FZR400Rからカウルを取り去り、ネイキッドという言葉を初めて謳ったのがFZ400N。今で言うスーパーネイキッドの奔りとも言えるが、レーサーレプリカ人気が高まる当時にあっては、FZ400Rの廉価版や教習車仕様(1987年3月1日発売FZ400L)という位置づけでしか見られなかった。
ハンドル幅を25mm広げて675mmに改め、クリップ位置をやや高めライディングポジションを変更、エアプレーン型タンクキャップ、アルミステップ、TZR250と同型ミラーの採用、サイレンサー部をサテンメッキ鋼板で巻きモデルチェンジ。
FZ-R系の最終型はアンダーカウルを追加しフルカウルとなった。しかし乾燥重量など主要諸元に変更なし。
チャンピオンを奪回すべく製作されたF-3レーサーと同時開発
F-3(国際A級)スタート元年の1984年、チャンピオンに輝いたFZR400だが、翌1985年はRVF(山本陽一選手)に敗北してしまった。チャンピオンを奪回すべくニューマシンがYZF400が開発された。このファクトリーマシンと同時開発された市販バージョンがFZR400である。前年のファクトリーレーサーと同名が与えられたこのモデルは「マン・マシン・コミニュケーション」による走りのクォリティーを追求する新時代のマシン作りのコンセプト=ジェネシス思想を400で初めて具現化し、すべてが新設計。前傾45度、低重心、軽量コンパクトなエンジンは、FZ400Rよりショートストローク化された超高回転型で、クロモリ中空カムシャフト、特殊合金のバルブリフターなど徹底した軽量化がおこなわれた。ワークスレーサーYZR500からのフィードバックによるアルミデルタボックスフレームはヤマハ4ストモデルでは初採用で、従来比45%剛性をアップ。さらにクラス初の扁平ワイドラジアルタイヤやTT-F1マシンYZR750と同様の軽量樹脂一体成形のタンクカバー、市販レーサーTZと同タイプの文字配置と書体が使用されたメーターなど全身レーサーイズムを満載した意欲作であった。
FZR400をベースにコンピュータ制御でエキパイの排圧をコントロールし、「6速でも発進できる」と話題となった低速域と高速域の排気適正を両立させる排気デバイスのEXUP(EXhaust・Ultimate・Powervalve)や、ピストン裏側にオイルを噴射するオイルジェットタイプピストンクーラー、各ギアの減速比が接近した6速クロスミッション、シングルシートなどの専用装備を追加した2,500台の限定車。後に続々と誕生するSP仕様の元祖的な存在とも言える。
FZR400をベースにピストン、コンロッド、カムなどの強度を高めると共に細部の見直しにより熟成化が行なわれた。限定車FZR400Rで好評を得たEXUPやピストンクーラーは標準装備となった。デルタボックスフレームも構成を一部変更してピボッドまわりの剛性を向上、スイングアームもアルミデルタボックスへと進化し、前面から直接冷えた空気をエアクリーナーボックスへと導くFAI(Fresh・Air・Intake)や、フロントブレーキはYZF譲りの対向4ポッドへなど、内外のポテンシャルをアップしてモデルチェンジ。
車名にもうひとつRが追加された1989年モデルでは、サイレンサーを大径円断面化し排気効率を、ストレートタイプのFIAで吸気効率をアップさせた他、アッパーカウルのスラントノーズ化、フレームのジョイント部レイアウト変更による軽量化と表面の化学研磨処理、新型アルミデルタボックススイングアーム、フロントフォーク径3㎜アップ、フロントディスク径6㎜アップ、異径ピストン採用など細部にわたり熟成化がなされた。
FZR400Rの登場からわずか8ヶ月でRRへという、今では考えられないようなサイクルでフルモデルチェンジ。新設計エンジンは、全パーツの見直しや、前傾35度化、ピストン、コンロッド、シリンダーの短縮により全高を短縮するなどさらに軽量コンパクト化とハイコンプ化がなされた。アルミデルタボックスフレームも新設計により大幅な軽量化と剛性アップを達成している。また世界で初めてプロジェクター式ヘッドライトをデュアルで搭載した。テールランプは8耐マシンYZF750と同タイプの角形二灯式など、RRの名にふさわしい装備を満載していた。スタンダードバージョンはこのモデルが最終型となり1990年代中頃までラインナップされていた。
FZR400RRをベースに水冷式オイルクーラー、大型ラジエター、6速クロスミッション、強化クラッチ、伸・圧減衰力調整機構付きフロントフォーク、サブタンク付き伸・圧減衰力調整機構付リアサスペンション、タイヤクイック交換システム、シングルシートを追加装備したSPバージョンは1,000台の限定車。
1991年モデル以降、レギュラーモデルのRRのモデルチェンジがおこなわれず、SPモデルのみのモデルチェンジとなった。1990年モデルをベースにφ32㎜のFCRキャブ、ヘッドライトの常時点灯、ハザードランプを新たに採用した500台の限定車。
グラフィックのみを変更して500台の限定発売。これがFZR400シリーズの最終モデルとなった。
[THE444RR大全その3 CBR-RR|その4 FZ/FZR|その5 GSX-R]