2025年3月7日(金)、Hondaは、『ポケットモンスター スカーレット』に登場する「コライドン」をほぼ実物大で製作した「ホンダコライドン」を、Hondaウエルカムプラザ青山で初公開しました。社内プロジェクト発足からわずか8か月で仕上げたホンダコライドンは、仮想の世界で活躍しているコライドンを現実の世界に連れてきたような驚きがありました。ホンダコライドンの企画から製作過程について、プロジェクトメンバーの想いを紹介いたします。
■文・写真:高山正之 ■協力:Honda
トヨタミライドンに感激し悔しい思いをした負けず嫌いのDNA
ホンダコライドン開発責任者の萩原和也さんは、ポケモンのゲームに登場したミライドンとコライドンの縦横無尽な動きに感激して、自分の専業である二輪車開発と何かできることがないか? と、上司の坂本さんと語り合ったと言います。そのような時に、トヨタ技術会が製作したトヨタミライドンがお披露目されました。こどもたちがトヨタミライドンを見た時の笑顔に感動したとともに、とても悔しい思いをしたと語りました。Hondaが夢をカタチにする前に、トヨタさんに先を越されてしまったという、技術者魂というものだと思います。
私の拡大解釈かもしれませんが、Honda社内には「世界一の負けず嫌い」というスピリットがあります。そして、創業者の本田宗一郎氏の格言「やってみもせんで、何がわかる」が、DNAとして萩原さんやチーム員に息づいている証だと感じました。
トリコロールと異色の企画提案
プロジェクト推進責任者の坂本さんも萩原さんと同じくトヨタミライドンに触発された一人です。コライドンのカラーはトリコロールです。Hondaのレーシングカラーもトリコロールである事から、親和性を感じたと言います。以下がHondaがトリコロールに込めた想いです。
●赤は、勝利に賭ける人間の熱い情熱
●青は、理論に基づく高い技術力
●白は、モータースポーツを愛する全てのお客様
坂本さんが、株式会社ポケモンに企画書を持ち込んで熱い想いを伝えたところ、良い感触を得ることができました。社内での企画提案は、二輪新製品開発の重要イベントである評価会で行われました。名だたる新製品のプレゼンに混ざって、異色の「ホンダコライドンプロジェクト」のプレゼンテーションを行いました。坂本さんの不安をよそに、評価会メンバーからは「面白そうなのでやってみよう」「やるからにはHondaらしいコライドンにしよう」と、即決が下されました。
この社内プロジェクトには、あっという間にメンバーが集まり、当然ながら全員がポケモンのファンでした。
Hondaらしさを出すためのシナジープロジェクト
坂本さんに課せられた最も難しい「Hondaらしさ」を追求するため、二輪・パワープロダクツ領域に捉われることなく、先進技術研究所の知見も取り入れることにしました。ホンダコライドンのありたき姿は、未来のモビリティとしてHondaの技術を駆使したもので、こどもたちが乗って走らせることで、笑顔になることです。
スムーズな動きを実現するための技術として、二輪車の自立走行を可能にする「ホンダライディングアシスト」の制御技術を活用することに決めました。そして、二足歩行などさまざまな制御技術が満載されたASIMOの技術も活用することになりました。
妥協を許さないカラーリング
ホンダコライドンのトリコロールは、Hondaの二輪車で採用されているトリコロールとは異なるものになりました。これは、株式会社ポケモンのメンバーと協議を重ねて創り出した、オリジナルカラーです。塗装は、Honda社内で特別な技術を有している人が携わり、職人技でグラデーションにもこだわりました。
今年の夏前には走る姿をお見せしたい
萩原さんの説明では、開発状況はシミュレーションによる走行状態の確認をしている段階とのことです。そして、坂本さんは「今年の夏前には、実際に走る姿を見ていただけるように、チーム一丸となって進めていきます」と、強い決意を語りました。
現時点の計画は、時速10kmから15kmの速さで二輪で走行し、4足歩行しているかのようなリアルな動きを再現するとのことです。プロジェクトの目標でもある「Hondaの本気がこどものゆめになる」は、目前にきています。その時を楽しみに待ちたいと思います。
(文・写真:高山正之)