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レース・イベント

ハーレー、ビーエム、ドカ、トライアンフといったお馴染みのブランド以外にも海外から入る多くのバイクブランドがある。東京モーターサイクルショーで見たその他のブランドも駆け足で紹介したい。設計には様々な知見が投入されターゲットを正確に射貫く開発がされているのはもちろんだが、その性能はどれも現実的な範囲を照準に定め、超高速、電子制御の大量投入、人気カテゴリーという流れよりも、独自性が見てとれた。それだけでも収穫は大きいとも言えたし、ひょっとすると、今後それがマジョリティーになり、高性能がマイノリティーになるのでは、とふと思ってしまったのである。それは、見て回ったブランドのバイクがどれも「楽しそう」だったからだ。
■レポート:松井 勉 ■撮影:増井貴光

ロイヤルエンフィールド──イギリス発祥、インドで急成長し、今や世界がターゲット。

ロイヤルエンフィールド

 世界的に中間排気量モデルで大きなシェアを持つブランドで、イギリス発祥、インドで成長、35kWまでのセグメントで大成長するテイスティモデル達。カスタムプロジェクトを行ったり、インドのマーケティング本部から担当者が来日したり、日本市場への関心度の高さがうかがえる。PCIが輸入元を務めてから特にその力が強くなったように見える。今回もスーパーメテオ650のアンベールが行われた。

スーパーメテオ650
アンベールされたスーパーメテオ650。直列2気筒270度クランクの不等間隔爆発をするエンジンを搭載。空冷のフィンまで美しくデザインされている。ロイヤルエンフィールドは、フレームメーカーであるハリスを傘下に入れて上質な乗り味のシャーシ造りをしている。前後のサスペンションはショーワ。フロントに倒立フォークを採用するのはロイヤルエンフィールドとしては初。また、LEDヘッドライトも同様。241㎏の車体は軽くはないが、クルーザーというよりロードスターとしてこのバイクは開発された経緯がある。スタイルは重厚に、走りは軽快さも楽しめる仕様を作り込む。昨秋ミラノで発表されてから日本でのアンベールまで短期間で推移していることから、このバイクが2023年のロイヤルエンフィールドにとって大きなスイッチになる気がした。

スーパーメテオ650
スーパーメテオ650
スーパーメテオ650に搭載されるエンジンは、INT650コンチネンタルGTと同系の648㏄空冷2気筒。

スクラム411
411㏄の空冷単気筒エンジンを搭載するスクランブラー、スクラム411。オンオフツアラーモデル、ヒマラヤの兄弟モデル。
INT650
手前がINT650、奥がコンチネンタルGT650。エンジンは空冷2気筒で同じだが、カフェレーサーライクなコンチネンタルGT、アップライトでスタンダードなバイクでもあるINT650、というキャラの違いをもたせている。

カスタムのコンセプトモデル
カスタムのコンセプトモデルも用意された。こうした流れは元気の良いブランドの常套手段。グローバルで年間80万台以上を売り上げるロイヤルエンフィールドだけに、各国で優れたパートナーとこうした発信をしている。

ヒョースン──韓国発信のV2モーターサイクル。

 125、250、300とあるヒョースン。125と300が兄弟車でスタイルはボバー。エンジンは水冷Vツイン。重量は125が10㎏軽い165㎏となるが、重厚感のあるスタイル、それでいて1425mmに収められたホイールベースや、フロントに120/80−16、リアに150/80−15を履くあたり、見た目の存在感がある。そう、125に見えない。300でもワンクラス上のモデルに見える。カスタムパーツの展示もあり、イジる拡張性も充分にありあそうだ。

カスタムサンプル
カスタムサンプルを見てもなかなか。GV300ボバーをベースにしたもの。125は車体サイズ、タイヤサイズが300と同寸で、エンジンもVツイン125という原二ファンには大穴かも。
GV200DRA
手前の2台はGV200DRA ストリートクルーザー。ボバーとは異なるスタイルを持っている。

プジョーモトシクル──ヒストリックブランド。
二輪製造では、実は最古参のプジョーモトシクル。

M1000R

 1810年、製鉄業から始まったプジョーの歴史。1890年にはダイムラー製エンジンを載せた四輪車を世界に先駆けて量産開始。さらに1898年にはド・ディオン・ブートンエンジンを後輪車軸付近に搭載したモーターサイクルを第一回のパリオートショーで発表。1907年、第一回のマン島TTではプジョー製エンジンを搭載したノートンが勝利するなど、二輪のパイオニアでもあるプジョーモトシクル。彼らは今年バイク製造に携わって125年目を迎える。
 そんなプジョーモトシクルが東京モーターサイクルショーにも展示された。これまでジャンゴなどスクーターイメージが強かった同社だが、モーターサイクルメーカーとして復帰することを強くイメージ付けるラインナップで2023年は攻めている。
 昨年EICMAで発表されたXP400GTも展示されたほか、PM-01ギア付きのロードモデルが登場。300と125で展開する予定で、日本に届くのは10月を予定している。

XP400GT
XP400GT
SUVモデル、プジョー3008などからインスパイアされたスタイル。視点が高く、フロント17、リア15とこのクラスのスクーターとしては大径ブロックタイヤを装着。マルチパーパス力の高さを印象付ける。全体のスタイルは、ライオンが獲物をみつけ、跳躍する時のような前下がりの躍動感を持つ。デイタイムライニングライト、テールライトはライオンズクローをイメージ。 これもプジョーの四輪と同様の縦長の意匠を採用。フランス製のエンジンは、399㏄から26.5kWを生む。単気筒とCVTの組合せだ。メーターも四輪同様、速度計、回転計が逆回転する。コネクティビティも装備し、ライダーは自宅のSUVから乗り換えても何ら不便を感じないはず。

XP400GT
XP400GT
フロントにφ41mmの倒立フォークを採用し、リアはアーチサスペンションと呼ばれる機構を採用。シート下に収まるリアショックを作動させるためにスイングアームからU字型のブリッジ、プッシュロッドが後輪の上からリアサスを押すレバー式となる。

PM-01
こちらは前後17インチホイールを履くPM-01 125/300のモーターサイクル。

PM-01
PM-01
フロントマスクにあるヘッドライト下にはライオンズクローをかたどった意匠が。前方向にボリュームを持たせた独自のデザインを持つ。ライオンの前足から腰にかけてのくびれを見るようでもある。

GPX──タイからやってきたアンダー250の熱波。

 タイのモーターサイクル熱はスゴイ。雨期でなくても毎日一度はスコールが降る天候ながら、町にはバイク屋、道には移動するバイクが溢れている。そんな彼らの足はスクーター&カブのようなビジネスバイクが中心。そして200㏄、250㏄は庶民のプレミアムクラスという感じで、そのセグメントで成長するのがGPXだ。
 GPXジャパンにより国内に紹介されているバイク達は、レジェンド250(空冷2気筒)シリーズ、150㏄単気筒のレジェンド150FI、レプリカ系スポーツバイクのDEMON GR200Rシリーズ。2023年の東京モーターサイクルショーでもGPXブースで多くが展示された。

デーモンファミリー
デーモンファミリー
デーモンファミリーのカラーがよく分かる。現地の道路状況、天候も晴れ→雨→晴れとドライ、ウエットの転換が早いので、サスペンションは基本的に少し長めのストロークであらゆる路面状況に対応したものが標準。YSSサスをリアに装着。タイヤはIRC RX-01を履いている。その他、レジェンド250(空冷2気筒)シリーズ、150㏄単気筒のレジェンド150FIなどを展開する。

ウラル──2WDが生み出す機動性。
未体験ゾーンの走破性が武器。

 現在、生産拠点をカザフスタンに移しているウラル。HPを開くとトップにSTOP WAR NOWの文字が出てくるところにロシアブランドの苦しさが出ている。しかしプロダクトに政治的な意味はなく、2WDを主体に販売されるウラルのサイドカーは冒険色に満ちたもので、カーやトランクに荷物を詰め、スペアタイヤの上にも荷物を載せて750㏄空冷水平対向2気筒を唸らせ、荒れ地を越えてどこかへ行ってみたくなる。OHV2バルブを採用するエンジンは連綿とアップデイトが続き、古風なレイアウトながらユーロ5にも適合。

ウラルのサイドカー
急傾斜を駆け上る姿を模して展示されたウラルのサイドカー。いわゆるパートタイム式で、2WDは滑りやすい路面でシフトして使う。バイク側だけでの1WDではサイドカーの乗り方で走れるが、2WDにすると直進性が強くなり、3輪ATVを操るのと同様なスキルがいる。が、慣れるととっても楽しめるビークル。運転には普通免許が必要。

ウラル
ウラル
カスタムパーツ、カラーリングなどもオプションで選択が可能。

ファンティック、BRIXTON──モダンクラシックの館、
ファンティックとBRIXTONを見る。

 モータリスト社が展開するこのブースでは、ファンティック・キャバレロスクランブラー500デラックスと、新たに日本に導入するBRIXTON(ブリクストン)のクロムウエル1200が目を引いた。どちらもオーセンティックでまとまりのあるデザイン。パーツ使いも趣味人を納得させてくれそうな構成でまとまっている。
 クロムウエル1200は270度クランクを使う今日のスタンダードとも言えるエンジンで、デロルトのスロットル系、SOHC4バルブヘッドを持つ。モダンクラシックなスタイルを持ちつつ電子制御技術との親和性も高く、クルーズコントロールなどの装備もある。ECO/SPORTSの2つのライディングモードを持つのも特徴だろう。最新のスタイルでまとめ上げたファンティックとBRIXTON。既定路線と違ったバイクとライフスタイルをお望みならば注目だ。

BRIXTONクロムウエル1200
BRIXTONクロムウエル1200。
BRIXTON SUNRAY 125
BRIXTON SUNRAY 125。

ファンティック・キャバレロ・スクランブラー500デラックス
ファンティック・キャバレロ・スクランブラー500デラックス。

MV AGUSTA──もはや美術館。至宝とであう瞬間の悦び。

MV AGUSTA
MV AGUSTA

 MV AGUSTA。もはや説明の要らない最高のパフォーマンスと美しさを妥協無く追求するブランド。4気筒1ℓ、3気筒800㏄のブルターレ。ラッシュ、F3シリーズ、ドラッグスター、トゥーリズモ ヴェローチェというモデル構成を持つ。特に最近のMVはライディングに対する包容力が加わり、乗りやすさも向上。それでいてスキルがあるモノに正直に微笑む孤高さも混在したまさにプレミアムな乗り味。夢を買う。そんな人に最適なブランド。
 イエローのバイクは、MV AGUSTA流ネオクラシックスタイルのスーパー・ヴェローチェ。800㏄3気筒を搭載するロードゴーイングマシン。

ベネリ、ゴッチア──プロトが手がけるモビリティーの明日。

ベネリ

 展示面積で言えば国内4ブランドと同等の広さで展開したプロト。ベネリのe-BIKE、ガソリンエンジン搭載のバイク、ゴッチアのBEVバイクほか、同社が展開する用品、オリジナル商品がセグメントごとに分けられた展示されていた。
 その中でゴッチアの電動バイクに関する展開が面白かった。GEV600というシンプルな構成のBEVモビリティー。行動半径を拡げるためのバッテリーステーション、充電ステーションが欲しくなるところ。そこでプロトは日立チャネルソリューションズと一つのことを開始。地元の取引先金融機関にゴッチアを納入、業務で活動するためのバッテリー充電に関わるタイムラグを減らしつつ、電施設が他のことにも役立てたら──。
日立チャネルソリューションズが手がけていた、金融機関のATM用非常電源として充電式バッテリーを活用するシステムに、取り外し式のバッテリーを活用。充電と非常用電源としての二つの仕事をそこでできないか、という実証を行っている。
 大型店舗には自家発電装備があるが、小規模な店舗やATMではそうしたバックアップの構築まではできていない。そこでバッテリーを使い危機管理をという提案だ。そのバッテリーを共用することで、リスクを減らしながらメリットを探す活動のようだ。将来的に充電ではなくバッテリーステーションとして機能するのだろうか。まだそうした具体化には距離感を感じたものの、興味深く、面白いトライアルだと思った。

CAKE──ゴールドウインが展開する北欧電動モビリティーの日本へのローカライズ。

CAKE

 スポーツウエア、ライディングウエアなどでお馴染みのゴールドウインが2023年からCAKE(ケイク)の販売を始めた。スウェーデンで2016年に設立されたプレミアム軽量電動バイクメーカーで、ゼロエミッションという環境性能とゴールドウインがアウトドアスポーツに向けたプロダクトを多く手がけることから同じ目的を持つ同士、ということで展開が決まった。
 すでに都内で試乗会を行うなど注目は徐々に集まっている。プレミアムさは、そのデザインからも伝わってくる。オフロードスポーツバイクのようなカルク、ワークバイクでありレジャーバイクのようでもあるオッサ、軽快なコミューターとして気になるマッカ、という3つのことなるキャラクターを持つ電動バイクと、キッズ向けのストライダー的バランス学習用バイク、ペダルを持ったバイク、そして電動バイクへと続くため、年齢、体格によってチョイスを拡げるようになっている。
 ブースはホワイトで彩られ、その上にケイクのバイクやパーツが並べられた他とは全く異なる空間に仕上がっていた。価格帯はキッズ用を除けば86万9000円から291万5000円。製品の精度は高く試乗会の時に触れたクイックリリースレバーの動きは、稚拙な例えで申し訳ないが、モトコルセが作り出すカスタムパーツに触れたときのようなミッチリとして着実に動く心地よいほどに手に馴染む精度を持っている。そこに見た目とのギャップも大きく一気に注目度があがってしまった。今、電動バイクの世界観の先端にはこんなプレミアムゾーンがあることを知ったブース展開だった。

R1250GS
前後オーリンズ(ケイクからすれば国産になるが)を採用するレーサーモデル。281万6000円。
R1250RS
マッカ・フレックスワーク。定格出力により原付、自動二輪のモデルが用意されている。112万2000円〜。

インディアン──アメリカ、もう一つの老舗ブランド。
ライバルとは背中合わせ?

インディアン
ブース前ではステッカーシートが配布されていた。

 ハーレーダビッドソンブースと通路を隔てて展示スペースを構えていたインディアン。同じ嗜好性を持つライダーにとっては見比べが短時間でできる構成だったともいえる。 

FTR1200S
FTR1200S
正面に展示されたカスタムモデルは、FTR1200Sベースに製作されたモデル。右にあるタンカラーのシートが装着されているモデルは、チーフダークホースベースに造られたレッドウイングカスタム。

スポーツチーフ
スポーツチーフ。フォックス製リアショックなどを装備するなどスポーツ度を上げたパッケージのモデル。
FTRスポーツ
倒立フォーク、リアサスにオーリンズ製を採用するほかブレンボ対向4ピストンモノブロックキャリパーなど高性能パーツを使ったFTRスポーツ。

(レポート:松井 勉 撮影:増井貴光)

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2023/03/26掲載