Rebel 250と共通。
大ヒット街道(古ッ!)を走り続けている、ご存じRebel 250。街に出たら見ない日がないほどの目撃率も特徴だ。
Rebelってクルーザーカテゴリーに属しながらも、乗っているライダーはガチガチに型にハマった印象もなく、良い感じで肩から力が抜けた人達にも選ばれている印象がある。ひとことで言えばリラックスした感じだ。
働き方が「がらチェン」したここ数年、平日が休日、リモートだから仕事場がアウトドアなど、生活様式が大きく改革された。同じ空間に多くの人が存在する暮らしから、ソーシャルディスタンス重視の生き方へ──。そんな暮らしのトランスポーターとしてバイクが注目され、免許取得者もバイク購入をする人も多くなっている、という話はよく耳にするところだ。
それは、朝決まった時間に登校し、決まった時間まで好むと好まざるとに関わらず授業を受け、お昼も部活もルーティンワークだった学校生活のような暮らしが、いきなり無期限夏休みになったようなもの。自分で自分をマネージメントする「自由度」という不慣れなものを得た人が、逆にバイクという存在が、こうした暮らしにフィットするのかも、という予感に素直に従っただけかもしれない。
Rebelに話を戻そう。まずルックスに存在感がある。しかし、90年代にブレイクしたスティードやドラッグスター、ブルバードやバルカンといった重厚感狙いのスタイルとは異なり、今のカスタムトレンドを見事に封入したスタイルだ。太い前後のタイヤ。タンク前端位置を高く、シートを低く配置。前後のフェンダーは短くしたスタイルはいわゆるボバースタイル。それは20世紀初頭、バイクが世に生まれ、勃興したメーカーが「我こそ信頼性と強さを持つプロダクトだ!」をアピールするため、アメリカではオーバルトラックを使ったレースが行われた。路面はダート、バンクをつけたコーナーは板張り、というコースもあったという。いわば競馬場のような間取りでレースをする。その場合、市販車をレース用に改造したとき、前後のフェンダーを短く切り、軽量化したそのスタイルを範としているのが現代のカスタムシーンにあるボバースタイルだ。
その当時、前後のサスペンションもなかったから、もっと長く低いリジッドフレームのバイク達のスタイルだったが、実用性と扱いやすさを融合させたRebel 250が感覚的に「カッコ良い」と映り、乗ってみたら軽快で楽しく、ワクに捕らわれない自由さが多くのユーザーの心を掴んだのだろう。
今日ここに紹介するRebel 500はその250をベースに500の並列2気筒エンジンを搭載したモデルで、この2台は同時期に開発されたいわば兄弟車となる(2017年初代Rebel 250 / 500試乗ページはコチラ→ http://www.mr-bike.jp/?p=128161?from=mr-bike )。
デザイン性も加味したサイズ感。
だからRebel 250は、250クラスとしてはサイズが大きめだ。全長で比較すれば、例えばCB250Rが2020mm。MT-25が2090mm、とスポーツバイクはコンパクトさをアピールする。対するRebelは2205mm。ホイールベースは1490mmあり、CB250Rのそれより135mm長い。Rebelのボディサイズは250と500で共通。勿論ホイールベースも同値となる。500に合わせたから大きい、というのではなく、このボバースタイルを描いたらこうなった、という風に取れる。車重は190㎏と250よりも20㎏ほど重くなるが、Rebelが搭載する2気筒エンジンをベースに400化したCBR400R、400Xよりも車重は軽い。
シート高は690mm(これもRebel 250と同じ)と低く、相対的に高い位置にあるハンドルバー。そしてちょっと前、でも前過ぎない位置にあるステップが作るライディングポジションは絶妙。小学校の授業で座ったあの椅子に腰掛け、腕を少しだらりと「前へ倣え」した感じ。とてもラクチンなポジションなのだ。
イグニッションを入れると250同様のシンプルなLCDメーターに表示が表れる。エンジンは471㏄の水冷DOHC4バルブ2気筒。今となっては少数派となった180度クランクの等間隔爆発エンジンだ。このエンジンはCBR400R、400Xのエンジンといわば兄弟。500をベースにストロークを10.2mm短縮したのが400のエンジンということになる。
67.0mm×66.8mmのボア×ストロークと10.7という圧縮比を持ち、そのスペックは最高出力34kW/8500rpm、最大トルクが43N.m/6500rpmとなっている。CBR400R、400Xが搭載するエンジンのスペックが、34kW/9000rpm、38N.m/7500rpmと、最高出力値は同じ、しかし発生回転数は500rpm低く、最大トルクは5N.m大きく、発生回転数は1000回転低くなっている。これだけ見ると「なーんだ、たいして変わらないのね……」となるかもしれない。
そもそも、ヨーロッパの大型モデルビギナーを対象としたA2ライセンス(最大出力35kWまでのバイク)ユーザーを含む層に照準を合わせたと思われるこの500エンジン。彼の地で売られるCBR500R、CB500F(以前国内でも販売された2気筒のCB400Fの兄弟車)、そして400Xの海外版、CB500Xが最高出力35kWとまさにA2ライセンス枠内にきちんと収まっている。
走り出したら、笑顔、止まらないぜ!
な、乗りやすさ、走りやすさに驚く。
Rebel 500を走らせよう。なんとも親しみやすいポジション、まるで250クラスのように軽いクラッチを繋ぐ。アシスト&スリッパークラッチの構造がここまで軽さを導き出すのだ。これなら渋滞路も気にならない。なにより500という排気量や重さを意識する場面がない。足着き性が抜群によいのもその理由だろう。
並列2気筒の180度クランクは等間隔爆発となり、規則正しいサウンド、滑らかなトルク感を伴って加速を開始。グルグルグル~グルルルルル、と回転上昇とトルクとパワーがシームレスで増量する。尖ったところも足りないところもないこの解りやすさ。振動が増えるでもなく心地よいリズムのようなカタチで乗り手に伝えるあたり、市街地、ツーリング路では常にニンマリできた。
なにより、CBR400Rで体験した400版のエンジンも出来ばえは良かったが、この500はどの回転域でもトルクの厚みが一枚上手。アクセルを捻り、欲しい速度までの加速は右手の開度が少なくてもスッとトルクで持ち上げる感じ。シフトダウンして回す、というより低い回転のまま加速する楽しさ、ビッグバイク感がある。これはスペックには表れない乗って気が付く500が持つ大きな魅力だ。
乗り心地は少々硬めに感じる場面も。サイドウォールが肉厚な前後のバイアスタイヤの空気圧を少々調整して、この入力の角を取りたい気分になる瞬間があった。それでも滑らかな路面では充分な許容範囲内。おそらく、リアサス取り付け位置の真上にお尻を置いているようなレイアウトも影響をしているのだろう。
ただ、気持ちよいワインディングを走り始めると印象は変わってくる。Rebel 500が持つ一体感は、Rebel 250同様、走る楽しさをライダーに届け始める。エンジンのトルクの厚みがバイクを走らせている充実感を効果的に上げてくれる。アクセル操作と、ほど良い旋回性が融合し、クルーザーだから、というだるさは皆無。ファットな前後タイヤながら自然な操舵性で、低めのシート位置だが少しの体重移動にしっかりと全輪が反応する。気持ち良いコーナリングを味わえた。
嬉しいのはバンク角の不足によって楽しいワインディング体験を強制終了させられることがないことだ。500のエンジンがもたらすトルクフルで満足感の高い加速、ワインディングを駆ける楽しさは、現代Rebelシリーズはどのモデルも標準装備のようだ。その中でもRebel 500が持つバランス感は改めて褒めたい。
Rebelシリーズは乗ったらどれも楽しいのだが、この500にも走って楽しむライダーマインドのくすぐり方の演出がしっかりと盛り込まれている。例えばトップエンドのバイクまで乗ったが、次に行くべきバイクが思い当たらない、という迷えるライダーにも一度この体験を勧めたい。よくぞここまで最小公倍数的にバイクの魅力を煎じ詰めたものだ。人にはナイショにしておきたい、違いの解る上がりバイク候補だろう。
隠れ魅力に溢れたバイクファン認定、
楽しいバイクランキング入り間違いなし。
と、結論を先に言ってしまったが、Rebel 500の魅力はまだある。ツーリングだと燃費も楽しめそうだ。取材中も気持ち良いカントリーロードを流すと、平均燃費は30km/lを越えさらに伸びつつあった。こんなペースでロングツーリングしたら35km/lぐらい軽々とマークするのでは、という予感があった。11リッターと小ぶりな燃料タンクが足かせにならないよう仕立てられている。
当初、どうせなら400で出せばもっと売れたのに、と不思議だったRebel 500。より長いストロークを持つ500㏄エンジンの恩恵は、飛ばさない速度の気持ち良さに表れ、400だと実現が難しいあたりをしっかりカバーしているのが今回改めて解った。軽快なのにゆったりが楽しい。WEBで検索するとユーザーがRebel 500を褒める記事/動画が多いのも納得。乗ってみないと解らないもの、その代表格がこのRebel 500だった。大事なので二度言いますが、隠れ魅力機種ですコレ。
(試乗・文:松井 勉)
■型式: 8BL-PC60 ■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:471cm3 ■ボア×ストローク:67.0×66.8mm ■圧縮比:10.7 ■最高出力:34kW(46PS)/8,500rpm ■最大トルク:43N・m(4.4kgf・m)/6,500rpm ■全長×全幅×全高:2,205×820×1,090mm ■ホイールベース:1,490mm ■最低地上高:135mm ■シート高:690mm ■車両重量:190kg ■燃料タンク容量:11L ■変速機形式: 6段リターン ■タイヤ(前・後):130/90-16M/C・150/80-16M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:マットアーマードシルバーメタリック、グラファイトブラック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):799,700円
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