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レース・イベント

好天に恵まれたグレムセック101 レースもキャンプもコンサートも大盛り上がり
各地で気温40度を超える、今年の欧州の異常気象を反映するかのように、毎年9月にシュツットガルト近郊の街レオンベルグで開催された1/8マイル・スプリントレースを中心としたイベント「Glemseck101/グレムセック・ワンオーワン」は、熱く盛り上がりました。少し遅くなりましたが、ここではそのレポートをお届けします。ランディ・マモラもスプリントレースに参加してましたよ。
■レポート:河野正士 ■協力:Glemseck101 http://www.glemseck101.de/

 
 南ドイツとはいえ、北海道よりもやや北に位置するレオンベルグ。8月も終わりになれば、昼間はTシャツか長袖のシャツで快適に過ごせても、日が落ちるとぐっと気温が下がり、夜も更けてくると息が白くなるほど。なので長袖シャツとデニム、心配だから薄手のダウンジャケットとウインドブレーカーを持って行くのが常なのです。今年も僕は、同様の旅支度を整え現地に向かいました。
 

イベントを支えるスタッフたち。今年からはスティーブン(写真左)がイベントを取り仕切りました。他のスタッフも皆フレンドリーで、それでいて威厳を持ってイベント&レースを取り仕切っています。

 
 しかし、とにかく暑かった。スプリントレースにエントリーしているスタッフたちは皆、短パンにTシャツにビーサン。夜になっても、皆そのままでも汗だくになっていました。長袖シャツにデニム姿の僕を見て「おまえ大丈夫か? 早くTシャツ買ってくれば?」という感じ。でも意地を張ってそのままで通したら、まくった袖からはみ出た腕や首、鼻の頭の皮がむけてしまうほど。シャツには大量の汗が乾いて、塩が浮きまくってまいした。これで短パン&Tシャツだったら日焼けで全身赤く腫れ上がって大変なことになっていたと思うと、長袖&長ズボンで良かったのかもしれません。
 

 

「Sultans of Sprint」(カスタムバイクによるスプリントレースの欧州選手権)に出場したランディ・マモラ。ベルギーを拠点にするワークホース・スピードショップが製作したインディアン・スカウトベースのスプリントレーサーで参戦。

 
 でも確実に良かったことも。ここ数年、グレムセックは雨に悩まされていました。スプリントレースは、雨だと中止。なので人気のあるレースがキャンセルされたこともありました。しかし今年はセットアップ日を含めて快晴。すべてのスケジュールが、滞りなく開催されました。そしてレーストラックが盛り上がったことはもちろんですが、キャンプサイトやコンサートステージ、そして二輪車&ヘルメットやウエアなどの関連メーカー、そしてビルダーやクラブの出展ブースも大いに盛り上がりました。
 

 

フラッグガールたち。いままでグレムセックの顔にもなっていたフラッグガールのローラは出産のため参加を断念。しかし彼女たちがイベントを盛り上げました。

 

ドイツのモトグッツィ・スペシャリスト/ラジカル・グッツィのブローノルド親子。父と2人の息子でショップを運営しています。トンティと呼ばれるモトグッツィのダブルクレードルフレームに4バルブヘッドのグッツィエンジンを搭載したりして、そのちょっと悪そうな雰囲気が大好きです。でも、とってもナイスガイたちなんです。

 
 グレムセックは、1/8マイル・スプリントレースを中心としたイベントですが、会場を訪れる人たちは、ブースを散策して最新情報を入手したり、こだわりのカスタムバイク&アイテムの詳細を聞いたりして楽しんでいます。キャンプサイトに陣取る人たちは、朝から肉を焼き、ビールを飲んでワイワイガヤガヤ。盛り上がっているテントにカメラを持って近づくと「朝10時だっていうのに、もうテキーラだぜ!」って感じ。
 

 

グレムセックには、女性ライダーも多く参加しています。ドイツの女性ライダーコミュニティ/Petrolettes(ペトロレッツ)は、ドイツ/イタリア/オーストリア/スウェーデンの女性ライダーたちに、ロイヤルエンフィールドの協力を得て4台のマシンを提供。4チームがそれぞれカスタムを施し、レースを行いました。ペトロレッツは女性がより深くバイクを楽しむために、様々な取り組みを行っています。赤いLoiseのマシンにまたがるのは、女性スタントライダーです。

 

 

こんな風に、テントの前でのんびり、ゆっくりした時間を楽しんでる人たちが本当に多いのです

 

昼夜関係なく、飲んでる人たち。大勢でボトルを囲んでいるのは、朝から飲んじゃうぜぇ!と、このグラスを一気飲み。真ん中の二人は、BMWのヘリテイジグループの開発者(この時点で24時を越えています。彼らはテント泊)。最後はコンサート風景。これも24時付近。

 
 バイク用とクルマ用、そしてレース参加者用に広大なスペースのキャンプサイトが用意されていて、土曜日の昼には、そこはもう満杯。早い人は金曜昼から陣取って、盛り上がっています。フードやドリンクのケータリングサービスは午前中から深夜まで開いてるし、しこたまビールは用意されているし(それでも深夜にビールを売り切ってしまうケータリングサービスもあるのです)、大量のビールと食べ物を持ち込んでいる参加者も多い。カメラを持ってウロウロしていると、「日本からわざわざ、このイベントのために来たのか!? そいつはスゲー。まぁ、ビールでも飲んでってよ!」って、いたるところでご相伴にあずかりました(昼でも夜でも関係なく)。

 実はこの、キャンプイベントのような、フェスのような、そしてオープンな雰囲気が、僕の大好きなグレムセックなのです。そしてヨーロッパはもちろんアメリカからもビルダーやライダーが集まり、金曜と土曜の夜は、夜遅くまでどんちゃん騒ぎが続きます。僕は2日間ともに26時頃まで会場にいて、ビールを飲みながら、話をしたり写真を撮ったり。とにかく楽しい時間が続きます。
 

 

とにかくあらゆるカテゴリーのバイク乗りたちがやってくるグレムセック。それを見ていても楽しいです。

 
 もちろん、レースも楽しいです。カスタムバイクによるスプリントレースの欧州選手権「Sultans of Sprint/ソルタンス・オブ・スプリント」は、今年は年間3戦がプログラムされ、ここグレムセックが最終戦。いくつかの二輪車メーカーがサポートする最高峰クラスに、今シーズンはインディアン・モーターサイクルがランディ・マモラを要して参戦し、彼の周りには常に多くの人であふれていました。彼のレースはマシンの不調により早々に敗退してしまいましたが、その最高峰クラスの戦いは実に見応えがありました。また他のクラスでは、新しいマシンはもちろんですが、ずっと同じマシンでエントリーしているライダーもいて、その新旧対決なども興味深かったです。なにより、毎年レースやマシンのレベルが上がっていることにも、驚かされます。マシンを作り込み、練習走行も頻繁に行っているようです。より勝負にシビアになってきた、ということはもちろんですが、グレムセックの注目度が上がるにつれ、勝っても負けても、そこで良いパフォーマンスがしたい、という気持ちの表れのように感じています。
 

 

レースが行われた2日間ともに日中気温が35度超え。陽を遮るものがないレース場なのに、2000人は入るグランドスタンドはズッと満席状態でした。

 

レースを盛り上げるため、レースに参加するチームはこんな風に仮装して入場することも。まさにエンターテインメントなのです。

 
 日本から少し遠いので、日本からの観戦者は少ない(というかほぼ居ません)のですが、ぜひ日本の皆さんにも、この雰囲気を味わってもらいたいです。なんせレースが行われている場所は、1960年代までフォーミュラーワンやWGPが開催されていた公道サーキット/ソリチュードの一部です。イベント名の「グレムセック」も、そのソリチュードサーキットのコーナーの名前。いまはその傍らに建つ「ホテル・グレムセック」に、春から秋にかけての週末、多くのバイカーやクルマ好きが集まっています。またシュツットガルトはメルセデスベンツやポルシェの拠点でそれぞれのミュージアムもあるし、少し足を伸ばしたミュンヘンはBMWの本拠地。ミュージアムも見応えあります。

 なので、いつの日か9月の最初の週末に、グレムセック観戦を含めた南ドイツ・モーターカルチャー観戦ツアーをおすすめします。僕は来年も行っちゃう、だろうなぁ。
 

 

 

 

 

 

 

2019/11/15掲載