- ■試乗・文:毛野ブースカ
- ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor//
乗り出しから好印象だったCL250を実走検証する時が来た。スクランブラーと聞くと都会と自然どちらのシチュエーションでも似合いそうだが、ロングツーリングの相棒としての実力を確認したかったので、できるだけ走行距離を稼ぐことにした。悩みに悩んだ挙句、今回は東京を出発して1日目は栃木県の塩原温泉郷から始まって南会津地方、奥会津地方の只見町で宿泊。2日目は只見町を出発して喜多方市、会津若松市、再び南会津地方、塩原温泉郷を通過して東京に戻る、私が好きな福島県の会津地方を1泊2日で巡るルートとした。丸2日間、目いっぱい走行し、想定した総走行距離は800㎞だ。
実は宿泊先に選んだ福島県南会津郡只見町は今まで3回訪れたことがある。1回目は2006年の夏にスズキジェベル200で、2回目は2019年に当WebのスズキVストローム250のインプレで、そして3回目は2023年の6月に我が愛車のホンダ400Xで訪れている。3回のうち2006年と2023年は「奥会津ただみの森・キャンプ場」でキャンプしており、自然豊かでまったりとした雰囲気からまた訪れてみたいと思っていた。今回は試乗車ということでキャンプ装備を搭載するのは難しいので、当地にある宿泊施設「只見町交流促進センター季の郷 湯ら里」に宿泊することにした。
実走検証1日目。朝の渋滞をなるべく避けたいのと、時間に余裕を持たせるため午前6時00分、調布市にある自宅を出発。天気は晴れ曇りで雨の心配はなさそうだ。国道20号線を走り首都高速・中野長者橋入口から首都高速中央環状線を通って東北自動車道に入る。平日の朝ということで交通量は多く、ストップアンドゴーの連続だが、アップライトなポジションとアシスト&スリッパークラッチ、低/中速トルクに重点を置いたエンジンのおかげで疲労感は少ない。首都高速に入りグイっとスロットルを開けると、小気味よく野太い排気音が伝わってくる。ドンと一気に加速するのではなく徐々に加速する感じ。
東北自動車道に入ってからは速度を90㎞/hで維持して巡行。平坦な場所では100㎞/h以上を出して追い込しもしやすいが、90㎞/h前後でゆったり走るのがCL250には似合っている。埼玉県から群馬県、栃木県に入って佐野SAで一服。朝ラーということで佐野ラーメンを食べてエネルギーチャージ。メーターを見ると約140㎞走行して燃料ゲージが1目盛り減っていた。まだまだ余裕な感じだ。栃木県に入ると登坂車線が多くなりアップダウンが続くもののパワー不足な感じはしない。まさに淡々と90㎞/hで走っていく。
自宅を出発してから約3時間20分、最初のチェックポイントである東北自動車道・西那須野ICに到着。約224㎞走行して燃料ゲージが2目盛り減っていた。燃料ゲージは4目盛り分あるので、約100㎞走行して1目盛り減る感じだろうか。まだ余裕はあるものの只見町に到着する前に給油が必要かもしれない。西那須野ICからは一般道を走行して1日目の目的地である只見町を目指す。国道400号線を会津方面に走り、30分ほどで有数の温泉地である塩原温泉郷に到着。温泉宿だけではなく日帰り入浴施設もあり入浴してみたかったが、今回は時間の都合でパス。時間が経つにつれて徐々に気温が上がってきた。
後ろ髪を引かれながら塩原温泉郷をあとにして、国道400号線から国道121号線に入り南会津町方面に向かって走る。流れがよい国道121号線は日光や鬼怒川温泉に通じていることから平日にもかかわらずライダーが多い。CL250は心地よいサウンドを奏でながら山あいの道を走っていく。途中「道の駅 会津西街道 たじま」で休憩。多くのバイクが停車している中でキャンプ装備を積載したCL250を発見。ノーマルの状態もいいが、リアキャリアなどのオプションパーツを装着したCL250もなかなかいい感じだった。
「道の駅 会津西街道 たじま」を過ぎると国道352号線と合流するので、国道121号線から国道352号線に入って檜枝岐(ひのえまた)方面に進む。交通量は減り始め、人里離れた新緑に覆われた山々の谷間を縫うように走っていく。ここまで200㎞以上走行しているがお尻は痛くない。乗車ポジションに違和感はなく、車体の取り回しやすさと相まってストレスなく走行できる。お昼が近づいてきたが、国道沿いには食事処がなさそうなので、国道352号線が檜枝岐方面と只見町方面に向かう国道401号線と分岐する手前にある「木賊(とくさ)温泉」に行ってみることにした。
木賊温泉は福島県南会津町宮里字湯坂にある温泉で、この温泉には10年以上前に入湯したことがあり、もう一度訪れてみたかった。ここの名物は西根川沿いにある混浴露天風呂だ。千年以上の歴史があり、湯船の足元から温泉が湧出するという完全源泉かけ流しの温泉だ。まさに秘湯といっても過言ではない。駐車場にCL250を停めて、はやる気持ちを抑えながら階段を下りていくと川沿いに小屋が建っており、この中に湯船がある。料金300円を集金箱に入れて湯船へ。この日は男性の先客がひとりいたがほぼ独り占め。わずかに硫黄臭のする無色透明のお湯は湯温45℃なのでやや熱めだが、川面から流れてくる風に身体が冷やされてじつに気持ちいい。ここまで走ってきた疲れが癒される。何時間入湯していても飽きないお湯だ。
木賊温泉をたっぷり堪能したところで時刻は午後0時を過ぎていた。メーターを見ると306㎞走行して燃料ゲージの目盛りが残り1つになっていた。燃料タンクの容量が12リットルで、燃料警告灯が10リットル分を消費したところで点くと想定すると、WMTCモードでリッター34㎞なのでそろそろ燃料警告灯が点灯する計算になる。給油のタイミングが近づいてきたが木賊温泉の周囲にガソリンスタンドはなく、国道沿いでガソリンスタンドを発見次第、給油する必要がありそうだ。
木賊温泉を出発して途中で車体の撮影後、国道352号線を只見町方面に向かい、ほどなくして国道401号線が現れるので、国道401号線を只見町方面に進む。途中、ガソリンスタンドを発見したのですかさず給油。この時点での走行距離は323.9㎞、7.86リッター消費してリッター41.2㎞という良好な数値を叩き出した。道の流れがスムーズだったとはいえWMTCモードを大きく上回る数値に大満足。350㎞くらいまでなら燃料警告灯が点灯せずにいけそうな感じだ。ここからどこまで数値が維持できるか楽しみになってきた。
バイクのお腹を満たしたところで、ライダーのお腹も満たしたくなってきた。国道401号線沿いには食事処やコンビニはなく、国道289号線方面に「道の駅 山口温泉きらら289」があることを発見したので行ってみることにした。すると、以前スズキVストローム250のインプレで訪れて、名物の「わらじソースカツ丼」を食べたところだった。14時00分の閉店時間ギリギリに入店してわらじソースカツ丼を食べた。焦っていたわけではないが、なんだかやけにホッとした。ちなみに「道の駅 山口温泉きらら289」には日帰り入浴施設が併設されているので、お近くの際には立ち寄ってみてほしい。
ライダーのお腹を満たしたところで時刻は14時20分を過ぎていた。ここから国道289号線を只見町方面に走っていけば、今宵の宿である「季の郷 湯ら里」には30分くらいで到着する。想定よりもスムーズに進んでいるので、走行距離を稼ぐべく宿には向かわずに国道401号線、国道400号線を走って昭和町方面に向かい、金山町を経て国道252号線を只見町方面に進み、山間部を通る県道352号線、県道153号線を通って宿に向かうことにした。国道252号線は明日も走ることになるが、まあよしとしよう。
国道289号線から国道401号線に入り、新鳥居峠を通過して、途中つづら折りの箇所があるものの緩やかな道が多い山間部の林道を走行する。アップダウンがあってもギアを適切にシフトすればパワー不足は感じない。アップライトなライディングポジションとホイールベースが長めで、セミブロックタイヤということもあり、多少ラフなカーブが続いても安定感がある。オフロードバイクほどの走破性はいらない、でもロードバイクだと不安だと感じるシチュエーションにスクランブラーはちょうどいいのかもしれない。
国道252号線から県道352号線、県道152号線を通って山間部を走り、只見町に近づくにつれて田植えが終わった田んぼがそこかしこかに現れてくる。只見町近辺は日本でも有数の豪雪地帯ということもあり自然が豊かで、周囲が標高1,500m前後の山に囲まれている。只見町だけではなく青い空、青い山、青い田んぼという日本の原風景が見られる福島県は私が好きな県のひとつ。今回のツーリングでもいい風景が見られそうだ。
実は今回、新潟県から只見町にアクセスするルートを考えたのだが、現在新潟県と福島県を結ぶ国道252号線(六十里越)は雪崩の影響で通行止めになっていて新潟県から只見町(只見町から新潟県)へは車・バイクではアクセスできない。アクセスしたい場合は大きく迂回しなければならない。2023年に400Xで訪れた時はこのルートを通って只見町を訪れた。もし只見町に行ってみたいとお考えの方は注意していただきたい。
そうこうしているうちに国道289号線に合流してすぐ宿泊先である福島県南会津郡只見町長浜上平にある温泉宿泊施設「只見町交流促進センター季の郷 湯ら里」に到着した。只見町の中心部である只見駅からは少し離れた場所にあり、宿の周囲に食事できるところがなさそうなので、夕食は会席和膳、朝食はバイキングという贅沢な2食付きにした。湯船に提供されている深沢温泉は無色透明のナトリウム塩化物硫酸塩泉。肌当たりがなめらかなお湯なので長湯してしまった。早朝からスタートしたので早めに就寝した。(続く)
(文・写真:毛野ブースカ)
[『2020年 Rebel 250試乗インプレッション記事』へ]
[新車詳報へ]
[HondaのWEBサイトへ]