Facebookページ
Twitter
Youtube

試乗・解説

YAMAHA XTZ700 Tenere ロングディスタンス to ホーム。
テネレが帰ってくる。今年? 来年だろうか。帰ってくるのはこれだ。MT-07と同型の並列2気筒を搭載し、パルシブなサウンドと扱いやすいトルクで気持ちよくオフを駆けるオフ車を作りたかった。そう考えるエンジニアが作ったバイク。だからといって舗装路で疲れては遠くのダートに行くのにタダのジョークだ、というセンスの持ち主だから、ロードだってぬかりない。いや、むしろ舗装路が楽しい。このバイク、どうだったのか。スペイン、バルセロナから2時間ほどの街、トルトサをベースにたっぷり走ってきた。結論から言えば、すごく楽しい。こんなタイプのアドベンチャー、今までなかった。
■試乗・文:松井 勉 ■写真:YAMAHA ■協力:YAMAHA https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/
こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/i_XF-43dgxE

こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/B6xZ3_b63Rw

36年を経て帰ってきたロングランブランド。

テネレというバイクの歴史は1983年に始まる。XT600Zテネレ。30リットル入りの燃料タンクと、キックオンリーのOHC4バルブYDIS装備のビッグシングル。シート面積の関係で一人乗りという超割り切った国内諸元だった。そのスタイルはまんま当時のパリ・ダカールレーサーだし、いわば現在のアドベンチャーモデルの原点とも言える1台だ。
あの頃、オフ車と言えばスリム、軽量、コンパクトを三原則として、小排気量オリエンテッドだった。だからその大排気量、30リットル(といえば満タン、空っぽで燃料分の重量だけで20キロも変わるわけだ……)のビッグタンク、長いサスペンションと長距離快適性を狙った肉厚シート。それはまるで乗る人を選ぶようなキャラクターだった。だからこそ憧れの的だ。とはいえ、当時の特殊な免許制度で限定解除を取得したとしても、キックオンリーの600シングルなど、人前で掛からぬコトを想定したら、おいそれとは手を出せない「危険物件」でもあった。
それでいて60/55Wのハロゲンヘッドランプや、フロントディスクブレーキなど、当時、オフ車としてはモダンな装備を持っていた。スリム、軽量、コンパクトを標榜するあまり、巡航距離や明るいヘッドライトを持ったものが少なかったのも事実。元祖アドベンチャーバイクとも言える世代のテネレは、そうしたパートへの黒船でもあったわけだ。

唯一、残念なのは国内での正規販売はその初代以降後途絶え、逆車での歴史を重ねたテネレ。つまり、このTénéré700がカタログモデルとして販売されるコトになれば、おそらく当時は子供だった人が販売店の店長クラスになってTénéré700を売ることになる、のではないだろうか。

やっぱりダカール・ブラッド、
ラリーの匂いがするのがテネレ。

そして新型である。まずはこのスタイルを見て欲しい。現在、南米で、来年はサウジアラビアで行われる現代版ダカールのファクトリーマシンを彷彿とさせる。フロントに21インチ、リア18インチというオフ系タイヤサイズ。そしてフロント210mm、リア200mmという十分なサスペンションストロークが醸す足周りの伸びやかさ。
採用するダイヤモンドフレームはどこからの流用ではなくもちろん専用の設計だ。軽く剛性バランスに優れた設計で、ボトムチューブは取り外し式。その役割の中心は、エキゾーストパイプとエンジン下部のプロテクションだ。リアサブフレームもしっかりと荷重を受け止めるようにデザインされている。その重量は18㎏を切り、シングル時代のテネレよりも軽い。

さらに16リットルを飲み込むタンクは細身で、サイドから見るとどこかセロー風にも見える。軽快でスポーティー。その辺が伝わる部分だ。そしてヘッドライト周りのフェイスがいい。ウインドスクリーンとライトカバーが一体になった奥には4個のLEDライトが備わっている。これはコンセプトモデル、T7が登場した2016年からヤマハファクトリーのダカールレーサーが採用した意匠と重なる。初代テネレも新生テネレも開催場所は変わったが、ダカールDNAをしっかり塗り込まれている。

そればかりか、オフロードを走るための準備にも抜かりない。例えば、ワイドステップ、ライザーで高さを稼いだハンドルバーでスタンディングでもナチュラルなポジションが取れるし、テーパーのハンドルバーも、ベンドでかさ上げしていないから、ユーザーが好みのカスタムをすることも可能だろう。

また、LCDで派手さはないが機能的なメーターパネルもラリーバイクのナビパネル風でもある。そうした時代の鮮度も取り込みながらのTénéré700のパッケージは仕立てられた。

ミドルクラスの誘惑。

ヤマハによるとこの5年ほどでアドベンチャーバイク市場における販売比率で1000㏄以下の伸び率が高まっているという。2014年には35%だった1000㏄以下のモデルが、昨年には45%にまで販売比率を伸ばし、今後もその傾向は続くと見ているそうだ。そしてMT-07のエンジンがコンパクトかつ優秀なドライバビリティーを持っていることから、その開発段階から担当エンジニアはTénéré700もできるのでは、とひらめいていたそうだ。

1200~1300㏄ほどのエンジンを搭載したバイクは素晴らしい装備を持ち、電子制御も最先端のものをメーカーの威信をかけて投入。快適で速くオフロードでも侮れないアジリティーを持つ。そして当然価格も立派。高いのだ。いわば看板モデルたるこうしたモデル達に対し、このTénéré700といい、先日乗ったKTMの790 ADVENTUREなどちょっと違ったキャラクターだと言える。ただのミドルクラス、というより、現代ダカールラリー的スピード感をふんだんに持たせ、二人乗り+パニアケースに荷物、という満載感より「お一人様」でピュンと走るスポーティーさが似合うようにも思う。

もちろん、二人乗りも荷物の積載も想定しているが、SUVとスポーツカーぐらい違って見える、と言ったら偏見だろうか。例えばサイドスタンドスイッチをステッププレートの裏にガードするように配置し、トラブルを未然に防ぐ設計や、国内導入になるかどうかは別として、シート高がプラス45mmも上がるハイシートをオプションで用意し、それに跨がるとポジションがまんまエンデューロマシンのようになる。サイドスタンドスイッチで痛い目をみたことのある人や、足つきコンシャスでオフでは座る、立つ、の繰り返しがけっこうしんどいケースもあるから、ダートランを好むライダーには待ってました、という部分だろう。

舗装路オンリーでもいい。
そう思わせるハンドリングの良さ。

クロスプレーンを採用し不等間隔爆発のエンジンは大型モデルが主張するような鼓動感や振動でその存在を誇示するタイプではない。それでいて歯切れの良い音も聞かせてくれるので、エンジンを掛けるだけでテンションが上がる。ファイナルレシオを下げたこと、低中速でのトルク特性を引き出すよう吸排気や燃料噴射の設定をしたことで元気の良い印象で動き出す。3000rpmから4000rpmを使って走るとレスポンスの良さに再びテンションが上がる感じだ。市街地の交差点、カーブなど持て余すことなく走れるのは、満タンでも204キロのなせる技だろう。バイクとしては背高な部類なのに、低重心感があることもそれを印象づける。バイクとの一体感醸成に時間が掛からない。

郊外の道でペースが上がるとさらにTénéré700と自分の距離は近くなる。エンジンの回転が5000rpmから6000rpmあたりを使い、アクセル開度で加速力を調整するような走り方がとても楽しい。9000rpmあたりまで引っ張ればさらにパンチが加わるが、幅広い持ち味をもっているこのエンジンは様々な領域で楽しませてくれる。

ブレーキについても初期のタッチはソフトで制動力の立ち上がりはマイルド。しかし握り込めばリニアに減速度が立ち上がるタイプなので、次第にペースが上がる舗装路での移動でも不満はない。サスペンションの設定も同様だ。
山岳路に入りワインディングを駆け抜ける。日本の道かそれ以上にタイトな道が続く。旋回性はここでも高く走りを楽しめる。21インチの持つ軽快さと寝かし込んだ時のグリップ感のバランスが絶妙。OEMのピレリスコーピオンラリーSTRは、ブロック高を抑えたオフタイヤ的ルックスだが、ロードでの性能がかなり高い。安心して峠を楽しめた。

快適性は○。

ライトカバー一体のフェアリングがカバーする範囲は、ノーマルシートに座った183㎝の自分と、オフロード用ヘルメットの取り合わせの場合、風切り音はゴーグルタイプのためやかましいが、風圧そのものは、口、鼻あたりから下、両肩から下、ナックルガードが手首から肘下あたりまでの風を和らげてくれるので二日間で500キロ近くを走っても快適だった。もちろん、大型スクリーンのモデルと比較したら劣る部分もあるが、これはこれ。最小限の面積で最大の効果を生み、スポーティーなルックスに貢献していると思う。

ライディングポジションも適切でノーマルシートだと少しシート位置が低く感じるが、ダートに入った時、スタンディングポジションに合わせたハンドルバー位置だから、というのもあるのかもしれない。全体的にTēnērē700の快適性は納得のものだった。

オフロードで笑う。
オフロードを楽しむ。

「電子的なガジェット」を装備することよりも、優れたエンジン特性と良いシャーシでコントロール性をあげること。ダート走行にはそっちのほうが良い。そのためにフライバイワイヤータイプのスロットルバルブを装備したり、車体姿勢を感知するセンサーを搭載すれば、価格、重量、車体スペースにも影響がある。それだけに開発チームの方向性は明快だった。オフ車を作ろう。だからトラコンは要らない。思い切った設定だと思った。ABSもキャンセル可能としているし、その機能もシンプルなもの。
そのお手前をダートで味わう。ここでもミドルクラスの中でも700㏄という排気量とそのパワー+トルクが援護射撃をしていることが解る。

まず加速方向のトラクション。モトクロススタート的な開け方、繋ぎ方をしなければしっかりと路面を掴み加速をしてくれる。アクセル開度を大きめにとれば自ずと空転が起こるが、暴れる感じはなく挙動はマイルド。エンジン特性とパワーのバランスが掴みやすい。ダートの表面をひっかきながら加速するトラクション感をしっかりと味わえる。
前後重量バランス、前48:後52に仕立てられたTénéré700は、ややハードに感じたフロントサスペンションにより、シッティングポジションよりスタンディングのほうが接地感を享受しやすいように思えた。試乗開始した時点で走行距離が300キロ程度だったこと、距離が伸びサスがこなれたのか、二日目には自分の慣れもあってかシッティングでも体感しやすくなったが、アクセルを開けて加速するときの感覚はやはりスタンディングのほうがバランスがよい。
途中、リアのイニシャルプリロードを掛けてリアをあげた姿勢にしたところ、フロントの接地感がより出る方向になったので、体重とのバランスだったのかもしれない。気がつけば、トラコンがなくとも、自信を持ってコントロールを楽しむ自分がいる。

試乗ルートは直線的なダートから山岳ルートをゆく道、タイトでツイスティーな悪路など様々。スペインの道のバリエーションには毎度驚かされ、そして楽しめる。これほどバイクを試す環境が整った道もそうはない。逆にいえば意地悪なダートだった。乾いた硬い地面に砂利、露出した岩、そうした上にきな粉のように削れた土の粉が堆積し滑りやすくもある。埃がひどくグループごとに隊列を組み進む僕たちは、先導者を除き頭の先からブーツまで真っ白、まるでラリーのエントラントだ。

こんな中を喜々として走る。楽しいのだ。エンジンパワーと車体のバランスがいい。予測通りにテールスライドを起こし、フロントを曲がりたい方向に向けられるし、ガレ場などでも車体がマイルドなリアクションをするので、フロントが弾き飛ばされる感じもない。時にフロントフォークが硬い印象もあったし、リアが一気にボトムする瞬間はもう少しチューニングを詰めたい印象もあった。それも高い速度で硬い岩盤をつっきったり、水流しの溝を突破したときのこと。一瞬スロットルを緩め、ためを作ってからフロントをサスの反力と駆動力でふわっと浮かせたい場面でフロントフォークの戻りが早く、スプリンギーな感じで伸びきってしまい、ハンドルだけを引っ張っている感じがあった。
直近、790 ADVENTURE Rを体験しエンデューロバイクと同等のサスペンションを堪能してしまったから、思う贅沢なのかもしれない。
結論から言って、Ténéré700も相当ダートを楽しめる。いわゆるアドベンチャーカテゴリーのなかでそのアジリティーは高い位置にあるのは間違いないのだ。

Xデイは何時?

 発売時期、価格。気になる2点に関して「国内販売はします。」という宣言以外ヤマハの人の口は硬かった。そこでとある事情通に聞いてみた。その人によればMT-07もヨーロッパでの販売を先行し、その後国内導入した経緯があり、その例になぞらえたら、3ヶ月~半年ディレイではないでしょうか? とのこと。ちなみに、ヨーロッパでは3月下旬から7月31日までオンラインで先行オーダーを受け付けていて、その数すでに2000台のオーダーがあるという。
 その価格はオンライン先行特別価格が9299ユーロ、ショップでは9月ごろにデリバリーが開始されるという。その通常価格が9699ユーロとのこと。ついつい逆車感覚で為替換算をしてしまうが、国内生産されるTénéré700の価格はそうはならないと妄想する。MT-07の価格が777,600円、XSR700が899,640円。そこからすると100万円から110万円あたりか、とも思う。少なくとも、来年の夏にはあちこちで見かけるコトになる。それは間違いなさそうだ。逸材登場を楽しみに待って欲しい。

(試乗・文:松井 勉)

CP2と呼ばれる並列2気筒クロスプレーンエンジン。フレームのアンダーループは剛性面よりもアンダーガードなどを取り付けることも考慮して付けられている。ステッププレートはアルミ鍛造製。ブレーキペダルもフォールディングタイプ。オフロードバイクとしてのたしなみをもつ。ステップもラバーを外せばワイドかつソールに食いつく山を持ったものが現れる。

フェアリングへと続くクリアなフェイスマスクの中にはLEDヘッドライトが。上2灯がロービーム、下2灯はハイビーム。その下に横長のランニングライトも備える。このフェイスも現在のファクトリーラリーマシンを思わせるデザインだ。

テーパードタイプのアルミハンドルバー。その幅は大型のアドベンチャーモデルというよりエンデューロモデル的なタイト感を持つ。

LCDモニターの上右カドはシフトインジケーター。メーターパネルの機能表示切り替えは右のスイッチボックスにある。タンクが細身なのも解る。

ハンドルバーは標準でこの程度のライザーで取り付けられている。オプションでさらにハンドル位置をあげるライザーも用意されている。

ナックルガードも標準装備。空力的にも通常のツーリングでも大いに役立つだろう。ミラーなども含めスタンディングポジションでも干渉することもなかった。

フラットな座面が前端から後端まで貫かれるシート。一体ではなく前後分割式。パッセンジャーシートはキー操作で取り外しできる。シート下には小物程度のスペースがある。リアセクションは短く、サイドに燃料タンク風のボリュームを持たせ、ダカールレーサーと近似性を匂わせる。四ヵ所あるアルミ色の丸いコードフックは荷物の積載用だ。

KYB製サスペンション、φ43mmのインナーチューブを持つ倒立フォーク。圧側、伸び側の減衰圧調整が可能。そのストロークは210mm。加圧された空気を抜くためのスクリューも備える。フロントブレーキはφ282mmのウエーブディスクと小型のブレンボキャリパーを備える。OEMタイヤはピレリのスコーピオントレールSTRを採用。フロントはバイアス、リアはラジアルを組み合わせる。ブロックタイヤを装着したとき、フェンダー内に泥が詰まりにくくするため、フロントフェンダーマウントボルトの穴が縦長になっていて、ライダー自身で調整が可能になっている点もオフロードなディテールだ。

リアサスペンションは油圧イニシャルプリロード調整が可能。ピギーバックスタイルのリザーバータンクを持つ。アッパーマウントの位置は低い。

リアブレーキはφ245mmのプレートを採用。ブレンボキャリパーのタッチとも扱いやすい。マフラーのスタイルもスポーティー。マフラーバンドも軽そうなデザイン。そのサウンドも270度位相の鼓動感あるサウンドとオフロードレーサーが搭載する450シングルを合わせたようなパンチのある音が印象的。



| ヤマハ発動機のWEBサイトへ |

2019/08/16掲載