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レース・イベント

モーターサイクルショーの楽しみは、気になるバイクを実際に見て、その世界観を楽しむこと。ブースの展示方法を見るだけでもそのブランドのことが解るほど、メーカー自らの色を持っている。プレミアムセグメントからシティコミューターまで、ライフスタイルを打ち出すプロダクトとして機能すること、走る世界に注力したプロダクト、もちろんそのどちらも持つブランドなど個性の明解さでは国産ブランドが一歩譲る部分もある。2023年の会場で出会った輸入ブランドを駆け足で紹介しよう。
■レポート:松井 勉 ■撮影:増井貴光

ハーレーダビッドソン──創業120年目の歴史と進化。

ハーレーダビッドソン
フロアに置かれたバイクを見ていると、そのキラキラしたオーラを感じるのがハーレーの特徴でもある。手前に並ぶのがレボリューションマックス975エンジンを搭載したナイトスターシリーズ。2023年モデルのナイトスター、ナイトスタースペシャルが並び、奥にはハーレー発信のアドベンチャーバイク、パンアメリカも見える。ともに位相クランクを持ち90度Vと同じ爆発間隔を持つモデルだ。

 2023年、ハーレーダビッドソンは創業120周年を迎えた。ウイスコンシン州ミルウォーキー、小さな木造の小屋から始まったその歴史は、現在も独自のモーターサイクル、ライフスタイルを提供することで存在、継続している。重ねた歴史をただ祝うだけではなく進化を続けるブランドとして東京でも独特の世界観を展開した。板張りのフロアを思わせるブースに16モデル、21台を展示し創業年時でもある1903と2023をバー&シールドにかたどったマークを張ったステージにはアニバーサリーモデルが置かれている。
 スポーツ系が搭載するエンジンは位相クランクを持つ水冷Vツインへと進化し、他のモデルも環境規制に対応した中でパフォーマンスを引き上げるために排気量を拡大している。大排気量という言葉が今なおアイコニックなブランドでもあり、パンアメリカが見せた新たなチャレンジの道で新たなユーザー層にもコンタクトを開始したハーレダビッドソンなのだ。

ソフテイルFXBRブレイクアウト117
ソフテイルFXBRブレイクアウト117
2023年モデルとして登場したソフテイルFXBRブレイクアウト117。ミルウォーキー8すなわち117キュービックインチ(1923㏄)を搭載したモデル。ハンドルバー位置、タンク容量などに変更を受けた。フロント21インチ、リアに240サイズのタイヤを履くことでお馴染み。

ナイトスタースペシャル
ナイトスタースペシャル
ナイトスタースペシャルも数台が置かれていた。タンクマークに70年代風のものをあしらっている。サテンブラック仕上げのエキゾーストなどエントリーグレードのモデルでありながらパワフルな走りを手にしている。

FLTRTロードグライド3
シャークノーズフェアリングをフレームマウントするFLTR系をそのままトライクにしたFLTRTロードグライド3。定番モデルであるFLTHTCUTGトライグライドに加わったモデルとして2023年に登場。フェアリング以外にも、19インチに大径化した前輪と、後輪もロープロファイルな215サイズの18インチタイヤを履く。2輪免許ではなく普通免許が必要だ。
ハーレーダビッドソンの看板モデル
ハーレーダビッドソンの看板モデルたち。左からFLTRXSTロードグライドST。走りをイメージしたモデルだ。その隣はFLHXSストリートグライドスペシャル。バハオレンジと名付けられた鮮やかな色を纏う。その奥がFXLRSローライダーS。倒立フォーク、ミルウォーキー8 117エンジン(1923㏄)を搭載するスポーティーモデル。

BMWモトラッド──スポーツブランドMの名を冠したM1000Rをアンベール。

M1000R
ロードスターモデル史上もっともパワフルなM1000RRがアンベール。265万を超すプライスが納得の性能。最高出力は154kW(210HP)を誇る。ビレットパーツや専用のウイングレートなどMの名をかたるに相応しい内容のモデルだ。

 2023年、最初の市販車であるR32を世に送り出してから100年目を迎えたBMWモトラッド。昨年は世界的な電子部品の不足やデリバリーでの困難を抱えながらも史上最高の20万台を超えるセールスを記録。看板モデルとなるアドベンチャーシリーズGSは、同セグメントで50%のマーケットシェアを持つ、と発表された。強みのGSシリーズはもちろん、ブースにはクルーザーモデルR18ファミリー、RnineTなどのヘリテイジモデル、電動スクーターEC-04、定番ロードスターR1250R、R1250RSなどが並ぶ。さらにプレミアムユーザーに向けたBMWのスポーツブランドMの名を冠したモデルのM1000R、そして東京モーターサイクルショー初日にアンベールされたM1000RRが壇上に飾られた。ディーラーにいるかのようなしつらえとなっているブースには、機能的なオプションパーツ、純正ウエア類も並ぶBMWの世界観を展開している。

R18クラシック
水平対向2気筒1800㏄エンジンを載せたR18クラシック。前後16インチタイヤとサイドケースを装備したモデル。リジッド風フレームとそのエンドもかつての歴代モデルをオマージュしたもの。ドライブシャフトが露出したところも過去からの引用だ。潤沢なフライホイールマスを持ち、エンジン始動をしただけでそのトルクリアクションでライダーを感動させる。
CE-04
アーバンモビリティ、CE-04。BEVスクーターだ。前作のCエヴォルーションよりもさらに進めたデザインが特徴。シートヒーターを持ち、ラゲッジルームはシート下にあるが、サイドに開くパニアケースを内包したような構造。デザインは今なお斬新。ミニマムなコミューターではなくビッグスクーター級の大きさがあるからダッシュ力が凄く、モーターの加速を体験するのには絶好の教科書。

RnineT 100 YEARS
RnineT 100 YEARS。BMWモトラッド100周年を記念した限定モデル。ペイントオンクロームと呼ばれる手法で塗装したタンク、純正オプションパーツのシリーズであるオプション719から選んだファクトリーカスタムバイク。シングルシートカバーなど細かな場所まで手の入った造り。通常価格より50万円ほど高いが、内容を見たら納得。国内ではすでに予約完売状態との情報も。

RnineT 100 YEARS
1969年に登場したR75/5をオマージュしたカラー。ペイントオンクロームという手法で塗装されている。タンクパッドも当時を思わせる。
RnineT 100 YEARS
オプション719カタログから選ばれたヘッドカバー。マシニングの痕跡と形状、カラーリング。全てがマッチしている。

RnineT 100 YEARS
RnineT 100 YEARS
このモデルでは前後ともチューブレスリムを採用。リム両サイドにスポークを張るタイプではなく、リムセンターからスポークを伸ばす方式。ビードの部分がよりスッキリ、タイヤチェンジャーでの作業が容易になるメリットもあるという。

F900XR
こちらは900㏄の直列2気筒270度クランクのエンジンを搭載したF900XR。スポーツクロスオーバーモデルとして充分なパワーを持つがリラックスしたアドベンチャーバイクのようなポジションで、日本の道の多くを楽しみ尽くせるバイク。

M1000RR
M1000RR
この日、東京モーターサイクルショーでアンベールされた1台、M1000RR。スーパーバイクレース直系のエンジンを搭載するこのバイク。削り出しのインテーク、2本で機能を果たすピストンリングほか、S1000RR比340グラム軽量なパンクル製コンロッドを採用するなどMの名に恥じないエンジンを持つ。加えて、写真のモデルではカーボン素材をふんだんに使った外装、ドラッグを減らしダウンフォースを増加させたウイングレットを装備。先代のM1000RR比では300km/h時で6.3㎏多い22.6㎏のダウンフォースを生み出す。エアロダイナミクスを進化させて最高速も314km/hまで伸ばしている。4輪のMモデルのパフォーマンスとゴージャスさのバランス点もスゴイが、M1000RRもバイク界のスーパーカーと言えそうだ。

M1000RR
M1000RR
M1000RR
ワークスマシンですか? というカーボン使い。ブレーキ周りはMキャリパー、Mブレーキダクトの採用で、ハードなブレーキング時でもブレーキシステムの冷却効果を高めている。ウイングスパンも広い! ブレーキのダクトやノーズに空いたエアインテークが超絶な性能を走らずしてアピール。WSBKレギュレーションに合わせてここまで盛り込んでも500万円以下で手に入るのは一つの奇跡か?

R1250GS
熟成を重ねるR1250GSシリーズ。遠出が苦もなくできるバイクだけに、初夏に北に向かえば、その町はまだ遅い春の気温でも心配ない。グリップヒーター、シートヒーターも装備するし、暗くなってもコーナリングライトがゆく先をしっかり照らす。ガソリンスタンドが減少した現在でも航続距離に余裕がある30リッタータンクのアドベンチャーなら、心配なく走り続けることができる。走ると「だからこれ、付いてるんだ!」と解るバイク。使い込むほどに解る世界中で受ける理由。その答えを全て持つバイクだ。
R1250RS
R1250RSと後方にはノンカウルのロードスター、R1250Rが。定番スポーツとして人気が高い。

Triumph──Moto2サプライヤーの誇りをプロダクトに。
トライアンフの2023年。

Triumph
角地の展示スペースにアプローチをすると
手前にモダンクラシック系モデルがブランドの看板的に出迎えてくれる。中央にタイガーファミリー、そして奥にステージ、ロケット3などが置かれている。

 直列3気筒エンジンをアイコンにしたロード、アドベンチャーバイクと、モダンクラシックセグメントには直列2気筒を搭載するトライアンフ。3気筒エンジンにはTプレーンと呼ばれる不等間隔爆発をするものと、等間隔爆発のエンジンを揃えている。今回はストリートトリプル推しの展開となっている。新型のこのモデル、765㏄直列3気筒エンジンは、Moto2エンジンと排気量などが共通。それをベースにして新たなストリートトリプルRSを製作。
 メインステージには、Moto2エディションという限定モデルと併せて展示されている。平場にはアドベンチャーバイクのタイガー、モダンクラシック系モデル、ステージ脇には2.5リッターエンジンを搭載したロケット3が置かれていた。ブースに大きなパーティションなどの囲いがなく、広々とした空間を演出していたのも印象的。

CL250

タイガースポーツ660
右奥からタイガースポーツ660。120度クランクの3気筒サウンド、ロードコンシャスなシャーシ、アップライトなポジションのストリートツアラー。中央は1200㏄Tプレーンエンジン搭載のタイガー1200GTプロ。ショーワ製のセミアクティブサスを装備。前輪19インチ、後輪は18インチを採用。手前はタイガー1200ラリーエクスプローラー。30リットル入りの燃料タンク、前後に220mmのトラベル量をもつサスペンションなど、長距離アドベンチャーツーリングを可能にしたモデル。目的に合わせて選択しやすいのがタイガーシリーズの美点だろう。
ストリートトリプルRS
ステージ上にはストリートトリプルRS(左)とストリートトリプル765 Moto2エディション。Moto2エディションは前後にオーリンズサスペンションを装備し、エンジンパワーも91kW→95.6kWへとアップ。190㎏を切るウエイトのスポーツ性が高いネイキッドモデルだ。低中回転からトルク感が厚く、高回転までキューンと延びる加速。その時の3気筒サウンドはこのバイクの宝物だ。

モトコルセ──イタリア街にみた、くすぐるラテン系の誘惑。

モトコルセ
モトコルセサイドではハブセンターステアを採用するヴァイルスが路面側に並ぶ。ブラックのブースにカーボングレーのバイクがシックに映えていた。

 油冷エンジン搭載のビモータをフレームからモディファイし、FCRキャブレーターを装着。高速周回路で最高速300km/hオーバーの世界に挑んだころから、高品質でハイエンドなワンオフカスタムを得意としてきたモトコルセ。テージのスペシャリストとしても長い歴史を重ね、国内のビモータの代理店も務めた会社だ。カワサキがビモータを傘下に収めてからも、ルーツである美しい高性能の探求、というコンセプトは不変。
 そんなモトコルセに共感したオーナー達が集うVIPラウンジを備えたブースが毎回馴染み。展示ブースには今年もヴァイルスなどが惜しみなく展示されている。そして今回はピレリ、ドゥカティがその一角に入り、さながら高級なイタリア街の様相が展開された。

ドゥカティ
こちらはドゥカティ。ディアベルV4やムルティストラーダV4Sラリーなど話題のモデルが展示されていた。
ピレリ
ピレリブースではDIABLOMAN(ディアブロマン)によるDIABLO PROJECTのお披露目がされた。レーシングスーツとヘルメット、ミラーのシールドで、TOP GEAR のSTIGのような存在なのだろうか。でもトークショーも歓迎だそうなので、STIGではなさそう。その活躍が楽しみだ。

(レポート:松井 勉 撮影:増井貴光)

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2023/03/25掲載