ジョアン・ミル選手は去年の活発なイメージから、なんか仕込んでいこうと筆者地元・水戸の伝統的なお菓子「吉原殿中(よしわらでんちゅう)」を持参。「とりあえず食べてごらん」と差し出した。水あめであられを固め、きな粉をまぶしたこのお菓子、なかなか独特なのだがミル選手は迷わずパクリ。きな粉が喉を直撃し咳き込み「おいしいけど……ゴホッ、インタビューの前に食べるものじゃないよ(笑)」の感想。
日本食は好き? と聞かれ「寿司」と答えるのはつまらないからね、そう聞かれたら「YOSHIWARA-DENCHU」って答えるんだよ。水戸から近いツインリンクもてぎあたりの人だったら知ってるから! と仕込んでおいた。MotoGP日本ラウンドには吉原殿中持参でミル選手に会って欲しい。
ミル:一日目は肩慣らしというか、フィーリングを掴むようなスケジュールだったけど、二日目は本当に凄くたくさんのことをテストしました。様々なテスト項目があって、ちょっとパンク気味、ヘトヘトになって最後の方は判断が難しくなるほどだった。だけど最終的には何が良いかを探ることができたし、セパンだけではなく他のコースでも良く機能するバランスを見出すことができたと思っています。
Q:聞いたところによるとスズキは様々なものをテストに持ってきて、ライダーは色々試したけれど、どれも好感触だった、というレポートを読みましたが、それは事実だったんですか?
ミル:そうですね。これまでスズキはあまり色んなものを用意していなかったから、比較するものが少ないがゆえテストも比較的簡単だったと言えなくもない。けれど今回はテスト項目がたくさんあり、確かにどれも好感触ではありました。ただ比較するものが増えれば、その中からより良いもの、より良い組み合わせを見つけ出していくことになるわけで、最終的に良いとしたものと見送ったものに分類されていきました。
ミル:キャラクターは去年のモデルと同じですね。メーカーによっては根本的な性格を見直してゼロから作り直すところもあるようですが、スズキは熟成路線をとってくれ、少しずつアップデートしてくれるので違和感なく乗れました。一気に変えるのではなく、エンジン、フレーム、などそれぞれのパートで一歩一歩確実な前進をしてくれ、しかもたいていの場合それは良い方向への変更のため、とても喜んでいます。
―――MotoGPマシンに限らず、市販車でもスズキはそういった「熟成路線」が得意なメーカーです。ミル選手のスタイルにそれがマッチしているということですね!
ミル:そうですね、とてもやりやすく感じています。
Q:昨シーズン前のインタビューでは「ルーキーオブザイヤーを獲る!」と力強く語ってくれましたが、ケガに泣かされたシーズンでしたね。
ミル:いろいろな分野でほんの少しずつ及ばないことがあります。トップスピードももう少し、予選で1周だけの速いラップも思うように刻めなかった……。基本ポテンシャルはちゃんとあるからレース本戦ではそれなりの結果を出すことはできたのですが、上位に進出するための、もう少しの何かが足りない状態でした。ただここまでのテストでの感触は上々で、20年シーズンは再び強く走れると期待しています。
ミル:一年乗ったからって「慣れた。もう何も怖くない」とはならないですよ(笑)。やっぱりとてつもないバイクです。ただ当然慣れてくる部分もあって、例えばストレートでは、「もっとパワーが欲しい」と思ったりもします。ライダーは常に「もっと」を求めるものですよ! セッティングについてはとても早く学ぶことができ、短いセッティング時間の中でベストな設定を見つけることができています。
ミル:うーん、大丈夫でしたよ。ただチームメイトってのは不思議な関係ですよね。愛してみたり憎んでみたり(笑)。チームメイトとしての関係は悪くないと思います。住まいが同じアンドラなので、一緒にトレーニングすることもありますよ。
Q:ケガからの回復もあって、今シーズンに向けて特別なトレーニングはしましたか?
Q:ではライダーとしてのパフォーマンスは十分、そしてバイクの感触もこれまでのテストでは上々。今年は勝利も狙えそうですか?
ミル:そう言うにはまだ早いかもしれません。何が何でも勝つ!といった気持ちでいるとそれがプレッシャーになることもありますからね、まずは安定してポディウムに乗れるように整えて、それができるようになれば勝利も意識できるかもしれません。もちろん、勝利は可能だと思っていますよ、ただ冷静に時間をかけていきたいと思っています。
ミル:はい、十分なトップスピードがあると思います。ライバルたちの中で一番だとは言いませんが、ヤマハと同等かそれ以上かと思います。ただグリップに関してはまだ改善の余地がありそうです。シーズンスタートまでにはこの領域を改善させまとめ上げることができればコンペティティブなバイクになると思います。
ミル:そうだね! 頑張ります!
Q:頑張って!
ミル:GAMBATTE? わかったよ、そう言われたら僕はなんて言えばいい?
Q:そうだなぁ、任せろ! だね!
ミル:OK! MAKASERO!!
Q:日本食は好きですか?
ミル:うん! YOSHIWARA-DENCHU!!
今シーズンも事前テストから絶好調、創業100周年を迎えた2020年大いに期待がかかるスズキのMotoGPチーム。今回、お話を伺ったアレックス・リンス(記事はコチラ)とジョアン・ミルお二人のサインが入ったチーム・オフィシャル・キャップを1名にプレゼント。ご希望の方は(読者登録)住所、氏名、WEB Mr.Bikeに対するご意見、ご希望を明記の上、e-mail(dd4@m-bike.sakura.ne.jp)にてご応募を。締切は2020年4月17日(金)。