2022年が、カワサキにとって重要な年であることは前々から知られていた。それは、カワサキの名前を世界に知らしめたスーパースポーツモデル「900SUPERFOUR/通称Z1」がデビューして50周年の記念年であるからだ。そしてその祭りの準備は着々と進められていた。2021年11月には特定非営利活動法人「日本自動車殿堂」によって、1972年に発表したZ1と、その翌年に登場した兄弟モデル「750RS/通称Z2」がともに、歴史遺産車に登録されたことが発表された。
そして昨年11月に2年ぶりに開催されたEICMAミラノショーでは、同年9月にカワサキ・モータース・ヨーロッパが発表した「Z650RS」をファンの前に初披露。2017年の登場以来、日本のみならず世界中のネオクラシックカテゴリーを刺激し牽引してきた「Z900RS」がカワサキの中に構築した、ネオレトロスポーツ・カテゴリーを拡充した。
そして、このZシリーズ誕生50周年を記念したアニバーサリーモデルの登場である。カワサキの担当者は、2022年はこのアニバーサリーモデル投入という楽しい話題をきっかけに、カワサキファンもちろん、バイクファントともに盛り上がることができる“お祭り”をしたい、と語った。このアニバーサリーモデルに加え、2月4日に発表になった「50周年記念アイテム」や、今後予定しているイベントなどにのせて、カワサキの歴史のほか、カワサキブランドを支えるファンの熱い想いも広く届けたいのだという。そして、この50周年記念のお祭りは、そのカワサキファンとの交流を世界に広げていく絶好の機会だという。
その戦略の先陣を切ったのが3台のアニバーサリーモデルだ。その中の「Z900 50th Anniversary」が採用した“ファイアクラッカーレッド”に、思わずため息が出たライダーも多いのではないだろうか。そう、これは1981年に発表された「Z1100GP」が採用した、あのファイアクラッカーレッドを基調にしたストライプを、最新の塗装技術で再現したものだ。「Z1100GP」は歴代の空冷Zのなかで最大排気量を持ち、カワサキの歴史の中でも重要なモデルだ。近代的なスタイルやパフォーマンスを持つスーパーネイキッドカテゴリの最高峰である現行「Z900」とのマッチングも考慮し、「Z1100GP」の代表的なカラーだった“ファイアクラッカーレッド”が採用されたという。
また「Z900RS 50th Anniversary」と「Z650RS 50th Anniversary」には、Z1を象徴する“ファイヤーボールカラー”を採用。燃料タンクは四層塗装され、ベースカラーのブラウンカラー部分は、キャンディダイヤモンドブラウンというメタリックが入った塗料を独自の技法で重ね塗りすることで、キラキラと輝くフレークの密度が濃くなり、艶やかで深みのある質感を実現してる。
「Z650RS 50th Anniversary」は、3台の50周年記念モデルの発表と同時に、国内モデルが発表となった「Z650RS」がベースとなっている。Z900RSが、カワサキ・スーパーネイキッド・カテゴリーに属する「Z900」をベースに、Z1やZ2をモチーフにしたネオレトロスポーツ・カテゴリーを構築した成功体験を活かし、「Z650RS」は「Z650」をベースに、1976年に登場した初代Z650のスタイリングをオマージュしている。昨年11月に開催されたEICMAでカワサキは、オンロードアドベンチャーカテゴリーに新型の「ベルシス650」を発表し、この「Z650RS」とともにミドル排気量カテゴリー・モデルの拡充を図り、より幅広いキャリアのライダーにカワサキのフィロソフィーをアプローチしていくと、その戦略を語った。
この「Z650RS」は、ネオクラシックなスタイルとパフォーマンスを持ち合わせたことで、そのカワサキの戦略をもっともシンプルに体現したモデルと言えるだろう。4月末の発売が待ち遠しい。
すでに「Z900 50th Anniversary」と「Z900RS 50th Anniversary」は発売がスタート。「Z900RS 50th Anniversary」については予約が取りづらくなっているが、それもまもなく解消されるはずだ。
■Z650RS 50th Anniversary
スリム&コンパクトな車体や外装類のデザインを活かし、モダンでカジュアルなスタイリングを構築した「Z650RS」。ティアドロップ型のサイドシルエットを持つ燃料タンクやダックテールスタイルのシートカウル、砲弾型メーターなど、Z1や初代Z650から受け継いだディテールを採用。そのZ650RSをベースに、50周年記念モデルのための特別なカラーやグラフィック、ディテールが採用されている
●Z650RS 50th Anniversary 主要諸元
■型式:カワサキ・8BL-ER650M ■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒/DOHC 4バルブ ■総排気量:649cm3 ■ボア×ストローク:83.0mm×60.0mm ■圧縮比:10.8■最高出力:50kW(68PS)/8,000rpm ■最大トルク:63N・m(6.4kgf・m)/6,700rpm ■全長×全幅×全高:2,065mm×800mm×1,115mm ■ホイールベース:1,405mm ■最低地上高:125mm ■シート高:800mm ■車両重量:190kg(Z650RS 188kg) ■燃料タンク容量:12L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17M/C (58W)・160/60ZR17M/C (69W) ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:キャンディダイヤモンドブラウン(Z650RS:キャンディエメラルドグリーン, メタリックムーンダストグレー×エボニー) ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,100,000円[Z650RS 1,012,000円]
■Z900RS 50th Anniversary
カワサキ900 スーパー4/通称Z1を象徴する“ファイヤーボール”カラーを採用した「Z900RS 50th Anniversary」。スポークホイールスタイルのキャストホイールにはゴールドカラーを採用。サイドカバーや左右エンジンカバーには専用のエンブレムをデザインする
●Z900RS 50th Anniversary 主要諸元
■型式:カワサキ・2BL-ZR900C ■エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ ■総排気量:948cm3 ■ボア×ストローク:73.4mm×56.0mm ■圧縮比:10.8■最高出力:82kW(111PS)/8,500rpm ■最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/6,500rpm ■全長×全幅×全高:2,100mm×865mm×1,150mm ■ホイールベース:1,470mm ■最低地上高:130mm ■シート高:800mm ■車両重量:215kg ■燃料タンク容量:17L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17M/C (58W)・180/55ZR17M/C (73W) ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:キャンディダイヤモンドブラウン ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,496,000円
■Z900 50th Anniversary
空冷Z最大の排気量を誇り、空冷Zの頂点モデルとして君臨した「Z1100GP」の代表カラー“ファイアクラッカーレッド”を、最先端の塗装技術で忠実に再現した「Z900 50th Anniversary」。その鮮烈な赤を強調するため、フレームは艶ありブラックに変更。ゴールドカラーのフロントフォークやホイールテープも採用している。
●Z900 50th Anniversary 主要諸元
■型式:カワサキ・8BL-ZR900B ■エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ ■総排気量:948cm3 ■ボア×ストローク:73.4mm×56.0mm ■圧縮比:11.8■最高出力:92kW(125PS)/9,500rpm ■最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/7,700rpm ■全長×全幅×全高:2,070mm×825mm×1,080mm ■ホイールベース:1,455mm ■最低地上高:145mm ■シート高:800mm ■車両重量:213kg ■燃料タンク容量:17L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17M/C (58W)・180/55ZR17M/C (73W) ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:ファイアクラッカーレッド ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,210,000円