Facebookページ
Twitter
Youtube

試乗・解説

ロイヤルエンフィールドのスタンダードシングルは ライトウェイトスポーツとしても楽しめる Royal Enfield Hunter350
■試乗・文:河野正士 ■写真:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム ■協力:ロイヤルエンフィールド東京ショールームhttps://www.royalenfield-tokyoshowroom.jp




3月7日より、ロイヤルエンフィールドの新型車「Hunter350(ハンター・サンゴーマル)」の国内販売がスタートした。「Hunter350」は2022年8月にワールドローンチされ、その後すぐにインドを中心にワールドワイドで販売がスタート。すでに10万台を出荷したという。ここでは、そのニューモデルを紹介する。

 
 これまでロイヤルエンフィールドは、Jプラットフォームと呼ぶバリエーションモデルを展開してきた。英国旧車的スタイルを採用した「Classic350(クラシック・サンゴーマル)」、クルーザースタイルの「Meteor350(メテオ・サンゴーマル)」、そして「Hunter350」は、そのJプラットフォームにカテゴリーされる車両であり、排気量349cc空冷単気筒SOHCエンジンとフレームを共有しながら、異なるディテールを採用することで異なるキャラクターを構築している。そして日本におけるロイヤルエンフィールドは、排気量650cc並列2気筒エンジンを搭載したツインプラットフォーム、ヒマラヤとスクラム411に搭載する排気量411cc単気筒エンジンを搭載した411プラットフォーム、そしてこのJプラットフォームの3プラットフォームのモデルファミリーで構成されているが、普通自動二輪免許で乗ることができるこのJプラットフォームが日本におけるロイヤルエンフィールドブランドの中核モデルであり、昨年2022年に一気に登録車台数を増やし、輸入ブランド第5位に躍進した原動力となっている。
 

 
 その中にあって「Hunter350」は、もっとも新しく、そしてもっともスタンダードなモデルである。“スタンダード”たる由縁は、17インチの前後ホイールだ。同サイズのホイールは、いまやスポーツモデルからネイキッドモデルまで、多くのロード用バイクが採用するホイールサイズであり、また専用に開発されたボディデザインもシンプルなネイキッドスタイルで、モダンすぎず、ビンテージテイストでもない。そしてその前後17インチホイールは、「Hunter350」の走りのキャラクターも明確にしている。

 17インチホイールの特徴は、スポーティなハンドリングにある。他のJプラットフォームモデルが採用するフロント19インチホイールのおおらかな反応のハンドリングに対し、17インチホイールを履く「Hunter350」はライダーの意思に素直に反応する。したがって、ライダーが大きなアクションを取らなくてもキビキビとよく走る。その印象は、混雑した街中やワインディングでも変わることがなかった。
 

 
 また車体の軽量化も、そのキャラクターを作り上げる要因だ。「Classic350」に比べ14kg、「Meteor350」に比べて10kg軽く、そのほとんどをホイール周りのダイエットによって実現している。バネ下と呼ばれる、サスペンションの先端に付くホイールの軽量化は、その数字以上の軽さをライダーに提供する。もちろん車体の重さは安定感を生み出す要因でもあるため、軽量であることのみが正義ではない。事実、長距離ツーリングなどでは「Classic350」や「Meteor350」の方が、車体の反応が穏やかで、ライダーを疲れさせない。しかし単気筒エンジン特有のスリムな車体を活かしてキビキビと走る、いわゆるライトウェイト・スポーツシングル的な走りを楽しみたいなら「Hunter350」は希有な一台であり、その軽い車体とスポーティなキャラクターは、キャリアを問わず、多くのライダーにバイクで走る楽しさを提供することができるだろう。
 

 
 そしてそのキャラクターに大きな影響を及ぼしているのが、排気量349ccの空冷単気筒エンジンだ。ロイヤルエンフィールドは、ピストン径に対してストロークが長い、ロングストロークエンジンが持つ出力特性を大切にしている。ロングストロークエンジンは、出力特性が穏やかで、かつ力強い。その強さは、最高出力が示す瞬発力的なチカラではなく、トルクによって示される押し出すチカラと表現すると分かりやすいかもしれない。したがって「Hunter350」は、クラッチやアクセルの操作に神経質になることなくとも、トットットッと車体を押し出してくれる。このチカラで軽い車体を押し出すのだから、軽い車体がさらに軽く感じるのだ。

 しかしエンジンを高回転まで回すと、そのエンジンのフィーリングが一変する。トットットッという爆発のリズムは間隔を狭めて、ビート感を伴って伸びやかになる。そのエンジンのビート感に、キビキビと走る車体を合わせていくと、長距離走のゴール前でスパートをかけたときのような心地よいスポーツ感を得ることができる。
 

 
 ロイヤルエンフィールドは、ライダーにとって有益ではない華美なデザインやパフォーマンスを嫌う。従って必要以上の電子制御技術も、あえて採用していない。かわりにバイクを構成する、エンジンやフレームといった基本骨格を徹底的に作り込み、熟成させている。その最新モデルである「Hunter350」は、そのフィロソフィーと成熟したエンジニアリングの集大成だ。シンプルで、軽量で、スポーティ。そんなバイクの基本のキをプロダクトの中核に据えてプロモーションできるのは、そのバイク作りに対する自信の現れだ。「Hunter350」に乗ると、それがよく分かる。
(試乗・文:河野正士、写真:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム)
 

 

ライダーの身長は170cm、体重65kg。

 

Jプラットフォームを採用するモデルの中で、もっとも新しく、もっともコンパクトで、もっとも軽量なのが、この「Hunter350」だ。ポップな車体カラーのバリエーションも数多くラインナップする。

 

排気量349cc空冷単気筒エンジンは低回転域から力強く、想像しているよりも一回り、いや二回りほど力強い加速をする。しかしバランサー内蔵で振動が少なく、滑らかな回転上昇が特徴。

 

フロントフォークはSHOWA製。フロントブレーキは、ブレンボの兄弟ブランド/BYBRE(バイブレ)製。軽量な17インチキャストホイールを装着。
プリロード調整機構付きのツインショックを採用。フロントと同じく、軽量な17インチキャストホイールを装着。ショートタイプのサイレンサーはなかなかに元気がいい。

 

容量13リットルの燃料タンク。ニーグリップ部分の適度なエグリが、ライダーのニーグリップをサポート。燃料タンクを視覚的にも小さく見せる効果もある。
シート高は790mm。ハンドル位置が低く、軽い前傾姿勢を造り上げる。シート座面に掛かる重量分布を測定し、座面形状やシート表皮&シートフォーム素材を徹底的に研究している。

 

ステップ位置は自然な位置にあるし、バンク角も充分。ペダルやそのリンク周りはシンプルな造りになっている。
メーターは針式のスピード計の中央にデジタルディスプレイをデザイン。必要にして充分な情報量をシンプルに表示している。

 

スイッチ周りのデザインはシンプルで使いやすい。やや樽型のグリップが、クラシカルな雰囲気。このクラッチレバーの根元下にUSBポートが標準装備される。
シート下に標準装備されている車載工具。昨今の新型車は、車載工具の点数が少ないが、Hunter350は多様な工具を揃えている。

 

Royal Enfield Hunter350 Specification
■エンジン形式:空冷4ストロークSOHC単気筒 ■総排気量:349cc ■ボア×ストローク:75mm×85.8mm ■圧縮比:9.5 ■最高出力:14.9kW(20PS)/6,100rpm ■最大トルク:27Nm/4,000rpm ■全長×全幅×全高:2,100×800×1,055mm ■軸間距離:1,370mm ■シート高:790mm ■車両重量:181㎏ ■燃料タンク容量:13L ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式■変速機形式:5段リターン■ブレーキ形式(前・後):300mmシングルディスク・270mmシングルディスク(デュアルチャンネルABS) ■タイヤ(前・後):110/70-17・140/70-17 ■車体色:ダッパー・ホワイト、ダッパー・アッシュ、ダッパー・グレイ、レベル・ブラック、レベル・ブルー、レベル・レッド ■メーカー希望小売価格(消費税込み):657,800円~※メーカー保証が3年間付帯される

 



| 『スーパーメテオ650試乗インプレッション記事』へ |


| 『メテオ350の詳細解説』へ |


| 『クラシック350の詳細解説』へ |


| 『ミドルアドベンチャー ヒマラヤ登場』へ |


| 『あらためてロイヤルエンフィールドを知る』へ |


| Royal EnfieldのWebサイトへ |





2023/04/14掲載