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試乗・解説


■文:中村浩史 ■撮影:森 浩輔 ■協力:カワサキモータースジャパン ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、Alpinestars https://www.okada-ridemoto.com/brand/Alpinestars/


2020年、250ccモデル唯一の4気筒モデルとして発売されたNinjaZX-25R。それから3年、今度は400cc唯一となるNinjaZX-4R/4RRが登場。この4R、「ちょうどいいスーパースポーツ」をもう一度考えさせられるスポーツバイクなのだ。

 いいなぁ、コレ。気持ちイイ! 高回転はぎゅんぎゅん回るし、とはいえ低回転だってきれいにトルクが出ている。2気筒もイイけど、やっぱ4気筒イイなぁ。
 2気筒のNinja400も、低回転からストトトトッとトルクが出ていて、高回転はルルルルーッ、って回るけれど、やっぱり4気筒のシュイーン、っていうスムーズな回り方は気持ちがイイ。

 NinjaZX-4R / RRに乗ると、きっとみんながそう感じると思う。
「400ccの4気筒なんて、回るだけでちっとも速くないじゃない」
「下、スカスカで、トルク出るまでブン回さないと乗れない」
 そんなこと言うのは、ZX-4R/RRに乗ったことがない人。いやいや、90年代にはZXR400に乗ってたよって人も、この新世代4気筒はレベルが違いますから。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION

 長く400ccの顔であり、代表作であり、人気モデルだったホンダCB400スーパーフォア(以下SF)が生産終了と発表された時、世の中のバイクキッズたちは悲しみました。
 教習所で初めて乗ったバイクがCB400SFだった、ベストセラーだもん間違いないよ、だって400ccの4気筒ってCBだけじゃん――。理由はいろいろあるけれど、とにかく1992年の登場以来、30余年も(!)400ccのトップであり続けたCB400SFがいなくなってしまったのだ。

 あぁ、400ccから4気筒なくなっちゃうのかぁ。なに、カワサキから新しい4気筒が出るって?実はこれ、1970年代終盤に起こったこと。400cc唯一の4気筒モデル、ホンダCB400FOURが生産を終了すると、かわってカワサキZ400FXが発売された、あの時です。歴史は繰り返すのですねぇ、それから40余年が経ってから、また同じことが起きるなんて。
 もちろん、70年代終盤と今とでは事情はまったく違います。CB400FOURの頃は、400ccなんて小排気量に並列4気筒なんてハイメカが!なんて時代だったのに対し、CB400SFの時には、400ccに4気筒なんてアタリマエ、なんて風潮だったからだ。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION

 けれど2000年はじめ頃から、400ccクラスから徐々に4気筒モデルが減っていった時代がありました。ちょうど「2006年排出ガス規制」が施行された頃で、この規制を通すにはキャブレターでは難しく、フューエルインジェクションを投入するほかない、けれどコスト面で延命が難しいとの判断から、400ccモデル自体が少なくなった時期であり、そのまま4気筒モデルも、CB400SFを残して、ほぼなくなってしまったのでした。それでもホンダは、CB400SFを残してくれていたんですね。

 そして、CB400SFの生産終了からタイムラグなくZX-4R/RRが登場しました。基本構成はZX-25Rに準じるもので、スチール製トレリスフレームに、完全新設計の水冷並列4気筒エンジンを搭載。倒立フォークに、ショックユニットを水平近くに配したホリゾンタルバックリアサスペンションという車体構成も同じ。もちろん、400cc用に強度剛性は専用設定されています。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION

 もちろんこれは、この時代に4気筒エンジンの400ccモデルを開発するのに必要なコストパフォーマンス計算もあったはず。ZX-25Rの基本設計が確かだったこともあるだろうけれど、4気筒エンジンの400ccモデルをゼロから専用設計していくと、きっと車両価格は150万円、200万円になっちゃうはずで、ちなみにZX-6Rは156万円から。今回乗ったZX-4RRとは50万円ほどの差があります。
「ムカシの4気筒400cc」で言えば、ZXR400Rの最終モデルは83万9000円。1999年の大卒初任給が19万6600円、2022年は23万5100円(厚生労働省 賃金構造基本統計より)となれば、約1.2倍。さらに今どきの原材料価格高騰も考えれば、新時代の4気筒400ccが112万2000円なのは、ちっとも高価じゃないと思います。

 さらにZX-4R/RRは、あの頃から出力特性が大きく洗練されています。最終型のZXR400をはじめとした「ムカシの4気筒400cc」、ホンダCBR、ヤマハFZR、スズキGSX-Rといったモデルは、パワーフィーリングの細部に差こそあれ、低回転域のトルクよりも回転馬力重視で、ピークパワーは10000rpmなんてことが普通でした。そんな高回転型のエンジンを、街中で4~5000rpmあたりでヴーヴーいわせながら走っていたんです。そういう高回転域に入れてしまわなければ「オッ!パワーあるな!」って思うことは少なかったけれど、もちろん4~5000rpmくらいで走っていても、過不足なく走るモデルたちでした。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION

 そんな先入観で乗ると、ZX-4R/4RRはホントによく走ります。数字を比べると、99年モデルのZXR400Rの最高出力・最大トルクは、53ps/12000rpm・3.6kg-m/10000rpm。対してZX-4RRは77ps/14500rpm・4.0kg-m/13000rpm。数字的にはZX-4RRの方が高回転高出力型ですが、アイドリング上、2000rpmくらいから力が出ていて、2500rpmくらいで盛り上がり始めます。ちょっとイジワルしてとんとんとん、とシフトアップしても、6速2500rpmからスピードを乗せていきます。
 各ギアの伸びもスムーズで、アクセルを開けていくと、6500rpmあたり、そして11500rpmあたりでもう一段グンと伸びます。ここがパワーバンドなんですね。ワインディングを走り回るなら8000rpmあたりを中心に使っていけばいいし、今回は踏み入れなかったけれど、サーキットランでは12000rpmあたりを使っていくのが楽しいエンジンです。

 ハンドリングは、これもZX-25Rと通じるニュートラルなもので、250ccから400ccになっているからか、ZX-25Rよりもエンジン回りに重量を感じながら、しっかりと安定性のある軽いハンドリングが特徴です。スパスパとシャープなハンドリングというよりは、フロントタイヤの接地感がたっぷりあって、不安なくコーナリングできるタイプです。
 コーナリングで減速→シフトダウン、脱出→アクセルを開けつつ立ち上がって行く感じが、やっぱり4気筒の楽しさですね。
 2気筒エンジンのNinja400が、ダララララッ、と立ち上がって行くフィーリングならば、ZX-4R/4RRはシュイーン、って感覚。力感あふれる2気筒と、官能サウンドが味わえる4気筒。どちらがイイかは、アナタ次第です。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION

 テストの行き帰りには高速道路を走ったんですが、トップギア6速で、80km/hは5000rpm、100km/hは6300rpm、120km/hは7500rpmあたり。クルージング域で一定回転を使う穏やかさとスムーズさは、やっぱり4気筒の方が一枚上手です。
 今や普通二輪免許枠で乗れる4気筒モデルは、ZX-25RとZX-4R/RRのカワサキのみ。4気筒モデルが少なくなった時期に、2気筒モデルがグンとパフォーマンスや快適性を上げましたが、4気筒は4気筒の良さがあって、それを久しぶりに堪能できたテストでした。
 願わくば、ZXR250にバリオス、ZXR400にザンザスがあったように、250/400の4気筒モデルにもネイキッドモデルがバリエーションとして増えると、もっとこの気持ちよさが伝わると思います。
(試乗・文:中村浩史、撮影:森 浩輔)

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
スチール製トレリスフレームに水冷並列4気筒エンジンと、ZX-25Rと基本的に同一の構成。カタログ数字上では、ZX-4Rの方が全長で10mm、全幅で15mm長く、車両重量で5kg重い。ホイールベースは同一で、シート高はZX-4Rの方が15mm高い。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
ZX-25RがΦ310mmのシングルディスクなのに対し、ZX-4Rは290mmのダブルディスク。キャリパーにはモノブロックの対向4ピストンをダブルでラジアルマウント。
#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
デビュー当初は25Rがショート、4Rが写真のサイレンサー別体マフラーと識別できていたが、23年モデルからは25Rもパワーアップに伴い、4Rとほぼ同じサイレンサーとなった。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
リアブレーキはΦ220mmディスクとシングルピストンキャリパー。フロントキャリパーにはカワサキ、リアキャリパーにはニッシンのロゴが入っている。
#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
リアブレーキ側が湾曲した、非対称形状スイングアームを採用。ZX-4RとZX-4RRではリアサスが違っていて、両方ともプリロード調整が可能で、4RRにのみ圧/伸側減衰力が調整可能。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
「ムカシの4気筒」時代には、アルミツインチューブフレームが当たり前だったが、新世代4気筒400ccは、スチール製トレリスフレーム。鉄とアルミの違いがあり、トラス状の肉抜きがあっても、アウトラインは似通っている。
#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
スプリングのカラーも4Rがブラック、4RRはグリーンと差をつけている。伸び側と圧側の減衰力調整はマイナスドライバーで。スプリングレートは柔らかめ、よく動くリアサスだ。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
Ninjaシリーズ共通のイカツいデザイン。ちなみにZX-25R、ZX-6R、Ninja250、Ninja400とかなり似通っているファミリーデザインだ。
#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
ニーグリップしやすく、ハングオンの時にヒジの引っ掛かりがいいフューエルタンク。容量は15Lでレギュラーガソリン指定、今回の実測燃費は約24km/Lだった。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
アップ、ダウンともクラッチ操作なくシフトチェンジできるクイックシフトを標準装備。シフトペダルのリンクロッド途中が太く、スイッチを内蔵しているモデルがクイックシフト車だ。
#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
右スイッチはキルスイッチ一体セルボタンと、モードセレクトボタンを設置、左スイッチはライトのディマースイッチ横の上下キーでメーター表示を切り替えることができる。メーター本体にも切り替え&リセットボタンが装備されている。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
キー操作でタンデム部を取り外せるシートは、内部にちょうどETC車載器が入るくらいのスペースが確保されている。タンデムシート下にワイヤーが伸びていて、そこを引けばライダー側も簡単に取り外せる。ヘルメットホルダーは外部にキーロック式で確保されている。

#NINJA ZX-4RR KRT EDITION
メーター表示は白バックと黒バックの切り替え式で、ラップタイムをメインにする表示も。メーターはギアポジションつき、バーグラフ式タコメーター、デジタルスピード表示。ツイントリップ、瞬間&平均燃費が表示でき、Bluetoothでスマホと連携すれば、ライディングモード設定や走行ルートのスマホ上のプレイバックができる。

#GP
#GP
NINJA ZX-4RR 40 th EDITION
初代GPZ900R発売から40周年を記念して発売された40thアニバーサリー車。「あの頃」を思わせるカラーリングとシルバーのフレーム&スイングアーム、グリーンのホイールが特徴。価格はKRTエディションより22,000円高。

#GP
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●NINJA ZX-4RR KRT EDITION 主要諸元 
■エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ■総排気量:399cm3 ■ボア×ストローク:57.0×39.1mm ■圧縮比:12.3 ■最高出力:57kW(77PS)【ラムエア加圧時59kW(80PS)】/13,000rpm ■最大トルク:39N・m(4.0kgf・m)/13,000rpm ■全長×全幅×全高:1,990×760×1,100mm ■軸間距離:1,380mm ■シート高:800mm ■車両重量:189kg ■燃料タンク容量:15L ■変速機形式:6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17M/C 58W・160/60ZR17M/C 69W ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式シングルディスク ■車体色:ライムグリーン×エボニー ■メーカー希望小売価格:1,155,000円 [NINJA ZX-4RR 40th EDITION 1,177,000円]


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2024/07/12掲載