今季のヤマハの鈴鹿8時間耐久(7月19日決勝)参戦体制がホームページで発表された。ヤマハファクトリーの参戦は休止、全日本JSB1000の王者・中須賀克行の参戦もない。代わって、ヤマハのトップチームは、世界耐久選手権(EWC)のYART Yamaha EWC Official Team (ヤート)となり、そこに、ファクトリーライダーの野左根航汰が参戦することになった。
ヤマハの鈴鹿8耐応援チケット販売と同時に発表された鈴鹿8耐参戦体制。ヤマハ広報としては「ファクトリー参戦継続と思っているファンに、ラインナップを知らせた上で、応援してもらいたい。期待を持たせたままというのは心苦しい」との思いがあった。
2015年から2019年までヤマハファクトリーチームが参戦、4連覇を飾り、昨年も、優勝の判定が覆され2位となったが、圧倒的強さと速さを誇り、鈴鹿8耐を牽引した。だが、「ヤマハマシンのポテンシャルを示し、人材育成、観客動員増と、ファクトリー参戦に伴う目標は、5年間の参戦で果たせた」とファクトリー参戦休止となった。
鈴鹿8耐勝利の原動力だった、全日本JSB1000で9度もタイトルを得ている絶対王者の中須賀。全日本を戦いながらマシン開発を進め、鈴鹿8耐での勝利は歴代2位となる4勝。今季は5勝目を狙い、歴代1位タイ記録(ホンダの宇川徹が5勝)を目指すと思われていた。それを叶えることは、今年はできないが、休止だけに、再び挑戦する可能性が消えたわけではない。
ファクトリー参戦はないがEWCの名門ヤートに、ヤマハファクトリーの野左根を送り込む。野左根は2017年に全日本を戦いながら、武者修行としてヤートの一員としてEWCを戦った。初参戦となったル・マン24時間耐久で2位表彰台を獲得、その後のドイツ8時間も2位と連続表彰台獲得の原動力となり、最終的にEWCランキング3位とチームに貢献した。この年、耐久を戦うことでスキルアップし全日本でも初優勝を飾り、2勝を挙げトップライダーとしての知名度を挙げた。だが、その後は、鈴鹿8耐参戦を望むも、ファクトリーチームのおさえのライダーとして参戦の機会は巡って来なかった。
野左根は、故阿部典史(元MotoGPライダーとして活躍)が立ち上げた「チームノリック」(現在は阿部の父・光雄氏が監督として運営)の第一期生で、2013年には全日本ロードレースJ-GP2クラスのチャンピオンとなり、2017年にヤマハファクトリー入りした逸材。今季、中須賀が挑む10回目のJSB1000のタイトルを阻止するライダーとして急成長中でもある。その野左根が、中須賀に代わってヤマハの存在を示すことを求められた。
チームメイトは、マービン・フリッツ(ドイツ)、ニッコロ・カネパ(イタリア)となる。フリッツは、野左根と共に2017年EWCを戦ったチームメイト。カネパは、その当時は、ライバルチームに所属していたが、昨年からヤートに合流、第2戦マレーシアのセパン8耐では、雨のため3時間耐久となったレースを一人で走り切りチームを優勝に導いている。
大仕事を任された野左根は「お互いを理解しあっているヤートからの参戦を嬉しく思っています。ファクトリーライダーとして、これまでのヤマハ同様の強さを見せなければならない」と勝利を狙う覚悟だ。ヤートにヤマハの力を注ぐとなれば、優勝争いに絡むことは必至。野左根にとって、飛躍の舞台となるはずだ。
現在は、新型コロナウィルスの影響で「活動を制限され我慢の時ですが、一日も早い終息を最優先に行動しながら、出来る限りの準備をしています。いつも通りに鈴鹿8耐が開催されることを願っています。そして、日本、世界中のファンの皆さんと鈴鹿8耐を楽しみたい」と語った。
(レポート:佐藤洋美)
YAMAHA8耐トップ
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