この大会は、1981年に第1回大会を鈴鹿サーキットで開催したのがルーツです。1滴のガソリンも無駄にしないという環境保全を目的に、創意工夫を凝らしたマシンで競う“科学のモータースポーツ”とも言われてきました。エンジンは、ホンダの4ストローク50ccエンジンをベースとしています。2020年と2021年は、コロナ禍のため開催を断念しました。この期間、中学生や高校生たちは、先輩たちが創り上げてきたこのような厳しい環境の中ですが、今年は中学生クラスに16台がエントリー。高校生クラスは83台のエントリーがありました。
では、最も敷居が低い”二輪車クラス”から紹介いたします。
(平均速度が25km/h以下になるとタイムオーバーになってしまいます)。チーム関係者によりますと、日ごろの鍛錬により若々しい身体を保っているとのことです。ゴールの後に、燃料計測ブースまでスーパーカブを押していく姿は、どう見ても70才くらいにしか思えません。来年もお会いできることを楽しみにしています。
最もフレッシュな中学生クラスは、あきる野市立東中学校の3チームが、上位を独占しました。
最も台数が多いのが高校生クラスです。今年は83台のエントリーがありました。
ベテラン勢ともいえる一般クラスには、31台がエントリーしました。
【次世代に向けたカーボンニュートラル燃料の取組】
今年の大きな話題は、カーボンニュートラル(CN)燃料のエキジビションが行われたことです。使用する燃料は、ETS RenewaBlazeと呼ばれている植物を原料にしたものです。すでにスーパーGTやMFJロードレース全日本選手権のJSB1000クラスで使用されています。来年のエコマイレッジ大会では、CN燃料のクラスが新設されます。
チームマネージャーが、CN燃料を使用した感想を語ってくれました。
「昨日のテストでは300km/L程度でしたが、タイヤの転がり抵抗を減少させ対策した結果、大幅なアップを達成できました。ガソリンとは特性が異なるので、セッティングがとても難しかったです」(H-TEC CN-プロジェクト 小野智也さん)
「燃料を入手したのが2か月前でした。セッティングを煮詰めきれない状態でしたが、ホンダの社員チームとして1000キロを超えることができほっとしています。ガソリンとは理論空燃比が異なりますので、バランスの調整が難しかったです」(Team-Truth 石手雄大さん)
ガソリン価格が高騰し、電気料金も値上がりするなど、エネルギーを取り巻く環境はますます厳しくなることが予想されます。エコマイレッジチャレンジは、中学生の時からエネルギーに興味を持ちながら、持続可能な社会にするために自らアイデアを出して取り組んでいくことができるイベントです。
また、年代を超えて同じ目的に向かって挑戦する姿には感動を受けました。そして、40年以上経っても新たな可能性を秘めている稀有なイベントであることを実感しました。
【番外編 ホンダの燃費競技のルーツ】
Honda エコマイレッジチャレンジのルーツは、1981年まで遡ります。当時は第二次オイルショックの最中でした。このような背景から生まれたのが、1981年2月に発売されたスーパーカブ50です。燃費は、これまでの85km/Lから105km/Lに高め、最高出力は4.2PSから4.5PSに高めました。この新設計エンジンは、燃費(エコノミー)と出力(パワー)をともに向上させたエンジンという意味から「エコノパワーエンジン」と名付けられました。
このスーパーカブの優秀性をPRするために企画したのがホンダエコノパワー燃費競技でした。当時は、SHELL-CAR GRAPHIC マイレッジマラソンという歴史ある燃費競技が開催されていましたので、1981年の競技規則はこの大会に準拠しました。
グループⅠは、ホンダ4ストローク50ccの市販二輪車、グループⅡは、4ストローク50ccのスペシャルマシン(エンジンのメーカーは問わず)。どちらのクラスも、40ccから60ccまでの改造が認められていました。
スーパーカブは、中古車であればとても安く入手できましたので、出場にあたっての敷居を低く設定したのです。
主催のモーターレクリエーション本部では、手探りの中しかも準備期間が数か月という厳しい中でしたが、6月21日に鈴鹿サーキットで第1回大会を開催しました。
この模様を自ら参加してリポートした”ミスターバイク”の記事がありますので紹介させていただきます。
そして、同年10月11日に埼玉県桶川市の交通教育センターレインボーの高速コースで第2回大会が開催されました。
この年の総合優勝(グループⅡ)は、鈴鹿、桶川両大会の記録によって決められました。”ROSINANTE”が両大会ともに2位の成績で初代優勝チームに輝いたのです。
(●レポート:高山正之)