2024年6月、今年も「Wheels and Waves」に参加してきました。いまや欧州のバイク好きにとって、毎年6月はWheels and Wavesが南フランスの街ビアリッツで開催される月として認知されていて、じゃあ6月にビアリッツで! とか、次に会えるのはビアリッツかな? なんて挨拶が普通に交わされています。ということで、今年もWheels and Wavesをレポートしますね。
■レポート・写真:河野正士 ■協力:Wheels And Waves https://wheels-and-waves.com
2024年のWheels and Waves(ホイールス・アンド・ウェーブス/以下WW)レポートを書くにあたって、そういえば今まで何度WWレポート書いたかなぁと思って、WEBミスターバイクのTOPページにある検索画面に「Wheels and Waves」と入れてみました。検索結果は新サイトへ移行してからの2022年と2023年のレポートだけでしたが、過去記事を見ると2015年、2017年、2018年の合計5回のレポートをアップしていました。それら過去記事へのリンクは、恐らく編集長ナカオさんが記事の最後にリンクを付けて頂けると思うので、是非その記事を見てみてください。
このWWというイベント、説明がとても難しいんです。いつもはバイクイベントと音楽フェスが合体したようなイベント、と説明しているのですが、それでも??? と思いますよね。それにカスタムバイクのイベントではあるのですがコンテストが行われているわけではなく、新作カスタムバイクが一カ所にまとめられているわけでもありません。とはいえ、このイベントに合わせ各メーカーやショップ、個人が新作カスタムバイクを造り、発表されたりしているのです。
また各地でフラットトラックや、ストリートドラッグレース、ビンテージモトクロスレースなどのレースイベントが開催されています。でもコースでは場内アナウンスもなく、いまどんなクラスのレースが行われていて、つぎのレースの詳細も分からない。レース後に表彰式は行われて勝利を称えますが、レースの勝敗そのものがWWにとって重要かと言えばそうではないし、勝者はリスペクトされますが、だからといって誰もが勝つことを目標としているわけでもない。メイン会場や、その目の前にあるビーチで行われるサーフィンコンテストやスケートボードコンテストも、同じような感じ。
5日間の日程で、大まかなコンテンツはパンフレットにタイムスケジュールが刻まれていますが、その時間は目安のようなもので、遅れても早まってもアナウンスは無し。タイムスケジュールに刻まれていないイベントも数え切れないほどあって、楽しそうなイベントやパーティを後から知る、なんてことも多々。
時間通りに各種コンテンツが開催され、それらがしっかりとアナウンスされるような、日本のイベントから想像するとビックリするくらいラフで、悪い言葉で言えばいい加減。でも僕は、コレがまったく苦にならないのです。
取材に行き始めた当時は、このイベントを余すところなく切り撮って、日本の皆さんにどうやって伝えようかと息巻いていました。でも同時多発的にさまざまな事が起きるWWで、イベントすべてをカバーするのは無理。それに何度か取材するウチに、自分が取材者として一歩離れた位置からWWを見ていることに違和感を覚えるようになってきたのです。僕はWWの傍観者としてここに来たかったのではなく、WWの景色になりたくてココに来たんじゃなかったのか? と。自分が、景色のようにイベントに溶け込む。要するに、みんなと同じく、イベントを楽しむしかないなぁと腹を括ってからは、心が軽くなりました。なにかに急かされることなく、目の前に居る仲間との会話を楽しみ、彼らのアクションを見て楽しみ、ときには手伝ったりしてさらに踏み込んでみる。そういうイベントの楽しみ方を教えてくれたのもWWでした。
そうそう、今年のWWは僕にとってちょっと特別だったのです。というのも、今年は複数の日本人ビルダーやブランドがWWに参加し、WWを支え、盛り上げました。そのお手伝いをして、それが実を結んでとても嬉しかったのです。
1月にWWの主催者から連絡が来て、カスタムバイクビルダーであり、エングレービングのアーティストであり、デザイナーである“チーター”こと大沢俊之さんと一緒にオンラインミーティングがしたいというのでそれに参加することに。そこでチーターくんに、WW2024のメインポスターとロゴ、そして各種レースやサーフィン&スケートボードコンテストのロゴ&イラストを描いて欲しいとの依頼がありました。また日本人ビルダーが製作したカスタムバイクやフラットトラック用レースバイクをフランスに送りイベントを盛り上げて欲しいと。さらにはバイクシーンと繋がりのあるジャパニーズ・ブランドにブース出展を呼びかけて欲しい。できればメイン会場に日本村みたいなものを造りたいと、相談があったのです。要するに、遠くフランスのイベントを日本人とともに盛り上げたいという申出だったのです。
その場に居たチーターくんは、ポスター製作を引き受けると即答。バイクをフランスに送れるようイロイロ声掛けすると。僕はブランドに声を掛けてみるとして、ミーティングを終えました。
それから僕はイロイロなブランドにお声がけしましたが、イベント期間中およびその前後で1週間近く日本を離れること。その期間の日本およびフランスでのスタッフの確保。移動や宿泊のコストなどなど、海外出店はハードルが高く、みなさんWWに興味を持ちながらも参加は断念という返事が続く中、東京を拠点に世界中にファンを持つブランド「ROARS ORIGINAL(ロアーズ・オリジナル)」が参加を表明。彼らはフランスに販売代理店を持ち、これまでにパリで行われたカスタムバイク系イベントにも出店経験があり、また2019年のWWにも出店。世界的に広がった感染症が落ち着いてから、再び世界に飛び出す機会をうかがっていたのです。
車両輸送に関してはWWがコンテナを手配して、それにバイクを詰め込んで船でフランスに送ることを考え諸々手配を進めてくれていたのですが、輸送時間が長く掛かることや出港までの準備期間が短かったことからコンテナで大量のバイクをフランスに送るというアイディアは断念。代わりに、チーターくんがフレームから造り上げた1946年のハーレーダビッドソンWLのサイドバルブエンジンを搭載したカスタムバイク「Meteor(メテオ)」のみを空輸し、WWの各レースに参加したり、アートイベントに展示したりすることにしました。もちろんチーターくんも招待されました。
またWW2024のビッグスポンサーであり、欧州でもカスタムプログラムを積極的に展開しているロイヤルエンフィールドが、昨年4月の大阪/東京/名古屋モーターサイクルショーで発表した、名古屋を拠点に活躍するカスタムビルダー/AN-BUカスタムサイクルが製作した「コンチネンタルGT650」ベースのカスタムバイク『ロイヤルエンフィールド改』と、昨年12月のヨコハマ・ホットロッド・カスタムショーで発表した、日本のカスタムバイクビルダー/チェリーズカンパニーが製作した「スーパーメテオ650」ベースのカスタムサイドカー『CHALLENGER(チャレンジャー)』をWW2024のロイヤルエンフィールド・ブースに展示することが決定。チェリーズカンパニーの黒須嘉一郎さんも招待されることになりました。『ロイヤルエンフィールド改』と『CHALLENGER』の2台は、WW2024 の2週間前にイギリス・ロンドンで開催されたカスタムバイクイベント「Bike Shed(バイク・シェッド)」にも展示されて、とても評判が良かったとのこと。
さらにチーターくんは、フランスのサングラスブランド「BRETT」ともに、チーターくんがデザインしたWW2024限定のコラボレーションサングラスをWW2024会場で発表。そのPV撮影のために、3月末にBRETTチームがフランスから日本に撮影に来たり、チーターくんをフォーカスしたWWのブースデザインやスタッフTeeに発展したり、チーターくんのサイン会が行われたりと大騒ぎ。
チーターくんはこれまで2度WWに招待されて、レースや会場での彼のパフォーマンスに欧州のバイクファンに強烈なインパクトを与えたことにくわえ、彼が造るバイクやエングレービング作品はフランスをはじめ欧州の雑誌でも数多く特集が組まれたりして注目度がさらにアップ。WW2024の公式プログラムはもちろん、いくつもの雑誌にイベント開催を知らせ告知とともにチーターくんの特集が組まれていたりして大人気。しかも今年はフラットトラック・レースなどで劇的な勝利や熱い走りを見せて、観客たちに“チーター、すげー!”的な雰囲気が爆発していたのです。
僕は、これら日本人ビルダー&ブランドを少しサポートしただけなんですが、このように現地で注目を集める彼らを見るとなぜか鼻が高く、いつも以上に会場で呑むビールがおいしかったのです。
気がついたら、イベント紹介的なことはほとんど書いていないのに、随分と裏話を書いてしまいました。まぁイベントの様子は、言葉より写真を見てもらった方が早いかなぁ、と思っています。そして面白そうだなぁっと思ったあなた! ぜひ来年は会場に足を運んでみて下さい。
■Punk’s Peak/パンクスピーク
ビアリッツからバイクで40分ほど走った、スペイン・オンダリビアのハイスキベル山で行われる公道ドラッグレースです。1対1の勝ち上がり式で、距離は約400 m、途中にS字があり、テクニックやセッティングも勝負に大きく影響します。今年はアクシデントがあり、レースは中止となりました。
■Art Ride/アートライド
ビンテージバイク、カスタムバイク、コンセプトバイク、ストリートアート、写真、絵画などのアート作品をひとまとめに鑑賞できるスペース。
■Vintage Rally/ビンテージラリー
ビアリッツからバイクで約30分の場所にあるオフロードコースで行われるエンデューロのタイムアタックレース。1975年以前、1985年以前、1995年以前の3つのクラスに別けられています。
■The Race of the Loads/レース・オブ・ザ・ローズ
スタートして150m先でUターンし、100m戻ってゴールするトータル250mコースで争われます。1950年以前のハンドシフトのマシンのみが参加が可能。勝ち上がりで優勝者を決めることなく、1対1の対戦を楽しむエキシビションレース。
■El Rollo/エル・ロロ
フラットトラックレースのEl Rollo。スペイン・サンセバスチャン郊外にある市営競馬場のショートトラックを使って開催されました。ビンテージからモダンバイクまで5カテゴリーを用意し、さまざまなマシンがエントリーしていました。
■Village/ビレッジ
メイン会場。音楽ライブ、映画上映会、出展社ブース、バイク&クルマの展示、カスタムバイクコンテスト、サーフィン&スケートのコンテスト、理髪店、バー&レストランなどさまざまな出展があり、イベントが行われています。
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