイングアームマウントフェンダーとともにドロハネ防止効果は高い。
デザインを一新したメーターはスピード表示とギアポジションの表示位置が入れ替わった。オド&ツイントリップメーターを装備して、燃料計、時計も常時表示。白黒反転液晶も大きさも、見やすさ重視のデザインとサイズだ。

 

●ジクサー150 主要諸元
 
■型式:2BK-ED13N■全長×全幅×全高:2,020×800×1,035mm■ホイールベース:1,335mm■最低地上高:160mm■シート高:795mm■車両重量:139kg■燃料消費率:55.3km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時)51.0km/L(WMTCモード値 クラス2 サブクラス2-1 1名乗車時 )■最小回転半径:2.6m■エンジン種類:空冷4ストロークSOHC単気筒■総排気量:154cm3■ボア×ストローク:56.0×62.9mm■圧縮比:9.8■最高出力:10kW(14PS)/8,000rpmm■最大トルク:14N・m(1.4kgf・m)/6,000rpm■燃料供給装置:フューエルインジェクションシステム■始動方式:セルフ式■点火装置形式:フルトランジスタ式■燃料タンク容量:12L■変速機形式:常時噛合式5段リターン■タイヤ(前/後):100/80-17M/C 52S/140/60R17M/C 63H■ブレーキ(前/後):油圧式シングルディスク/油圧式シングルディスク■懸架方式(前/後):テレスコピック式/スイングアーム式■フレーム形式:ダイヤモンド■車体色:グラススパークルブラック / トリトンブルーメタリック■メーカー希望小売価格:352,000円

 



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2020/06/01掲載